今回は、関市に本社を置く長良川鉄道の路線である越美南線を辿るポタです。
越美南線は美濃加茂市の美濃太田駅から郡上市の北濃駅に至る路線であり、総延長は72.1km。岐阜県内の第三セクターの鉄道会社の路線としては最も長いのではと思います。
郡上八幡までの道沿いに走っている路線でもあることから存在そのものは把握していたものの、今までは国道156号を走ることしかしてこなかったため、この機会に終着駅である北濃駅まで行ってきました。
長良川鉄道
ただし国道156号はとにかく交通量が多く、そのまま走ってるとなかなかの虚無になるのでちょくちょく寄り道をしていきます。
ここは洲原駅にほど近い洲原神社。
国道のカーブの手前にあるのでともすれば見落としてしまいそうになる神社で、境内のすぐ脇が長良川に直結していたり面積が広かったりととにかく居心地がいいです。
長良川に沿って走っている国道156号は線形的にほとんど最短経路で北部まで走っているものの、国道の対岸には静かな県道(白山美濃線や郡上鮎街道など)があるので、時間を気にしない場合はそっちを走るほうが面白いと思います。
長良川鉄道の線路については、基本的に国道から見えるところを走っているのですぐ確認できます。
突然電車が来たという場合でも分かりやすいのがいい。
長良川鉄道の駅は、今まで走ってきた岐阜県内の路線と同様に基本的に無人駅です。
でも上の画像の通り雰囲気がめちゃくちゃ良くて、さらに駅舎内はもちろんのことホームでのんびりすることが簡単にできる。
ホームの椅子に座って駅前の田んぼを眺めるのもよし、時間を忘れて駅の空気感を味わうのもよし。有人駅だと無料でホームまで行くことができないので、ここは無人駅ならではの良さだと感じました。
この日も5月とは思えないくらい気温が高く、どこか休憩できるところを探していたのでまさに最適の場所といったところ。
そこからは郡上八幡までノンストップで走るつもりが、少し走れば絶景が見えてくるのだから止まらざるを得ない。
川に沿って道が走っているので当然ながらカーブが多く、つまりカーブを曲がった先では非常に遠近感のある風景が楽しめるというわけです。
向こうに見える山々や目の前の川のせせらぎ、田んぼには農作業をする人々、それらが一緒になって視界に入ってくる。こういうのを見るとちょっとあの山の麓まで行ってみるかという気持ちになります。
絶景が一番の補給になるという意見、あながち間違いでもない。
風を感じつつひた走って、中間地点である郡上八幡駅に到着。
美濃からは郡上までは多少のアップダウンはあるものの基本的にフラットな道なので、自転車やバイク問わずツーリングコースとして有名です。
郡上八幡駅は国道156号からは道を一本入ったところにあり、確か自分が一番最初にこの駅を訪れたときはもっと古い駅舎で、それが2017年に開業時の外観に復元されたようです。ちなみに復元前の駅舎はこんな感じです。
駅舎以外はそんなに変わってない気がするので、リニューアルしたのは駅舎だけっぽいです。
長良川鉄道の本数は一日12本。
これがコロナの影響で一部運休していることから、訪問時では一日8本になっていました。電車を一本逃すと次の電車が2時間後とか普通にあるので時刻表はよく見ておく必要があります。
郡上八幡駅は「水の町」と呼ばれるくらい綺麗な川や用水路があり、そして美味しい水が飲めるのが特徴です。これからの時期の岐阜は特に暑くなりそうですし、訪問するにはいい季節になりそうです。
北濃駅を目指して
実は自分が自転車で走ったことがあるのはこの郡上八幡までで、ここから長良川鉄道の終着駅である北濃駅までの道のりは全くの未知のエリアです。
一応、いつか白川郷まで自走で行こうと思っているので今回はその下見としても走ってみることにしました。
今まで通りフラットな道が続くと見せかけて実はずっと上り。斜度で言うと1~2.5%くらいの無視できそうなレベルなんだけど、長い距離を走っていると地味に疲れてくる。
確かに、走っていて横の方を流れていく風景も心なしか高低差があるように思えてきました。
途中で立ち寄ったのは、有人駅である美濃白鳥駅。
