- Part 1:尾鷲〜石神神社〜磯崎
- Part 2:遊木集落〜九鬼集落〜尾鷲
波田須駅を後にし、新鹿を経由して続いては遊木集落へ向かいました。
遊木集落は例によって国道311号を逸れたところにあり、普通に走っていると遊木トンネルを通ってしまうので町並みそのものを目にする機会がありません。なので、今回のように目的をもって道を走っていないと間違いなく素通りしてしまう存在と言えます。
遊木集落
国道311号は海沿いに走っているとはいっても、基本的に海面から高いところにあります。
したがって、そこから集落に至る道はすべて下り。ロードバイクの加速に身を任せてカーブを下っていくとその先に突然町並みが広がっているというケースが多くて、これが実に冒険欲をそそってくる。RPGで例えるなら道中の町に立ち寄るときの感覚に似ていて、全然知らない土地なんだけどワクワクしてくる。
しかもこれは実際の場所として現実に存在しているわけで、そこを自分が訪れているという実感だけで面白い。
遊木集落は比較的規模が大きく、船の往来も多いです。自分が散策をしている最中でもリアルタイムで漁船が入港してきてたりもしてました。
構造としては非常にわかりやすくて、海抜ゼロメートルの場所に漁港があって、それを取り囲むように山の斜面に家屋が密集しています。平坦な土地が少ない海沿いの地形をうまく活用している様子がみてとれます。
そんな場所にある集落なので、言うまでもなく必然的に階段が多くなってくる。
こういう風に入り組んだ路地裏とか家々の隙間というか、そういう「徒歩でしか行けないような道」にすごく興奮してしまう。
例えば尾道とか長崎とか、ああいう階段で構成された町並みのようなところ。町並みに高低差がある影響で景色がダイナミックになって、横方向だけでなく縦方向に移動することになるので大変といえば大変なんだけど、それがまた楽しく思えてくる。
もちろん、単なる風景を見るという以外にも町並みを散策していく醍醐味は大きいもの。
平日に訪れたこともあって街全体が賑やかな様子で、獲ってきた魚を水揚げしている一角もあれば、魚を加工しているところもある。道端には住民たちが世間話をしているし、ふと海を見ながら座っていたら水揚げした魚の安売り販売の町内放送が流れてきたりもした。それに、今日は天気もいいので布団を干している家々がたくさん目に入ってくる。
自分がまだ見たことがなかった場所で、普段通りの日常が流れている。
これを垣間見えるだけでも今回訪れた甲斐があるというもので、いつもの平日のように自分がパソコンと向き合うながら仕事をしているだけでは絶対に見えてこない光景だ。知らないことを知ることができたとでもいうような、ある種の好奇心を満たした充実感が残っていた。
その後は集落を後にし、道路に面した高台に上ってみた。ここからだと遊木集落の全体像がよく把握できる。
見下ろすようにして見渡した集落は想像以上に広くて、海抜が低いとこからでは見えなかった場所も見えてきた。斜面の上の方の家は大変そうだ…。
最後は一番の絶景ポイントから何度も集落を見返し、次の場所へ向かいました。
国道311号を走る
今回目をつけていた最後の集落は、尾鷲にほど近い九鬼集落です。なのでこのまま一直線に向かっても良いのですが、天気もいいし急ぐ必要はないので寄り道100%でいきます。
以前走ったときは九鬼から山越えをして尾鷲に到着したものの、今回またそれをやるのは正直言って面倒。幸いにして、このままのペースで行けば九鬼集落を散策した後で九鬼駅からの電車で尾鷲まで輪行できそうでした。紀勢本線の本数は想像以上に少ないため、何も考えていなかったのにも関わらずちょうどいい時間に電車があるのは運がいいとしか言いようがない。
というわけで、ここからは輪行する前提でまったり走りました。
高い場所から海を眺めるだけでなく、たまには急勾配な道を下って海まで下りてみる。
