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【岐阜県を走る7】酷道157号・温見峠をロードバイクで走破せよ 下見編

岐阜県内を走った記録7です。

【訪問日:2020年5月4日】

酷道157号

【岐阜県を走る】第7回目は、第5回目以来の"酷道"関連です。

何も意図的に酷い道ばっかり走ろうとしているわけではなく、岐阜県内で走ってみたいところをざっと挙げてみると酷道とか険道が多い、というだけなので…。

今回の目的地は、石川県金沢市から福井県大野市を経由して岐阜県岐阜市に至る国道157号

総延長約200kmのうち大部分は一般的な国道なのですが、大野市熊河から本巣市根尾能郷までの区間は乗用車でもすれ違い困難な狭路が続きます。また福井・岐阜県境の温見峠を挟んだ山間部はいわゆる「酷道」であり、狭路、落石、崩壊、ガードレールやカーブミラーの未整備など盛りだくさんな要素に加え、道路上にいきなり川が出現する洗い越しが全国的に有名です。

こんな情報を仕入れたからには是非とも自転車で走ってみたい…と思うのは当然なのですが、下記のような注意点があります。

  • そもそも冬季閉鎖区間が長く、1年のうちに通行できる期間が非常に限られている
  • 温見峠周辺は非常に災害に弱く、すぐに工事通行止めになる

特に後者は2020年現在でも災害復旧工事が続いているため、結果から言うと酷道区間は通行できません。

え、じゃあこの記事はもう終了じゃないかって?

そこでですね、いつか走れるようになったときのための下見も兼ねて、合法的に酷道区間の"周辺"を走ってきました。

※追記:開通したので走破してきました。

根尾能郷

ここは国道157号"酷道"区間の岐阜側の入口である、本巣市根尾能郷です。

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実はこの集落に至るまでも「本当に国道か?」と思えるくらい道が狭い箇所がちょくちょくあったりして、このときは自動車で訪れただけにかなり怖い思いをしました。

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で、このゲート。

「何が何でも通さないからな」とまるで威嚇しているような堅牢ぶりで、崖側や山側も完全に封鎖されています。自転車・歩行者も通り抜けできませんとわざわざ書いてあるあたり、どうやら過去に通り抜けようとした人がいるようです。

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看板の内容を確認してみましょう。

  • 冬期間通行止 区間:本巣市根尾能郷~本巣市根尾黒津、期間:自令和元年12月13日~至令和2年4月9日
  • 全面通行止 対象区間:本巣市根尾能郷~温見峠(福井県境)、対象期間:平成30年7月8日~終了日未定
  • 道路をなおしています 令和2年6月30日まで、時間帯8:00~17:00

情報量が多すぎる。

訪問日の時点で4月9日は完全に過ぎているため「冬期間通行止」は解除されているとして、左側の「全面通行止」がこの閉鎖の理由であることが確定しました。悲しいのが終了日未定の文字で、これが書いてあると実質的に未来永劫通れない可能性が高いみたいです。

しかし、ここにはもう一つの道が示されていました。

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今私がいるのが根尾能郷、そしてこのまま国道157号を直進していくと温見峠に至るわけですが…なんか右側の方に迂回路っぽい道がありますね?

そうです。上大須~折越林道を経由すればこの根尾能郷ゲートを通らなくても温見峠まで行くことができるのです。もっとも、こうして明確に全面通行止と明示されているため、あくまで国道157号との分岐までしか行けませんが、それでも酷道の""匂い""だけでも感じることができるのではないでしょうか。

というわけで早速出発。

折越峠を超えて冬季無人集落へ

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ここは樽見鉄道の終着駅である樽見駅。

【岐阜県を走る】第4回目で目的地だったこの駅が今回のスタート地点となります。

天気はあいにく若干の雨模様で少々冷え込んでいますが、快晴よりはいくぶんマシでした。なぜかはこの後分かります。

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迂回路の入口までやってきました。

まずは国道418号と県道255号線との分岐にあるこの東板屋から上大須まで、板尾東谷川沿いにゆるゆると上っていきます。

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このあたりは現在では多少の集落が残っているものの、寂しい風景が続いています。

たまに川沿いで釣りしている人がいるくらいで基本的に無人、聞こえてくる音といえば川のせせらぎだけという静寂っぷりでした。

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入口から約13km、上大須に到着。

そのまま真っすぐ進んで上大須ダムに行くところを左折して川の右岸に渡ると、折越林道に入ります。こちらに設置されている看板の表示も根尾能郷ゲートに設置されているものと同様、全面通行止の区間は「根尾能郷~温見峠」でした。つまり折越林道は普通に通行できるわけですね。

