TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

【遠野物語】ロードバイクで民話と怪異の世界・遠野を走ってきた

大沢温泉へ

今回の舞台は岩手県です。

前回までの瀬戸内の島々を巡る「海」の要素とは正反対の、いわゆる「山」の要素をちょっと楽しみたくて、例によって宿泊地と行程を前日くらいにささっと決めました。

こういうときはなんといっても移動手段がネックになるところですが、名古屋から全国各地に路線が出ているFDAがここでも役に立ってくれました。東北地方だけでも山形や花巻、青森に飛行機一本で行くことができるし、自分のように突発的な旅をする人間にとっては頼りになる存在。今後もお世話になる機会は多いと思います。

で、行程としては社会人の一般的な休日である一泊二日。

この限られた時間の中で旅を楽しむためには、行く先を絞ることが重要になってきます。ここもあそこもと選択肢を広げすぎると、自分の経験上ロクがことがない。というわけで、今回は大沢温泉での宿泊と、遠野市周辺を走ることの2つをやっていきます。

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もはや週末の行動の一部と化したFDA輪行を行い、気がつけばすでに花巻市の上空にやってきていた。

こうして上から眺めてみると、花巻周辺の景観は本当に素晴らしいものがありますよね。平野部は田んぼがその大部分を占めていて、田んぼと田んぼの間に少しずつ家屋が建っている。この時期だと田んぼには水が張られており、まるで巨大な湖の上に町が形成されているように見える。

限られた平地部分をとにかく有効活用した結果がこれなんでしょうけど、6月に訪れるとさらに見応えがありました。

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というわけでライドスタートですが、実を言うと今日はそれほど走る時間がありません。

なぜかというと、FDAの減便の影響で花巻に到着したのが正午過ぎ(しかも一日一便しかない)なので、ここからどこかに行く余裕がそれほどないからです。コロナの影響は航空業界に如実に現れていて、それほど搭乗者数が多くない路線はガンガン減らされているというわけです。自分としてはFDAに乗るくらいしか応援できる要素がない。つらい。

なので、この日泊まることになる大沢温泉もそんな理由から決めました。大沢温泉だったら花巻空港から30km程度しか離れていないので、道草を食いながら早めの時間に投宿する場合にはちょうどよかったからです。

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円万寺観音堂からの眺め

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大沢温泉までの道中で立ち寄った円万寺観音堂からは、先程航空機の上から眺めた花巻の様子(北上平野)が見渡せました。やっぱり田んぼの中に家屋が点在していて、周りの目を気にせずに生活できそうな感じ。

しかも、こうしてみると家ごとにちょっとした林というか、防風林?があるのが不思議です。風が強いのでそれを防ぐためなのか、はたまた他の理由があるのか。

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その後は去年の冬に宿泊した藤三旅館の方まで行ってみたり、かと思えば途中のお堂で昼寝をしてみたりして時間をつぶす。

要は大沢温泉のチェックイン時間まで待ってるだけなんですけど、何もしないでただ待つよりもこういう風に過ごすのが好き。

いや、「何もしない」という意味では行動的に同じなんですが、現地の雰囲気を大事にしたいというか。何なら文庫本でも持ってきて、木陰で休みながら読むのもやりたかったかな。

大沢温泉に宿泊する

この日泊まった大沢温泉 湯治屋の宿泊記録は、別記事でまとめています。

遠野を走る

そして、大沢温泉での一夜が明けた翌日。

旅館での朝は居心地がよく、必然的に出立の時間もズルズルと遅くなってしまうもの。あくまで「ライド」だけにこだわるのなら出発は早いに越したことはないけど、自分の旅においては宿泊とライドをいい塩梅でやっていくように心がけています。どっちかに偏りすぎるのはあまり好きになれない。

宿で過ごす時間が楽しくて面白いのなら、その後の行程もそれに応じたものにするべきだ。急ぎすぎてもいいことはないし、いつもどおりの時間感覚で今日も過ごしていくことにする。

