TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

鄙びた旅館を目指して、ロードバイクで四国の山間部を走ってきた Part 1/2

山が多い四国を走り回ってきた話。

【訪問日:2020年10月24日~26日】

人生には鄙びた宿が必要

このところ、風景を目的にロードバイクでがっつり走り回るというよりは、温泉や旅館をメインとした静かな訪問ライドをする機会が多くなってきています。

もっとも、記事にしていないだけで以前からやっていたことではありますが、気温が低くなってくるにつれて「屋内」要素を強めていった方がQOLが向上するのは自明の理。まあ単純にいうと、寒いので早めに宿に到着して、宿での時間の過ごし方を大事にしたいって話です。

今回の舞台は、四国

実は以前から行ってみたかった宿があって、それらを訪問することを中心に行程を組みました。その宿とは、

  • さくらぎ館…徳島県那賀郡那賀町平谷
  • 高知屋旅館…高知県長岡郡本山町本山

の2件。

これらの宿は地図上ではそこそこ離れているように見えるものの、車で移動するほどのものでもないので今回はロードバイクを持っていくことにしました。自転車での移動が「旅」に最適だということはこの一年で学んだことだし、積極的に走っていきたい。

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岐阜から四国まではそこまで距離がないので、いつものように車載で徳島まで移動します。

徳島市に車を置いて、早速ライド開始。朝焼けを浴びたと思ったらいつの間にか青空が顔を覗かせていて、どうやら今日も天気が良さそうな予感。1日が始まっていく中で風を感じながら自転車を走らせていく気持ちよさは何物にも代えがたい。

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徳島市から初日の目的であるさくらぎ館まで行くには、一度阿南市まで南下してから国道195号を西へ進むのが一番スムーズかと思います。直接国道438号→193号の順で走っても到着できますが、結構な山越えをしなくてはならなくなるので195号の方がおすすめ。

しかし、なんかそのまま宿に直行するのは物足りない気分でした(なぜかは自分でもわからない)。そこで、阿南市をさらに海沿いに南下して海陽町を目指し、そこから国道193号を北上するルートにしました。

この記事のタイトルにもあるように、徳島県はとにかく山が多い…のですが、海沿いを走る分にはアップダウンがあまりないので快適に距離を稼ぐことができます。

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というわけで、徳島市から約100km走って海陽町に到着。

さくらぎ館へ向けてヒルクライムをする前に、山要素とは正反対にある要素をここで十分補給していきましょう。

港町・海陽町を散策する

海陽町の面積は思いのほか広く、これから向かう霧越峠の頂上までを含めて内陸部の方がメインとなっている様子。

今回は、海沿いに面した鞆浦という地区を訪れてみました。

というのも、徳島から海陽町までの道のりは国道を選んで走ったこともあって、若干内陸部だったんですよね。なので海沿いを走っていると言いながら実はあまり海を見れていないという悲しみがあったので、じっくりと徳島の海を眺めておきたいという気持ちがありました。

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おお…これだ。

「観光」とは無縁の位置にある人々の生活の場が、飾りっ気なしでそのまま目に入ってくる。やはり自分はこういう場所が好きだ。自分の知らない土地を訪れて、その土地の風景をそのまま堪能する。

別に何が目的というわけでもないけど、初めて見る光景というのはいつ見ても新鮮。

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鞆浦の町並みは港のすぐ近くに形成されていて、ちょっと自転車を走らせて散策するのがちょうどよくて快適そのもの。日もだいぶ上ってきて若干暑くなった身体を波風が冷やしていく感覚がなんとも心地よい。

ここでちょっと自分の旅の方針の話をすると、時間の使い方が実に独特だと常々感じてしまう。自転車を降りて押し歩きしながら堤防沿いを歩くのもいいし、座り込んで海鳥を眺めるのもいい。

ただ目的地を目指して一分一秒を争うようなライドは今までやったことがないし、これからもするつもりがない。ただこうやってルートも決めずに走って、道草を食うライドが自分の性格に合っている。

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当然ながら他に観光客がいるはずもなく、自転車で訪れている人も自分だけ。鞆浦は家々が立ち並ぶ細い路地を抜けて海に出るまでの道のりと、そのときの開放感が本当に印象的なところでした。

