TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

美馬旅館 本館 歴史ある窪川の旅館に泊まってきた

お遍路さんにも人気の宿

自分の中で位置づけている「旅における重要なファクター」の一つに、泊まる宿の雰囲気というものがある。

もちろん場合によっては寝るだけ、一夜を過ごすだけの目的で宿を決めるときもあるけど(当日の午後に決めることもしばしばある)、そういう切羽詰まった行程でない限りは自分が好きなタイプの宿に泊まってまったりしたいというのが率直な要望だ。今回の四国ライドの目的もそうした「宿」そのものにあって、かねてから目をつけていた宿を繋ぐように行程を考えてみた。

そのうちの一つはすでに記事にした小薮温泉で、もう一つは今回記事にする旅館。その宿は四国ならではの「お遍路」においても、宿泊地として重要な役割を担っていた。

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美馬旅館 全景

その宿とは、四万十町(旧:窪川町)に位置する美馬旅館。創業は明治24年(1891年)で、なんと130年前からこの地で旅館を営まれているそうです。

美馬旅館本館|美馬旅館はなれ 木のホテル【公式】

四万十町といえば、その名の通りなんと言っても清流で有名な四万十川が流れる清らかな町。旧名は窪川町といって、かつては四国の東と西をつなぐ物流の拠点だったといいます。

戦国時代や江戸時代には、土佐藩の高知城下と中村方面を結ぶ中村街道から、南予・宇和島へ向かう宇和島街道への分岐点として栄えました。また、物流の手段が船に移り変わっていくと、窪川に近い志和という港町を拠点とし物流が盛んに行われていたとのことです。志和で荷揚げされた物資は窪川の古市町というところで売り買いされたほか、宇和島街道や四万十川を伝って西へと運ばれていきました。

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美馬旅館 本館

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本館玄関

交通事情が発達した現在では当時のような往来はなくなりましたが、この地にある八十八ヶ所観音霊場の岩本寺への参拝客をはじめ、交通の要所であることは変わっていません。窪川駅は土讃線と予土線の切り替え駅にもなっているし、駅近くの風景を見てもその様子が見て取れます。

そんな窪川市街のほぼ中心にある美馬旅館は、現在ではお遍路さんが泊まることが多いようです。特にすぐ近くにある岩本寺については旅館がその参道に面していることもあり、参拝の際には必然的に目に留まる形になりますね。

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玄関内部

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靴箱

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めちゃくちゃ高価そうな皿が飾ってある

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当初は何も知らなかったためにこちらが玄関であると思って中に入ったのですが、フロントは別の入り口にありました。

美馬旅館は今回泊まる本館のほかに、すぐ近くに建てられている「木のホテル」という木造平屋建てのホテル形式の棟があります。木のホテルは2018年に落成したばかりのかなり新し目な宿で、外から見た限りではモダンチックな感じがしました。

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こちらが木のホテル

で、その木のホテルから通りを挟んで反対側にフロント兼食堂があって、本館の受付もここで行うみたいです。もっとも、本館玄関にあるインターホンを押せば女将さんが飛んできてくれたのでこっちでも問題ないっぽい。

ちなみに、予約については公式サイトからネットで行うことが可能です。空室検索もできる(あと公式サイトが比較的新しい)のもあって、この手の宿にしては珍しい印象を受けました。

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玄関ロビー

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館内地図

玄関ロビーにはお遍路に関する雑誌などがずらり。

季節柄ストーブも常備してあり、往時ならお遍路さん同士の憩いの場になっているようです。

思えば、全然知らない人なんだけど同じ旅館に同じ目的の人同士で泊まるっていうのはなかなか無い現象じゃないでしょうか。似たようなことで自分が経験したことあるのは登山時の山小屋くらいかな。あれは同じ登山っていう目的の人しか集まらないので、他人でも結構話しやすかったりする。このお遍路についても、次はあそこに行くんですよとか今日は疲れたとかの共通の話題で盛り上がれそう。

それはとても貴重な体験だと思うし、お遍路の道中にある宿が存在してこそ起こりうることだとも思う。美馬旅館はまさにそんな人たち向けに開かれてる宿であって、ただ単に宿泊するためだけの宿じゃないんですね。だからこそ良い。

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1階のベッドの部屋

本館には、簡単に分けるとベッドの部屋と布団の部屋があります。

ベッドの部屋がある理由については、想像ですが足腰があまりよくない方向けのためだと思います。これもお遍路さんのための配慮なのかもしれません。

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2階への階段

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今回泊まった部屋

そして今回泊まった部屋がこちら。

2回の階段を上がってすぐ右手にある二間続きの広いお部屋で、入り口側の部屋にはソファが、奥側の部屋には炬燵がありました。

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いきなりなんですが、この部屋の構造がとても好き。

表通りに面した純和風の部屋、その二間続きの部屋を囲むようにL字型に周り廊下が走っています。その廊下は旅館ならではの広縁とまるで一体化したかのような作りをしていて、一般的な広縁とは異なる空間的な広さを演出しているんですね。さらに4方向のうち2面が窓になっているおかげで日当たりが非常によく、この日の天気の良さも相まって開放感がものすごかった。