なので、今日はまず輪行で遠野へワープし、あれこれ回りながら花巻空港まで戻る行程にしました。行きも自走にしてしまうとあまり時間に余裕がないので、走るのは復路だけ。

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電車…めっちゃ楽やな…。

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遠野駅

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遠野駅に到着。

今回遠野を走ることに決めたのはなぜか、というのをちょっと書くと、岩手県遠野市はかねてから自分が訪れてみたかった場所だからです。

遠野の存在を知ったのは、この記事のタイトルにもあるように柳田国男の「遠野物語」から。日本の民俗学の先駆けともいわれる本作には、神を奉る行事や風習、さらには妖怪などといった「土地」にまつわる事柄が多く載っていて、当時の自分はこれにハマった覚えがあります。

話は変わるけど、西村京太郎や内田康夫、司馬遼太郎などの作品を読んだ際によく思うのが、文字のみで書き表せられる風景とか情景って"良い"ということ。そこには写真とか絵といった情報は一切なくて、読み手は書き手の文章からその場面を想像することになる。これが自分は結構好きで、上に挙げたような作家の作品を読んだ結果、実際にその土地に行きたくなったということが多いです。

旅のきっかけは色々あるし、旅の仕方もいろいろある。それぞれが一人ひとりによって異なっているのも、旅の面白いところの一つですね。

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卯子酉神社

さて、遠野駅で輪行を解除し、最初に訪れたのは駅の南にある卯子酉神社

こじんまりとした境内に入ると赤い布が数多く垂れ下がっている光景に驚かされますが、これはこの神社のご利益にあやかるためのもの。卯子酉神社は縁結びの神様として非常に有名で、願い事を書いた赤い布を左手だけで結ぶことができれば、願いが成就すると言われています。

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一般的な神社ではまず見かけることのできない光景なだけに、初見ではちょっと驚きました。しかし、神様にお願いごとをするという目的からすると、まさに神社っぽい風景だと思います。神社には神様がいて、人々は何かを願うために神社を訪問する。

自分はどちらかというと、目的そのものよりも場所としての雰囲気を重視しています。単に居心地がいいから長居したりもしてますが、最近では単にそれが目的となってしまって、本来の意味を見失いそうになっていました。ここは、あくまで神聖な場所。それを忘れずにいたい。

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そこからは特に目的地もなく北へ進み、山口の水車やデンデラ野などを散策していく。

しかしあれですね、「遠野を散策している」という先入観のせいか、どこをみてもふと妖怪が視界に映りそうな気がしてならない。特にデンデラ野周辺は田畑が多いんですが、まさに水にまつわる妖怪が登場してきそうな静けさがありました。

というか、遠野は想像以上に出歩く人が少ないです。田植えの時期なので農作業をする人が多いと思ったけど、これは意外でした。

あ、ちなみにデンデラ野は遠野における姥捨て山のようなところで、60歳を過ぎるとここに送られていたようです。

でも、完全に放置状態だったかというとそうではなくて、昼間は里へ降りて農作業を手伝ったりし、そこで報酬として食べ物をもらってデンデラ野にある住居に帰る、という流れ。姥捨てというともう二度と会えないようなイメージがあったものの、遠野でいうそれは割と平和的なものでした。

河童へ会いに

デンデラ野を後にし、お次は直に妖怪そのものが出没するスポットへ。

たぶん遠野では一番有名な場所ではないかと思われる、カッパ淵へやってきました。

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カッパ淵の近くには河童注意の看板が

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カッパ淵

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カッパ淵は、常堅寺というお寺の裏側にある小川のことで、かつてここには河童が多く住んでいて人々を驚かしたといいます。

河童の生態をよく知らないのであれなんですが、河童はどういった特徴の川に住んでいるんでしょうかね。単に水がきれいなところを好むのか、それともある程度の茂みがある川の淵がいいのか。確かにカッパ淵周辺には結構な茂みがあるので、河童は普段はここに潜んでいるのかもしれません。

