「日本三大酷道」国道418号八百津区間をグラベルロードで走ってきた

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国道418号

今回走った酷道は、福井県大野市を起点とし長野県飯田市を終点とする418号です。

起点である大野市から岐阜県本巣市までは国道157号と重複しており、自分がいつか走ってみたい温見峠周辺の酷道区間も一部に含まれています。

その区間にも増して""ヤバい""ことで有名なのが、岐阜県八百津から恵那までの木曽川右岸に沿う区間。ここは狭隘路、未舗装、落石や法面崩壊が見られ交通の安全確保が困難な状況にあること、さらに数年後には新丸山ダムの建設によってダム湖(丸山蘇水湖)に沈むことになっていることから復旧もされていないとのこと。

新丸山ダムは今のところ2029年度に完成予定で、これにより現在の丸山ダムから水面が24.5mかさ上げされることになるため、丸山蘇水湖沿いに通っているこの道も消滅してしまうというわけです。

というわけで、完全に通れなくなる前に走ってきました。

今回走ることになる区間の現状を軽く書いておくと、次の通りです。

  • 笠置ダムにはゲートがあり、西方面へは通行止め
  • 丸山ダム~町道十日神楽線分岐までは通行可(現役国道418号)
  • 上記の分岐にはゲートがあり、笠置ダム方面への車両通行不可

上記の情報を予め仕入れておいたため、スタート地点は丸山ダム周辺にとって通行可な部分なところだけ走ります。

丸山ダムから町道篠原八百津線の分岐までは県道353号線・木曽川ハクウンボク街道として整備されており、特に問題なく走れます。

道としては右岸のみにあるので、今後は基本的に丸山蘇水湖を右手に見ながら、湖の上流側に向かって走っていくことになります。

多少ひび割れているとはいえ、アスファルトがちゃんと敷いてあって非常に走りやすい。その分、この後に走る道との落差を否が応でも感じることができるわけだけど。

ところで「注意」って標識にあるけど一体何に注意するんだろう。なんか怖い。

唐突に橋が出現しました。

この橋は1954年に架設された旅足橋(たびそこばし)という名前で、日本では唯一無二の「下路型単径間補剛トラス吊橋」だそうです。同型の橋は世界中で5箇所しか架設されてないので相当レアな構造とのこと。

ダム湖を上から眺めるなんてなかなかできないだけに、酷道を走る前にもうここだけで十分満足してしまった感ある。

ダム湖にかかる橋って大抵めちゃくちゃ高いところを走ってるイメージだし、確かに高低差があって気持ちいい感じはするけど、こういう風に比較的低い視点で眺めてみると湖の深さをより実感しやすいと思う。

この時点で交通量は皆無なので、至って気軽に走れる道という印象。ただし幅員は1.5車線くらいしかないので対向車がきたら終わりです。

旅足橋から1kmほど東に走ると、赤い湯谷橋(ゆたにはし)があり、その向こう側を左折すると町道篠原八百津線、右折すると今回走る酷道区間です。

町道篠原八百津線側から分岐を眺めてみると、丸山ダム方面の案内があるのみで直進方向は完全に無視されてる。真っ直ぐ進んでも何もないよというのが暗に示されてるような気がする。

今から走ることになる酷道区間を自動車で走ると色々と死ねるので、大人しくこの標識に従っておくのがいいかなと思いました。

この分岐には伝説となってる看板があって、それがこちら。

「国道418号」にあろうことか印が引かれてます。一思いに塗り替えられていないだけに、国道としての存在を否定されているかのような物悲しさを感じてならない。

さらに看板をよく見てみると、左折の恵那篠原方面の「県道353号線」表示が消されている跡が確認できました。Googlemap上だとここはまだ県道353号線として登録されてるっぽいのですが、現在では町道に変更されているため表示が消されたようです。

新丸山ダムの建設に伴って数々の国道や県道が変更されているみたいなので、散策の初っ端からそれを確認できました。

酷道を走る

いきなりアツい看板を目にしてしまって興奮が抑えられない。

気を取り直して、早速酷道区間を走っていきます。

道路状況を鑑みて、今回はJARIで走りました。

もちろんタイヤ幅的な意味もありますが、やはりダートを走るにはグラベルロードでしょという思惑から選びました。こういう道を走るためにグラベルロードを購入したわけなので、風景とバイクの一体感を考えるとTADA車ではなくこっちかなと思います。

