TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

たえだ旅館 和牛のルーツとなった地の旅館で千屋牛をいただく

千屋牛

今回の舞台は岡山県です。

実はかねてから岡山県周辺をロードバイクで走りたいなという思いがずっと心にあって、そのライド行程の兼ね合いで宿は新見にとりました。

新見から米子へ向かう国道180号の途中にある千屋実という地名。そこに位置する旅館が、今回泊まったたえだ旅館です。

f:id:offtama:20210312193205j:plain
狭い道を走っていくと旅館が見えてくる

f:id:offtama:20210312193146j:plain
たえだ旅館 全景

f:id:offtama:20210312193156j:plain
旅館の前の通り

f:id:offtama:20210312193200j:plain

この宿に泊まることを決めた一番の理由は、自分にしては珍しい「食事」です。

自分はどちらかというと近代的な建物よりは古びた木造建築の宿に泊まることが好きで、そういう建物自体に惹かれることはあっても、食事の内容を目当てに宿を決めることはあまりありません。「雰囲気に浸りながらいただく食事は美味しい」のは疑いようのない事実である一方で、そもそも食事の内容を事前に知るという機会がない。

でも、今回の場合は夕食に何が出てくるのかが予め分かっていたんです。

なぜかというと、この千屋実を中心とした一体は和牛のルーツとなったとも言われる千屋牛の産地であり、このたえだ旅館もその千屋牛料理を楽しめる旅館ということで、一部の界隈では名が知られているところだからなんですね。

www.ja-hareoka.or.jp

話をまとめると、単純に牛肉をいっぱい食べたくなったから新見に行ってきた。つまりそういうことです。

というわけで早速投宿。

歴史ある建物

千屋牛が名物のたえだ旅館ですが、実は旅館業を始めたのはなんと約200年前という話なので相当の歴史があります。

女将さんに伺った話をまとめると以下の通り。

  • かつてこの地は砂鉄の採掘で栄えたところではあるが、その砂鉄が下火になったらどうするか、ということで太田辰五郎という人がこの地で1830年頃に産牛改良に着手したのが千屋牛の始まり。
  • その結果、もともと小型種であった千屋牛を大型で多産和牛に改良することに成功した。その優秀な牛は「大赤蔓」と呼ばれ、現在の千屋牛の基礎となった。

※太田辰五郎は岡山ゆかりの著名人として有名です。

  • 女将さんが嫁いできた時点で150年前の歴史があったそうで、今だと約200年前。女将さんは6代目とのこと。
  • 旅館のすぐ裏手にかつて牛の市場だったところがあり、それが地名にも残っている。たえだ旅館はその市場に牛を見に来たり、売りに来たりした人が泊まる宿として有名だった。
  • 今では団体が宴会をして、牛肉を食べてそのまま泊まるという使い方がほとんどで、個人客は珍しい。

この話を聞くと、自分が今まさに泊まっているのは和牛のルーツとなった土地そのものだ。

しかも当時から営まれている宿に泊まることができて、そこで和牛をいただく。当初は食事メインとか考えてましたが、予想外に自分好みな歴史ある旅館だと理解できたことで投宿が一層楽しいものになった。

f:id:offtama:20210312193150j:plain
玄関

f:id:offtama:20210312192940j:plain
玄関内部

f:id:offtama:20210312193024j:plain
玄関右側には帳場の跡がある

f:id:offtama:20210312193028j:plain
通りの方向を眺める

構造としては宿の方の住居と旅館が一体になったような作りをしており、1階部分で言うと玄関を入って正面が生活スペースになっています。

客室はすべて2階にあり、玄関で靴を脱いだらすぐに右手にある階段を上がる形になりますね。

f:id:offtama:20210312193005j:plain

f:id:offtama:20210312192935j:plain
今回泊まった「菊の間」。定員5名で9畳ある

f:id:offtama:20210312193009j:plain
めちゃくちゃ広いです

先程述べたように団体が泊まることを想定されているため、客室はどれも5人用とか4人用といったように広めの部屋ばかりです。それでいて部屋数もかなり多く、別棟に宴会場があることからも規模が大きい旅館だとわかりました。

泊まった部屋は階段を上がってすぐ左手にある部屋で、一人で使うにも関わらず広さは9畳。今日泊まるのが自分ひとりだったことも含めると、ここまで贅沢に部屋を使えることに優越感を感じてしまう。

廊下と客室、そして客室間の仕切りはすべて写真のように襖になっていて、場合によっては防音が気になるかもしれませんが、古い旅館では結構当たり前なので個人的には気になりませんでした。

f:id:offtama:20210312192957j:plain
その他の客室の一例

f:id:offtama:20210312193121j:plain

f:id:offtama:20210312193001j:plain
館内を散策してみる

それでは、夕食やお風呂の時間まで館内をささっと歩いてみます。

基本的には廊下の左右に客室があるシンプルな構造で、木造建築ということもあって実に静かなもの。集落の一部に属していることから車通りもほとんどなく、平穏な時間が過ぎていくのが実感できます。

