- Part 1:上高地~涸沢~穂高岳山荘
- Part 2:穂高岳山荘~奥穂高岳~ジャンダルム~西穂高岳
むくり。
この日起きたのは午前3時30分。
疲労回復のために昨夜は20時頃には就寝し、途中何度か目が覚めたものの比較的よく眠ることができました。耳栓を持っていったことが功を奏したのかもしれません。ジャンボフェリーや夜行バスなど、他の方がいるような場所で寝る際には耳栓が必須だと思ってます。
防寒着を着込んで外へ出てみると満点の星空。登山には三脚を持っていかないので写真は撮れなかったものの、「雲ひとつない空一面に星が散らばっている」という言葉の通りの絶景でした。これは山に登った人でないと分からない感動。
奥穂高岳からみる朝日
今日の行程はまず奥穂高岳(3,190m)の頂上で朝日をみるところからスタートです。日の出の時間はだいたい5時30分前後なので、それまでに頂上につけるように時間調節をしてから出発をしました。
穂高岳山荘から奥穂高岳頂上まではおよそ30分~40分ですが、最初のはしご場付近で渋滞が起こるので少し早めに出発。
登り始めたときはまだあたりが真っ暗だったものの、登っている途中でかなり明るくなって行動しやすくなりました。
頂上で日の出を待つこと20分。
日が昇ってきました!
雲がないおかげで展望は最高、360℃あらゆる方向を遠くまで見渡すことができます。富士山も確認できました。
北を見れば槍ケ岳だけでなく立山まではっきりと見える。
天気がいいのを数日前・前日と確認してきたのでこの展望は予め予想していたとはいえ、ここまでシチュエーションがいいと自然と笑みがこぼれます。
西に見えるはこれから向かうジャンダルム。朝日に照らされて明暗がくっきりついているのが印象的。
ジャンダルムは西穂高岳方面から見るとイマイチ急斜面間がないので、断崖絶壁っぷりを実感するには奥穂高岳から見るのが一番です。ここからあの危険なところに行くのか…という決意が固まります。
岩稜帯ルートのはじまり
日の出も無事に迎えることができたので、今回の山行のメインイベントである岩稜帯登山を始めたいと思います。
このルートを歩く上で気をつけなければならないポイントをいくつか挙げてみました。
- 人とのすれ違い
- 落石
- 滑るザレ場
個人的な意見としては、この3つにさえ注意していればこのルートはあまり危険ではないと判断します。
まず1つ目の「人とのすれ違い」については、このルートはそもそも道が一人分しかない箇所がほとんであるため、反対側から来た人とのすれ違いに苦労します。
すれ違う際にバランスを崩して滑落という状況は十分考えられます。なので、対向者がいる場合は早めに発見し、すれ違う場所をしっかり認識しておくことが大事だと思います。
次に2つ目の「落石」ですが、これも他の登山者がいる場合に大きく影響してきます。後述するように全行程通して道が非常に滑りやすく、足の置き方が悪いと簡単に落石が発生します。
また道そのものもほぼ垂直か、あるいは非常に角度がついているため、発生した落石はかなり下まで転がっていきます。自分一人で歩いている場合はあまり影響はありませんが、他の登山者がいるときは話は別。
自分が落石を生じさせないように、また位置的に自分より上にいる人による落石に十分配慮する必要があります。
最後の「滑るザレ場」については、これはもうザレ場での歩き方を習得するしかないと思います。場所によっては足を滑らせる=死なので、適当な岩場で経験を積んでからここにチャレンジするのがいいのかなと。
日の出の時間帯は奥穂から西穂方面に向かう人は比較的少ないため、早い時間にさっさと出発するのがいいと思います。というのも奥穂からジャンダルムをピストンする人はかなり多く、落石の危険性を減らすだけでなく混雑を避けるためにも人がいない時間に歩くのは重要です。
というわけで出発。
奥穂側からスタートする場合、難所の馬の背と呼ばれるナイフリッジを最初に通ることになります。
特に下りで使うことになるため高度感は抜群。左右が切れ落ちているので眺めも非常に良いです。ホールドとなる岩角はあちこちにあるので、しがみつきながら進めば大丈夫です。
続いて「ロバの耳」の最低鞍部まで一度急降下。
ロバの耳というのはジャンダルムの向かって左手前にある崖みたいな場所です。最低鞍部への下り、さらにそこからジャンダルム周辺へ登る道の両方がほぼ垂直となっているため、特に落石には気をつけなければなりません。
ロバの耳を登りきればジャンダルムは眼の前です。ここからぐるっと左方向に回り込み、飛騨側から頂上へ向かうのが正規ルート、写真にも映っていますがまっすぐ登るのが直登ルートです(こちらはペンキマークなし)。今回は安全のため前者を選択しました。
ペンキマークはいたるところにあるので道に迷う心配はないです。
ジャンダルム(3,163m)の頂上に到着しました!