霧越峠を越えて往く

さて、鞆浦の町並みを思う存分堪能したところで、ここから先の風景は明後日まで「山」一色になります。

すでに書いたように、今日のところは方角でいうと鞆浦から北上し、霧越峠を越えた先にある宿で一泊するのが目的です。距離としてはあと40km程度しかないので、時間の余裕はたっぷりある感じ。

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霧越峠までの国道193号は海部川という川沿いに走っていて、つまりこの川が源流に近づく方向に走っていくことになります。

今はまだ川幅も広くて平地感があるけど、これがどんどん細く、流れも急になっていくのが目印代わりといえますね。

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北上するにつれて道は当然ながら徐々に狭くなっており、家々の数も次第に少なくなっていってとても心細い。

と思ったらいきなり小規模な集落が突然出現したりするし、営業しているかわからないような店もちょくちょく登場してきます。これは田舎あるあるだと思うけど、ぱっと見だと廃墟みたいに見える建物でも普通に営業していたりするのが面白いところだと思う。自分の地元でもそうだし、今回走ったルート上の店はだいたいそんな見た目でした。

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霧越峠の頂上

そして、最終的に人の気配がまるで感じられなくなった国道(酷道?)を獲得800mほど登って霧越峠に無事到着。斜度的には大したことはないものの、昨日の大雨の影響なのか落石や落枝が非常に多くて路面状況には気を使いました。

タイヤはGP4000S2を履いているのでパンクには強いはずだけど、当たり前だけどパンクするのは嫌なので時間よりも安全が最優先です。人が多い場所でパンクするならまだしも、こんな公共交通機関もないような山奥でパンクすることになったら目も当てられませんよね。

一応換えのチューブは2本持ってきましたが、細心の注意を払って走ったおかげかパンクは一回もしませんでした。

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フォロワーさん

ここからのダウンヒルがそれはもう地獄だったわけですが、上りと違ってスピードが出る分余計に怖かったのは内緒です。

峠の北側は南側(さっき上ってきたとこ)よりも山深く、従って路面状況も悪化の一途を辿っていました。こぶし大の石が散乱しているのは普通で、場所によっては日当たりが悪すぎて苔むしていたりもします。もう定期的に整備されているのかどうかも怪しいレベル。

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ガードレールも当然のようになく、よそ見をすると間違いなく川に落下するので全神経を集中して低速度で走るのが一番でした。

もっとも、今までに岐阜や四国の酷道(439とか)を走った経験がここにきて活きている感は否めません、やはり荒れた道を過去に走った経験があるかどうかは個人的にかなり大きい要素な気がしますね。国道439号とか終始こんな感じの道だったし。

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電波も圏外になるほどの僻地なので、あとどれくらいで集落に着くのかも正直わからん。

終りが見えないのにいつまでも集中しなくてはならないのは結構辛くて、しかも極稀に対向車も来たりするので精神力を大幅に消耗しました。対向車に関しては「えっこの道を自転車で来たんですか?」みたいな顔をされたけど、自分が逆の立場だったとしても同じことを思ったと思う。

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民家だ…!

心細さがマックスになったあたりで民家が見えた。

あまりの安心っぷりに全身が弛緩していって、慌てて自転車を降りて深呼吸してしまったくらいには笑顔になれました。

改めて思い返してみると、この感情の落差を味わうためだけに僻地を走るのも結構面白いものだと思います。なんというか、理由はわからないけどふと自分しかいないような空間に行きたくなることがあるのよね。そういう場所やルートをわざわざ選んで走っているのだから不安になるのは自業自得な面もあるけど、あえてそのような行程を設けることによって、人の温もりを強く感じることができる。

寂しさもまた楽しい。やっぱりソロライドの醍醐味の一つは寂しさに包まれることだな。

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というわけで、無事に那賀町海川に到着。

山の中なのに「海川」という大字なのは何か理由があるのだろうか…と思ったら、この集落内を流れる川の名前が「海川谷川」というまた変わったものでした。全然意味が違うけど、字面だけ見ると海千山千みたいな。