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許可を取れば河童を捕まえられるそうです

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カッパ淵へ続く道

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小さい子が間違って進まないように立ててある看板も河童仕様。やさしい感じがする。

河童が実在するのかどうかについては明言を避けたいところではあるものの、遠野だとマジでいそうな気がしてくる。

先程通ったデンデラ野周辺もそうだけど、遠野は町並みが独特なんですよね。家屋も昔からの古い建物ばかりだし、それでいて自然が至るところに溢れている。言い伝えによって現代まで残っている「伝承」という側面からみると、遠野はその舞台としてぴったりだと思います。

新しいものよりはどちらかというと古いものが好きな自分としては、遠野の風景はどこもかしこも美しく感じる。単に人が少ない田舎ではなく、人間以外の存在も一緒に暮らしているような。そんな感覚になりました。

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近くで売っていた座敷わらしソフトクリームを舐めつつ、妖怪つながりでもう一つ話をすると、遠野は座敷わらしが多くいるところとしても有名です。

いや、遠野というよりは岩手県全体で座敷わらしが多いみたいで、岩手県の各地には座敷わらしに会える(かもしれない)宿があります。有名どころだと金田一温泉にある緑風荘がそれで、特に座敷わらしに会いやすいという本館母屋の奥座敷「槐の間」は数年先まで予約で埋まっているというニュースを昔見たことがありました。

ただ、その本館母屋は2009年に火事で全焼してしまいました。2016年には営業再開されたものの、できるなら過去にタイムスリップして、昔の緑風荘に泊まってみたい。

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その後は、カッパ淵にほど近い伝承園の御蚕神堂でオシラサマ(東北地方で広く信仰されている家の神様)を見たり、遠野郷八幡宮で物思いに耽ったりしてました。どれも有名な観光スポットなんですけど、なんかあまり観光地感がなくてかなり過ごしやすかったです。それほど人がいなかったので、特に1000体のオシラサマが祀られている御蚕神堂はじっくり見学することができました。

天気については、最初は曇りだったものの、この時間帯になるとかなり晴れ間が見られてよかったという感じ。天気に期待しすぎると、予想した快晴じゃなかった際に結構テンションがガタ落ちするので、最近では期待値を低く持っておくようにしています。

とはいえ、遠野のゆったりとした時間の流れは天気によらず素晴らしいもの。最初はそれほど散策する時間がないかなと思っていたものの、終わってみれば自分でも驚くくらいにロードバイクであちこちを回ってました。平野部が多いので向こうの景色も視認しやすいし、次の目的地の方角を眺めながら走るのも楽しい。

あと、ある場所に留まって時を過ごすというのが気持ちよく感じられたのが遠野の特徴の一つ。

ここでじっと待っていれば、なんか人間じゃない何かに会えそうな予感がする。妖怪、神様…そんな存在が身近に感じられる。それが、短時間の滞在ながらも自分が感じた魅力です。

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最後は、宮沢賢治の世界観が感じられる宮守川橋梁で寄り道をし、運良く通りがかった電車を眺めながら休憩。そのままの勢いで田園地帯を突っ切って花巻空港へ帰還しました。

風向き的には思いっきり向かい風で、風速は終始3メートルほど。この時期はどうにも風が強くて参ってしまうけど、この前に十二分に満足した行程を経ているので気にならない。行程中のどこかで何か嬉しい出来事が起きてくれれば、あとのことは全部チャラにできる。これからもこんな単純な性格でいたい。

というわけで、一泊二日の岩手旅はこんな感じで終了。相変わらずFDAを使えばそこそこの機動力を得られるので、行程に応じて気軽に東北を訪れていきたいです。そもそも今年の抱負が「東北地方をたくさん訪れる」なので、中部地方での登山の割合を多少削ってでも、東北訪問に注力していきたい。