TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【一楽旅館】仄かな色気が漂う元遊郭旅館に泊まってきた Part 2/2 (@広島県広島市)

客室を巡る

自分が泊まることになる林の間で一休みしたところで、他の客室を順に回ってみることにしました。

普段だったら夕食の時間をもとに散策を行うところですが、今回は素泊まりなので全く影響なし。買い出し先のコンビニもすぐそこにあるので、割と時間を気にせずに見て回ることができました。

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一楽旅館の見取り図

散策の際に便利なのが、各部屋に貼られている館内の見取り図。大抵の場合は避難経路を兼ねているものの、自分の用途としては「散策のため」が100%です。逆に言うと、旅館においてはこの避難経路図くらいしか、部屋の配置が分かるようなものがない。

で、ざっと見たところ、各客室の名前は木々の名称が元になっているようです。しかし、松や桜、桃などはともかく、中や林、バラの間という名前もあったりして、正直なところ命名の基準がよく分かりません。

というわけで、早速散策を開始していきます。

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「林の間」の前にある階段は、1階の風呂場前に通じている

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散策は、林の間から時計回りに回っていくことにしました。

部屋を出て最初に目につくのが、この1階へ続く階段です。幅は完全に一人分しかなく、客が使うものというよりは遊女さんが通る階段のような気がしました(たぶん)。そのまま下っていくと風呂場の前に通じているので、文字通り風呂に入りに行く時には行きやすくて助かりました。

中の間

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そのまま廊下を玄関側に向かっていくと、林の間の隣にある中の間に着きます。

昭和25年棟しか存在しなかった時代においては、ちょうど3つ並んだ部屋の真ん中に相当するためにその名前が付いたのかもしれません。広さは4.5畳あって林の間を反転させたような構造になってますが、押し入れの形がなんか特殊です。

ところで、ここに限らず他の部屋についても、すでに布団が敷かれていました。これは推測に過ぎませんが、どうやら宿泊客の有無に関わらず常に布団をスタンバイしておく形式になっているようです。

まあ、客が来るのが確定してから敷くのは正直面倒な面もあるので、どっちかというと敷きっぱなしの方が楽なのかも。

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壁は竹と砂を組み合わせたような造り

また、すでに述べたとおり一楽旅館の壁はすべて砂壁になっていますが、その壁の断面はこのようになっています。

各部屋の入り口部分は壁をくり抜いたような見た目をしていて、端部は竹で補強しているようですね。

大広間

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中の間の正面は少々奥まったようになっていて、そこを進むと大広間がありました。

昔は中央が襖で区切られていたようですが、今ではぶち抜きで一つの大きな部屋になっています。敷かれている布団の数を見るに、ここの割当人数は4人。というか、他の部屋の広さ(4.5畳 or 6畳)を考えると一人で使うのがちょうどいいので、複数人で泊まる場合はこちらの大広間を使わせてもらうことになりそうです。

当時はここをどういう風に使っていたのか想像してみたのですが、十中八九宴会をしていたのではないかと思います。宴会をして盛り上がったところで、各客室へ…という流れになっていたと見るのが自然。

あ、今更なんですが、どの部屋にもエアコンやファンヒーター、空気清浄機などの設備が揃っています。なので、季節を問わずに快適に泊まれるんじゃないかなと思います。旅館によってはエアコンがない…とか結構普通にあるので、そういう意味では非常にありがたい。

桐の間

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中の間の隣が桐の間で、こちらも同じような構造の部屋になっています。

押し入れは隣の中の間と兼用になっていて、こちらは下の段を使っているようです。

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昭和25年棟から昭和33年棟へ

さて、ここから先の客室は昭和33年に建てられたものになります。

棟が切り替わる部分では廊下の色が明らかに異なっているので、結構分かりやすい。

萩の間

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桐の間の隣がこの萩の間。

昭和33年棟にある客室は、どれも廊下との境界に格子戸が設けられています。

また、こちらの棟は遊郭制度が消滅した後に建てられたということで、いわば短時間の滞在ではなく宿泊が前提。内装を見ても、昭和25年棟の客室と比較すると高級感があるように思えます。窓についても欄干の内側から後付したものではなく、最初から窓として設計されているように見える。

桃の間

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そして、表通りに面する客室の中でもっとも左端に位置するのがこの桃の間。

4面のうち2面が窓付きになっているので採光は十二分に確保できており、日当たりがいいです。また部屋の中に押入れなどがないため、どことなくすっきりとまとまっているような印象を受けました。