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至るところにゆずの畑がある

集落内には那賀町の名産品の一つである木頭ゆずの畑が多く、後から知りましたがこのゆずを加工してぽん酢や柚子こしょうを生産しているようです。

集落内の運動場ではゲートボールで汗を流す爺ちゃん婆ちゃん達も大勢いて、さっきまでの鬱蒼とした山中を駆けずり回っていたときとの落差が大きすぎて涙が出てしまう。

どのような場所であれ、人が集まる集落の明るさは傍から見ていても楽しいものです。

さくらぎ館に泊まる

そのまま自転車を走らせ、この日の宿であるさくらぎ館がある大字平谷に到着。

さくらぎ館の宿泊記録については別記事にまとめています。

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予め宿の場所は地図上で確認していたものの、いざ現地に着いてみたら民家と見間違うような雰囲気で素通りするところでした。上の写真にあるように、2階で布団を干していなかったら宿と気づかなかったかもしれません。

平谷集落を彷徨う

宿に荷物を置いて身軽になり、一通り館内を散策したところで日の入りの時間はまだ先。

夕食の時間にもそこそこ余裕があるため、お風呂に入る前にこの平谷集落をぶらぶら散策してみることにしました。明日の出発も結構早いし、今日の内に見ておけるところは回っておきたいところです。

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平谷集落にはコンビニはないことだけ下調べしておいたので、そのままの思考の流れでここには民家が集中しているだけかと思ってましたが、実情は全く違いました。

平谷集落にあるのは床屋や交番、電気屋に郵便局、消防署、小学校や薬局などなど。

普通に生活していく中で必要になる施設が一通り揃っていて、どうやら単なる集落ではないようです。今でこそ人通りは少ないものの、かつてはかなりの人数が暮らしていた大きな集落だったのだろうと予想してみたり。

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地図上で見るとよく分かるんですけど、平谷集落は大字の下の字がすごく多いんですよね。ほんの50mくらい進んだだけで別の字になってたりするし、一体どういう背景があるのか気になる。

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平谷集落全景。左手奥側に見えるのが小学校。

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上の写真と、この写真の家はほんの500mほどしか離れていない。地形の変化と、それに伴う家屋の密集具合の差を見るのも面白い。

集落自体は主に丈ケ谷川という川の近くに形成されている一方で、そこから山奥に1kmほど進んだところにも家屋があったりするので景色の変化が激しいと言えます。周りに畑しかないようなところにぽつんと一軒家があったりするので、こういう風景が好きな自分にとっては堪りません。

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どこをどう歩いてもノスタルジックな気分に浸れる平谷集落ですが、その気持が最大限に高まったのがこの那賀高校平谷分校跡でした。「跡」と付けている通り、看板は残されているものの分校そのものはすでになくなっています。

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分校跡に建てられていた校舎は撤去され、今となってはその面影を感じるのはこの運動場だけ。

こういう風に、「かつてここにあったものが今はもうない」というのが本当に好きなんですよね。それも完全に消滅しているわけではなくて、当時のものがほんの少しばかり遺っている様子がなおさら性癖を掻き立てる。

ネットで調べてみたところ、平谷分校は1948年に開校されて以来57年に渡って卒業生を輩出し、2005年に閉校となったとのこと。

www2.odn.ne.jp

今回初めて訪れたような土地で廃校跡に遭遇し、見知らぬ卒業生のことを思って寂しさに震える。別にそうしようと思ったわけではなくて、この平谷集落全体に漂う、まるで時が止まったかのような古びた空気、それにこの秋の夕暮れ時の明るさと、目の前の運動場を眺めていたら自然と心の中がそんな気持ちでいっぱいになりました。

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うるさいくらいに辺りは静かで、じっと佇んでいたら次第に寒くなってきたので宿に戻ることにしました。

未だに考えがまとまらないけど、こういう体験をするために自分は旅に出かけるんだと思う。有名なところや人が多いところだけに行くのが旅ではない。何度も書くけど、やっぱり自分にはこういうスタイルが合っているようです。

Part 1はこれにて終了。Part 2は翌日の宿である高知屋旅館を目指した話と、最終日について書いています。

つづく。