【若狭鯖街道熊川宿~林道若狭幹線~三方五湖~敦賀】グラベルロードで日本海を一望できる林道を走ってきた

今回はグラベル回です。

福井県小浜市には広域基幹林道若狭幹線という未舗装路があり、そこからの景色が""良い""という情報を得たのでアスペロで走ってきました。

日本国内で程度の良いグラベルがある場所は限られているものの、福井県なら比較的近所なのでアクセス性は良い。いわゆる林道の類は長い区間に渡って補給ができないため、これから本格的に暑い季節がはじまる前に行ってきました。

もくじ

鯖街道をゆく

今回のルートをざっくり説明すると、滋賀県の近江今津駅まで輪行で向かってここからライドスタート。小浜市~林道若狭幹線~三方五湖周辺を走って最後は敦賀駅から帰路につくコースです。

短距離のグラベルだけ走って終わりでは個人的に物足りないため、距離をそこそこ稼ぎつつ舗装路と未舗装路をどちらも味わえるようにしました。あと日帰りライドということで意識して荷物を少なめにしています。

近江今津駅で下車して国道303号線を西へ進み、峠を超えて滋賀県から福井県へ。

季節は春から夏へと切り替わりつつあり、道路脇の風景に目を傾けてみれば水を張った水田の風景が美しい。水田+集落+山々という日本の原風景が広がっています。個人的にこの時期の田んぼの景色が一番好き。

小浜市街へ向かう途中、目に止まった若狭熊川宿 伝統的建造物群保存地区というところに寄り道しました。

京都から滋賀県、それから福井県の間には「鯖街道」と呼ばれる道がいくつか存在していて、これは現代のように道が整備されていなかった時代に若狭国から京都へと物資を運んでいた山道のこと。運ばれるものは魚介類がほとんどであり、その中でも鯖が多かったことから鯖街道と呼ばれるようになりました。

江戸時代にはそれぞれの街道筋に行商人が休むための宿場が形成され、その中の一つが京都から大原~花折峠を経て小浜へ至る若狭街道の熊川宿。つまりいま自分がいるところです。

個人的に一番好きな魚がサバ(塩焼きが特に好き)なので親近感がわきました。今回は特に長居しなかったのですが、次来るときはサバ料理を味わってみたい。

熊川宿の中心部の様子はこんな感じで、自分が好きな古い町並みが続いています。さらに「保存地区」なだけあって電柱などの景観を妨げるものがここにはなく、道幅もかなり広くとってあって雰囲気がとても良い。のどかな時間が流れていくのが分かります。

この日は平日ということもあって観光客はまったくおらず、通りに見えるのは小学校へ向かう地元の小学生が歩いているくらい。休日とはまた違った体験ができるという意味で平日のライドは良いことが多いです。

いいね。とにかく周囲が静かで、聞こえてくるのは用水路を流れる水の音くらいしかない。

自分が今まで訪れたことのある宿場町は、近年だと外国人観光客が多かったりして雰囲気をじっくり楽しむという感じではなかったのに対し、ここでは久しぶりにゆったりできました。

林道若狭幹線から眺める若狭湾

熊川宿を後にして引き続き国道303号を西へ進み、小浜市街を目指していきます。このあたりは進行方向と風の向きが一致していて、40cのタイヤでもアスファルトを快適に走れました。

国道を走っても大して楽しくないので、途中からルートを県道24号に切り替えて走っていくことに。

県道にも関わらず平日でも交通量はそこそこ多かったものの、車道に並走している歩道がかなり広いのでそっちを通ってました。おそらく田んぼの作業をしやすくするために広くとってあるんだろうけど、ロードバイク乗りとしては他の道でもこれくらいあると嬉しい。

地形としては山越えをして山間部から平野部へと入ったことがわかりやすく、南北を山に囲まれた中を快適に走れるので景色の良さも相まって気持ちがいいです。歩道の横には水田がずっと続いているのも個人的に好き。

小浜市街

小浜市街へ到着した後は進路を北にとり、海に面した国道162号を通っていく。道中の道の駅(道の駅 若狭おばま)も含めて林道を走る前の補給地点は多いため、事前に立ち寄っておくことをおすすめします。

「内外海半島」の案内看板
この看板にも林道が示されている

ここまでが今回のライドの前哨戦みたいなもので、つまりここからが本番。今までとは一転して交通量が皆無な「広域基幹林道若狭幹線」を走っていく。

林道への入口については、国道をしばらく進んでいくとエンゼルライン(内外海地区・久須夜ヶ岳)への交差点があり、交差点の根本に大きな看板があります。この看板を通り過ぎてすぐ右側に入口がありました。看板にも林道がちゃんと示されているので分かりやすい部類ではあります。林道の入口は大きく分けて西側・東側の二箇所があり、西側の入口がここになります。また林道の途中にも麓に繋がっている分岐がいくつかあるので、自分が走りやすい行程を選ぶといいです。

