岐阜県を含む39県で緊急事態宣言が解除されたということで、まずは一安心しました。しかし引き続き県を跨いだ移動自粛(という要請)は変わっていないため、今月いっぱいはこのシリーズを続けていきたいと思います。
最近は主に岐阜県内にある鉄道路線沿いや酷道を走ることを中心に行っていた中で、今回は少し趣向を変えたライドにしようと思っていました。
それは季節の風景を楽しむということ。
よく考えてみると岐阜はとにかく自然が多くて四季折々に変化する風景を追いかけやすく、ちょっと走ればそんな場面に出会うことができます。今はGWが明けたばかりの5月で農業的に言うと田植えの時期。
というわけで今回は岐阜県の棚田を巡ってみます。
ぎふの棚田21選
普通の田んぼだと今まで走ってきたところにも沢山あったので、ふと思いついた棚田に限定して調べてみたところ面白そうなものを発見しました。それがこの「ぎふの棚田21選」という認定。
岐阜県内には約4,300haの棚田があり、米など県民の食料を生産する場としてだけではなく、美しい風景の形成や県土の保全、伝統・文化の継承など、様々な機能を持っています。この大切な農村資源である棚田を次世代に引継ぐために「ぎふの棚田21選」を募集したところ(募集期間:平成20年5月1日〜平成20年9月30日)38地区の応募・推薦をいただきました。平成20年12月18日開催の「ぎふの棚田21選」選定委員会にて、「ぎふの棚田21選」が19地区選定されました。
「21選」は当然のことながら岐阜県内に散らばっているので、比較的回りやすいポイントをいくつか選んでそれらを巡る行程にしてみました。
- 赤薙棚田
- 上代田棚田
- 坂折棚田
- 栃久保棚田
どの道をどう走るのかは当日の気分次第で決めることにします。
まずは1つ目の棚田である赤薙棚田を横目に見ながらのヒルクライム。
今回は時計回りで巡ってみることにしたので、スタート地点は丸山ダム周辺に取りました。県道83号から北上していくと徐々に山岳コースになり、まだポタは始まったばかりだと言うのにいきなり疲れる。
棚田の時点で高低差があるのは自明の理なわけで、そこに恵那市や中津川市特有のアップダウンの多さが加わればヒルクライム祭りになるのは当然のこと。
しかし朝方の気温の低さがかえってちょうどよく、風も適度に吹いているしで非常に快適でした。6月~7月になるともう暑すぎるし、自転車で走るには今の時期が一番おすすめだと思います。
既に田植えが終わっている田んぼを見るのも一興、でも現在進行系で作業をされているのを眺めるのも素敵なもの。
確かに風景だけ眺めたいのなら前者のタイミングを見計らって訪問すれば事足りるけど、人の営みを感じるという意味では今回の訪問タイミングほど良い日はなかったと思います。
家々によって田植え作業を行う日が微妙にずれているのが、なんというか画一的な感じがしなくて好き。
赤薙棚田からそのままヒルクライムを続け、2つ目の棚田の上代田棚田に到着。
曲がりくねった山道を走っていくといきなり視界がひらけて棚田が登場します。
棚田といえばこの眺め。
里山の中心に広がる水田の集まり。辺りの静けさや聞こえてくる鳥の鳴き声も含めて、この空間の居心地が良すぎる。
棚田は個人的に低地側から高地側に向かって移動していくのがおすすめ。
最初は角度的に畦しか見えないのが、上に登っていくにつれて水面が見えてきて最終的には視界の端から端まで広がる水田が一望できる。平野に広がっている田んぼを眺めるのとは少し異なって、この徐々に風景が変化していく感じが好きです。
平面的な広がりというよりは空間的な広がりがここにはあって、傾斜地ならではのダイナミックな展望が味わえます。
そのまま次の目的地まで一直線に行くのは味気ない気がしたのでちょっと寄り道。県道402号~県道68号線周辺は比較的標高が高く、山道ばっかりかと思っていたら開けた場所に集落が点在していました。
たまたま見つけた脇道も走ってみたりしたけど、やっぱり人気のない山間部を走るのは気持ちいい。この時期だと道路上を横断する毛虫が多いので、それにさえ気をつけていれば新緑の中を風を感じながら駆け抜けることができます。こういう点はやはり田舎に住んでてよかったと思います。
神社
そんな感じで県道68号線を上って下って県道408号に接続し、そのまま次の棚田に向かうつもりだったものの、途中で雰囲気の良い神社を見つけたのでまたしても寄り道します。
目的地だけ結んで走るだけだと道中を疎かにしてしまいがちになるので、自分はむしろ道中の風景をいかに楽しむかに重点を置くようにしています。なので時間を特に気にしないで寄り道もかなりの頻度でやるし、そこでしばらく立ち止まって休むこともしばしば。
こうすることでライド全体を通して満足度を高くしていく方針です。
気温の高さ、影の落ち方、そして吹き抜ける風がもう完全に夏。
