TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【松の湯温泉 松渓館】1日1組限定の一軒宿で、名物のぬる湯を味わう (@群馬県東吾妻町)

梅雨なので温泉へ

なんか、ここ数週間の天気があまりよくない。まだ5月なのに雨の日が多いような気がする。

と思っていたらそれは気のせいではなく、意味不明なんですがもう日本は梅雨に入ったようです。令和になってから特に天候がおかしくなってしまって、このまま行くと春と秋が消滅してしまいそうな予感。

で、雨が降ると屋外であれこれやる気があまり起きなくなるので、これからのシーズンはロードバイクはお休みにして、主に鄙びた宿や温泉を巡ることになりそうです。外で運動できないのなら、中で楽しめそうな趣味にシフトする。実に簡単なことだ。

こういう風に、天気に応じてアウトドア⇔インドアの切り替えができるのは自分の趣味のいいところだと思います。両方の趣味を持ってないと切り替えができないし、どちらか片方に偏るのもアンバランスな気がする。屋内、屋外のどちらも楽しめるようにしてきてよかったという感じ。

さて、今回の舞台は群馬県です。

かねてより行ってみたかった宿の予約が偶然とれたので、雨の中訪問してきました。

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松渓館の外観

群馬県の温泉といえば草津や伊香保、万座、老神あたりが有名ですが、その間にぽつんと一件存在している温泉宿。

それが、松の湯温泉の松渓館です。

松の湯温泉にはこの松渓館しか温泉施設がないので、実質的に松の湯といえば松渓館のことを指しています。

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1階部分が温泉、2階部分が客室になっている

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松渓館に至る道は車一台分しかなく、向こうから車が来ると結構大変そう

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まずは外観からチェック。

建物としては左右の2つの棟に分かれていて、左側が女将さん達の居住スペースになっており、右側の1階が温泉、2階が客室になっています。建物の前には車一台分の駐車スペースがあるので、車で訪問した場合はここに車を停める形になります。

松渓館までの道のりもなかなかハードで、対向車が来るとバックで戻ることを覚悟しなければならないくらいに道が細いです。例の駐車スペース付近では一応切り返せますが、それ以外の場所だとちょっと厳しい。

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道路脇の溝には温泉からのお湯が流れていて、その排水口には析出物がびっしり。これは期待できそうだ

この松渓館の温泉は「源泉かけ流し」が特徴なのですけど、建物に入る前からその効能の高さを感じることができました。

建物内部の浴槽から溢れ出た温泉は排水溝を伝って溝に流れていく過程で、その排水溝には大量の析出物が付着している。お湯が触れている箇所にはその成分が析出するのが特徴であることを考えると、これだけの量が付着するということは成分が濃いということにほかならない。

まだここに到着して数分しか経ってないものの、これからの滞在がよりよいものになることがこれで確定した。

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温泉周辺はすぐ近くまで山が迫ってきていて、ちょうど川沿いの谷になったところに建物が存在しています。

季節も春から徐々に初夏へと移り変わってきており、植物の緑色が目に飛び込んでくる。今日の天気は曇りのち雨で、雨に濡れた植物がより輝いて見えた。木々にとっては、これからが真っ盛りのシーズンになりますね。

気温的にはつい先日の間ではもっとも寒…いとまではいかないが、やはり屋外よりは屋内で過ごしたくなってくるようなシチュエーションとなっている。ここまで"温泉に適した"状況が向こうからやってきてくれたのは、今回自分がこの宿に誘われたからかもしれない。

松渓館での滞在

さて、そろそろ予約の際に伝えておいた時間になったので、早速チェックインすることにします。

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階段を上がって2階部分へ

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玄関周辺。奥の部屋が女将さんの居室。左側が入り口。かつては正面奥にある客室も使われていたが、今では使用されていない。

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宿泊客用の部屋は、玄関入って右側にある。向かって左側が厨房。

2階へ続くコンクリート製の階段を上り、玄関を入って女将さんにご挨拶。

この松渓館は女将さんお一人で運営されている宿で、そのため宿泊できるのは1日1組と超限定されています。なので何週間先も予約で埋まっているということが普通で、今回自分が泊まることができたのは運がいいとしか思えません。ふとチェックしてみたら空いていたので、慌てて予約をしたのが記憶に新しい。

しかも、この後女将さんとのお話した中では、来月6月から先の予約が現時点ではできないとのことです。これは女将さんのワクチン接種のスケジュールが未確定だかららしく、つまり自分は本当に良いタイミングで泊まることができたということ。なんか、最近運がいいことばかりが続いている気がするな。

そして、お次はお部屋に案内していただきました。

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今回泊まった「ゆり」の部屋

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泊まったのは、玄関から見て一番右奥にある「ゆり」の部屋。広さは6畳です。