次に林道の見どころについて。

個人的な感想としては、この若狭林道の核心部は西側入口から入って行程の半分程度までじゃないかなと思います。後半の東側は展望も比較的少なく、ずっと森の中を道路が走っているという林道あるあるな風景が続きます(もっとも展望が良い林道というのが全国的にも珍しいですが)。今回は走破も兼ねて全線(約20km)を走ることにしました。

まずは尾根まで上ることになる

全線を通して、未舗装率は約半分程度。林道としては山の上を通っているためアップダウンが連続する地形をしており、進行方向によって未舗装路部分が上りだったり下りだったりして一様ではありません。

グラベルを走る際のポイントとして、グラベルはなるべく下りで通るようにルートを決めるというのがあります。グラベルの上りってトラクションの関係で進みづらく、逆にグラベルの下りは重力にまかせて高速で下っていけるため快適という理由からですが、ここでは東西どちらを選んでもグラベルの上りがあるので注意。

まだ夏本番という気温ではないものの、午前中の時点で結構暑くなってきたので木陰の多さが助かりました。

グラベルロードでグラベルを走るにあたって最も重要な要素である「路面状況」については写真の通り。

若狭林道は大きな石や砂利が少なく、締まった砂地が大部分で走りやすいのが特徴です。また路面の陥没も最小限で、大雨が降った後だったとしても走るのに支障は特にありません。個人的な感想としては、これくらいの路面が一番快適に走れます。


日本における未舗装路では、欧米発祥であるグラベルロードが想定している「きれいなグラベル」はほとんどありません。

日本の未舗装路と聞いてまず挙げられる林道は"山"なので急勾配が多くて疲れるし、石は多いし陥没も多いしで気持ちよく走るのが難しい。そんなジャパニーズ林道を走るにあたって今日履いている40cだと少し心もとないと感じていたものの、若狭林道ではロードバイク並の32cくらいでも走れそうな感じ。これは全国的に見ても珍しいですね。

坂道でトルクをかけても滑らずにしっかり進んでくれて、久しぶりに未舗装路を爽快な気分で走ることができました。

若狭林道で最も展望が良いと思われる場所

1つ目の展望台を通り過ぎ、森の中を抜けていくと突如として視界が開けた。進行方向左手に目を向けてみるとそこには広大な若狭湾が眼下に広がっている。ここが若狭林道の核心部だ。

今までの道中ではずっと自分の左右と上部に木々が密集していた。ここに至って唐突な空間的な広がりとともに視界に入ってくる情報量も一気に増えて、しかも自分が上ってきた獲得標高も一目で分かるようになっている。

どこまでも連なる山々のみが見える一般的な林道とは異なり、海に面した林道だからこその圧倒的な展望。唯一無二感が半端なく、ここまで来てよかったと素直に思えるほどの素晴らしい景色です。

自然100%の風景というわけではなく、遠方に港湾や道路といった人工物がわずかに見えるところも素敵だと思う。

しばらくはフラットダートが続く
このワクワク感

あとは…なんといってもこの展望台周辺だけに平地が広がっていること。

平坦な道路と白いガードレール、そしてカーブの向こう側にさらに伸びる未舗装路。自分の知らない道が奥へ奥へとまだ続いているということも加え、スケール感のある高地に未舗装路がセットになっているという盛りだくさんな風景が気に入りました。未舗装路だけ・海沿いの道だけというシチュエーションは他にもあるけど、それらが一緒になっているのはとてもレアだ。

なお今回の装備はこんな感じで、Tailfinのトップチューブバッグを付けただけの軽量装備です。補給は大丈夫だろうと思っていたのでダウンチューブ下のマウントは無し。

アスファルトよりも疲労度が溜まるグラベルに重装備で行っても重くて疲れるだけなので、できる限り軽装で臨みたい(そもそもタイヤが重いし)。特にアスペロは高速グラベルに対応したモデルであって、今回のような走りやすいダートはもっともアスペロにマッチしていると言えるだろう。

改めて見てみると、やっぱりグラベルロードのアスペロには太いタイヤがよく似合っている。40cのタイヤを付けた際の全体のまとまりが32cよりも良いです。

核心部に到着してしばし安堵した後、残りの行程を進んでいきました。展望台から先は尾根を中心に上ったり下ったりが続き、西側よりは東側の方が疲れると思います。

誰もいない森の中を走っていく道中では鳥の鳴き声や木々の揺れる音ばかりが聞こえてきて、一人で走っているのが怖くなるときもある。しかし自然に囲まれた道をかっ飛ばしていくのは純粋に楽しいし、苔むした地面や天然林を間近で眺められるのはグラベルロードという車種ならではの体験。虫がまだ少なくて過ごしやすい時期という背景も相まって、心が洗われていくようでした。