すぐ横に階段が位置していますが、それが気にならない場合は個人的にはこの部屋はおすすめかと思います。

松の間

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さて、桃の間から階段を挟んで、徐々に建物の裏側へと移動してきました。

建物の左側面部に位置しているのがこの松の間で、入り口を入って奥方向に細長くなっています。部屋の配置の関係上、床の間が少し狭いような印象を受けたものの、個人的にはこの若干の閉塞感が心地よく思えてくる。

桜の間

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その松の間とは逆に、床の間全体の空間が広く思えたのが隣りにある桜の間。

こちらには服などをかけて入れる部分が設けてあり、その左奥側に床の間が広がっています。テレビの横に置かれている鏡台も含めて、全体的に上品な空気が漂っている。

しかし、ただ部屋の写真を撮っているだけなのに妙な色気が漂っているのが実感できる。部屋の奥から手前を撮るとき、はたまたその逆で、部屋の入り口から奥側を撮影するとき。もちろん「和」の要素で旅館内が満たされているという理由もあるけど、部屋の狭さが全く気にならないくらいに、どの部屋もずっと滞在していたくなるような良さがある。

あえて明かりをつけずに自然光だけで撮影してみると、それによる部屋の明暗の具合が実にいいんですよね。当時は今ほど電気が充実していなかっただろうし、この仄暗さも当時では普通のこと。そう考えてみると、自分がいま見ているのは昭和33年と同じ景色なのかもしれない。

その昔に宿泊した人と、同じ体験ができている。鄙びた宿に泊まっていてこれほど嬉しくなる瞬間はない。

バラの間

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そして、最後にご紹介するバラの間は、ある意味で最も異質な客室かもしれません。

入り口を入って左手前にあるのは、なんと布団ではなくベッド。なんでベッドが…?と思ったのですが、壁の配置的にみるとベッドを最初から置くような造りになっているのが分かります。寝るスペースが端っこにあるために部屋の大部分を有効的に使うことができ、長期滞在の場合にはかなり便利な様子でした。

というわけで、これですべての部屋の散策が終了。

建物としてみると、あの池や回廊部分など全体的にまとまっている感があったものの、客室についてはその認識をひっくり返してくるように非常に個性的な部屋ばかり。どの客室にも味があるというか、次はこの部屋に泊まってみたいなと思わせてくるような差異が押し出されるのが気に入りました。

宿泊施設において、その滞在の大部分を過ごすことになる客室の雰囲気が重要なことは言うまでもありません。一楽旅館の客室は上記にお見せしたとおり、どの部屋に宿泊しても満足できること間違いなしです。

翌朝

その後はささっと買い出し&風呂を済ませ、部屋に戻って軽く食べた後に回廊部分で飲んでました。

夜の一楽旅館の明かりは非常に小さくて、それこそ周りにある新しい建物と比べると心細くなるような儚さがある。でも、この令和の時代にこういう旅館がしっかりと残っていて、そこに自分が泊まっているということを考えると、そんなことは気にならない。

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朝。

朝起きて、窓から差し込む陽光を見る瞬間が好き。今日一日がどういう日になるかはまだ分からないけど、少なくとも朝は平等に静かなものだと思う。この朝の時間は、誰にも邪魔されたくない。

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回廊で階下の池を眺めつつ酒を飲み、眠くなったので布団に潜り込んでいつの間にか眠りにつく。気がつけば朝がやってきていて、そろそろ起きるか…と気だるい思いで布団を出る。

旅館での夜は、いつもあっという間だ。個人的には投宿してから夕食をいただくまでの時間に対して、そこから先の旅館を去るまでの体感時間があまりにも違いすぎる。

一夜だけの滞在なのは仕方ないにしても、本当に時間は一瞬で過ぎ去ってしまう。自分が旅館を去らなければならないときになって、とても名残惜しい思いに駆られるのは、この体感時間の短さにほかならない。

でも、それも旅館の過ごし方の醍醐味の一つだとも思ってます。

楽しい時間ほど早く過ぎるのは自明の理で、つまりその旅館は自分に合っていたということ。この旅館を宿泊先に選んでよかった、また訪れたい…。そういう気持ちになれるのが一番いい。

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一楽旅館での滞在はそんな風にあっという間に終わって、ご主人にお別れをして広島駅に向かいました。

おしまい。

一楽旅館 公式HP

※上記の公式HPには写真も多く、設備についても詳しく記載されています。宿泊予約も公式HPから行える(というか、電話予約は受け付けていないようです)ので、ぜひご覧ください。