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ネジ式の鍵

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鏡台

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視界に入ってくるのがほぼ木というのが個人的にたまらないポイント。

やはり自分は木造の旅館が好きだ。木というだけで一種の温もりを感じられるし、そこへ古さがプラスされることによって、この部屋で過ごす時間をかけがえのないものにしてくれる。

散策とお風呂

部屋を一通り確認して悦に浸ったところで、館内を歩き回ってみることに。

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廊下

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1階への階段。右手奥にも部屋がある

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左手奥が自分の泊まっている部屋

自分の部屋がそうだったので他の部屋もそうなのではと思った通り、本館の各部屋に鍵はないようです。

廊下と部屋は障子で仕切られていて、開け閉めする時は静かといえば静か。障子同士が合うトンという音も風情があります。

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お手洗い

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繰り返しになりますが、この旅館はお遍路さんに優しいです。

館内には洗濯機が完備されているので洗濯物を洗うことができますし、長旅の際には役立つこと間違いなし。自分のように自転車で何泊もする旅をする場合でも非常に助かります。

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中庭に面した廊下

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中庭

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廊下の窓ガラス

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それにしても、一日を終えて宿に到着したときの安堵感はかなりのものだ。

宿を予め決めてある分、どうしても到着しなければならないという焦燥感が全くないといえば嘘になる。ただ、出発地点と到着地点を確定しておいてから道中を最大限に楽しむのが自分のスタイルなので、今日泊まるところ決めてませんという事態はあまり経験がない。

そういう背景を抜きにしても、やっぱり宿を実際に目にしたときには安心するんですよね。

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お風呂が綺麗すぎる件について

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そんなことを考えつつお風呂に向かったわけですが、見てくださいよこれ。お風呂がとにかく綺麗すぎる。

お風呂場を含む食堂・フロントの建物は後から建て直されたもののようですが、まさかここまで新しいものだとは想像すらしていなかった。てっきり本館の雰囲気のままの古さを思い描いていたものだから面食らってしまいました。

本館の部屋とか廊下はそのままの古さを保っていつつも、必要なところはすべて近代化しているので不便さが全くない。古い旅館だと風呂場が狭かったりお手洗いがアレだったりするのですが、ここではそういうことが一切ないわけです。この方針は実にいいアイデアだと感心するばかり。

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お風呂に行っている間に布団が

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美馬旅館の前の通り。直進すると岩本寺がある

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現在では美馬旅館の夕食の提供はないので、外で適当に済ませました。その後は夜の窪川をぶらぶら散策し、日本酒を購入して帰宅。

広縁に座って日本酒を飲んでいると次第に気分が高揚してくる…のが常ですが、こういう静かな旅館に泊まっての飲酒だとそうはならず、却って尚更落ち着いてくるというもの。その土地にしかない宿に泊まり、その土地の地酒を飲む。現地でしか味わえない体験をしたいと常々思っているけど、ここまでその方針に則った時間を過ごせて嬉しい限りだ。

翌朝

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翌日は切羽詰まった行程にしていないこともあり、特に急ぐこともなく通常通りの時間に起床。窓から差し込む朝日が眩しい。

まずは、出発前に朝食をいただきます。

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朝食

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朝食の献立

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ご飯はおかわり自由ということで、案の定2杯おかわりしました。

焼き魚、納豆、豆腐、味噌汁に卵。ここまでご飯のおかずになる料理が揃っているのだから1杯で済ませるのはちょっともったいない。特に、塩で味わう卵かけご飯が絶品過ぎてもう感無量でした。

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朝食後はささっと出発準備を済ませ、布団にダイブして二度寝を決めたい欲求を抑え込んで宿を後にしました。冬の朝はとにかく布団から出るのが億劫になりがちなのがつらいし、この旅館で過ごす時間があっという間に終わってしまうこともつらい。楽しい時間ほど早く過ぎ去ってしまう。いつもそうだ。

そんなわけで、美馬旅館のご紹介でした。

冬の窪川は寒い以上にどこかしんとしていて、建物の雰囲気と合わせて令和の時代とは思えないくらいのひとときでした。また、夕食を手軽に済ませたこともあって、比較的自室で過ごす時間が長かったように思えます。本館の二間続きの部屋は本当に落ち着けるし、何をするわけでもなくただ佇んでいるだけでもいい。これからも機会があれば訪れたい旅館です。

おわり。