TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

大沢温泉 湯治屋 宮沢賢治ゆかりの湯治宿に泊まってきた Part 2/2

菊水舘へ

一通り館内の散策を済ませたところで、自室へと戻ってお茶を飲みつつ休憩してました。

ここからはもう特に予定もなく、通常であれば温泉に入って夕食の時間を待つだけとなります。でも今回はちょっと行ってみたいところがあって、そっちを先に回ってから温泉に向かうことにします。

その場所というのが、すぐお隣に位置している菊水舘。

すでに述べたように今現在では泊まることができないものの、休館中は「ギャラリー茅」として開放されているため、館内を見学すること自体は可能になっています。しかも宿泊者ならば見学料金は無料ということで、将来的な下見も兼ねてちょっと訪ねてみることに。

温泉旅館に滞在しているのだから温泉に入りまくらなければならない、という決まりはないので、各自で好きなことをして過ごせるのが旅のいいところですよね。自分は結構散策が好きなので、温泉旅館の場合は温泉に入っている以外だとだいたい館内を歩き回ったりしてます。

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共同炊事場

で、自分の客室からその菊水舘までの道のりは、階段を下って直進するだけ。

その階下には「湯治宿」らしく共同で使う炊事場があって、さっきはここを散策してなかったので寄り道をしました。

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コイン式のガスコンロ

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共同炊事場の横にある洗面所。中館に泊まる場合は、ここの洗面所を使うことになると思います。

炊事場にはガスコンロや流し台が整備されており、通常の調理だったら問題なく行うことが可能なようでした。

実際、ここで調理をしている人は思いのほか多かったです。簡単な鍋を作られていたり、どこかで買ってきた刺し身をさばいていたり。自炊の場合は食事を自室でとる形になるので他人に気兼ねなく食べることができるし、言い表すなら下宿しながら温泉に入っているような、そんな感じ。

というか、別に何週間も泊まるわけでもないという場合でも、自炊するのは結構面白いかもしれません。温泉によっては、以前青森で泊まった客舎のような「自炊しか選択肢がない」ところもあるわけだし、家での生活の延長線のような感覚で過ごすことができるのは興味があります。

ただ、その場合の移動手段としてはやっぱり車に限定されるかな。ロードバイクや交通機関だと、持ち込んだり運んだりする荷物の量がどうしても限られてしまう。

さて、気を取り直してここから菊水舘に向かいます。

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菊水舘へ続く曲がり橋

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湯治屋から菊水舘への道のりとしては、中館と上館の境にある出入り口で外履きに履き替え、川にかかっている橋を渡る形になります。

この橋もなかなか面白くて、途中で右方向に曲がっている変わった構造をしていました。

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菊水舘の温泉。ここに再び湯が張られるのはいつの日になるのか。

菊水舘には茅葺屋根の建物と、その奥に建つ2階建ての建物の二つの棟があり、見学できるのは後者の方でした。客が泊まるような客室も普通に開放されていて中に入ることができるので、宿泊ではないんだけど、見学よりもう一歩踏み込んだような体験ができるのが良い点だと思います。

しかし、江戸時代には南部藩主が常宿にも指定した築160年の建物は、どこを切り取っても風格がありますね。湯治屋と比較すると部屋数が少ない菊水舘ですが、その分一つあたりの部屋の面積は広々としていて過ごしやすい印象を受けました。

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角部屋+広縁の組み合わせはとにかく良すぎる

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ただ、これだけの広い館内なのに見学しているのは自分ひとりだけ。

菊水舘が見学可能状態なのを知らないのか、もしくはみんな温泉に入りまくっているせいなのか、大沢温泉の宿泊客は皆無でした。休館中の旅館の中の雰囲気としては非常に寂しい限りですが、自分のペースで見学ができたのでまあ良し。

ふと考えてみると、思えばこういう状況下で旅館の館内を歩くのってあまり経験がないです。

営業中の館内だったらこんなに閑散としていないし、そもそも他の宿泊客がいるので客室内には入れない。逆に、完全に営業を停止した"廃墟"だったらもっと荒廃とした様相になっていて然るべきで、要は「内装がきれいなのに人がいない」という状況だったのでなんか不思議な感じがした、ということが言いたかった。

