今回は、すでに廃校となった学校を散策してきました。
この学校はすでに取り壊しになることが決まっていて、その前のほんのわずかな期間だけ一般公開されていたところです。といってもたぶん地元の方しかその情報を知らないと思いますが、その期間だけは出入りが自由ということで許可を取って中を歩いてきました。※現在はもう取り壊されています。
廃校を訪ねる
廃墟はいつも自分が宿泊しているような鄙びた宿とは建物としての雰囲気が全く異なっていて、その場所からすでに人の出入りは失われている。なのでまだ建物として生を感じる現役の旅館とは対照的に、ここから先は滅びに向かって時間が流れていくだけという実感が強いと感じました。
その影響なのか、散策中は建物の過去に思いを馳せることが普段よりも何倍も多かったと思います。そこで過ごしていた人、今回の場合は学校の生徒が元気よく過ごしていた様が、目の前の風景に重なるように浮かび上がってくるようでした。
ちなみにタイトルに#1と付いてますが、意図的に廃墟を散策すること自体が非常に稀なので続編があるかどうかは微妙です。廃墟って勝手に入ると不法侵入とかの罪になったりするので、当たり前ですが今後も許可を得て散策できる場合のみ記事化します。
校舎は集落内を走る小さな道に面しており、校舎1階の通路を経て内側に入ると中庭がある。
建物全体は3階建てになっていて、外観からでも分かるくらいに錆びついて経年劣化していた。こういう建物って傍から見ると今にも崩壊しそうで廃校になってからの年月を感じさせますが、中を歩いて回る分には問題ありませんでした。
なお、見学当時はすでに業者の方々が工事の準備をされているようでした。
廃校…というか廃墟って、実際に人の出入りがなくなることが決まってからどういう道筋を辿るのかよく知りません。
普通に考えれば使えそうなものは根こそぎ他の施設等に移動になると思っていたものの、実際に見学してみると道具類がほぼそのまま残っていることに驚きました。例えば最初に散策したのは2階の音楽室で、ここには今でも普通に音の出る楽器類が無造作に置かれている。
しかし、廃校が生徒減少による学校統廃合の末の結果と考えれば自然の成り行きかもしれない。結果的に生徒が集中することになる学校にはこういったものはすでにあるわけで、余分なものをそっちに移すわけはないし。
校内は退廃しているところとそうでないところの差が非常に激しく、例えば家庭科室なんかは現役の学校のものと言われても違和感がないレベルで保たれています。
日当たりの良し悪しで劣化の度合いは変わると思うけど、ここまで綺麗なのは珍しい。
逆に通りに面している校舎(主に教室がある)は植物の侵食が激しくて、どこから入り込んだのか分からない葉が大量に積み重なっている一角もあった。
教室は床や壁が木製で、特に床については綺麗に一直線になった木材が並んでいて整然としている。
学校は教室だけでなく様々な用途の専用の部屋が整えられているため、部屋によって特色が全く異なっている。
理科室の隣が図書室で、その隣が美術室。相変わらず物が散乱しているのに驚かされる一方で、どの部屋も一様ではないのが散策していて面白いと感じる。
こうして色々歩き回っていると、自分とは全く関係のない土地の学校のはずなのにどこか懐かしく思えてくるから不思議だ。
生徒が作ったと思わしき掲示物もそのまま。
なんか何かのタイミングで生徒や先生だけが消えたような雰囲気の部屋が多くて、うまく言えないけど廃校って特殊な感情になる場所だと思う。
学校というのは地域住民に愛され、見守られ、地域の中心となってきた場所にほかならない。
地域の方々も学校に対する思い入れは他の施設以上に強く、例えば自身が通っていた、もしくは子どもや孫が通っていたなど思い出深い場所でもある。その思いがここには残っているようだ。
個人的に一番好きになったのがこの教室。
床一面に植物が根を張っており、その葉はすでに朽ちている。建物と時間の流れが同じなようなかなりグッと来た。
廃校には当然ながらもう電源設備はなく、いわゆる人工的な灯りはない。
今となっては室内を照らすのは太陽光だけで、その光が作り出す明暗が好きになった。目の前の風景をぼんやりと映し出すのは、やはり自然の光がいい。
屋上へ続く階段の壁には、生徒が描いた絵が残っていた。
この絵からすると屋上へは日常的に出入りが可能だったようで、完全に立ち入り禁止だった学校時代を思い出して少し羨ましくなった。
屋上への踊り場は窓が大きくとってあって、差し込む陽光が眩しい。学校時代に過ごした校舎を大人になってから再訪すると小さく・狭く感じるというケースが多いけど、この場所に限ってはむしろ広々と感じた。
保健室。
保健室=ベッドという認識がどこか頭の中にあって、でもここではなんと畳敷き。この上に布団が敷かれていたのだろうか。
その後は体育館に向かい、ああそうそう体育館ってこんな感じの構造だった、と物思いに耽りながら歩いてみる。
ステージの一部は陥没していたけど、それ以外は割と綺麗。この場所で一体何回の入学式や卒業式が催行されたのか気になるし、学校としての最後を飾ったのもおそらくここだろうと考えると悲しい気持ちになる。
最後は職員室を周り、学校行事で多く使用されたであろう品を色々と見た。
学校生活を送る上で行事というのは結構な頻度であって、その裏では先生やら校長やらがあれこれ忙しく準備していたのだろう。今となってはそれをうかがい知る術は少ないけど、その残り香みたいなものを感じられた気がする。
こんな感じで、今回の廃校散策は終了。
将来的には僅かな碑を残すばかりで、ここに学校があった痕跡も次第に忘れられていくと思う。でも、その前に一時的とはいえ見学できたことに感謝したいと思います。
おしまい。
コメント