今回の目的地は三重県です。
三重県といえば以前伊勢志摩を走って廃校に泊まったのが非常に想い出深く、そのときはライドの折り返し地点が南伊勢でした。今回の旅は、そこからもう少し南下した場所には一体どんな景色が広がっているんだろうかと気になったのがきっかけです。
道はどこまでも繋がっているので、わざわざ行程を計画してなくても、その都度ちょっとずつ足を伸ばしていけばいずれは気になるところを全部回れそう。
湯の峰温泉~熊野本宮大社に参拝
電車で新宮駅まで輪行してスタートです。今回の目的は1つではなくて、
- 温泉に入ること
- 三重の海沿いを走ること
の2つです。当初は海沿いを走るだけを計画していたものの、全国的に暖冬だった気候がこの日から一変し気温がかなり低くなりました。そこで旅の前日にやっぱり温泉も必要ということで行程に組み込みました。
冬に寒いなか走ってわざわざ温泉に入りにいくあたり、自分でもよくわからん行動してんなと思います。
新宮駅からは熊野川をひたすら上流側に向かって走ります。
熊野~新宮あたりは以前熊野古道を歩くときに何回か通ったことがあって、そのときの移動手段は全部バスだったので自転車で走るのは今回が初めてとなります。
道としてはアップダウンもなく、非常に走りやすい。
熊野古道(+本宮大社)と熊野川は切っても切り離せないほど繋がりが強く、熊野古道を歩く登山的な意味でも個人的にとても印象深いです。奈良県から大峯奥駈道(山の中をひたすら歩くルートで有名)を4日間歩いて、最後に熊野川が見えたときの感動は忘れられない。
熊野古道は中辺路や小辺路、大峯奥駈道など様々なルートがあって、登山や歩くのが好きという方には間違いなくおすすめできる道。
もちろん正式な目的としては熊野詣、つまり参拝に分類されるものの、めちゃくちゃ縦走の難易度が高いというわけでもないのでむしろハイキング的な気分で行くのもいいと思います。本宮大社周辺に限れば散歩気分で歩けるコースもあります。
最初の目的地に着きました。
熊野本宮大社のやや南に位置する「川湯温泉」と「湯の峰温泉」です。
川湯温泉はその名の通り河原に温泉が湧いており、湯の峰温泉は古の人々が熊野詣の旅の途中にここで湯垢離を行い、聖地での禊ぎと旅の疲れを癒したとか。
今回は湯の峰温泉に入ることにしました。
湯の峰温泉には大きく分けてつぼ湯・一般湯・薬湯の3種類の温泉があります。
つぼ湯は熊野詣の湯垢離場として世界遺産に登録されたほど有名な温泉で、これ目的に湯の峰温泉を訪れる人も少なくありません。つぼ湯は番号札制(最大30分)で、場合によっては数時間待たないと入れなかったりしますが、感想としては何かしらの疲れに効いてる感がとんでもないほど高いです。
湯の温度が高いからなのか、入った途端から身体の隅々まで湯が浸透している感じ。
というわけで熊野古道を歩いて疲れた方もそうでない方も、ここ周辺の温泉でまったり一休みしてみてはと思います。
まったりしすぎて若干眠くなった気分で、そのまま本宮大社にも参拝。
この時期は観光客もそこまで多くなく、混雑とは無縁で参拝できるのがいい。本宮大社も大斎原もじっくり見て回れました。
神社って無限にのんびりできる空間の一つだと思ってます。
うまく言えないんだけど周りの音が気にならないくらい気持ちが静かになって、そのまま寝てしまいそうになるくらい。
人ぞれぞれに安心できる場所というのがあって、自分の場合は神社や寺がそれに相当する。前回の高山ライドの記事でもちらっと触れましたが、周囲の自然と一体になってる雰囲気がそうさせているのかもしれません。
いっぺん、神社を巡るライドを計画してみようかな。
丸山千枚田~熊野での宿泊
今日はもう少し走ってフィニッシュといきたい気分だったので、少し寄り道をしてみました。
先程走ってきた熊野川沿いの国道168号は途中で明日メインで走るルートである国道311号に変わっており、これからその国道311号を走って熊野市まで向かいます。
そもそも国道311号は尾鷲市から田辺市を結ぶルートであり、現在地周辺だと本宮大社をかすめるようにして西へ伸びています。このまま田辺へも行けるし、熊野市経由で尾鷲市にも行ける。そんなルート。
