TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

修行僧が見つけた石見の秘湯・有福温泉に一泊してきた

島根へ

今まで結構な時間を過ごしてきた中国地方。

就職を機に他の地域へ移ってきてもう何年か経つ中で、改めてその魅力に取り憑かれつつあります。当時はその情報を知っていながらも結局訪れることはなく、その地を離れてから初めて良さに気づく。これは何にでも当てはまることではあるものの、いざ自分がその境遇になると後悔しますよね。あのとき行っておけば良かったと。

ただ、こうして今になってようやく時間も金も余裕が出てきたこともあって、(今年は東北に行きたいという願望はあるけど)こころなしか旅においては西日本を中心に訪れる機会が多いと思います。まあ気になった場所を訪問するのに遅すぎるということはないわけで、今回の島根訪問もとある温泉に行きたくなったからという単純な理由。

もっとも、全国各地は遠いようで実は近いもの。その気になればいつでも行けるというのが良い点の一つじゃないかなと感じてます。

で、その温泉街というのが江津市にある有福温泉です。個人的には、島根県の中では温泉津温泉と並んでずっと行きたかった温泉でもあります。

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有福温泉の入り口

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有福温泉街 遠景

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温泉街は斜面に沿って形成されている

有福温泉は静かな山間部に位置しており、街全体には鄙びた空気が漂っています。

およそ1350年前に僧侶によって発見されたとされており、以来湯治場として栄えてきました。今では3箇所の日帰り湯(共同湯)に3軒の旅館が営業を続けていて、どちらかというと地元の方に愛されている温泉街という印象を受けました。

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山間部に位置しているということもあって、なだらかな斜面に沿って建物が立ち並んでいる有福温泉。

しかも温泉施設だけではなくて普通の民家も一緒になっているので、観光地っぽさは皆無です。ざっと散策してみた感じでは商店や売店などもあまりなく、まさに温泉そのものを楽しむことに特化した場所といえるでしょう。この点も個人的にはグッときましたね。

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温泉街を流れる路地は狭くて細く、石段が続いている様子は散策するのにもちょうどいい。

有福温泉はどちらかと言うと日帰り温泉に重きを置いている客が多いようで、日帰り温泉専用の駐車場も複数あってかなり広いです。それと逆に宿泊者は少ないらしく、今回は有福温泉に一泊しましたが、土曜日にも関わらず夜間に人をほとんど見かけませんでした。

宿自体が少ないのでそれも当然と考えられるし、とにかく温泉以外の要素を取っ払って温泉に集中したいという人にとっては非常におすすめできると感じます。

三階旅館に宿泊

この日宿泊した宿「三階旅館」についての宿泊記録は、別記事でまとめています。

日帰り湯を回る

三階旅館へのチェックインを済ませ、部屋に案内していただいたところで時刻はまだ夕方。

部屋の居心地の良さに早速だらけモードに入りそうになりつつも、夕食前に日帰り温泉を回ることにしました。

gotsu-kanko.jp

先程書いたように、有福温泉の日帰り湯は

  • 御前湯:7:00~21:00(最終受付20:30)
  • やよい湯:10:00~21:00(最終受付20:30)
  • さつき湯:10:00~21:00(最終受付20:30)

の3箇所。

どれも1箇所につき¥400円で入ることができますが、泊まった宿泊施設で券を購入すると¥300になります。もしどこかの宿に宿泊する場合は活用した方が良さげ。

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やよい湯。他の2箇所とは源泉が異なっており、一番ぬるい。

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やよい湯の入り口

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さつき湯

ちなみに、観光客にとって一番人気なのは有福温泉の「顔」でもある御前湯

建物がそもそも大きいし、傍から見ていただけでもひっきりなしに人が訪れているのがわかりました。逆に言うと「やよい湯」と「さつき湯」は地元の方が中心となって入りに来られているみたいで、規模も小さめ(なんでも、この2箇所については地元の方限定の回数券があるみたいで、それが無い御前湯についてはあまり入りに来ないとのことでした)。今回は御前湯以外では「やよい湯」に入りましたが、湯船に入れるのは3人が限度といったところです。

「さつき湯」については、どのタイミングで訪問しても受付の方に今はちょっと混んでるかな…と言われたので断念。さつき湯の源泉は御前湯と同じところということなので、御前湯に入れたことで良しとしましょう。

で、注意点としては日帰り湯に入れる時間帯。

「やよい湯」と「さつき湯」は朝10時からなので、もし仮に翌朝に入りに行けばいいや…と思っていると結局入れなかったということにもなりかねません。翌日もしばらく有福温泉に滞在する場合は問題ありませんが、別のところに行く予定がある場合は当日中に入ってしまうことをおすすめします。有福温泉自体を訪れるのを早めにしておいたほうがいいかも。

なお、御前湯については朝7時からやってるので気軽に朝風呂に行くことが可能です。

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御前湯の外観(斜めから)

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下から見上げてみる

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入り口を入って右側が女湯、左側が男湯。番台の後ろ側が家族湯になっている

