TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【北木島の丁場】ちょっとロードバイクで笠岡諸島を巡ってきた Part 3/3 (@岡山県笠岡市)

早朝の北木島を巡る

むくり。

天野屋旅館への投宿から一夜あけ、この日に自分が起きたのは朝食にはまだ早すぎる時間帯。普通だったら二度寝を決めるところですが、今日は早起きをして北木島の北部を散策することにします。

というのも、この日は広島市まで移動する必要があり、その時間から北木島発の旅客船の時間を逆算すると実質的に特定の便にしか乗れないということになってしまいました。

朝食の後に散策をするとその便に乗れないので、だったら朝食前に行けばいいやというのがその答えです。自分以外の要因によって行程が崩れるのは仕方ないけど、自分次第でどうにかなるのであればやるしかない。幸いにして昨夜はぐっすり寝れたので、早朝の散策もそんなに苦ではなかったです。

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天野屋旅館は東向きに建っているので、旅館を出た時点でもう朝日が見える。

一日の始まりがよければ全て良しじゃないですけど、一発目にこんな美しい朝日を見ることができたのならもう幸せでしかない。天野屋旅館の立地は本当に素晴らしい。

天野屋旅館から島北部までは、海岸沿いに普通に走って往復13kmほど。道も一本しかないので迷うこともなく、ただ普通に走っていれば端に到達できる。

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次第に上へと上っていく朝日を横目に見ながら、ロードバイクを走らせていく。

早朝というだけで静かなことは容易に想像ができていたものの、他の地域とは明らかに違う点がある。それは交通量が皆無で人工的な音が全く聞こえてこないことと、それによって自然が発する音がより強調されて聞こえてくるということ。

前の記事で書いたように、このような離島における車の利用頻度は極めて低いです。移動手段と言えば原付くらいで、自分がよく旅するような場所で走っているような「車」がここにはそれほどない。それに加えて早朝でみんな寝ているし、その静寂によって打ち寄せる波の音が増幅されて聞こえてくる…。

そんな感じで、なんかフローチャートみたいに島の良いところが次のステップに流れていって、自分の目の前の風景に繋がっている。島の人にとっては朝の時間帯と言えばこれが普通なんだけど、自分にとっては新鮮そのものだ。

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とはいえ、早い時間帯に集落内をうろちょろするのが気が引けたのでそれほど深入りはしませんでした。普通に歩くだけならまだしも、ロードバイクだとラチェット音がそこそこうるさいんですよね。

北木島も真鍋島と同様に、集落内の道は人間や原付しか入れないような細い道ばかりです。なので自転車での散策が公式にもおすすめされていて、北木島についてはレンタルサイクルの貸し出しも行っている様子のようでした。今の状況下だと営業しているのか怪しいですが、とにかく自転車は個人的にもおすすめ。

ところで、北木島といえば石の島として有名です。

島全体が「北木石」と呼ばれる花崗岩の産出地になっており、古くから日本の歴史的建築物や建造物に北木島の石が使われていたのです。中でも、大阪城再築の際にここの石が用いられていたのは有名な話。島のあちこちには丁場(採石場)の跡が残っており、つまり「石」に関連した素敵なスポットに出会えるのがここ北木島の魅力の一つ。

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海と石垣の調和が見事な「北木島のベニス」

今となっては良質の岩も採石できなくなり、また海外から安価な石材も輸入されてきて、丁場はいずれも閉山となってしまったようです。

ですが、その当時の残り香が島の各所に残っていました。この海に面した小さな湾には島から切り出された石が積まれていて、さながら城の堀の様相を呈しています。漁船を停泊する場所といえば、岸壁の補強のためにコンクリ式になっているところがほとんどだと思うけど、この石の頑強さはどうだろう。全く波に負けそうにないほど力強く見える。

ここから船出していった石が日本の各地を支えてきたと思うと、今現在との落差にほのかな哀愁を感じる。でも、それも時代の流れの一つなのかもしれない。

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ラスボス戦が始まりそうな地形の「馬越」

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湖面に水音はない

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続いて訪れた「馬越」は、かつての丁場の跡地に雨水がたまり、非日常かつ神秘的な地形を形成しています。

自然に崩れたのではない垂直な山肌に茂る木々、それと対比するような石の荒涼とした感じ、そして眼下に広がる湖。他のどこでもない、北木島だけの風景だ。

これほどまでの規模の山をどうやって削ったのだろうかとか、雨水だけでできた湖とはいってもかなりの深さがあるように見える…とか。そういう疑問もよそに、この一体に漂う神々しさに若干の寒気を覚えた。なんせ手前側は陸と湖との高低差が皆無なのに、奥側を見ると切り立った崖ですからね。そのギャップだけでも驚くばかりだし、左手方向の岩盤の向こう側にも湖が広がっているしで、もう素敵すぎた。