これまた風情ある駅。写真には写ってないけど待合室にはストーブが備え付けられており、事前情報がなくてもここは冬になったら極寒の地になるということがひと目で分かる。
自分以外に全く人がいないし、そんな休日の昼前の時間帯にローカル駅にいるという状況だけで心地よくなってくる。
途中の無人駅もまたエモさが堪えられない。
こういう無人駅がほんと好き。ホームが片側しかなくて、必要最小限の待合室がちょこんと設置されてて。夏の日の夕方なんかにはここから郡上とかに繰り出していって夜の散策をしたりしてから帰る。
誰もが忘れかけているような故郷の情景が広がっているような感じ。
この周辺は夏になったらまた絶対に訪れたい。訪れて夏の夜風に吹かれながら散策したい。そう思わせてくるような風景を味わいつつ北濃駅方面に自転車を走らせました。
北濃駅
さっきの無人駅(白鳥高原駅)から長良川鉄道の終着駅までは、実はほんの2.5kmほど。
無限に続くかと思われた線路がここに来てぷっつりと途切れることになります。
終着である北濃駅に到着。
もともと越美南線は本駅で福井県の越美北線に接続される予定だったものの、全通は果たせなかったようです。越美北線の終着駅である九頭竜湖駅とは直線距離で20kmくらいしか離れていないものの、両駅の行き来は今だと徒歩かタクシーでしかできません(路線バスは2002年に廃止)。
終着駅の間を徒歩で向かうのも面白そう。
北濃駅は終着駅ながらも無人駅で、木造の駅舎かつ島式ホーム1面2線を持っています。
樽見鉄道の樽見駅でも同じことを書いたけど、無人駅であることがより"終着"感を演出しているような気がしてならない。その駅止まりの列車も「終着駅」と呼ぶことができる一方で、ここは物理的に線路が無くなっている本物の終着駅。
線路の終わりを見れば否が応でもそれを実感できるし、それが無人駅となればなおさら。
駅の西側には転車台があります。
この転車台、本来は蒸気機関車の向きを変えるためのものだそうで、越美南線で蒸気機関車が現役だった1960年代終わり頃まで使われており、長良川鉄道発足後も使われた時期があるみたいです。
大井川鐵道にある1897年製のものに次ぐ日本最古級の転車台で、それこそ相当に貴重なもの。手動式なのですがなんと今でも普通に稼働できるそうで、もう驚きしかない。
北濃駅は前述の通り無人駅である…のですが、駅舎の隣には飲食店が併設されています。
今はコロナの影響でお弁当の販売のみ行っているものの、朝から一切補給せずにここまで来たのでここでお昼にします。出来合い品かなと思っていたところ、揚げ物についてはなんとその場で揚げてくれるスタイルだったのでほんと嬉しい。
作りたてのお弁当が味わえます。
古い木造駅舎の椅子に座りながらお弁当を食べる。
雰囲気的に完全に駅弁を食べているような感じになっている。例によって人がいないこともあり、静寂の中食べるお弁当はなおのこと格別なものでした。
お弁当を堪能したところでそろそろ帰路につきます。
ここでおすすめしたいのが、道の駅「清流の里しろとり」付近から郡上まで続く県道52号(あじさい街道)~県道61号(郡上鮎街道)。長良川の右岸に沿って走っているこの道、国道156号を走るよりも格段に交通量が少なく、さらに郡上方面はほぼほぼ下りでした。
田園風景が広がる中を35km/hくらいで流していくとたまらなく気持ちいい。車通りが少ない道を走れるならそれに越したことはないわけで、そこに風景が良い点が加わればもう言うことないです。
おわりに
長良川鉄道の沿線はアップダウンが少ないのでとにかく体力的に走ってて楽だし、さらに季節を問わず静かな田舎の風景を満喫できる道が広がっています。
何なら北濃駅まで輪行してから南下していけば結構お手軽だと思います。途中の郡上でも一休みできるし。これはこれからの時期に何度も訪れなきゃなと思えるくらいお気に入りの道になりました。
おしまい。
コメント
コメント一覧 (2件)
2018年まで遡り、2週間くらいかかりましたが、一気読みしました。
続きを楽しみにしています。
とりっくさん
コメントありがとうございます。今後も全国各地を旅していく予定です。