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現役の番台

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2階へ

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2階は休憩室になっていて、古い有福温泉街も写真も飾ってありました

御前湯は結局、当日と翌朝の2回入りに行きました。

温泉街の規模にもよりますが、温泉街で一泊する醍醐味といえばなんといっても「浴衣で歩き回れる」ところ。特に日帰り湯をはしごしようとすると身体が火照っていて普段着だと着たり脱いだりが結構面倒だし、そういうときこそ浴衣の手軽さがとても役立つ。ささっと脱いで温泉に入ることができるので、やっぱり温泉街には浴衣だよなと常々思います。

温泉後にそのまま周囲を歩いて散策もできてしまうし、ただ日帰り湯に入って終わりというのはちょっともったいない。一泊しないにしても、余韻を楽しむ意味でぶらぶらしてみるのもいいかもしれませんね。

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早朝の御前湯 ※撮影許可いただきました

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朝一の御前湯はなおのこと気持ちよくて、少し肌寒く感じていた身体が一気に温まっていく感覚は何物にも代えがたいほど気持ちいい。

有福温泉の湯はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)で、ご覧の通り無色透明なのが特徴です。さらに御前湯に限っては石鹸やシャンプーも置いてあるため、タオルだけ持って訪れればOK。

湯船の大きさについては8人くらいは入れたかなレベルで、このご時世だと一度に入れるのはまあ5人くらい。回転率はそこそこ良かったので、人で一杯の場合でも少し待ってれば入れると思います。建物の入り口に本日の混雑度の掲示もあるため、それも一応参考になるかと。

石見神楽を観る

そんな感じで日帰り湯を満喫し、宿に帰ってきてそれはもう美味しい美味しい夕食をいただいて心身ともに大満足。あとはもう寝るだけ…と思いきや、石見地方の夜は実は長い。

以前訪れた温泉津温泉もそうですが、石見地方では石見神楽という神楽が有名です。有福温泉では月に数回、石見神楽の上演(土曜日限定っぽいです)をやっていて、三回旅館予約の際にその上演の予約も一緒にやりました。

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演目の一つ「道返し」

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客席と舞台に仕切りがないため、すぐ近くで臨場感あふれる神楽が体験できる

御前湯の目の前にある神楽殿がその舞台となります。

コロナの影響でスケジュールが若干混乱していたり、客席と舞台との間に透明のビニールの仕切りがあったり(上の写真で上半分だけなんかぼやけているのはその影響です)など普段とはちょっと異なってはいるものの、間近で躍動感満載の神楽を観ることができるというのはなかなか体験できないこと。これについては是非とも現地で観覧いただきたいと思います。

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演目の一つ「大蛇」

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舞台は想像以上に狭い一方で、演者の動きにはそれを一切感じさせないダイナミックさがある。動きの一つ一つに心を奪われてしまいました。

特に「大蛇」では八岐の大蛇の蛇胴自体がかなり大きく、それがしかも2匹同時に動き回りながら須佐之男との戦いを演じていきます。あれだけ動き回って互いに絡み合わないのがまず尋常ではないし、相当な練習を積んでいることは想像に難くない。

石見神楽について詳しく書かれた資料もいただけたし、上演に熱狂するだけでなく神楽への理解も深めることができる。今日一日過ごしただけでこれほど充実感を得られたのは本当にいい意味で誤算だった。温泉に旅館に食事に神楽に…と、矢継ぎ早に楽しいイベントが目白押しなのが有福温泉の素敵なところだ。

夜の散策、そして翌朝へ

神楽の上演の後に残るのは、静かな有福温泉の夜。

すでに日帰り湯の営業時間は過ぎているし、今ここに残っているのは地元の方以外では宿泊客だけだ。どことなく一種の特別感を感じてしまって、特に用事もないのに温泉街を再度歩き回ってみた。

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歩いているうちに次第に寒くなってくるが、そんなことはどうでもいい。

この、ひっそりと静まり返った有福温泉の町並みを歩くのが好きだ。観光客で賑わっている日中から打って変わって、出歩く人は我々以外にはいない。でも街灯には明かりが灯っているし、各旅館も同じように確かな人の営みを感じる。開湯から相当年月は経っているものの、この夜の雰囲気だけは当時と大して変わっていないのでは、と思うくらいにノスタルジックな空気が広がっている。

個人的にはこういうのがとにかく好きなので、旅をする際にはできるだけ一泊したいですね。一泊してその土地の夜を味わう。この瞬間が本当に堪らない。

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こんな感じで二日間が終了。

簡単に言えば「有福温泉に泊まってきた」なんだけど、体感時間としては半日とかそれくらいでした。もう温泉街に到着して、旅館に入ったときから帰るまでが自分でも驚くくらいに一瞬で過ぎ去っていった。

令和の時代にあって、時代を越えた"良さ"に出会うことができる。有福温泉にはそれがあるし、その名の通り温泉に入ることによって福を得たような気になったのは言うまでもない。本当に良い温泉でした。

おしまい。