TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【星出館】昭和元年創業の旅館に泊まってきた (@三重県伊勢市)

【訪問日:2020年10月24日】

伊勢の地にある古びた旅館へ

今回は三重県伊勢市にある旅館に泊まってきた話です。

伊勢市というと、以前に元遊郭旅館である麻吉旅館に泊まってきたのが記憶に新しいですが、この日泊まった宿は麻吉旅館のすぐ近くにありました。

旅館の名前は、星出館。星が出る館とはなんとも風流な名前じゃないですか。

星出館がある場所は、地名でいうと宇治山田駅から北へ数分行ったところにある河崎というところ。河崎は古い街並みが残っている地区の一つであり、江戸時代から伊勢の台所として発展した問屋街でもあります。

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まずは宿の外観から。

宇治山田駅や伊勢市駅周辺は、なんといっても伊勢神宮外宮にほど近い場所ということで人通りも比較的多いですが、逆に駅の北側に行くと観光地要素は全くなく、住宅地が広がっています。とはいってもそこは令和の時代のこと、建物としては現代風のものがほとんどなことは言うまでもありませんね。

そんな中に突如として登場するのがこの木造建築なのだから、はじめに見たときはかなり驚きました。

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この重厚とした佇まい。

まるでこの一角だけ数十年前から時が止まっているかのような錯覚を覚えてしまう。手前にある信号機だけでなくて、アスファルトの道路ですら星出館と一緒に撮影すると違和感があります。

木でできた壁と瓦屋根、そして立派過ぎる玄関。まさに自分がイメージする「旅館」の通りで、この段階ですでに気分が有頂天になってました。

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続いて、引き戸をあけて玄関へ入ってみます。

旅館の顔ともいえる玄関は非常に広くて閉塞感を感じさせないばかりか、照明がなんとも洋風でお洒落なのがGood。

それもそのはずで、この星出館は旅館としての創業は昭和元年、さらに建築物自体は一番年代の経っている部分で大正時代のものとのことです。その背景を踏まえて予想してみると、和風な雰囲気を全体に漂わせつつも、意図的に各所に洋風を取り入れているのではないかと想像しました。

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ところどころに横文字が並んでいるのが確認できますが、これは最近では外国人観光客が多いということでその案内用らしいです。

考えてみれば伊勢神宮自体が一大観光地ですし、こういう純日本建築な宿って彼らは好きそうですしね。逆に日本人ほど和風なものにはあまり興味がないのかもしれません。

まあ見慣れているといえば見慣れてから仕方ないのかも。

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玄関を入ってすぐのところにはロビーがあってくつろげるほか、なんと蓄音機も現役で使用できる状態にあります。

で、ロビーと廊下を隔てる景色も和風とは少し違ってて、襖や戸ではなく壁とガラスになっています。でもロビーの中からはすぐ横の庭園が見えたりするので、ぱっと見るとかなり不思議な感じなんだけど違和感はない。

このロビーの空気感が完全にどこかの資料館みたいな風になってるし、そこは実は現役の旅館で、今自分がその場所にいるということを忘れかけてしまう。

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手続きを済ませた後はお部屋に案内してもらいました。

今回のお部屋は、宿の目の前の通り(県道201号)に面した一人用のもの。ご覧の通り必要最小限のものだけがある感じで、個人的にはこざっぱりしていてとても好きです。装飾の類もあまりなく、休むことに特化した構造といえばいいのでしょうか。

注意点としては、木造の旅館ということで通気性は非常に良いものの、気密性としては皆無なので周りの音がとにかく聞こえやすいです。宿の部屋は通りより奥側から埋まっていく様子で、自分が電話予約したときも「通りに面した部屋だったら空いてますが…」とのこと。なので、逆に言うとこの部屋は一番うるさくて寝づらい部屋ということになる。

現に、目の前の県道201号の交通量がハチャメチャに多いので耳栓がないと眠れないと思ったほうがいいです。それを察してか部屋にはヘッドホンが常備されていますが、耳栓のほうが寝返りが打ちやすいのでおすすめ。