松渓館はすでに書いたとおり1日1組限定なので、どの客もこの部屋に泊まることになるはず。設備としてはファンヒーターや炬燵、あとはテレビ等があって快適で、エアコンはないようですが、場所的に夏場でも涼しいと思うので問題はないと思われます。

隅まで清掃が行き届いていて、屋外の曇天や雨雲が嘘みたいにリフレッシュできました。

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部屋の押し入れ

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窓からの眺め

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目の前の家にも人が住んでいるみたいです

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松渓館の見取り図

浴衣に着替えたところで、目の前の通りの交通量が全くないことに気がつく。

この道の先にも集落があるはずですが、マジで車が全く通りません。まだ日がある時間でこれなので、完全に日が落ちてからはもう無音の世界になることは想像に難くない。静かな場所とは聞いてきたけど、まさかここまで静寂だとは思ってなかった。

今夜は熟睡できそうだ。

ぬる湯を満喫する

まだ夕食の時間まではかなりあるものの、それまでの時間は温泉に費やすことにします。

この松渓館の温泉はぬる湯で有名で、つまり長湯が前提ということ。温泉旅館に泊まりに来て温泉に入るのはごく自然なことだけど、長湯となれば早い時間に入り始めるのが吉だ。他にやることもないし、思う存分湯に浸かることにする。

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1階部分にある温泉

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ここは温泉のほか、宿の倉庫になっている様子でした

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脱衣所

繰り返しになるけど、この松渓館の構造はとてもシンプル。

道路から階段を上がればすぐ温泉へと続いていて、さらに階段を上がれば玄関を経て客室へと続いている。宿泊客は横方向のみならず、縦方向にも最小限の移動で温泉と客室を行き来することができる。1日1組ということを改めて踏まえてみると、まさに「行きたいときにすぐ行くことができる」手軽さも松渓館の売りの一つなんじゃないかなと思います。

温泉がある1階部分についても余分なものがなくて、扉を開けたら脱衣所があり、脱衣所を開ければそこはもう浴室。

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松渓館の温泉。L字の浴槽が源泉かけ流しで、左手前の角型の浴槽が加温された湯。

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静かな松渓館の館内で、湯が流れていく音だけが聞こえてくる

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加温された浴槽の方は、自分で温度調節が可能です

そして、こちらが有名な松渓館の浴槽です。

一般的に「浴槽」といえば四角だったり丸だったりしますが、ここではそんな前提を覆してくるかのようなL字型。源泉はL字の上の方の底から湧き出てきていて、それがL字の右手前方向に流れていって縁から溢れ出ていくという仕組みになっています。

で、この浴槽。

最初はとても奇抜な形なんだなとしか思ってなかったものの、実際に浸かってみるとこれが相当に居心地がいいということに気が付きました。

なんでかというと、浴室のこじんまりとした三次元的な広さと、このL字に区切られた浴槽との相性が実にいいんですよね。仮にこれが区切りがなくて、ただ一つの大きな浴槽だったらそんなに感動はなかったと思う。一人、あるいは二人で温泉に浸かる状況を考えると、自分の左右になんらかの壁があるのが心地よさを増幅させているような気がしました。まあ、これは自分が狭いところが好きなだけかもしれんけど。

この特徴的な浴槽は約30年ほどまえに改装されたもので、源泉湧き出し口の場所を変えずに加温された浴槽を追加できないか、ということで職人さんと女将さんが相談して決めたそうです。当初は単純に二分割したかったけど、湧き出し口の位置の影響でL字になったそう。

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温泉分析書

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さて、浴槽の形に驚いたところで、早速湯に浸かってみる。

壁にかかっている温泉分析書の通り、この松渓館の源泉温度は32.5℃と比較的低めです。32.5℃というと温水プールよりも若干高い程度なので、いわゆる「ぬる湯」の中でも一際低い温泉といえるでしょう。

この日は寒かったはずなのに、そんな温度が低い湯に入って温まれるのか?って話なんですけど、意外や意外、これが思いの外満足できました。言うなれば、暑くもなく寒くもないちょうどいい温度という感じ。

体温よりも低く、外気温よりも高いというこの温度がまさに絶妙で、長湯をしつつも身体が次第に冷えていくという感覚はまるでない。当然ながら温度が温度なのでのぼせるという状況にもなりえないので、文字通りいつまでも入っていたくなるような気分になれます。

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浴槽の縁には析出物が堆積している

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浴槽を構成しているタイルの感じもよくて、お湯に入りながら浴槽ばっかり見てました

建物の外で見かけた析出物はここでも存在感を主張していて、これだけの効能をもった湯が次から次へと湧き出ているのがすごい。

かけ流し状態なのだから当然なんですが、自分が湯に入る前には浴槽には湯が満たされている。そこに自分が浸かると自分の体積分だけ湯が盛大に溢れ出ていくんだけど、ほんのちょっと時間が経つだけで、また浴槽の縁から湯が少しずつこぼれ落ちていく音が聞こえてくる。これが実に印象的でした。