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レトロな「北木島郵便局」

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その後も散策を続け、朝食の時間を気にしつつも路地を歩いていく。日が昇って結構時間が経ち、出歩く人もちらほら出てきました。

といっても自分はまだ朝食を食べていなくて、若干の空腹感を感じている。思えば、朝食前に散策することってあまり経験がないです。旅館での夕食後にちょっと近所を出歩くことはかなりの頻度でやってますが、逆に朝が弱いので翌日は出立まで旅館を出るということがない。そういう意味で行くと、今回の行程は良い気分転換にもなって嬉しかったですね。

猫に襲われる

さて、いい感じの時間になってきたので、そろそろ散策を切り上げて旅館へと戻ろう。

せっかくなので行きとは違うルート(海側でなく山側)を通ってみるか、と思ってやってみたところ、思いもよらぬ出会いが待ってました。

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!?

向こうの道に居座っている猫の集団…。これは、猫の集会というやつなのでは。

その集会に運良く出くわしてしまったのですが、事態はこれで終わらなかった。

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後ろも塞がれていて逃げられない

呆然としている自分をよそに、どんどん近づいてくる猫の一団。

ここで突然逃げ出してもアレなのでじっとしていたところ、前だけでなく後ろまで塞がれてました。

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監視役

その後は入念に愛車のチェックをされ、特に問題ないと判断されたので開放されました。猫といえば単独で行動しているケースがほとんどだと思いますが、このように一定のグループで活動?している場合もあるようです。

猫と触れ合いたい場合はこちらから動いてはならないということを思い出し、愛車を道路に置いて自分も座り込んでみたところ、これが結構うまくいってくれました。どの猫も自分から1mほど離れたところまで近寄ってきてくれたし、匂いを嗅ぎにきた子もちらほら。

しかも、愛車のチェックをしていたのが全員黒猫というのもなんか印象的でしたね。実行役なのかも。

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その後は石材の加工場などを見つつ、天野屋旅館に帰還して朝食にしました。

うん、朝食前にあれこれ散策をするというのは結構いいかもしれない。前の晩に早く寝れば朝早くても問題ないわけだし、貴重な早朝の雰囲気を味わうのならこの時間は外せないところじゃないでしょうか。今度から早起きしてみることにします。

北木島を後にして

朝食が済んだら、あとはもう帰りの船に乗って帰るだけ。

この後の行程も、明日の行程ももちろん重要なのは重要なんですが、やはり昨日今日と過ごした島を去るのは寂しいものがあります。しかもこれらは完全な離島なので交通手段は船しかなく、そのせいで余計で「去る」というイメージが強くなってしまう。

移動方法によってこんなに寂しさが増幅されてしまうなんて、いつもの旅の大部分を占めているような陸続きの場合とは一線を画している気がしてならない。陸続きで車や電車による移動だったら「また来れる」感が強いけど、船だと途端に遠方の地みたいなイメージが付いてしまう。

これも、この旅における想い出深い感情の一つだった。

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ギリギリの時間に港に行くのは自分の性格上避けたかったので、ちょっと早めに旅館を出て港の待合室に行きました。

数十分後には笠岡港に到着しているである自分を想像すると同時に、ここで過ごした記憶が薄れていってしまうのがつらい。

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そして、自分を乗せて旅客船は勢いよく島を離れていく。

船による移動…。その特徴を改めて考えてみると、目的地から離れていく/近づいていくときの景色の移り変わりのスピードが実にちょうどいい。具体的に言えば、目的地に近づいていくときの、島の形が次第にはっきりとしてきて、船が止まるであろう桟橋が視認できて、そして徐々にスピードを落としながら着岸していくときのスピード。これがなかなかの絶妙な速さだと思う。

このゆっくり感が、島への到着時はワクワク感を何倍にも増してくれるし、逆に離れるときは悲しみが増えていくような。そんな気さえしてくる。

私は、旅においては移動手段が占める要素が相当に大きいと思ってますが、あっという間に到着してしまう飛行機や新幹線とは異なって、船は目的地まで到着するのに結構時間がかかります。でも、それがなんというか、うまく言葉にはできないけど「自分がいま旅をしている」という実感を持たせてくれると思う。今回の笠岡諸島の旅では、その事実を改めて感じることができた。

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旅客船は行きとほぼ同じルートを通り、そのまま笠岡港に到着。

ここからは舞台が広島に移ることになるわけですが、それはまた別記事で。

おわりに

島を巡るような旅ができるのは、何も広島だけではない。

逆に言うと、同じような行程を組むような人が少ないからこそ、今回みたいな充実したライドができたとも言えます。誰もがやっているような行程は悪い意味でありきたりすぎるし、ちょっと地元に目をつけて旅をしてみました。

結果的には、それが大成功に終わってくれてなによりです。また自分のお気に入りスポットが一つ増えました。

おわり。