ここの神社は社殿がかなり大きく、ただ周りを歩いているだけでも静かな雰囲気に浸ることができるし、なんなら階段に座ってのんびりするもよし。
苔むした石と木造の建物の相性は抜群で、それが田んぼに囲まれた一等地にあればなおさらで、もうここで昼寝したいくらい。こういう神社で遊んだ幼少期を少し思い出したりして懐かしい気持ちになりました。
ここ恵那市の中野方町は田園の数が多く、県道408号から道を一本入るだけで里山風景を満喫できるというわけです。こういう景色を見ながら自転車を走らせてるだけでリラックスできる。
坂折棚田へ
今回の棚田を巡るポタも折り返しに入りました。
次に訪れたのは、中野方町の西端にある坂折棚田。江戸時代初期からつくられた400年の歴史がある棚田で、明治時代初期にはほぼ現在の景観が形成されたそうです。
ここは個人的に一押しの棚田です。あれこれ語る前にまずは是非とも訪れてみてほしい。
ここはもうとにかく眺めが良すぎた。傾斜地の一面に棚田が設けてあって、それに水が張っている。文字にすると単調な感じになってしまうんだけど、これだけの規模の棚田が近所にあるという事実にまず驚きました。
棚田は水を育み自然環境を守る存在としてとても重要です。
ざっと調べてみたところ、棚田の持つ役割としては地下水涵養機能、土砂崩壊防止機能、土壌浸食防止機能、河川流量安定機能、洪水防止機能などなど…。
棚田はお米の生産以外にも私達の生活に様々な恵みをもたらしてくれる存在というわけです。
そんな棚田を維持していくのは高齢化や担い手不足の点などからとても大変なことだと思うのですが、こちらでは「棚田の形状に手をつけないで保全する田んぼと耕作しやすいように農道を整備したり、圃場整備をして大型農業機械が入れる田んぼと果樹や、野菜に転作する田んぼのゾーニングを景観を損なわないように整備してきた」そうです。
単に田んぼ周辺の整備だけでなく、水源となる森が荒れたりしないように林業の方も行っているとか。
一番上から俯瞰して眺めてみると、棚田周辺には民家が点在しているのが分かったり、農作業のための軽トラが下の方を走っていたり、まさに今作業をしている方がいたりするのが確認できます。
さっきも書いたけど、棚田はこの高低差がいい。
高低差があることで棚田一つ一つの形や広さがよく分かるし、風景に奥行き感が出ていて眺めていて気持ちがいい。田植えが終わった田んぼ、水を張った田んぼ、これから準備をする田んぼが並んで棚田を形成しているのをひっくるめて良さを感じる。
棚田から下っていくにつれて目に映ってくる眺めも変化していく。
斜度的な意味だと確かにきついものの、色んな角度から眺望できるという意味ではこれほど適した地形もありません。やはり展望の良さとヒルクライムは切っても切り離せない関係にある。
棚田の各地を流れている水も当然のごとく綺麗に澄み渡っており、水田に水を供給しています。
岐阜を走ってきて水の美しさを特に感じる機会が多いだけに、美味しいお米ができるのも納得という感じ。
棚田巡りの最後は、坂折棚田から中野方川沿いに下っていって木曽川に合流したあたりにある栃久保棚田。
集落の目の前を木曽川が流れており、両側を山に囲まれたところにあります。
余談ですが集落前の国道418号を川下に向かってもう少し行くと笠置ダムがあり、それより先は以前グラベルロードで走った酷道区間になります。
こちらの棚田は田んぼの間を通っている道が狭く、歩いて散策するのが精一杯。
めちゃくちゃ急斜面なところにこじんまりとまとまっている感じがして、自分はこういうのも好きだったりします。というかここに手で石を積んで棚田を作ったと考えると相当な苦労だし、昔の人の知恵って本当にすごい。
今回の棚田巡りは以上で終了したので、スタート地点の丸山ダムまで戻ります。ただし今まで走ってきた道をUターンするのはつまらないので、木曽川の左岸側を走ってみました。
地名でいうと大湫町や日吉町の山間部を走る形になり、途中で中山道の大湫宿を通過したりと歴史を感じさせる道が多かったです。このあたりは徒歩で散策するとより面白そう。
民家とかまったくない山道を走っていたらいきなり集落や田んぼが出現したりして、道中飽きることがないのがまたよかった。
そんなこんなで、最初から最後まで起伏のある道のりを堪能して丸山ダムに無事帰還。
おわりに
5月といえば田植えの時期、なので田んぼでも見に行くかと軽い気持ちで走ってみたらこんなに風景そのものを純粋に満喫できるなんて、岐阜県はとにかく自分のライドスタイルに合いすぎている。
自然と触れ合いながらポタれる場所ばかりなので、今回回った棚田も春だけでなく四季を通じて訪れてみたい。
おしまい。
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