天気が良すぎる件について。
登山ではこれ以上の条件はないというくらいドピーカン。台風一過後の天気がこれほどまでに素晴らしいとは。
なお偶然なのか運命なのか、昨夜にゆるキャン△第二期&劇場版の制作決定の発表があり、奇しくもゆるキャン△のサイクルジャージを着ての記念登山という形になりました。
【ゆるキャン△重大発表】
遂に、「ゆるキャン△」続編製作が決定しました!
第一弾:ショートアニメ「へやキャン△」
第二弾:TVアニメ第二期「ゆるキャン△」
第三弾:映画「ゆるキャン△」
これからも、ゆるキャン△をよろしくお願いします♪https://t.co/4DVsJBSRWM#ゆるキャン pic.twitter.com/HxHgJ6rn9S— TVアニメ「ゆるキャン△」公式 (@yurucamp_anime) 2018年10月7日
こちらも続報が楽しみ。
なお山頂には続々と後続の登山者が登ってきて、ほとんどの方が直登ルートを選択されていました。話を伺うと「そう何度も来れる場所ではないので、記念に」とのことでした。次回の訪問時は私も直登ルートにチャレンジしてみたいと思います。
西穂高岳までの道のり
山頂には40分ほど滞在し、景色も十分満喫したのでそろそろ西穂高岳に向けて縦走を再開します。
奥穂側から見ると切り立った急斜面が確認できるジャンダルムも、飛騨側から見るとちょっと高いピーク程度にしか感じません。西穂側から登ってきた場合どれがジャンダルム本峰なのかわからなくなりそうです。
ルートとしては奥穂高岳~ジャンダルムよりも、ジャンダルム~西穂高岳までの方が疲労度も危険度も上だと思います。
特にガレ場が多く、鎖が設置されている急斜面も随所に登場するため体力を消耗しやすい道と言えます。ザックを下ろして休憩できるような場所は少ないため、ハイドレーションを活用するなどして歩きながら休むスタイルをとったほうがいいかもしれません。
左手には常に岳沢/上高地方面を見渡すことができます。特にこの季節は紅葉がよく見えます。
しばらく歩いて岳沢小屋方面への分岐がある天狗のコルに到着。
以外にも岳沢小屋から登ってくる人は多く、ここで数人のメンバーとすれ違いました。ちなみに岳沢小屋から天狗のコルまでのコースタイムは3時間です。
天狗のコルを出発していきなり直登の鎖場が登場する以外は、ここからの道のりも今までとあまり変わりません。
天狗のコルから先、西穂高岳までは天狗岩/間ノ岳/赤岩岳と、小さいピークが連続します。そのたびに鞍部へ下ってまた登って…というルートが続きます。行程的にも半分を過ぎたあたりになり、疲労が出始める頃になるので、必要なら休憩を多めにとったほうがいいでしょう。
そこからしばらく進むと本日第二の難所が待っています。
ここは逆層スラブと呼ばれている場所。
平らな石板のことをスラブと呼び、このスラブが足をかけにくい角度に並んでいる急斜面のことを逆層スラブというそうです。ここ天狗岩の逆層スラブは約50mの長い鎖を補助に上り下りをすることになります。
かなりの急斜面な上、岩が平坦なので足をかける場所があまりありません。なので鎖を有効活用する必要があります。
今回のように下りで使う場合、晴れの日で岩が乾燥していればしっかりと摩擦が効いてくれるものの、雨が降ってたら絶対に通りたくない場所に変貌します。
西穂方面からの登りで使う場合は、落ち着いて登れば特に問題ありません。
逆層スラブを超えても油断ならない場所が続く。
ここでは「登った分だけ下る、下った分だけ登る」のがデフォルトなので、下りばかりで喜んでもいられません。急斜面を下るということは、すなわち急斜面を登るということに他ならない。
岩場を登る際はとにかく三点支持をしっかり守る、ステップ幅を小さくするなど、一歩一歩の安定性を確保するのが大事です。