まるで話にきくマヨヒガに迷い込んだみたいだ。

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このまま画角を右に移していくと露天風呂が普通に見えます

そんな感じで、菊水舘を貸切状態で見学できたことにホクホクしながら湯治屋へと帰還。

あ、ここで注意というほどでもないんですが、菊水舘と湯治屋を結んでいるこの橋。橋の上から湯治屋の露天風呂「大沢の湯」の様子が普通に見えるので、意図せずして裸を見てしまうことになるかもしれません。ホームページとかで大沢の湯の写真を見てもらうと分かりやすいんですけど、遮るものが何もないです。温泉から川方向はすごく見通しがいいです。

もっとも、大沢の湯は混浴とはいっても日中の時間帯に入ってるのは男だけなんでね。女性がいれば話は別かもしれんけど。

温泉からの夕食

そこからは再度自室へ戻り、貴重品一式を帳場に預けて温泉へ行くことにします。

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後々になると次第に面倒になってくるので、温泉に行く前にまずは布団を敷きました。

布団を敷く場所についてですが、部屋の入り口から離れたところにするのがおすすめです。なんでかというと、何度も書いているようにここは木造の建物なので、廊下を歩くたびにそこそこの振動+音が発生するからです。廊下から離れたところに敷けば多少なりともそれがマシになるので、まあ部屋の奥側に敷くのがよさげ。

で、布団を敷き終わったら早速温泉へGO。

最初は内湯である薬師の湯でさっぱりし、その後はさっき見た大沢の湯でまったり。温度については投入口周辺は結構熱めでしたが、端っこのほうにいけば快適でした。

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特に大沢の湯については、6月の新緑を目の前に感じながらの入浴となってとても気持ちよかったです。

川の流れも昨日の雨の影響なのか、水量が多くて迫力があってとても良い。温泉の魅力は季節ごとに異なる良さがあるけど、この時期だとやっぱり「緑」がきれいなことですかね。夕方になると気温も落ち着いてきて、露天風呂の環境が個人的にベストでした。温泉に入っているときは若干熱いけど、一旦外へ出ると気持ち寒いくらい。

さて、温泉に連続で浸かったとなれば、自動的にお腹が空いてくるというもの。

もうすでにかなり空腹気味なので、夕食は予定通り「やはぎ」でとることにしました。

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やはぎのメニュー。これ以外にもあります。

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メニューについては、一般的な定食から酒飲み用のおつまみまで一通り揃っていて、非常に頼りになりました。

今回はビールと一緒に餃子と唐揚げを頼んだところ、唐揚げの量が想像の2倍くらいあって驚きました。これ以外にもいくつか注文する気でいたものの、もうこれだけで腹八分になったので中断。温泉でお腹が空いているのを向こうも理解しているのか、どの品も基本的に量が多いみたいです。

そんなわけで、定食を注文してしっかり食べるもよし、酒飲み中心にするのもよしと、各人の用途に応じたたくさんのメニューがありました。周りの様子をチラ見した感じでは、飲んでる人が多かったような気がします。

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自室に戻る前には、売店でアイスを買いました。風呂上がり+夕食終了時点で身体はかなり火照っており、これを冷ますにはもうアイスしかない。

しかし、今日ここに訪れてからやったことといえば、館内の散策をしてから温泉に浸かり、夕食でビールを飲み、自室でテレビを見つつアイスを頬張る。こんな風に文章にしてみれば自堕落そのものなんですけど、これがとてつもなく楽しい。いや、まさに温泉旅館での過ごし方としては満点じゃないですか。

改めてこの湯治屋の良さを考えてみた結果、各々が自由気ままに行動できる、というのがまさにそれなのではと思います。

湯治屋は素泊まりが基本で、食事は用意されていないし、時間も決まっていないので色々な選択肢がある。温泉についても入れる時間が幅広いので個人のペースで入ればいいし、もちろん自室で昼寝をするのも自由だ。旅館側からは最低限の縛りしか課せられていないこともあって、ここで何をして、どう過ごすかは一人ひとりに委ねられていると言っても過言ではない。