国道168号と国道311号の境界付近は県境も多少複雑になっており、この看板を見たときに自分はいつの間に奈良を走ってたんだと混乱気味になりました。
Googleマップで見ると分かりやすく、実はここも奈良県の一部だったんです。
ここでまた話が少し逸れるけれど、本宮大社前の国道168号をそのまま北上していくと温泉で有名な十津川村を経て五條市に行くことが可能です。
こっちはもう少し暖かくなって、山間部を普通に走れるくらいになったら行ってみたい。
交通量皆無な道を走って到着したのは、日本一の棚田景観として知られている丸山千枚田。
日本の棚田百選の一つに選ばれているくらい非常に有名な棚田です。
こちらも十津川と同じように5月くらいにまた水が張った景色を楽しみに再訪したいところだけど、この時期の訪問もかなりいいんじゃないかなと思います。
なんでかというと全く人がいないから。
その分自分のペースで見て回ることができるし、周りの喧騒に巻き込まれることもない。
観光地って、やはり見頃な時期は観光客もとんでもなく多くて散策するだけでも大変になってくる。なので、平日に行ったり人が少ない時間帯を狙ったりするのも一つの案だったりする中で、あえて田園を冬に見に来るというのもいいと思う。
実際、こんなふうに景色を独り占めできてるわけだし。
今は粛々と春を待つ季節ということで、のんびり待ちましょう。
三重の山間部は色々と走ってみたい場所が多いことだし、暖かくなるのが待ち遠しいです。
その後はノンストップで熊野市まで走り、宿にチェックイン。
休憩もそこそこに、前回の高山ライドで味をしめた「夜ポタ」に出かけることにしました。
夜ポタ楽しすぎる。
その土地の生の風景を見ることができるのは、とても楽しい。
熊野周辺を訪れる観光客は新宮とか尾鷲に宿泊するパターンがほとんどみたいで、熊野市に泊まる人はあまりいないみたいです。実際、宿もそんなにありません。
夜の散策をしていても出会うのは地元の方オンリーだったりするし、なんならちょっと走っても町の灯りだけしかないということもしばしば。
誰もいない夜の街を味わうの、結構面白い。おすすめ。
ふと目に止まった銭湯が気になったのでそのまま入ってみました。
ここの銭湯がもう最高で、自分が特に好きな「番台を挟んで男湯女湯が別れているタイプ」だった。完全に地元の方しか入りに来ないような、町に溶け込んでいるような銭湯でした。
今までは積極的にこういう「地元の方がよく利用している施設」を探そうとは思ってませんでしたが、旅の際にこそ訪問すると楽しめる場所の一つだと気づいたので、これからはちょっと下調べしてみようかなと思ってます。
販売されている飲み物も瓶タイプしかなくて、自分で栓抜きを使って開けて飲む形式でした。
熊野~尾鷲へ
温泉ライドから一夜明けました。
今日は主に海沿いを走って、たぶんあるであろう漁村を見て回るライドをしたいと思います。例によって特にコースは決めてなくて、出会う風景をありのまま楽しんでいく。
最初に訪れたのは、熊野市の中心街からほど近い鬼ケ城。
ここはいわゆる海岸景勝地で、熊野灘の荒波に削られた大小無数の海食洞が地震による隆起によって階段上に並んでいます。
東に位置する鬼ヶ城センターから海沿いをぐるっと回れるように通路が設けてあって、これがめっちゃ怖い。海に面しているどころか、道のすぐ脇が断崖絶壁で、観光地としては個人的にかなり恐怖度が高いイメージを受けました。
しかしその分海の眺めは素晴らしく熊野灘を一望できるほか、熊野~新宮まで続く七里御浜もよく見えます。
初っ端から海の景色を堪能したところで、今日の走行ルートを考えると景色的には海尽くしなのではという予感がしてきた。
鬼ケ城からそのまま北(尾鷲方面)に向かうと国道42号を通ることになりますが、今回のライドは国道311号を思う存分堪能するのが目的なので海沿いにハンドルを切ります。
国道42号と国道311号の分岐点から数km走って理解できたこととして、国道311号は走ってて気持ちよすぎる道だということ。
なにこれってくらい景色がいいし、交通量は皆無。海沿いを走るだけでこんなに爽快な気持ちになれるのかってくらい素晴らしい道でした。道としてはJRの駅を繋ぐように走ってはいて、自転車専用道路なのではないかと錯覚するほどの快適さ。