西穂~奥穂間の面白いところは、各ピーク毎にゲリラ的なビバークポイントが存在することです。どれもテント一張り程度のスペースしかないものの、天候さえ大人しければ大いに活用できます。でもこんな風が強そうな場所でビバークするのはできる限り避けたいところですが…。
もう何回急斜面を上り下りしたか分からないくらいな状況に陥りつつも、西穂高岳まであと一歩のところまで来ました。右手奥に見えるのが西穂高岳の山頂です。
赤岩岳の頂上から奥穂高岳方面を振り返って1枚。
岩場だらけの縦走も一段落つきました。
西穂高岳の頂上はご覧の通りかなり人が多く、ゆっくり休憩するのは難しいところがあります。
なので、奥穂高岳から来た場合は手前の赤岩岳の頂上で休憩されることをおすすめします。ほぼ人がいない上に展望もよく、さらに頂上には十分なスペースがあるのでザックを下ろしてゆっくりすることが可能です。
前回と同じく、今回もここで昼食を取ることにしました。
今回のお昼は、穂高岳山荘で購入したお弁当(¥1,000)。中身は飛騨名物の柿の葉すしでした。これに鶏肉の天ぷらと鮎がついてきます。
久しぶりに行動食以外を登山中に口にできるだけでも幸せなのに、味も非常に美味しい。疲れているからか余計に美味しく感じますね。
西穂高岳からの下りもハード
お昼を食べ終えて、西穂高岳(2,909m)に登頂。
今日の行程もそろそろ終盤になりました。
ここからは新穂高ロープウェイの駅までひたすら高度を下げていきます。
西穂高岳にたどり着いたことで二人とも完全に下山後モードに入ってますが、西穂高岳からの下りも一筋縄ではいきません。
今まで通ってきたルートほど難所ではないものの、岩場や鎖場、ガレ場もちょこちょこ登場します。
こんな感じで登山者の数が一気に増えるので、渋滞という問題も発生するルートとなります。
特に西穂独標から西穂山荘までが混雑してました。
丸山まで下山すればあとはハイキングコースになります。
西穂山荘もえらい混んでました。今日はここに宿泊して、明日西穂高岳へ登頂する登山者も結構いそうです。明日も天気いいみたいだし。
西穂山荘からは下り基調な道を若干走りつつ、新穂高ロープウェイの駅まで向かいます。
ロープウェイ駅に到着。西穂山荘からはおよそ2km、コースタイムは1時間ですが、疲労のため走っても走っても駅につかない(汗)ということになり、最後の方はもう元気が残ってませんでした…。
ロープウェイで麓に下っている途中、ふと西穂高岳方面を見ると、さっきまでは晴れていたのに山頂はすでにガスの中。時間がお昼を回ったところなので、徐々にガスが上がってきているようです。山の天気がいいのはあくまで午前中のみ。
そして新穂高に下山。
五体満足で無事に歩けましたと同時に、あの超濃密な岩との対話のひとときが全て終わってしまったことが非常に切なくなりました。
まとめ
今回初めて同行者と一緒に奥穂高岳~西穂高岳を歩くことができました。
一人でない分、精神的に非常に楽な登山となりました。今まではソロ登山ばかりしていましたが、危険なルートを通る場合はグループ(ソロ以外)で行くほうが安心できます。さらに天候にも恵まれ、紅葉も楽しめるという素晴らしい山行でした。
今回のような岩を満喫するコースはとても好きで、少なくとも一年に一回は歩いておかないと満足できなくなりました。来年も岩場ルートを歩く計画はもちろん立てていて、今までに通ったことがない場所だと
- 剱岳 北方稜線
- 槍ヶ岳 北鎌尾根
- 甲斐駒~鋸岳縦走
あたりを考えています。どれも比べ物にならないくらい難易度が高いルートとなるので、それまでにしっかり経験を積んでからチャレンジしたいと思います。
おしまい。
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