- Part 1:那覇空港~海中道路~浜比嘉島
- Part 2:古宇利島~備瀬のフクギ並木
- Part 3:万座毛~残波岬灯台~座喜味城跡
備瀬のフクギ並木を後にしたところで、まだ時間にはかなり余裕がある。どうやら早朝スタートにしたことが功を奏したようで、天気的にも気温的にもピークなタイミングでこれからのライドを迎えることができそうだ。
旅において出発する時間は自分で好きに決めることができる一方で、仮に遅く出発してしまったとしたら取り返しがつかなくなってしまうという場合もある。
逆に早い場合は時間調節がてら現地で過ごせばいいだけだし、自分の性格を考えても早めに出るのが良さげです。遅れてしまったらどうしようとか無駄な心配もしなくていいし。
渋滞とは無縁なので
次の目的地はここから40kmほど離れたところにあるので、まずは移動をしやすくするために国道409号へ合流する必要がある。
フクギ並木から県道114号を南下していくと、最初に目に入ってくるのはかの有名な美ら海水族館。沖縄本島を訪れた観光客が必ず訪れるくらいには知名度のある場所なので、とんでもなく混んでるのではと思ってましたが案外そうでもなかったです。
駐車場にもまだ余裕があって、現在進行系で車が列をなして走っていっている割にはキャパは広い様子。
今回は先を急ぐので水族館には立ち寄りませんでした。最初に全部回ってしまうと次回のお楽しみがなくなってしまうので、あえて次のために残しておきます。
Part 2でも触れたけど沖縄は橋が多い。
しかも本州とかで一般的な川を渡るためのものではなく、遠く離れた「島」に渡るためのものがほとんどだった。いくら近場の島とはいっても、そこは海を跨ぐ必要がある橋のこと。その長さや巨大さはなかなかお目にかかれるものではない。
この巨大な橋が沖縄の海と非常に相性がいいということに気づいてしまった。
うまく言葉にはしづらいんですが、こちら側にある砂浜と向こう側に見えている島。それらを繋ぐように橋がかかっていることで、視界内の風景に遠近感が生まれる。
自然界のものって海にしろ島にしろとにかく巨大で、その雄大さはいつも感じられるけど大きさとなるとすぐには把握しにくいもの。でも、ここに突如として人工物が入り込むことによって遠近感が強く働いてくれて、島の距離感や砂浜の広さなどのスケール感が途端に分かりやすくなってくる。
色彩的にもこれがなかなか良くて、青系統で統一されている海や空、植物で覆われていて緑色の島の中に「橋の白色」が加わることで、その存在感をなおさら強調している感じがする。流石に人工物ばっかりというのは困るけど、これくらいだったらむしろ景色的には大歓迎です。
そして名護市街を経由し、国道58号に合流したので再度海沿いを通って南下していく。
ここからの反対車線の渋滞っぷりが尋常ではありませんでした。具体的に言うと名護警察署の辺りから沖縄自動車道の入口を過ぎてもまだまだ車列は続いており、少なくとも安富祖くらいまでは混んでたと思います。距離にして約15kmくらい。
なんでこんなに混んでいるのかというと、おそらく美ら海水族館に行く観光客だと思います。沖縄自動車道を通ると混んでるのは目に見えてるので一般道で行ったけど、やっぱり混んでましたというパターンだと思う。翻ってこっちの車線はというと至って平和そのもので、向かう方向が異なるだけでこれほど違うのかと驚いたほどでした。
その点で行くと、渋滞は抜きにしてもロードバイクって本当に快適な乗り物だなと思います。
あれだけ渋滞にハマっていると良さげな風景が見えても途中停車できないし、かといって前に進むこともできないのでその場所で待つしかない。こっちは場所によるけどある程度はどこでも好きな場所で止まれるし、休憩もいつでもできてしまう。
この道中にしたってエメラルドグリーンの海がずっと右手方向に見えているわけで、それを目前にしながらもイライラしてしまって精神的になんか開放されないのはつらいものがある。時期と場所によっては、車での移動が最良というわけではない。
今回は最初から車で移動する予定は全然なかったけど、こういう現実を目の当たりにするとロードバイクでよかったというところです。
万座毛
次の目的地は万座ビーチを通り過ぎ、ちょっと脇道にそれたところにあるスポット。
沖縄の海と聞いてまずイメージするのが砂浜…つまり、陸と海の高低差があまりないところがほとんどだと思う人が多いんじゃないでしょうか。
自分もそんな認識が頭の中に先行しており、実際にこれまで見てきた沖縄の風景といえばその通りな場所ばかり。なので、このスポットの風景はとても新鮮に感じられました。
それがこの万座毛。
万座毛はかつての琉球国王が「万人を座するに足る」と評価したことから名付けられており、「毛」は方言で草原の意味だそう。琉球石灰岩からなる絶壁が海に沿って続いており、その上には名前のとおりに草原が広がっている光景が圧巻的です。