きっちり決まった時間に食事をして、決まった時間に寝る…というのが合っている人には勧められないかもしれないけど、ある種の自由さがここにはある。それを楽しんでみたいという人には、湯治屋はおすすめできるところです。

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その後はちょっと屋外へ出て夕涼みをしつつ、売店で飲み物を買いながら再度温泉へ行ったりしてました。

結局のところ、完全に夜になるまでは自室にほとんど戻らなかったと思います。自室だと周りの音が結構気になったりして(特にテレビの音)、しかも襖戸を締め切っている部屋ばかりではないので余計に聞こえてくる。夜まで待てば結構静かになるので、それまでは自室以外のところで過ごすのが吉かもしれません。

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最終的には何回目かの売店でサイダーを買ってきて、布団に横になりつつ飲むというだらけっぷりをかます始末。逆に後は寝るだけと考えれば、寝る前に羽目を外してあれこれするのもアリなのかもしれない。

あ、夜間の気温についてはこの布団でちょうどよかったです。暑くて布団を知らぬ間に蹴飛ばすということもなく、至って平和に眠れました。

翌朝

むくり。

翌朝は、同じフロアのどこかの部屋の主の足音で目が覚めた。物音を聞く限りだと階下の炊事場に向かったようなので、おそらく朝食の準備にかかったのかもしれません。

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ここにいる全員が湯治目的とは限らないにしても、全員が同じ環境で生活しているので他の人の動向も多少は気になってくるというもの。まあ一夜限りの関係ですけど、他の誰かも自分と同じように旅をしているのかもと考えると、なんか親近感が湧きました。

昔だと、長い期間湯治をしていると自然と近所の人の顔も覚えるようになってきて色々話をしたりする、というのを聞いたことがありますが、これは現代だとあまり味わえない経験でしょうね。まず同じところに何泊もする機会がないし、よっぽど印象深い人ならひと目で覚えるけど。

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で、自分もそのまま一緒に起床し、朝風呂に行ってからやはぎで朝食をとりました。

やはぎの朝食については、おかず類はすでに机の上に準備されており、好きなところに座ればご飯と味噌汁を持ってきてくれます。その流れもスムーズだったので、朝食くらいはやはぎオンリーでもよさげ。

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温泉旅館で過ごす二日間、その翌朝に行う二度寝の快感は群を抜いている。朝風呂をして朝食をしっかりとって、さあこれから活動するぞというタイミングで行う二度寝は本当に気持ちいい。本来やるべきことをやらないで寝るって、なんであんなに気持ちいいんでしょうね。

今回もそんな感じで昼前くらいまで寝過ごしたかったのですが、この後の予定もあるので泣く泣く布団を片付けました。布団の誘惑というのは場所によらず存在しているけど、温泉旅館でのそれは非常に抗い難いもの。自分でも驚くくらいの覚悟を要したのは秘密。

なので、思う存分旅館でだらけたいという場合には最低でも二泊くらいは必要だと思います。少なくとも中日は時間を気にせず一日中昼寝したりできるし、自分もいつかは湯治をやりたいと思っているので、そのときはぜひともそうしたい。

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というわけで、短いですが大沢温泉 湯治屋でのひとときはこれで終了です。

木造旅館、しかも湯治宿として現代に残っている貴重なだけにちょっと緊張したりもしたけど、その居心地の良さにすっかりハマってしまいました。今度は冬の寒い時期に訪れて、温泉にじっくり浸かってみたいかな。

Part 1で述べたとおり、注意すべき点はいくつかあるものの、なんといっても宿泊料金そのものは非常に安いです。全体的に時間の流れがゆっくりとしていて、肩の力を抜いて気軽に楽しめる旅館。それが湯治屋の特徴であり、良さでもあると感じました。

湯治の雰囲気を味わってみたいという方は、ぜひ泊まってみてはいかがでしょうか。

おしまい。