このJARIは40cのタイヤまで履くことができるものの、今回装着したのは32c。ダートだけでなく舗装路もある程度走るとなればこれくらいがちょうどいい。

単なるダートだけ走るならクッション性を考慮してタイヤは太い方がいいのですが、石とか枝とかが大量にある場合は乗り越えるよりもハンドリングで避ける方が重要になってきます。そうなるとむしろ細い方が有利になるので、一概に太いほうがいいとは言えません。

パターンについてはブロックタイヤを所持していないのでスリックで行きましたが、滑るような砂地の箇所はなかったので特に問題ありませんでした。

さっきの伝説の看板のすぐ奥にある看板も非常に濃い

通行止の表示の物々しさに加え、幅員狭小路肩軟弱という文字列からにじみ出てくるヤバさ。

自分がもし車で来ていたとしたらこの表示を見ただけで即引き返すところ、自転車で来ているという謎の自信感があるのでそのまま進むことに。

分岐からある程度の区間は上の写真の通り非常に平和です。アスファルトで舗装されていて、なにより落ちたら死ぬ要素はまだ確認できません。写真には写ってないけど、丸山蘇水湖側にはガードレールもちゃんとあります。

とか余裕ぶっこいてたらいきなりダートになります。何の予兆もなく突然やってきます。まだ全然進んでないのに、いよいよ酷道418号が牙を剥いてきた。

ちなみに5月とはいえルート上に虫が結構いたので、自分は虫除けスプレーを持っていきました。

……。

ここ本当に国道なん?

林道や廃道と見間違うような荒れ具合だ。

比較的天国だった入口周辺の道の様相はもう跡形もなく、本格的なダートになってきた。幅員も完全1車線で離合は不可能だし、ガードレールもいつの間にか消滅して随分と開放的になった気がする。万が一でも丸山蘇水湖側に転落しようものなら湖面まで一直線でドボンする上、水深は大体100mくらいはあるとのことなので間違いなく助からない。

路面的にはまだ安全と言えるくらいには適度なダートが続いており、落石もそこまで多くないのでスピードにさえ気をつければ楽しい林道ポタが楽しめるといった印象。

あ、間違えた。林道じゃなくて国道でした。

この緑に包まれた空間を走っていると、自分が国道を走っていることを忘れそうになる。

隧道が出現した。

突然現れたこの隧道は二股トンネルといって、ネットで調べたらどうやら心霊スポットのようでした。

右に行くと旧道経由で向こう側に行けそうだったのですが、旧道は完全に廃道になってたので大人しくトンネルを通過します。

が…これがめっちゃこわい

まず入口側から出口が見えないので内部でカーブしていることは確定で、さらに灯りが一切ないのでなんとも吸い込まれそうな不気味さがあります。長さとしては200mくらいあって、

  • 壁面からの水音
  • 謎の蛙の鳴き声(しかも自分が通るタイミングで鳴き止む)
  • 若干の浸水

というコンボを食らってしまい、正直昼間なのに何か出現しそうで心細かった。ここでパンクするとか考えたくない。

二股トンネルを後にして、相変わらず限界みのある道を走っていく。

上の写真の右側に写っているオレンジ色の反射板は視線誘導標(デリニェーター)といって、これがあることが国道である証明になってるみたいです。半分朽ちかけているので反射板としての役割を果たしているのかどうかは謎なところ。

「デリニェーターがあるからここは国道だよ(にっこり)」と主張されてる気がするけど、どう見てもそんな状況じゃない。この荒れ具合で国道はちょっと無理でしょ。

このあたりから露骨に路面状況が酷くなってくるけどここは国道です。

具体的には落石や枝が多くなり、さらにそれらが落ち葉の下に隠れているものだからハンドリングが難しい。幅員は約2mまで減少し、湖に落ちるのは嫌なので必然的に山側を走ることになるけど、山側は転落の心配が減るかわりに落石が多いというジレンマ。