そこには地図ではわからなかったような集落が広がっていて、そこをロードバイクで流していく。頬に当たるのは心地よい潮風。頭上には晴天があって、ここだけ切り取るとまるで休日を満喫しているようにしか見えない。でも今日は平日だ。当たり前のように日常が過ぎていって、今夜もまた同じような夜が過ぎ去っていくのだろう。
こういう日にこそ、自分は旅をしたい。
社会人なので色々制限はありますが、できる限りでいいので適度な頻度でこんな体験を続けていきたいと思う。各地を訪れることがいつまでできるのか分からないけど、自分が精神的に満足できるのはまさにこの行程だ。
九鬼集落を歩く
こんなにアップダウン多かったっけなどと疑念を覚えつつも、無事に十分な時間を残したままで九鬼集落に到着。あとは電車の時間までゆっくりと集落内を歩いていきます。
さっき訪れた遊木集落は斜面に築かれた家屋が特徴的だった一方で、こちらの九鬼集落は比較的平地が多い集落です。
これについては前回訪問した尾鷲市の須賀利町のような感じかな。普通に歩く分には、そこまで上り下りすることはなかったです。
比較的平地が多いとは言っても、限られた土地を有効に活用しているという点では変わりません。
家には基本的に庭というものがなく、敷地内のほとんどを家屋が占めています。それでいて家と家との間隔がとても近くて、半ば接しているようなところばかり。
家の形式についても日本家屋が多いことからベランダがある家が少なく、物干し竿を建てるスペースすらないので洗濯物は部屋干ししてるのかなとか考えながら歩いてました。おおらかな雰囲気が漂っているためか玄関は開けっ放しにしている家も一つや二つではなく、とてもゆっくりとした時間が流れているのが実感できます。
良いね。
海沿いの町並みって、どうしてこうも琴線に触れるんだろう。
海と一体となって歴史を重ねてきたという客観的事実のせいなのか、その場所にいると自然と落ち着いてくる居心地の良さがそうさせるのか。よく分からないけど、これからもこの景色をずっと見ていたい。それだけは確かなことだ。
結局、集落の隅から隅まで散策してから駅へ向かった。
初めて訪れた場所なはずなのに、どこか懐かしいような思いさえしてきた九鬼集落。今後もここは自分の中で、ふと行きたくなったら訪れる場所になっていくと思う。
この気持ちの流れというか、「今まで身近でなかった風景が、自分の中で特別になっていく」という感覚は大事にしていきたいと思います。そうやって自分の中の世界をどんどん広く・濃くしていって、心の故郷みたいな場所を全国にたくさんつくっていく。最終的にはそういう風になりたい。
その後は予定通り九鬼駅(無人駅)から尾鷲駅に輪行し、そのままの勢いで夕食まで済ませました。
自分の場合は途中で面倒になったら普通に輪行するので、ライドの際に輪行袋を持ち歩くのはもうマストになってます。たまになんの装備も持たずに走ってる人を見かけるけど、自分の場合はちょっとできそうにない。旅先でトラブルに巻き込まれる可能性もゼロとはいえないし、サドルバッグの中には必ずと言っていいほど輪行袋を忍ばせる方針。
移動手段を複数確保しておくのは、旅においては結構重要。
尾鷲で食事をする際におすすめなのが、尾鷲駅にほど近い鬼瓦さん。
リーズナブルなお値段で、驚くほど新鮮な魚介類を味わうことができます。ここは夜になればお酒の提供もあるっぽいので、今後は尾鷲で一泊して日本酒で一杯やりたいところ。
こんな感じで各地を旅したときに訪れた店がお気に入りになって、その後も訪問の際に立ち寄るケースって実は多い。たまたま寄ってみた店が個人的な当たりで、その味が忘れられずにまた行きたくなるみたいな。
そういったお店も少しずつ増やしていきたい。
おわりに
といったところで今回の三重ライドは終了。最初から最後まで快晴でなによりでした。
突発的に海を見たくなっても、三重県は比較的近いので助かってます。こんな風に一日だけでも予想以上に充実した行程が楽しめる。まだまだ三重県の奥は深いようだし、町並みを散策するのが好きな自分にとっては好きになる県だ。
楽しかった!
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