今回は、以前泊まった山形県最上町にある瀬見温泉 喜至楼に再び泊まってきました。
前回泊まった時期は秋だったので、今回は季節を変えて冬に宿泊することに決定。背景としては温泉といえば冬が似合っているのと、山形県は雪国ということで「雪と歴史的建造物」との組み合わせを眺めたかったからです。今回の東北旅の行程は温泉メインで、道中を気にする必要がないというのも決め手になりました。
宿泊記録として同じ宿を2回取り上げることはこれが初めてですが、喜至楼は今まで泊まってきた旅館の中でも個人的に相当のお気に入り。これからも異なる季節ごとに泊まりに行くのはもう確定しているようなもので、現に春先の再訪をもう予定しています。
冬の喜至楼に泊まる
空路から電車へ乗り継ぎ、JR陸羽東線の瀬見温泉駅で降りて徒歩で喜至楼まで向かいました。
おお…前回とは違って何もかもが雪で覆われている。
特に分かりやすいのが山の斜面に積もっている積雪で、冬を象徴するように寒色の色彩がそこかしこに見られる。瀬見温泉は川の左右が山で囲まれているために自然環境の変化を認識しやすく、言い換えれば季節感をより強く実感できるというわけです。これが町の中にある温泉だったら人工物ばかりでなかなかこうはいかなくて、瀬見温泉の良さの一つはその立地にある。
喜至楼の本館前にやってきました。
前回泊まったのは本館2階の101号室(赤字で「国際観光」と書かれた看板がある角部屋)で、今回はその真上に位置する本館3階の112号室。話によると101号室は喜至楼の中で一番人気の部屋らしく、ここから中心に埋まっていくらしいです。前回も今回も、眺めが良い部屋に泊まることができて運が良すぎる。
今日は平日にも関わらず多くの客が泊まっており、これには驚きました。あと滞在中に宿泊者を見かけたのは本館だけで、新しめな別館ではなく年代が古い方が人気なのは宿泊施設としては珍しい気がする。
ひとしきり外観を眺めた後、チェックイン可能時間になったのでフロントがある別館へ。
JR陸羽東線は本数が少なく、チェックイン可能時間にすぐに投宿したいという場合には瀬見温泉駅到着から少し待つ必要があります。ただ今日は気温が低すぎる+雨模様で屋外にいるのが辛かったほか、瀬見温泉周辺には徒歩で行ける範囲に店がありません。従ってぶらぶら歩くか、あとは共同浴場に入って温まるかの二択になります。
館内散策
別館のフロントで滞りなく受付を済ませ、今日泊まることになる本館へ。部屋に着いた後は温泉に入る前に館内を散策し、前回から変わったところがないかを見て回りました。
散策自体は当然ながら前回もやったけど、喜至楼の館内はとても広いのでただ歩いているだけでも楽しくなってくる。宿泊施設に泊まってずっと部屋に籠もっているのは少し勿体なく感じてしまい、自分が今日泊まっているところがどんな場所なのか、どういう部分に工夫が見て取れるかを把握したい気持ちがあります。
結論から言うと変わっている部分は特になく、前回泊まったときと同じ空気がここには流れている。この居心地がいい独特の雰囲気はいつまでも続いていてほしい。
前回は本館3階に宿泊する人がおらず、本館2階から3階へ続く階段から上が真っ暗だったので上がることはありませんでした。今回はその3階に宿泊するので気兼ねなく階段を上ることができて、これはとても嬉しい限り。現代において木造3階建ての3階に泊まれる宿はそう多くありません。
で、本館にいると強く感じるのが照明による明暗の差。
本館は建物の外周部に客室が配置されているので廊下の窓が限られており、照明の数も少ないので必然的に明暗の差が大きくなります。ちょうど上の写真に示している通りに照明で照らされていない部分はかなり暗く、これによってまるで館内を探検しているかのような感覚になれる。3階にはさらに上の会議室へ続く螺旋階段やタイル張りの洗面所があったりと構成要素が多く、好きな人には堪らないと思います。
この建物が現役の旅館で、しかもその客室に泊まれるという事実がさらに良い。館内構造といい必要最小限な照明といい、これを味わいたいがためにおそらく次回も本館に泊まるだろうな。
本館から階段を上がって別館方面へ歩いていると、廊下の隅にストーブが置いてあるのが目に入った。
実は今回の宿泊で一番印象に残ったのがこのストーブの存在で、誰もいない薄暗い廊下を静かに温めてくれているストーブがこれ以上なく愛おしく感じました。
喜至楼の本館客室や廊下にはエアコンがなく、従って寒い時期になると運搬・設置が比較的楽な暖房器具であるストーブが活躍することになりますが、廊下については決して通行量が多いわけではありません。基本的に温泉や食事に向かうときでないと通ることがない中で、そんな僅かな時間だったとしても寒くないようにと配慮がなされている。