f:id:offtama:20210312193126j:plain
たえだ旅館で一番古い部屋「松の間」

f:id:offtama:20210312193134j:plain
欄間の模様も凝っている

f:id:offtama:20210312193138j:plain
回り曲がり廊下の造り(軒桁)なども含め、今ではもう再現できないそうです

古い旅館が好きで…という話を女将さんにしてみたところ、この旅館で一番古い部屋を案内してもらえました。

位置的にはちょうど玄関の真上にあるところなので、旅館の建物としてはこの棟から始まり、後から山側へと増築していったのではないかと推測してます。

f:id:offtama:20210312193142j:plain
釘隠し

f:id:offtama:20210312193130j:plain

書院や天井、床の間など見事という他なく、部屋を構成する要素の全てが一般的なものではないということがひと目で分かる。

あまり見たことがないなこれ…と思ってたら案の定珍しいもので、確か天井は屋久杉を使っていたはず。こういう建物が今でも残っている事自体が貴重なことだし、(今では旅館業がメインではないとはいえ)このままずっと続いてほしいものです。

f:id:offtama:20210312192945j:plain

f:id:offtama:20210312193020j:plain
階段については、2方向から上ってきた階段が途中で直角に合流する構造になっている

f:id:offtama:20210312193033j:plain

f:id:offtama:20210312192949j:plain
続いて1階部分。食事をとる部屋の真横に食堂があった。

f:id:offtama:20210312192953j:plain
正面に進むと玄関があり、右には風呂場がある

f:id:offtama:20210312193014j:plain
お風呂はいつでも入れるとのこと。熱めで気持ちよかった。

夕食は千屋牛

そんな感じで浴衣に着替えて館内を散策し、風呂に入って夕食の時間を待つ。

実は夕食に備えて、朝食と昼食を抜いていたのでもう空腹で仕方ありません。夕食は相当なボリュームがあるとのことなのでこういう対処をしたわけですが、果たしてどうなるか。

f:id:offtama:20210312193041j:plain
!?!?

えっ!?

なんですか、このとんでもない量は…?

「牛肉」ということなのでたぶんメインとなる料理がバンと一つあって、その他は山菜料理とかかな?とか思ってたんですが、まさかメインが3つもあるなんて誰が予想できただろうか。

f:id:offtama:20210312193047j:plain
千屋牛のステーキ

f:id:offtama:20210312193057j:plain
千屋牛のたたき

f:id:offtama:20210312193102j:plain
千屋牛のしゃぶしゃぶ

あかん、これ絶対美味しいやつや。

実は、たえだ旅館の宿泊料金はだいたい10,000~15,000円くらいと差があって、予約時に金額を指定する形になっています。金額が高くなればそれに比例して肉のランクが上のものを楽しめるというわけで、今回は一番いいやつ(15,000円)にしてもらいましたが…これは…。

なんという嬉しい悲鳴だ。

f:id:offtama:20210312193053j:plain
肉汁がヤバい

まずは文字通りステーキをペロッといただきつつその柔らかさに感動し(焼き方も選べます)、久しぶりに食べる「本物の牛肉」の味に舌がバグを起こしつつもビールを流し込む。

これだ。こういう夕食が実にストレス解消に効果的なのだ。

時おり山菜料理をつまみつつ、次はたたきを頬張りながらそんなことを考える。肉とビール。やっぱり何もかも忘れたくなったときにはこの組み合わせなんですよ。脳を空っぽにして楽しむには小技は必要ない。暴力的な肉が一切を過去に追いやっていく。

しかしあれだな、こうして肉ばっかり連続で食べていると、まるで自分が野生時代に戻ったかのような錯覚を覚えて闘争本能を刺激されてくる。こうして人間は肉に夢中になっていったのかと。そんな原始の思考も脳裏に浮かんでくる。

f:id:offtama:20210312193037j:plain
ビールが無限に飲める

最後はしゃぶしゃぶに手を出し、美味しいものが胃の中を満たしていく感覚は終わることを知らない。

f:id:offtama:20210312193106j:plain
この布団、めちゃくちゃ気持ちよかったです。寝やすい。

すべてが終わった時は、放心状態で布団に転がってました。「苦しさ」には悲しいやつと嬉しいやつの2つあるのですけど、これは正真正銘の後者のやつですね。だって満腹で苦しくて笑ってたもん。

牛肉をお腹いっぱい食べて苦しくて笑う。これが幸せでなくてなんなのか。

f:id:offtama:20210312193110j:plain
翌朝の朝食

f:id:offtama:20210312193116j:plain
実はしゃぶしゃぶの肉は夕食時に全部食べきれなくて、朝食に焼いて出してもらいました

そして、朝食。夕食の量があまりにも多すぎたため、朝食の量は少なめにしてもらいました。

こうしてみると、自分の胃の小ささが情けなくなってくる。明らかに一人分の夕食の量じゃなかったという言い訳をしつつも、個人的には全盛期(学生時代)くらいには食べれるようになりたい。運動をしていないために食も細くなってしまっているというわけです。

まあ、焼いたしゃぶしゃぶ用の肉がまた美味すぎて白米をおかわりしたわけですが…。


というわけで、たえだ旅館での一夜は牛肉に始まり、牛肉に終わりました。

とにかく牛肉を食べたいという人には間違いなくおすすめできるところだし、しかも鄙びた雰囲気をもつ静かな宿。しかも(しかもが多いが)料金プランも幅広いので、様々なニーズに対応してくれます。Google mapだと閉業になってて焦りましたが(今回急いで訪問したのもこれが理由)、通常通り営業されてます。都市と都市との間に位置していることもあり、移動手段を問わずに行程に含められる良い宿だと感じました。

この後は高梁市をロードバイクで走ったわけですが、それはまた別記事で。

おしまい。