そもそも障害そのものが発見しにくいので多分落ち葉だろという楽観視は捨て、もはや自分は死地にいるという自覚を持たざるを得ない。ちょっとでも何かあると感じたら避けるのがデフォになってきてます。

これ往路だからまだマシなんだけど、後でこの道をまた戻ることになります。前向きに考えて遭遇した危険ポイントを覚えておいて、帰りに活用する方向で走ることにしました。

さっきは「どう考えてもここは国道じゃないでしょ」と書いたし、何なら無事に帰れるか不安になるレベルなんだけど、そんな国道が時折見せてくる風景の美しさは堪えられない。

新緑と落葉、そして日向と日陰の明暗の差。まさに酷道そのものを体現したような風景に息を呑む。

ここがかつては国道として自動車が普通に往来していたと考えると、その時間の流れを感じずにはいられません。対向車が来たらどうやってやり過ごしたのだろうか。

酷道の終点へ

どれだけ進んでも濃すぎて別の意味で昇天しそうな道が続いていく。

これだけコントラストに富んだ道はなかなかないし、「路面的に地獄」と「風景的に天国」が交互にやってくるのが良い。単調な走りではなく、ほんの数十メートル進むだけで全く違う風景に出会えるのがこの道の素敵なポイントだと思う。

そんな酷道との限界バトルも、ここにきて折返すことになる。

ここは町道十日神楽線との分岐にある深沢峡ゲート、つまり酷道の終点。ここから先は明確に封鎖されているので通ることができません。ネット上で下調べした限りではここまでは来ることができると書いてあったので、ここで引き返します。

というわけで、無事に酷道418号八百津区間を自転車で走破することに成功しました!

おそらく普通ならオフロードバイクなどでの走破が多いなか、自転車で走破できたことは素直に嬉しい。何より酷道の空気感を直に感じながら走ることができるのは、車やバイクと違った自転車ならではの醍醐味。

右に進むと笠置ダム方面に行くことができるものの、ご覧の通りゲートで封鎖されているため左折して町道十日神楽線をひたすら進むか、もしくは引き返すしか選択肢がありません。

逆に町道十日神楽線を下ってきた場合は、この標識群がまず目に入ることになります。

朽ちた標識とダートの相性の良さが半端ない。

幅員2.0m制限の標識に加え、ボロボロの看板がとてもいい味を出している。この風景もここまで走破した人しか見られないものだし、精神力の疲労はもうどこかに吹っ飛んでいて、この充実感、そして達成感にしばしの間酔ってました。

看板には「笠置ダムまでの8kmの区間は通行注意、あと天候次第では迂回路を使ってね(要約)」という旨の内容が書いてあるのですが、これはゲートが設置される前なら選択の余地があったものの、現在では一本道なので迂回のしようがありません。

酷道成分を十二分に摂取してお腹いっぱいになったところで、スタート地点まで戻ることに。

このまま町道十日神楽線を通って戻るという選択肢もあったものの、せっかくなので復路を走りました。またしても精神力を垂れ流しに消費し、往路で発見した危険ポイントを回避しつつ山側を安全第一で戻っていく。

町道篠原八百津線の分岐まで戻ってきたときは、それはもう安堵した。

あれだけの酷道限界バトルをやったにも関わらず、丸山蘇水湖は静かなまま。結構有名な場所なので自分以外の訪問者に出会うかなと思ってましたが、結局誰とも遭遇しないままでした。

そういう意味では湖畔の酷道、その静寂な雰囲気を十二分に堪能できたといえます。本当によかった。

おわりに

岐阜には全国的に有名な酷道や険道が多いという事実は、実は岐阜県を走るシリーズを始めていなかったら多分知り得なかっただろうなと思います。しかし実際に走ってみるとこれがまた面白い。

確かに路面は最悪だし携帯が圏外になるような場所を通ってるしで、一言でいうと過酷そのもの。だけど、自然と一体になりつつあるような道を走っていると道そのものに愛着が湧いてくるような気がする。

今後もこんな道を走っていきたいところです。

おしまい。

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