静寂そのものな山間部にあって、聞こえてくるのは嘘偽りなくこの湯の音だけ。源泉温度、浴槽の雰囲気、そして立地。全てが長湯を全力で後押ししてくるような気がして、もう完全に湯から上がるタイミングを見失った。

温度以外の湯の特徴としては、無色透明で硫黄臭があります。手ですくって飲んでみると明らかに濃い味がしたので、析出物という視覚情報以外からでも温泉の強さが実感できました。実質、1時間ほど浸かってから上がるタイミングで明らかに身体が疲れたので、どうやら相当に効いているようです。

加温された浴槽については、これはもう人によって使い方がはっきりと異なると思います。源泉の方と交互に入るのもいいし、出る直前に入って身体を暖めるのもよし。自分は最初は前者をやってたんですが、加温→源泉に移った際にかなり冷えたので、それ以降は上がる前に入るスタイルに切り替えました。もちろん、これは訪問する時期によっても変わってくると思います。

夕食と食後の温泉

そんなこんなで、想像以上に疲れた状態で夕食の時間。

食事は玄関に一番近い「きく」の部屋でいただく形となります。

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夕食の献立

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お米

夕食の内容は、豚のしゃぶしゃぶや塩焼き、野菜の天ぷらなど。

どれもが優しい味付けになっており食欲をそそってくる。一応ビールも頼みましたが、酒に合うというよりは完全にご飯に特化したような内容だと感じました。ならば、と思って白米と一緒におかずを片端からかっこんでみると、これがドンピシャ。後から後から白米がほしくなってきて、あっという間に完食してしまうくらいでした。

温泉の効能で体力を消耗して、それを補うかのように夕食をいただく。大きな目線でみれば±ゼロかもしれないけど、なんかマッチポンプ感があるのは否めない。温泉があるから食事の美味しさが何倍にも増すし、食事が終わればまた温泉に行きたくなってくる。

ましてやここは長湯がメインだし、お腹が減ってしまうのはもう仕方がないこと。そう、仕方ないんだ(モグモグ)。

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夕食から戻るとお布団が敷かれていましたが、まだ布団に潜り込むのは早いので寝る前に再度温泉へ。

長湯をしていると必然的に考え事が捗るので、今回の行程のこととか、あるいは次の旅の行程のことなんかを考えながらぼんやりと湯に入る時間。特になにをするわけでもなく、自分の頭の中だけであれこれ思考をして、身体は脱力しきっている。例えば本を持ち込んで読むのもいいけど、どちらにしてもここでは「自分ひとりの時間」を最大限に満喫することができる。

そういえば女将さんも(いい意味で)あまり干渉してこないし、宿での滞在中を通してこれほど静かに時間が過ぎ去っていった経験はあまりない。ここには俗世間の喧騒は入ってこないし、そういう時間を過ごしたいという自分みたいな人間にとっては大当たりの宿だ。

そんなことを考えながら暗くなった階段を上がり、いそいそと布団に潜り込んだらいつの間にか寝ていた。

翌朝

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翌朝の天気は完全に雨で、朝からシトシトという雨音が部屋にうっすらと聞こえてくる。

朝食前に温泉に再度入り、眠気を飛ばそうと思ったら余計に眠くなってきた。L字形の浴槽の右側は底が若干浅くなっていて、ここに寝転がるようにして浸かると考え事をしやすいということに昨夜気がついたんだけど、朝にやると二度寝するレベルで眠くなります。おすすめ。

雨の時期特有の湿った空気と、浴槽内部の湿気が混じり合ってなんだか不思議な感覚になっていた。

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朝風呂

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朝食

そのままの勢いでまたしても1時間ほど浸かり、温泉から朝食へとスムーズに繋がって朝のニュースを横目で眺めながらご飯をいただく。

温泉旅館での朝の時間は、やはり早い。温泉に入っている時間が長いというのもあるけど、食事の時間を抜けば一瞬で夜から朝になったように錯覚してしまう。なので宿を去らなければならない時間も当然ながらすぐに来てしまうというわけで、毎度のことながら旅館での翌朝は結構鬱になってます。

というわけで、こんな感じで松渓館に泊まってきました。

宿を去る前には女将さんにあれこれ温泉のお話も伺えたし、松渓館にファンが多い理由は温泉の良さに加えて、女将さんの人柄の良さなのは間違いない。次は寒い時期にでも訪れてみたいものです。

女将さんのワクチン接種の日が確定すれば来月以降の予約も再開される上に、これからの暑い時期はまさにぬる湯のシーズンといっても過言ではないです。山間部の一軒宿で、思う存分温泉を味わってみてはいかがでしょうか。あ、松渓館は1日1組限定なので、ご予約はお早めに。

おしまい。

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