【テント泊登山 小池新道~双六岳~天空の滑走路~槍ヶ岳】夫婦で登る夏の北アルプス西鎌尾根縦走

今回は夫婦で北アルプスを登ってきた話。

妻も自分と同じく登山を趣味としており、好きな山は日本を代表する名山である剱岳や槍ヶ岳。夫婦で山に登る上で擦り合わせが必要な要素は多いものの、同じ行程を一緒に歩き、同じ景色を見られるならそれがベストです。

まずは日帰り登山からということで今までに旧中山道、御在所岳周辺、四国の剣山、中国地方の大山、北アルプスの蝶ヶ岳などを一緒に登ってきて、そろそろ泊まりで槍ヶ岳に行きたいねという話になったのでお盆の時期に行ってきました。

もくじ

1日目:新穂高温泉~双六小屋テント場

行程としては以下の通り。妻希望の「双六岳」と「槍ヶ岳」をメインに、最短距離で回れるように行程を組みました。北アルプス随一の名所なだけあって鉄板のルートだと思います。

  • 1日目:新穂高温泉~小池新道~鏡平~双六小屋(テント泊)
  • 2日目:双六小屋~双六岳~西鎌尾根~槍ヶ岳(テント泊)
  • 3日目:槍ヶ岳~槍平~新穂高温泉

出発・下山地点を新穂高温泉にするか上高地にするかで迷いましたが、お盆の上高地は本当に混雑するのでやめました。というか上高地の人の多さに辟易して以来、上高地を訪れたことがない。あと最大の懸念点であった新穂高温泉の駐車場空き問題については、結果的に新穂高第3駐車場P5(無料)を利用することができました。盆休み連休とはいえ我々の登山前日が大雨で、中止する他グループが多かったようです。

しかし、私が登山をメインでやっていた時期よりも今は登山者の数自体が多いように思えます。また登山環境も大きく変化していて場所によってはテント泊なのにテン場代が数千円かかったり予約必須だったり、駐車場も予約しないと利用できなかったり。「今週末は天気良さそうだから登山行くか!」という軽いノリでは行きづらくなりました。

深夜の新穂高温泉

というわけで1日目は日の出前に新穂高温泉を出発し、昼過ぎに双六小屋のテン場に無事到着。上りオンリーな道は余計なことを考えなくていいので精神的に楽だ。道中では下山する人が案外多く、世間一般の盆休みに入る前から登っていた人が多数みえました。

天気の方はややガスり気味の曇り空。まあ明日は晴れるみたいだから期待しよう。

夕食のカレー

比較的早い時間に到着できたおかげで、我々はテントを寝やすい平地に張ることができました。これが15時着とかになると空いている場所を探してなんとか張る必要があって大変。

で、テント泊の場合はテントを張ってからが暇になります。嫁と明日の行程の話をしたり昼寝をしたり、他の人がどんなテントを使っているのかを見に行ったりして過ごしました。最終的には夕食を食べて早い時間に就寝。テン場には高校の登山部の団体もいて、賑やかだったと思います。

今回の装備については、各自の必要携行品に加えてテント、ポール、グランドシート、朝夕の食事一式、コッヘル、ガス缶などを自分が持ちました。改善点があるとすれば12食分(4日分)のアルファ米とレトルトが想像以上にスペースをとってしまった点。結果的に食料は2泊3日分あれば大丈夫だったけど、アルファ米はともかくとしてレトルトは案外重いしかさばります。2人分の食料を運搬する大変さがここにきて身にしみました。

2日目:双六岳~西鎌尾根~槍ヶ岳

むくり。

山の上で早朝3:30に起床して早速準備をする。平地と違ってここは標高が高いため気温が低く、ひんやりとした空気のなかの目覚めとなりました。布団ではなくシュラフ+マットで寝るという体験を久しぶりにしましたが、日中の疲労感のおかげでむしろ平日よりも熟睡できたような感じ。

この日はまず双六小屋から西へ向かって双六岳で日の出を迎え、Uターンして西鎌尾根を通って槍ヶ岳まで向かいます。獲得標高的にも昨日よりは比較的楽です。

双六小屋から双六岳山頂まではコースタイムで1時間ほど。大きな荷物はテントに置き、身軽になって出発しました。

途中ではテン場で見かけた高校生の一団と遭遇したりして、各々の行動開始時間が平地とはまるで異なることを実感する。日の出目的にしろそうでないにしろ、山ではみんな早起きですね。

双六岳山頂(標高2860.4m)で迎える最高の朝。

澄みきった空気のなか青空が次第にオレンジ色になっていき、まばゆいばかりの太陽が東の稜線から顔を覗かせる。標高3000メートルで迎える朝は何よりも気持ちがいいものとなりました。山の上で得られる体験はどれも特別なものだけど、快晴の朝のタイミングはなおさら印象的だ。