その心遣いと、ストーブが発する小さな赤い光。上に乗っかっている大きなヤカンもプラスされて、これこそが冬の醍醐味だな…と感動してました。自分はこういうのが好き。
一通り散策を終え、寒くなってきたので温泉へ。
喜至楼の温泉は別館に1箇所(男女別)、本館1階に2箇所(男女別、混浴)あります。ただ自分と同じタイミングで温泉に入りに来ていた人は少なく、喜至楼を代表する温泉であるローマ式千人風呂は最初から最後まで貸切状態でした。
これがそのローマ式千人風呂。
湯船については底のタイルが所々欠けているために全体が模様のように見え、浴室については見ての通りとても広々としています。窓も大きくとってあって採光は十分。この円形の湯船と、床も壁もすべてがタイルで構成された空間そのものが本当に素晴らしい。何度でも入りたくなる温泉だ。
温度については熱すぎず温すぎずの適温で、長湯が可能です。本館の1階に位置しているのでおそらく喜至楼の歴史はここから始まったと思われ、江戸時代から現代までの道のりを思い浮かべながら静かに浸かってました。
隣に位置する男女別の温泉の方はこんな感じで、楕円形の湯船が一つあります。うまく説明できないんですが湯船の「ヘリ」のところの丸みが絶妙で、ここに頭を乗せて横になっていると快適そのもの。
冬なので温泉に入ったあと部屋に戻るまでに身体が冷えやすいものの、これは何回でも温泉に行けるという意味でとても良かったです。暖かい時期だと身体の熱がなかなか引かなくて温泉に連続して入りにくいし、冷えやすいというのは別にマイナスポイントではない。なんなら部屋に戻る前にもう一度温泉に行きたくなることもありました。
部屋に戻って温泉に行ってを繰り返し、うとうとしていたらいつの間にか夜の時間。
後は夕食を食べて寝るだけとなって、普段の生活と比べたら考えることがとても少ないぶん思考がシンプルになる。日常生活の反動で旅においては色んなことをやろうと詰め込みがちなのに対し、今回のように何もしない時間を多くつくるのも重要だと感じました。
夕食、そして朝
待ちに待った夕食の時間になったので、別館に向かいます。
喜至楼の宿泊プランはスタンダードな「山形郷土料理和食膳」プランに加えて、国産牛ステーキやすき焼き or しゃぶしゃぶが付くプランもあれば、内容を省いたお手軽プラン、朝食のみのプラン、素泊まりなどもあって幅広く対応しています。自分のスタイルに合わせて自由に選ぶことができて、例えば長期宿泊して現代の湯治を楽しむのにも最適。選択肢が多いのはとても便利です。
今回選んだのは鮎や山形牛・山菜・きのこなど、地元産の食材をふんだんに使った山形郷土料理和食膳に、国産牛のすき焼きがセットになったすき焼きプラン。あと追加で、山形県ならではの芋煮を注文しておきました。
幸せすぎる…幸せすぎる…。
温泉に入りまくって身体が栄養を欲していたのか、自分でもびっくりするくらいにスッと完食。すべての料理を合わせると結構な量になって、素材の美味しさと料理の美味しさ、そして満腹感で幸せになれました。
何回も温泉に入ってからの豪華な夕食という黄金パターンは、QOLの向上に密接に繋がっている。準備をされていた係の方の親切心も垣間見えて、夕食の時間は今思い出しても最高でした。
大満足な夕食の後は再度温泉に入りに行き、温まったところで布団に入って就寝。暖かい布団で朝まで気持ちよく眠れました。
さっきは健康のことを書いたけど、温泉旅館って温泉・栄養たっぷりの食事・睡眠がフルセットで堪能できるので健康そのものだと思っています。後ろ2つはどんな状況でも重要だけど、温泉という存在がそれを加速させてくれる。リフレッシュする意味でも、これからも定期的に温泉を訪ねたい。
冬の喜至楼の朝は静かにやってきた。
翌日は昨日からの雨が雪に変わったようで、窓の外を見ると積もりはしない程度に降っている様子でした。その日に雪が降っているかどうかが気になるのも、冬の宿泊の特徴だと思う。
朝風呂を済ませて朝から元気が出る朝食をいただき、今回の喜至楼宿泊はこれで終了。今回も心に残る宿泊となりました。出発の際には新緑の時期もおすすめですよとお言葉を頂いたので、ロードバイク込みで再訪する予定です。
おしまい。
【参考】前回泊まった際の宿泊記録は、以下にまとめています。
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