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林道に入ってからは林道の中間に位置する折越峠まで300mくらいの上り。峠からは当然ながら下りとなります。

林道自体の道路幅はそこそこ広く、路面もアスファルト舗装なので特に問題なく走行可能です。ただしカーブが多いにも関わらずカーブミラーのない箇所が複数あり、落石や枝も多少落ちていたりするので油断は禁物といったところ。

「クマ出没注意」の看板もそこかしこにあるので正直気が気じゃない…。

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先ほど国道157号は洗い越しが有名と書きましたが、このルートでも数箇所それっぽい場所を楽しむことができます。

ルートとしては左折なのですが、これを見てしまったからには右に行くしかない。

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イエアアアアアアアア!!!(狂喜)

なにこれ楽しすぎる!

思いっきり水流れてるし、道路上とはいえ深いところだと水深15cmくらいあるしでテンション上がりまくり。そのまま走ろうとしたらホイールを若干持っていかれそうになりました(あと苔で滑る)。でも歩きだと靴がびしょ濡れになるし、洗い越しに遭遇したら迷わず駆け抜ける方が正解かもしれません。

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しばらく下って見えてきたのは、越波(おっぱ)という冬季無人集落(旧越波村)です。

neooppa.wixsite.com

冬季無人集落の名の通り、折越林道が冬期通行止めになる例年12月中頃~4月中頃は集落から人が消え、暖かくなるとまた人が戻ってきて生活されているとのこと。実際に今回の訪問時も、いくつかの家で作業されている方がいらっしゃいました。折越峠ヒルクライム中に度々軽トラ等に遭遇したのは、実は住民の車だったわけです(めっちゃスピード速くて怖かったのは内緒)。

【岐阜県を走る】第3回目で登場した仲越集落しかり、この付近にはそのような生活方式をとっている集落が点在しているようです。

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付近一帯は豪雪地帯のため、冬季の間に積雪で建物がへしゃげないように家々にはつっかえ棒が取り付けられています。他人の家なのでまじまじと見るのは失礼な気がするけど、なかなか見れない光景なだけに興味はつきません。

下界との交通路としては先ほど通ってきた折越林道しか存在しないわけで、あれが寸断されたら孤立するしかない立地なんですよね。と思って調べたところ、1959年の宮古島台風や伊勢湾台風により大きな被害を受けたことをきっかけに多くの住民が集団離村されたとのこと。現在で登録されている人口はなんと2人だそうです。

酷道157号へ向かう道

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そんな越波集落を後にして、折越林道と国道157号へ繋がっている猫峠林道及び市道との三叉路に到着。

この三叉路から国道157号へ向かうルートとしては2つあって、

  • 西方面:猫峠林道(猫峠)経由で根尾大河原へ接続
  • 南方面:市道黒津越波線経由で根尾黒津へ接続

もちろん両方走ってみます。

まずは目の前を流れる川の下流に向かって市道黒津越波線を流してみることに。

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道としては多少の落石があるものの、舗装されてるので走行は楽。というかもはや「舗装されてるかそうでないか」で道を判断しているあたり、酷道に染まりきっている気がしなくもない。

さっきの三叉路から4kmほど下り基調な道を走ると、国道157号に沿って流れている根尾西谷川に合流します。対岸に確認できるのが国道157号ですね。白いガードレールくらいしか確認できないけどどうやらあれっぽい。

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国道157号を眺めながらしばらく南下し、がっしりとした橋を渡って根尾西谷川の右岸に渡ると根尾黒津集落に到着です。

根尾黒津集落も先ほど通った越波集落と同様に冬季無人集落らしいのですが、こちらは確認できた家屋が数軒しかないことから規模は小さめのようです。

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で、これが根尾能郷方面のゲート。

ゲートと呼ぶにはあまりに頼りなく、単にロープが結ばれているだけです。ただしロープの向こう側の道路状況を見る限り落枝が多く、かなり長い間人が通っていないような雰囲気でした。

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こちらが根尾大河原方面のゲート。

左方向が思いっきり空いているので、市道経由からなら車でも来れそうな気がしなくもない。というか国道157号の路線番号案内標識(通称おにぎり)の経年劣化っぷりがヤバいんですが…。なんでこんなボロボロになってんの。