鷲羽岳・水晶岳方面
笠ヶ岳・乗鞍方面
天空の滑走路
双六小屋に帰還

北アルプス全体に朝がやってきたことを全身で体感しつつ、道を戻って双六小屋方面へ。

この日泊まることになる槍ヶ岳山荘のテン場は予約制ではないため、早い時間帯に到着しないと埋まってしまう可能性がありました。そうなると槍ヶ岳から少し下った殺生小屋のテン場に行くことになって面倒なので行程を急ぐことに。

双六小屋への帰路では、天空の滑走路と呼ばれる場所の景色が本当に美しかったです。幅の広い稜線になだらかな丘が槍ヶ岳に向かって伸びており、その名の通りにまるでここから空へ飛び立てそうなほど。実は双六岳に今回行こうと思った最大の理由が、今年のカレンダーに載っていたこの景色を見るためでした。カレンダーの写真よりも実物の方が圧倒的に綺麗だ(妻談)。

※双六小屋から三俣蓮華岳方面へ向かうルートは巻道ルート、中道ルート、稜線ルート(双六岳経由)の3つがあって、天空の滑走路は稜線ルートの途中にあります。最初の2つよりも標高が高いところを通過するため眺めが良いというわけです。

双六岳からは槍ヶ岳・奥穂高岳はもちろんのこと、南方面の笠ヶ岳・焼岳・乗鞍や北方面の鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳方面も一望できて眺めが本当に良すぎる。ここまで登ってきたという達成感と絶景が同時に得られるのが登山の良いところだな。

鏡平・新穂高温泉方面
赤岳と硫黄尾根

ここからは樅沢岳や左俣岳を経由して槍ヶ岳へ至る道・西鎌尾根(裏銀座ルート)を歩いていくことになります。

昨日のルートと明確に異なるのは細かなアップダウンが連続する点で、登ったあとに下る箇所が多いため疲労感が溜まりやすいこと。普段よりも休憩を多めにとるなど工夫が必要でした。また道自体も細くてすれ違いに注意がいります。ただ体感的には表銀座ルートである東鎌尾根よりは楽かな。東鎌尾根は複雑なはしごの連続が多くて体力を削られる。

西鎌尾根を引き続き歩いていく。

途中の左俣乗越までは軽いハイキングといったところが、千丈沢乗越までの区間で徐々に岩場が増え始め、千丈沢乗越から槍ヶ岳までは一気に標高を上げる急登区間になります。最後の最後でしんどくなるため余力を残して歩く必要あり。

千丈沢乗越から30分ほど歩いた地点でアクシデントがあり、先行して指示を出されていた登山者の方によると人が滑落したためヘリを呼んでいるとのこと。マジか。

滑落距離自体は3mほどで無事だったものの、ヘリからの救急隊員降下及び救助者回収のため登山道が一時的に通行止めになりました。しばらく待っていると新穂高温泉方面から岐阜県警察の山岳救助ヘリコプター(Bell 412EP JA110G)がすっ飛んできて隊員を下ろし、確認中にヘリは一時退避。その後またヘリがやってきて二人を回収して飛び去っていきました。

こういう場面に遭遇すると、登山でもっとも重要なのは"安全"だと改めて感じられる。幸い今まで登山中に怪我や事故にあったことはないものの、年齢的にはこれから体力が衰えていく一方なので他人事ではない。時間や景色よりも安全には気をつけようねという話です。

槍ヶ岳山荘
槍ヶ岳(標高3180m)

千丈沢乗越からの最後の登りがしんどすぎて絶望しながらも、なんとか登りきって槍ヶ岳山荘に無事到着。時間は11時前で、まだテン場の空きがあって一安心できました(といっても空きはあと数箇所のみ)。

呼吸を整えて山荘の前から見上げてみると、そこには雄々しい槍ヶ岳の姿が。

いやー…槍ヶ岳はやっぱり最高ですね。その存在感は北アルプスの中でも際立っていて、青空に槍を衝く形状は唯一無二のもの。登山趣味をはじめた人間で、槍ヶ岳に登ってみたいと思わない人はいないと思う。朝早く出発したおかげで、悪天候に見舞われることもなく快晴のまま槍ヶ岳に到達することができました。

槍ヶ岳山荘のテン場。すでにほとんどが埋まっている
昼寝しようと思ったら暑い

さっさとテント設営した後は山荘前のベンチで休憩タイム。槍ヶ岳ブラックキーマカレーをいただきながら昨日からの行程に思いを馳せてみる。

なお2026年は槍ヶ岳山荘創業100周年記念ということで、宿泊者には数量限定のオリジナル手ぬぐいがプレゼントされます(宿泊者限定でオンライン含め販売は未定)。そのため妻はどうしても今夏に槍ヶ岳山荘に宿泊したかったらしく、この日は妻は山荘泊、私はテント泊としました。従って妻は宿泊場所が予約済みで急ぐ必要がないのに対し、私の方はテン場の空きが死活問題だったわけです。