あと、この旅館は夕食の提供はしていません。朝食についても積極的には提供していないようなので、基本的に素泊まり用の宿と思っていたほうがいいかと思います。

星出館を散策する

部屋に荷物を置いたので、館内をぶらぶら歩いてみることにしました。

幸いにも自分が到着したタイミングでは他の宿泊客は出払っている様子で、一人で散策する分には問題ない様子です。

ざっくりとした構造としては、客室は全て2階にあり、1階にはお風呂や朝食会場があります。トイレや洗面所はどちらにもあるので、特に不便はありません。

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それでは散策開始。

まず、部屋を出てまっすぐ進んだところには中庭を見下ろすように作られた回廊があり、ここのこじんまりとした感じが実に落ち着きました。ただ単に廊下が走っているのではなくて、朱い橋が渡っているのがなおのこと風情を感じさせます。

この中庭部分は外観からは全く見えない部分にあり、満喫できるのは宿泊した人だけというわけです。日本建築と庭園はセットみたいなものという認識だけど、空間を上手に活用して広さを演出しているのがかなりグッときました。

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朱い渡り廊下を渡った先には洗面所があり、反対側の窓際には中庭を見渡せるように並んだ椅子と机があります。

タイル張りの落ち着いた洗面所もそうですが、この休憩スペースの居心地の良さが半端ではない。

ここでちょっと思ったんですけど、こういう風にちょっと休める場所って、ビジネスホテルなんかだと皆無じゃないですか。そもそも共有スペース自体が1階のロビーくらいにしかないし、「座って落ち着ける場所」というのが客室にしかない場合が多いと思います。

そんな中で、椅子がちょこんと存在している風景がなかなか貴重に思えてくるのは当然のこと。実用性はともかくとして、ここに休憩する空間がある、ということが好きになりました。

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良さみしかない

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洗面所を過ぎて直進した先には客室が集中しており、そこそこ狭い廊下を挟んで両側にずらっと配置されている様子。

客室の奥には階下へ続く階段が2箇所あって、奥側の階段を降りていくとさっきの玄関に繋がっています。

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手前側の階段の先には1階の洗面所とお風呂があって、さらに貸し出し用のタオルが置いてありました。

話によると、この旅館の周辺には銭湯がいくつかあるようで、旅館のお風呂だけでなくそっちにも行きたいという場合にはタオルを自由に持っていっていいそうです。

(旅館では夕食の提供を行っていないので)食事処の紹介も積極的にされていて、旅館でのひとときを不自由なく過ごしてもらいたいという宿の心遣いが伝わってきました。

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中庭にある「水琴窟」は、水を垂らして竹の筒を差し込むと水音が聞こえてくるというもの。

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中庭に面した廊下には椅子が並べられていて、ここに座って庭を眺めながらのんびりできます。

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星出館の館内案内図

この後は近くの居酒屋で一杯やってから自室に戻ってきました。

遠征先でとる食事って、なんというか「その土地でしか味わえないものを食べたい」という気持ちになりませんか。別に名物を食べなきゃいけないわけじゃないんですが、私はコンビニとかチェーン店などで簡単に済ませてしまうのはもったいないと思ってしまう性格なので、この日もたぶん地元の人しかいかないような居酒屋に一人で行って、こっそりと酒飲んでました(この人いつも酒飲んでる…)。

遠征先ではスマホですらあまり触らないので、ふとした時間でさえも非常に長く感じられるし、そういう時間の使い方が好き。スマホ弄ってたらいつの間にか寝る時間になっていた、というのは避けたいところです。

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しんと静まり返った館内を歩いてみてからお風呂に入り、いつの間にか眠くなったので布団に入り込みました。

ロードバイクでも旅館に着いてからも基本的に忙しなく動くのは嫌いなので、あくまでのんびりと過ごす。

旅行先でスポットを回りまくる人からすれば「もっと時間を有効に使えるのに」という意見もあるとは思う。自分でもそれが良さげなことは自覚してるけど、旅だとこれくらいがちょうどいいんです。そういう意味では、今回の伊勢訪問は自分の好きな行程の通りに事が過ぎていってくれたと思うし、旅館での過ごし方も実によいものでした。

というわけで、今回の星出館の宿泊はこれにて終了。

とにかく内装が特に素晴らしかったし、また訪れたい。