今回はロードバイクで岡山県の備前市と瀬戸内市を中心に走ってきました。
このときの主な目的は岡山県の古い旅館に泊まることでしたが、宿泊だけするのももったいないと思ったので瀬戸内海周辺のライドを追加することに。
牛窓の町並みと猫
岡山県の沿岸部は場所によっては工業地帯だったりするので、景観を求めるなら備前~瀬戸内~玉野の区間を走るおすすめです。さらにもう少し進めば小豆島や直島、豊島といった「瀬戸内海の島々」も選択肢に入ってきて、広島県の影に隠れ気味ではあるものの岡山県も瀬戸内サイクリングに向いている。
今回走ったのは備前市街地から一直線に牛窓を目指し、ランチをとった後は海岸線沿いに備前市まで戻りつつ虫明林道を通るルート。走行距離を控えめにして美味しいところだけ巡ることにしました。個人的には鄙びた宿へはチェックイン可能時間になったらすぐに到着したいと思っているので、これくらいがちょうどいい。





アップダウンが少ない県道39号を主に走って牛窓に到着。
牛窓は江戸時代には瀬戸内海を行き交う船の寄港地として栄えた地であり、現在ではその海の青さを求めて観光客が訪れる場所になっています。
今日は風がとても強いために港に押し寄せる波が高い上に、空を見上げれば雲の動きが早く感じられる。牛窓の観光客が多いのは春から夏頃ですが今回自分が訪問した季節は秋の終わりごろ(12月初旬)。比較的静かに散策をすることができました。






港から徐々に東へ移動していくと古い町並み(しおまち唐琴通り)があり、ここには飲食店やカフェが並んでいます。
そこを通り過ぎて牛窓灯籠堂跡や五香宮に到着し、さあ参拝しようと石段を上がっていくと道端に猫を発見。しかも一匹ではなく、複数匹が寒さをしのぐために草むらに隠れているようでした。



よく見ると駐車場にも猫がいてアスファルトの熱を暖を取っている様子です。今日は日中の気温がそこそこ寒いのにも関わらず装備を軽視したことで風の強さに辟易していたところ、思いがけない出会いがあってほっこりしました。どの子を見ても結構でかいため、おそらく地域猫として愛されているようです。
旅先で猫に遭遇すると、その後の予定をしばし忘れて猫の相手をしてしまう(相手にしてもらえないことも多いけど)。



この辺りでお腹が空いてきたので、近くにある海岸物語というお店でランチにしました。
このお店、「ランチ」の表示がなかったら見落としてしまいそうになるほど表通りの景観に溶け込んでいる。内装についても民家を改装したようなアットホームな雰囲気があります。


注文したのは「土日限定スペシャルランチ」で価格は1300円。内容はと言うとボリュームがとてつもないハンバーグと大エビフライ、そしてサラダとライスがセットになっています。写真だと伝わりづらいかもだけど量が本当に多い。
ハンバーグはよくある薄くて面積が大きいタイプではなく厚みがあるタイプで、上にかかっているデミグラスソースも合わせて味が絶品。これをナイフとフォークで口に運んでいくともう堪えられない。カラッと揚がっている大エビフライは2本も付いている上に、これまた手作りのタルタルソースも最高の一言。完食する頃にはお腹いっぱいになっていました。
どの品も手がかかっていることが何も言わなくても伝わってきて、事前情報なしの状況でここでランチを取ることを決められたのは運がいい。ここはぜひとも再訪したいと思います。







ランチの後はライドを再開し、海沿いを通って牛窓神社方面へ。
小さな港から海へと降りる階段では波の到達に伴って階段が見えたり見えなかったりして、海沿いの景色って「海」という動きがある要素があるから好き。動きがない景色はどこか退屈な部分があるので、川や海などの夜要素があるとより楽しめる。
牛窓神社近くの田園地帯に入ると下り坂の向こう側に海が見えるアングルが多く、こういうのどかな時間が流れているのが秋から冬の牛窓の良さだと感じました。昔からの人々の生活と海とがバランスよく合わさっていて、それはこれからも続いていく。絶景ではないかもしれないけど自分は生活感のある風景が好きです。
絶景の未舗装路、虫明林道
錦海塩田 締切堤防を過ぎて一本松IC近くに至り、さらに地元の人しか通らないような県道225号 虫明長浜線を走って東へ向かっていく。
このあたりは海岸線近くに小高い山がいくつかって、道はその山間部を抜けるようにして通っています。従って集落→山→集落という順番で景色が移り変わっていくので飽きることがない。地形的には四国(特に愛媛県や高知県)っぽい感じですが、平地と海が主体的な岡山県の瀬戸内海側で同じ体験をするとは思ってませんでした。