あと食料については差別化を図るのが面倒だったため、朝夕ともにアルファ米+レトルトにしてします。昨夜の夕食と今朝の朝食がどっちもカレーだったのに、気がついたら昼食でもカレーを注文してしまった。まあカレーは何食食べても飽きがこないからいいか。

展望テラスから槍沢方面を見る
槍ヶ岳の陰
上から観た西鎌尾根
日が傾くにつれて槍ヶ岳の印象も変わる

結局のところ槍ヶ岳山荘到着から夕方の時間帯はほとんど山荘前で過ごした中で、印象に残るイベントがありました。

まず双六小屋から槍ヶ岳までの区間において、数日前からスタートしているTJAR(TRANS JAPAN ALPS RACE)の選手たちと大勢遭遇できたということ(約10人と遭遇)。選手はにこやかな方ばかりで、道を譲った際に快く挨拶してくれるなど素敵な感じ。ここまでの時点で剱岳の早月尾根~立山~薬師岳~西鎌尾根を越えてきているわけなんだが…あまりにも怪物すぎる。槍ヶ岳山荘は休憩場所の一つになっているため、選手到着時に出迎えるファンの方々も多かったです。

次にオーダーメイドスーツで登山することで有名な某社長にもお会いできました。今回はご家族での登山で、槍ヶ岳真下の殺生小屋に一泊される様子でした。「スーツと革靴で登山している人がいる」という情報自体は知っていたものの、いざ実物を見るとインパクトが大きい。

また、先日の大雨で中房温泉に至る県道が通行止めになったという情報を隣に座っていた人から聞きました。確かに我々が新穂高温泉に前泊する日に高山周辺で豪雨にあったため、おそらくそのことだと思います。中房温泉といえば燕岳や大天井岳に至る表銀座ルートの玄関口。盆休みに縦走を計画していた人にとって多大な影響があったのは言うまでもない。結果論とはいえ、道路が比較的大きくて整備されている新穂高温泉を起点に選んだのは正解でした。

地上は雲海に覆われている
槍ヶ岳と小槍
槍ヶ岳山荘に到着したTJARの選手

夕方の時間帯には、妻がおすすめする槍ヶ岳お気に入りスポットでのんびりしてました。

ここからは西鎌尾根をはじめとして槍ヶ岳から西に位置する山々がすべて一望できます。あれだけ登り下りが多かった西鎌尾根も、広大な北アルプス全体とセットで眺めてみるとなだらかな稜線にしか見えないのが不思議だ。自分が今いる一帯が険しい飛騨山脈のほんの一部ということがよく理解できる。

また昼間から多少ガスることはあったものの、夕方には再び青空が戻ってきてくれました。夏の北アルプスというと午後になればすっかり雲で覆われるイメージがあり、稜線や山頂がここまですっきりと晴れ渡ってくれるとは正直思ってなかった。おかげで最後まで清々しい気持ちでいられたし、これも晴れ男×晴れ女の相乗効果が為せる業なのかもしれんな。運が良い。

雲海の向こう側に日が沈み、マジックアワーがやってきた。この感動的な展望を夫婦一緒に見ることができたことに感謝したい。

3日目:槍ヶ岳~槍平~新穂高温泉

翌朝。今日はこのまま槍平を経由し新穂高温泉に下山して終了となり、急ぐ必要は全くなし。落ち着いて朝の準備を済ませる。

行程後半は台風の進路変更の影響があって、少し前までは晴れる予報だったのが、最新予報では今晩から明日朝にかけて強風及び雨になっていました。上でもう少しゆっくりしたい気持ちもありましたが、この状況下で稜線沿いに滞在するのはリスクが大きい。安全側にみて予定通り下山します。

槍ヶ岳に登頂
新穂高温泉に下山
駐車場に戻ってきた

まずは槍ヶ岳に登った後、一気に標高を下げて昼過ぎに新穂高温泉に下りました。3日間の登山おつかれ山!

下山後はひがくの湯で3日分の汗を流し、併設されている登山者食堂で「登山に味噌煮かつ定食」を食べて帰路につきました。やっぱり登山後の温泉&ドカ食いは最高だ。

登山道の下りは脚の疲れが大きいのと明確な目的地がないため個人的に苦手で、槍ヶ岳~新穂高温泉までの区間で言うと白出沢出合(林道終点)からは完全な虚無。ソロであれば黙々と歩き続けるしかないところ、グループだと会話しながら歩けるのが楽しいです。話しながらの歩きは疲労も多少軽減され、気分もあまり落ち込むことがない。

ソロ登山にはソロ登山の良さがあり、グループ登山にはグループ登山の良さがある。それが自分と同じ登山趣味の妻ならなおのこと楽しい。これからもタイミングをみて夫婦登山を継続していきたいです。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマークやシェアをしていただければ嬉しいです。

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