アップダウンは多いものの、一言で言うなら「静か」な道が続きます。そして景色の見え方の緩急がすごい。
海岸沿いにへばり付くように道が走っており、山の中を走っていたかと思えば突然集落が目の前に広がったりする。三重県の海沿いは海面からの標高が高いため集落もそれに準ずるように高低差を伴っており、道沿いから見える風景も幅だけでなく高さ方向にも奥行きがあるというわけ。
ライドメイン~風景メインの間隔もロードバイクで走っていると本当にちょうどよく、ロードバイクと相性がいい道です。
それにしても面白いくらい交通量がない。
国道42号は本当に交通量が多くてちょっとだれるので、どっちかというと国道311号を走って景色を見ながら楽しむほうが個人的にはおすすめです。
尾鷲での昼食
海沿いを走りに走って、中間地点の尾鷲に到着。
時間的にもちょうどいいので、ここでお昼を食べることにしました。
お昼の場所に選んだのは、尾鷲駅にほど近い「鬼瓦」さん。
地元の魚を使った刺し身や天ぷらが有名だそうです。自分と同じタイミングでバスツアーの団体客も訪店していたので、ツアー業界的にも外せないほど美味しい店なのかもしれません。
メニューが豊富すぎて選ぶのに迷った結果、刺し身と焼き魚or煮魚がセットになった「おまかせ定食」を注文してみました。
あかん旨すぎる。
魚はどれも好きなのでどれを選んでも美味しいやろ、三重県だし…くらいの気持ちで注文したところ、これが当たりでした。今までの疲れが吹き飛ぶくらい美味しいし、やっぱり地元で採れた魚を使っているというのがいい。
旅したからにはせっかくなので現地の食を楽しみたいと思ってるし、それは間違いなく美味しいので今後も外さずやっていきたいです。
最果ての集落、須賀利町
今日ずっと走ってきた国道311号 は、ここ尾鷲で終了しました。あとは気ままに走っていくことにします。
尾鷲で十分美味しい思いをし、そのままの勢いで寄り道をしてたどり着いたのは、県道202号の終点にある須賀利町。
ここは半島に突き出たところに位置しており、迂回ルートもないので観光客もほぼほぼ訪れない場所ではないでしょうか。
そんな感じの匂いがしたから来た須賀利町、予想以上に良かった。
マップを見て直感的に「あ、ここ行ったら面白そうだな」と思う機会は多いものの、実際に行ってみるとなるとまた話が変わると思います。須賀利町はまさにそんなところで、意を決して行ってみたらこんなに雰囲気のいいところだったとはと驚かずにはいられませんでした。
海に面した集落の端には廃校になった小学校があり、その他には家々が斜面に沿って立ち並んでいる風景。少し歩けば漁業をしている方もいるし、道端で話してこんでいる方もいる。
そういった日常の風景を見られるのはやはり心が落ち着きます。
この集落にくるためには結構な山越えをしなくてはならず、集落に住まわれている高齢者の方にとって自動車は必需品になっています。しかし集落を散策してみると意外にも自転車が多く、どうやら集落内の移動に限っては自転車を使ってる方がそこそこおられるようです。
こういう「その生活空間でしか使用されない移動手段」って、なんか良い。
例えば離島の中でしか使わない軽トラとか原付とか、山間部の原型集落で使ってる自転車とか。土地の周囲の環境の影響でその土地に馴染んでいる感がより強く表れていて、何か心に惹かれるものがあります。
ノスタルジックな気分を引きずりつつ、紀伊長島まで走ってフィニッシュ。
おわりに
今回のライドは「なんとなく漁村を回りたい」という漠然とした気持ちで計画したもので、行程だけでなく散策要素も加味して全体的にノスタルジーな気分に浸った2日間だったと思います。観光地を回るだけだと観光なんですけど、今回の場合は旅行要素もかなり強かったんじゃないかなと。
旅先のその土地が持っている要素をできる限り満喫していきたいと思っているし、そのような行程を考えたいといつも感じています。今後も今回みたいに町の一面や、生活感のある風景を見に行けたらなと思います。
おしまい。
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