切り立った崖とは裏腹に、上の部分は平になっていて歩きやすいのが特徴の一つ。地面の大部分は石灰岩でできているだけあって空洞が多く、波の影響で特徴的な形にえぐれていました。
この開放感は写真ではうまく伝わらないので、ぜひとも現地に行ってみてほしい。
高台に位置しているだけあって、今まで走ってきた中で見てきたような海とはまた異なった見え方をしているのが理解できた。上から見下ろすように万座ビーチを眺めてみると、海の色のグラデーションが目に飛び込んでくる。陸と海との高低差が小さいとなかなかこれを実感しにくいけど、ここではそれを十二分に味わうことができる。
近くを見ても、遠くを見てもため息が出るような美しさだ。
ここらへんでちょうどお昼時になったので、万座毛に併設されている施設で昼食にしました。
沖縄料理の代表格である○○チャンプルーは、「チャンプルー」の名から連想されるように炒め物の意味。しかしチャンプルーは単なる炒め物ではなく、島豆腐が入った炒め物のことをチャンプルーといい、そうでないものはイリチーというらしいです。知らんかった。
亜熱帯気候に属する沖縄ならではの料理であるチャンプルーは野菜たっぷりで、やっとこさこの気候に慣れたばかりの自分にとっては救世主のような食べ物です。運動した後でささっと食べられるくらいにご飯との組み合わせがよく、あっという間に完食してしまいました。
残波岬
時間もお昼を過ぎたということで、今日の行程はここにきて折返しに突入。
宿の到着予定時間にはまだまだ遠いし、散策する余裕は必要十分だ。予定通り、これからの先のスポットもまったりと訪れていくことにしたい。
続いて訪れた残波岬は本島中部の西海岸・読谷村にある岬で、周辺は国定公園「残波岬公園」として指定されています。先程訪れた万座毛と同じく海面から陸までには結構な高さがあり、そこに建っている残波岬灯台からの景色を楽しもうというわけ。
灯台までの道のりには残波ビーチというビーチがあって、灯台というよりかはこっち目的で訪れる車が多い印象でした。実際に泳いでいる人も多かったし、すぐ近くにはホテルとかも多いしで賑わっているところみたいです。
あと、個人的にはその名前が気に入りました。
波が残る岬と書いて残波岬。その名前を象徴するかのように航海の難所として知られ、周辺には高さ30mもの断崖絶壁が続いています。この日は風が強くて荒々しい波が終わることなく打ち寄せてきていて、沖縄らしからぬ猛った海を感じることができました。
残波岬のシンボルである残波岬灯台。その高さはなんと31mもあり、しかも灯台の中は狭いので階段しかなく、到達するには歩いて上るしかないです。
この先に控えている絶景と引き換えの肉体疲労みたいなものなので、軽い気分で訪れてみるのがいいかと。
そしてこの眺め。
灯台の上は360°歩いて回れるようになっていて、陸から海まで全方向を見渡すことができる。今までにないような高度感に加えて、まるで叩きつけてくるかのような暴風が「岬」感を助長させてくるのが唯一無二の特色だ。
本当に風が強くて、実際のところ別世界感がすごかったです。
しかし、ここまでの3日間沖縄に滞在してみて一つ分かったことがある。それは今までに思い描いていたような「沖縄の海」という単一の存在ではまるで表現しつくせないくらいに、ここの海は様々な顔を見せてくるということ。
沖縄といえば静かで青や緑色が美しい海が有名なのは間違いないんだけど、実際に訪れてみるとそれだけではない。静かな海もあれば激しい海もあるし、海を見る標高も場所によって全く異なる。
もちろん、海の楽しみ方も浅瀬や沖合で様々だ。今回はあくまで「海沿いをロードバイクで走る」というコンセプトで行程を決めたけど、沖縄の自然はとにかく持っているポテンシャルが高すぎて、満喫しつくすには陸側であれこれしているだけではもったいないと強く感じた。
こういう事実を雑誌やネットとかで得るのと、こうして現地で実感できるのとでは納得感が全然違ってくる。自分の旅そのものが実際に自分がそこに行ってみて体験できることを大切にする方針ですが、これについてはまさにその通りだと思います。
今度また沖縄を訪れるとしたら、海面とか海中とか、海そのものを全身で体験してみたい。宮古島でも見たSUPとか楽しそう。
座喜味城跡
この日最後の訪問スポットは、この残波岬からほど近いところにある座喜味城跡という場所。
座喜味城跡は1420年頃に完成した御城(グスク)の跡で、築城家として名手だったといわれる護佐丸によって建築されたものです。今では建物の類は残されていませんが、城を形成していた城壁や門が修理されて見物できるようになっています。
ここは入場料が無料であることに加え、開場や閉場の時間が定められていないので、自分の好きなときに訪れることが可能なところもグッド。今回のような昼間だけでなく、明け方や夕暮れ時に訪れたりすることもできちゃいます。