入り組んだ山道から一転して海抜ゼロメートルの海へと下り、虫明湾に到着。ちなみにさっきから登場している虫明という地名は「むしあげ」と読みます。たぶん初見で読める人いないと思う。
岡山県は牡蠣の養殖地として全国的に有名であり、ここ虫明湾は県内の牡蠣養殖水揚げ量1位(!)の生産量と、約100年前から牡蠣を獲っているという歴史を誇っています。なんでも虫明は潮の流れが穏やかで海水の塩分濃度や栄養分がちょうどよく、結果として良質なプランクトンが多くて牡蠣の養殖に向いているとか。




湾の良いところは、海を挟んで対岸に連なる町並みが視認できること。
海沿いの景色は確かに素敵なものの、陸側から海側を見てもどこまでも続く海が見えるだけ。しかし瀬戸内海であれば海に浮かぶ島が視界に入ってくるし、場所によってはこのように向こう側の陸地や山、家々も見渡せて一様ではないというわけです。


そしてこれから走っていくのが虫明湾(邑久町虫明)を起点とする虫明林道です。虫明湾を出発して県道465号の一部に合流するこの林道は前半が海に面しており、後半は山の中を抜けるメリハリのあるルート。
振り返ってみればこれほど岡山県らしい、虫明らしい道もなかなかないだろう。






その理由がこちら。
瀬戸内海に面した見通しの良い未舗装路に、海側に視点を移せば見えてくるのは牡蠣養殖のための筏。海沿いの林道というだけでも珍しいのに瀬戸内らしい「海+島」の組み合わせ、加えて岡山県、いや虫明にしかない「牡蠣」という要素がフルセットで体感できる。林道の海側は木々が少なくて湾全体を見渡しやすいのも感動に拍車をかけています。
秋の穏やかな気候の中、素晴らしい景観を眺めながら自転車を走らせる。旅館への投宿前だと言うのにいきなりクライマックスがやってきたかのようでした。







"牡蠣ゾーン"が終わると林道の海側にも木々が生えてくるようになり、同時に路面状況が地味に悪くなります。しかしタイヤは32~35cほどあれば特に問題ありません。
林の中に入ったことで秋ならではの紅葉も楽しむこともできて、秋の時期の訪問していることが予期せず良い方向に働いている。春や夏だったら緑一色で変化があまりないし、これはシンプルに予想外で嬉しい。旅先での出会いをより満足のいくものにするためには下調べをあまりせず、頭を空っぽにして楽しむのがベストだと思ってます。



さらに進むとだだっ広い平地が現れます。特に施設も何もないですが目印があり、パラグライダーの発着所になっているようです。
虫明林道の核心部はこの平地までのほんの1km強の区間。距離的には物足りないかもしれないけど景色の良さは突出しており、例えば日没間際の夕焼けの時間帯に訪問するとまた異なった印象があるかもしれません。
備前焼の町を訪ねて
虫明林道を走ったところで、後は宿に向かうだけ。県道465号をヒルクライムして太平山IC近くから県道182号~県道39号(備前牛窓線)を走って備前市街地へ戻ります。
その途中に立ち寄ったのが、JR伊部駅周辺に広がる古い町並み。今日宿泊する宿にも関係している備前焼のお店を眺めに行きました。








駅の北部には町並みの中に備前焼の陶芸家の店が並び、店頭には代表的な作品が展示されていたりもします。
特に西国街道(旧山陽道)沿いには店が多く、備前焼を眺めながらフラフラっと歩いていたら結構な距離を移動してました。自分は日本酒が好きなのでお猪口とかに凝ってもいいかな…と考えてみたり。
その後は今日の宿であるゑびすや荒木旅館に移動して一泊しました。宿泊記録は別記事にまとめています。
こんな感じで今回の岡山・備前市~牛窓ライドは終了。岡山南部の魅力をまた一つ発見できて嬉しかったし、今度は別の季節に訪問してみたいです。
おしまい。
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