アスペロのPuttyカラーは山の中でより美しくなる。

自然に存在する色だからなのか、林道を走っていると山とフレームとの一体感がすごいです。

そのまま尾根を走って無事に国道162号に合流。最後の方は海が再度見えたほか、路肩が崩落している箇所もあってスリリングな気分になれました。

三方五湖と漁村集落、そして敦賀へ

「若狭林道をグラベルロードで走破する」という当初の目的はこれで達成されました。

JR小浜線ですぐに帰路につく案も考えたものの、走り足りないのでこのままライドを継続して敦賀を目指します。若狭林道の東側入口は場所でいうと三方五湖のすぐ近くだったので、三方五湖の中を経由して若狭梅街道に合流する行程に決めました。

地図で見るとよく分かることとして、小浜~敦賀の日本海沿岸は地形がかなり複雑です。特に三方五湖周辺は5つの湖と海岸線、そしてそれらに付随する道路が複数あって、ただ単に国道を走るよりも楽しそう。

まずは補給

自分が三方五湖を訪れるのはこれが初めてということで、最初はマップをざっと見て見晴らしの良さそうな五湖テラスまで上ってから周辺を一望するつもりでした。しかし実際に向かってみると山の上(レインボーライン)まで行けるのは車とバイクのみであって、自転車は通行できないという標識があって落胆。仕方ないので、湖のほとりに通っている近畿自然歩道を通って北へ。

想定していたルートとは多少異なるものの、この近畿自然歩道が思いのほか走りやすかったです。景観が良い・ほぼ平坦・一周が短いと三拍子揃ったサイクリングに向いている道で、すぐ脇の湖を眺められるという意味で開放感がある。個人的にはどこか瀬戸内海の沿岸部を彷彿とさせるような道が続いていました。

案の定サイクリングに訪れていた一団もいたりして、林道の静けさがそのまま延長されたかのような時間を過ごすことができた。

時計回りに水月湖を半周ほど走り、途中の分岐を曲がって北へと進路を切り替える。

南に位置する水月湖から北の日向湖へと移動すると景色は一変し、漁船が数多く止まっている漁村風景が広がっていました。これは若狭湾に直結している日向湖はほぼ"海"(実際には汽水域)であって、基地として適しているためです。

元々は学校?
ここまでが日向湖の風景

今回のライドでは一部海沿いを走るとはいえ、漁村風景に出会えるとは思っていなかっただけに感動が大きい。湖の周りの僅かな平地を有効活用するために狭所に家屋が密集しています。

日向湖を出たところの若狭湾の風景

日向湖から日向橋という橋を渡った先が若狭湾。

周りを山に囲まれた湖と、地平線の奥まで果てしなく続く日本海のスケール感の対比が美しい。両者間の移動距離がとても短いので自分でも気が付かないくらいにシームレスに切り替わった感があるけど、実際には「湖」と「海」で立場が全く異なっている。この独特な地形も三方五湖ならではだと思います。

下に広がる若狭湾は結構浅瀬になっていて、底が見えるほど水が綺麗なのが分かりました。

敦賀赤レンガ倉庫

三方五湖を過ぎた後は進路を東へと取り、県道225号を走って敦賀へ到着。

時間帯的に気温がかなり上がってきていて最後の方は暑かったのと、あと40cのタイヤでグラベルとアスファルトの混合ルートを走るのは正直疲れました。

今回のライドの走行距離は約100kmで、そのうちグラベルは20km。山あり谷ありなグラベルの低速区間で疲労が溜まった後に32cのタイヤのつもりで時速35kmとか出すと脚が終わってしまうので、今後同じような行程を走る場合は全体を通じて速度は控えめにし、最後まで脚を保たせるようにしたい。

海鮮みなと家
海鮮丼
冷たい越前そば
敦賀駅から帰路へ

敦賀の観光はそこそこにして、有名な海鮮のお店「海鮮みなと家」で遅めのランチにしました。

北陸地方の海鮮はとにかく美味しく、ライド中に眺めていた若狭湾でとれた魚をいただいていると思うと感動も大きい。自分が知らない土地を自分の脚で走り、道中でその土地の名産を心ゆくまで堪能する。実に理想的な一日が過ごせてスッキリした気分になれました。

こんな感じで、今回の福井県ライドは終了。

林道メインのライドということで成分としては山100%になるかと思いきや、後半では海の成分も多めに得られてバランスよく楽しむことができた。若狭林道並に走りやすいグラベルを今後も走っていきたいと思います。

おしまい。


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