このまま根尾大河原まで進むわけにもいかないので、一旦さっきの三叉路まで戻ります。

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はい。戻ってきました。

気を取り直して次は猫峠を走って国道157号まで向かってみます。

これがなかなかのキツさで、距離は短いものの斜度は終始10%オーバー。今日が快晴でなくてよかったというのは実はこのことで、今回のルートを走るとなると集落含めて補給は全くできません。夏場だと一気に脱水症状になりそうなので、気温が低い季節や時間帯にささっと抜けてしまうほうがいいです。川はすぐ近くにあるのでクールダウンは簡単にできるけどね。

楽観視してボトル1本だけで行って若干後悔した。

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(猫峠からのダウンヒル中に猿×2とタヌキ×1に遭遇して焦った)

というわけで根尾大河原に到着です。ざっと見渡してみましたが、根尾能郷や根尾黒津とは異なり現在では根尾大河原周辺に民家はないようです(Googlemapでは大河原集落跡とある)。

ちなみにですが、根尾大河原から温見峠までは単純距離で約9kmしかないため、目的地はもう目と鼻の先と言っても過言ではないです。

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根尾黒津方面のゲート。

これまた思いっきり右側が空いている。なんか意図的に移動させたような置き方になってるけど、実を言うと猫峠からのダウンヒル中に根尾黒津~根尾大河原間を走っている車を3台ほど見かけた。そういえば根尾黒津のゲートも実質空いてたし、地元の方で山菜採りに来ているのかもしれないが、車が通れるくらいには道路状況は良好っぽいです。

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で、問題の温見峠方面のゲート。

これを見る限り「全面通行止」の文字はないため、冬期間通行止が終われば通れるのでは?と思ったりもしたけど、実際のところどうなんだろう。

完全に封鎖されているような置き方ではないので通ろうと思えば普通に通れるものの、単純に「猫峠林道経由で温見峠を通ろうとするやつなんていないから根尾能郷ゲートの表示だけで十分だろ」という考えがあるのかもしれない。

まあグレーゾーンと言ったところか。

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それにしても心細くなる場所だ。

山と川以外に何もない。立ち止まっていると野生動物に襲撃されそうだし、クマも怖いしで早々に退散することにしました。

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猫峠を再度ヒルクライムして越波集落に帰還。

ずっと一人で人の気配がまったく無いような深山幽谷をひた走ってきて、人がいる集落をこれほど待ち望んだことはない。たとえ無人だったとしても、補給ができなかったとしても、民家を見るだけで安心できるから不思議。

人の営みを実感できるってやっぱり素晴らしい。

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精神力を補給したのでそのままの勢いで折越峠ヒルクライムをし、上大須まで戻ってきた。

ここまで来ればもうヒルクライムポイントはないので安心できる。

夕焼けの終着駅で

今日の行程で出会った風景を思い返しながら自転車を走らせ、気づけばスタート地点の樽見駅まで戻ってきていた。

このまますぐに帰るのももったいないし、せっかくなので自転車を停めてゆっくりすることに。

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駅に着いたタイミングで車両が入線してくる。

そういえば今日の最初に出発するときにもちょうど同じ状況になったし、意図的じゃないことを考えても間が良すぎる。単なる偶然に過ぎないとは思うけど、今日あれだけ"濃い"時間を過ごした上でのこの状況なのだから何かを感じずにはいられない。

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樽見駅には相変わらず誰もいないし、鳥の鳴き声しか聞こえてこないくらいには静寂に包まれている。

駅の待合室で休みながら改めて今日のライドについて思い出に浸ってみた。林道のことや集落のこと、そして酷道のこと。極めて短時間の訪問だったにも関わらず、道にまつわる沢山の体験ができた。特に越波集落については名前だけは知っていたものの、実際に集落を訪れてみてあんな山奥に大規模な集落があることに驚いたし、季節によるとはいえ今でも人が住んでいることがなんだか非日常に思えてきた。

ライドを通じてその土地の時間の流れや歴史を感じられるような一日になって本当によかったと感じる。

おわりに

当初は酷道157号の下見として計画した今回のライドは、結果的に山間部の集落を巡る形になってました。【下見編】と銘打ったはいいけど、おそらくだけどあの通行止めは当分解除されないような気がするので、現時点で走れるところを走れたというだけでも満足としたい。

いずれは温見峠を超えて福井側に走っていきたいと考えています。