座喜味城跡の最大の特徴は、この石組みの精巧さ。
城壁や門が全て石で構成されており、近くで見ても隙間が一切ないほどに美しく石が積まれているのが分かります。城壁の幅も厚みがあって、目の前に迫ってくるような堅牢さがあることは言うまでもありません。
城といえばもちろん敵からの侵入を防ぐ目的のもので、そこには一種の圧迫感があって然るべきものです。でも、この座喜味城跡にはそれとは程遠いような、極めて優しい静かな雰囲気が全体に漂っていました。
石垣が曲面で構成されていて、角張った箇所がほとんどないのもその原因の一つだと思います。城壁だけでなく階段や門とか、そんなところで立ち止まって周囲をぐるっと見てみるという楽しみ方が個人的にはハマりました。
城壁の高さによって至るところには影が生まれていて、そこに佇んで全体を見渡してみる。経年劣化によって石の表面には草が生えていて、敷地内に広がる草原と一体化しているような「古さ」が心をくすぐってくる。ここにあるのは、石であって石でないような。そんな柔らかい空気感が、この場所の居心地の良さの理由なんじゃないかな。
そんなこんなで、この日の行程は終了。
残りは米軍基地を横目で見ながら交通量がどちゃくそ多い国道58号を経由し、宿で一泊しました。
最終日は首里城へ
最終日であるこの日の行程は至って単純なもので、最初に首里城を散策して昼食にし、その後那覇空港まで走ってフィニッシュです。
しかし、首里城周辺の地形が坂オンリーでかなり疲れました。郊外ではなく繁華街の方が坂が多く、ここに住んでいる人は移動するのが大変だろうなと思わざるを得ない。中には斜度10%以上も普通に登場してくるし。
御存知の通り、首里城は2019年10月に火災によって丸ごと消失してしまいました。現在では修復工事が進められており、2026年を目処に正殿を再建する方針だそうで、来年には工事に本格着工するみたい。
なので、このタイミングで首里城を訪れたとしても跡地みたいな感じになってます。
元のような派手さはなかなか感じられませんでしたが、逆に言うとこの状態を見ることができたからこそ、あと何年後かには完全再建された首里城を見た際の感動が増すというもの。なので、悲観的ではなく前向きに散策することができました。
しかし、あれだけの貴重な文化財を復元するにあたってはその材料の調達が難しそうな予感がする。
最終日の昼食の場所については、これが結構悩みました。
空港でさっと済ませてもいいけど、できることならやっぱり沖縄ならではの料理を楽しみたい。しかもチェーン店のようなありきたりのところではなく、地元の方に愛されているような店はないものだろうか。
と思ってちょっと探してみたところ、実に良いお店を発見しました。
それがこちらのあやぐ食堂。
首里城から1.4kmほど離れたゆいレール(沖縄都市モノレール)の線路近くにあり、観光客というよりは完全に地元向けに特化した静かな食堂です。
あやぐ食堂 コスパ最強メニューが多数揃う那覇市首里の人気店! | 沖縄巡り.com
メニューは丼物、チャンプルー、魚系、沖縄そば、汁、定食と全方向に幅広く取り揃えており、しかも値段がかなり安いです。それでいて量も多く、簡単に言えば相当にお得なお店というのが率直な感想。
客層を見ても観光客は皆無で、入ってくる客は常連さんばかり。メニューを見ずに注文する人が多く、回転率もよかったです。
今回は、沖縄といえばこれ!というゴーヤチャンプルー定食を注文。
沖縄での最後を締めくくるにふさわしい一品にしましたが、これがまたハチャメチャに美味しい。味付けは薄味で野菜の旨味が存分ににじみ出ており、これをご飯を一緒にかっ込むともう感無量です。できたて熱々なのも食欲をそそってくるし、量も多いし(2回目)で走攻守隙がない。料理人である地元のおばちゃん達も優しくて、料理も旨さもそうだけど店内のゆるい雰囲気が特に好きになりました。
自分が思い浮かぶような沖縄料理は全部揃っていたので、とりあえず迷ったらここを訪れてみるのがおすすめです。
というわけで、弾丸的に結構した沖縄ライドは無事終了。体感的には一瞬でしたけど、記録を見返してみると4日間も滞在していたようです。
今回訪れた場所はあくまで広い沖縄の一部に過ぎませんが、それでも沖縄の魅力を十二分に体感できたと思います。特に、一番見たかったエメラルドグリーンやコバルトブルーの海をいつも間近に感じられたのは嬉しいの一言。終わってみればかなり晴天にも恵まれたし、沖縄に梅雨が到来する直前の快晴って感じでした。
梅雨が過ぎ去れば、今度は沖縄の「夏」がやってくる。まだまだ沖縄を訪れる機会は多そうです。
楽しかった!
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