今回走った場所は、長野県の飯田市です。
先週は京都の海沿いを走ったので、今週はそれとは真逆の山岳コースを選んでみました。岐阜周辺はとにかく山が多く、【岐阜県を走る】シリーズでもヒルクライムばっかりやってた記憶があるけど、岐阜県の隣に位置する長野県もまた同じような雰囲気のところが多いです。
もちろん、ヒルクライムした後の眺めが素晴らしいので今後も足を運ぶ機会は多そう。
遠山郷
そんな長野県には自宅から2時間運転するだけで行くことができるので、今回のようなポタや、もっと言うと登山についても比較的手軽にできるというわけです。
長野県飯田市の南部、静岡県との県境付近を遠山郷といって、つまり山深い谷に位置している山村。今回はその周辺を走ってきました。
出発地点については、遠山郷の中心部にある道の駅遠山郷まで車載で行き、そこから走ることにしました。
道の駅遠山郷には遠山温泉郷かぐらの湯や遠山郷観光協会があって、散策のスタート地点のみならずゴール地点としても非常に便利です。逆に自走だけでここに来ようとするとかなり大変なので、車載で行ける場合は積極的に使ったほうがいいかと。
ルートとしてはまず国道152号沿いに北上し、しらびそ高原を経由した後で下栗の里に向かいます。
順番的に逆でもいいのですが、今思うとこの順番にしておいて正解でした。
国道152号は北へ向かうと下りが一切ない上り一辺倒な道で、「いつか平坦になるでしょ」と余裕ぶっいてるとなかなかに面食らいます。この先のしらびそ高原まで上りしかないので注意。
国道沿いにも見どころが多く、例えばこの「中郷蛇岩」(通称:平成おちんの神)は目に付きやすいので立ち寄ってみました。
この岩は明治の豪雨の時に沢を転がって落ちてきたもので、直下にある上村川までもうちょっとのところで止まったということから、「おちん岩」(落ちん)と呼ばれているらしいです。なんか合格祈願にもご利益がありそう。
国道そのものは非常に新しくて走りやすい一方で、ふと横道に目を向けると雰囲気良さげな旧道もあったりします。
そのままひたすら直進すると程野インターチェンジがあり、自動車やバイクの場合はこのまま進めば飯田市街へ向かうことができますが、自転車は通れません。
遠山郷はとにかくアクセスに難があり、ここから飯田市街に向かおうとすると少し戻って県道251号を上るか、国道418号あるいは大鹿村経由で山間部をぐるっと回り込まないといけないようです。
最初の目的地のしらびそ高原は大鹿村方面にあるのでここで左折し、そのまま国道152号を上っていきます。
あとはもうひたすら上るだけ。
あとでサイコンを確認してみたら、道の駅からしらびそ高原までの約30kmで1,700mくらい上ってました。とはいえ斜度はそこまできつくなく、最大でも10%くらい。ゆるゆると高度を上げていけば問題ないです。
ヒルクライムしてるときってスピードがゆっくりになるので、周りの景色に目を向けやすいのがいい。特にこういう森林部を走っていると心も癒やされるし、たまに展望が開けたりすると精神的にも回復できる。
しらびそ峠(標高1,833m)に到着。
しらびそ峠は尾高山や奥茶臼山への登山口にもなっているため、付近には車がたくさん停まっていました。特に奥茶臼山(標高2,474m)は日本三百名山にも数えられる名山なので、訪れる人も多いです。
肝心のしらびそ高原については、事前情報で知っていた通りコロナの影響で完全に立入禁止でした。すぐ近くにあるトイレすら使用禁止だったので、休憩や補給も何もできません。紅葉がきれいな秋頃にでもまた再訪しようと考えています。
看板にも書いてたけど、しらびそ高原の様子はネットで中継しているのでいつでも確認はできます。でもこういうのってやっぱり現地で実風景を楽しみたい。
下栗の里ダウンヒル
しらびそ高原から下栗の里まで走っていく中で、ここからの道(南アルプスエコーライン)がとにかく面白かった。
具体的に言うと、しらびそ高原から下栗の里へ向かいルートだと全部下りで、これ以上ないくらい快適なダウンヒルを満喫できます。今まで無心でヒルクライムしてきただけに、その恩恵が下り道となって目の前に開かれている。
次第に晴れ間も徐々に広がってきたりして、木々の間から漏れる木漏れ日を浴びながらのダウンヒルができました。かなりきつかったヒルクライムとの落差を如実に感じるだけにとても気持ちいい。
とはいえ、ここはツーリングとしても有名な場所なのでバイクの交通量もそれなりに多いです。道幅も狭く、お世辞にも見通しが良いとはいえないのでスピードはほどほどにして駆け抜けました。
下栗の里周辺の数km区間は斜度が15%以上あるので、下手するとカーブを曲がりきれずに激突する可能性もあります。
冒頭でしらびそ高原→下栗の里の順番で訪問して良かったと書きましたがまさにこのことで、南アルプスエコーラインを上りで走るとなかなかに死ねると思います。距離的には14kmしかありませんが、その分獲得標高がエグいです。
私はカーボンホイール+リムブレーキの組み合わせで運用しているので、未だに長いダウンヒルが苦手です。放熱が足りずにリムがバーストしてしまいそうな感じになるのが怖い。
ダウンヒルの途中で停止してリムを触ってみるとめちゃくちゃ熱くなってるし、一度に下り切るよりも安全をとりました。
天空の里へ
そんなえげつないダウンヒルを休憩を挟みつつやっていくと、ついに下栗の里へ到着です!
しかし、まだ下栗の里そのものへ着いたわけではありません。今から向かうのは里を一望できる高台です。
高台までの道は山道ですがよく整備されており、さらに高低差もほとんどないので安心して歩くことができます。
300mほど歩くと件の「天空の里ビューポイント」に到着。早速高台からの風景を眺めた結果…。
完全に優勝した。
この景色をずっと見たかった。
眼下に広がる下栗の里、よく目を凝らしてみるとつづら折りの道がくねくねと通っており、道の左右には民家や畑があるのが確認できます。そして周りに広がるのは奥深い山々。
地形とのギャップを痛烈に感じさせつつも、隅々まで自然と暮らしの調和が見て取れます。
里を俯瞰できるこの「天空の里ビューポイント」は2009年に地元住民の手造りで開設されたものだそうで、今でさえ気軽に散歩がてら歩いていけるものの、以前まではこうはいかなかったと思います。整備されている方々に感謝しかありません。
ここから見えているあの道を遠くから眺めているだけではもったいないので、早速向かうことに。
昼食
本格的に下栗の里を散策していく前に、ちょっと寄り道。
しらびそ高原からは上りが一切ないということで体力的にも消費がほぼなかったため、当初はお昼ごはんを抜いて道の駅まで戻るつもりでいたのですが、急遽ここ下栗の里でお昼をいただくことに決めました。
だってこんな看板を見かけたらもう寄らないわけにはいかない。どうしても気になる。
というわけで、「食事処いっ福」さんで昼食です。
下栗の里はそもそも山村なのでお店の類も非常に少なく、食事処については民宿を除けばこの「いっ福」さんか、もしくは坂の上にある「はんば亭」さんしかありません。
「いっ福」さんの女将さんがとにかく話し好きなのがとにかく面白かった。
「自転車でここまで来るの大変だったでしょ?」「疲れてるだろうからまずは梅ジュース飲んどく?」「好きなところに座っていいからね!」といった感じで、もう喋りっぱなしのマシンガントーク状態。
ひたすらに明るいものだからこっちまで笑顔になってくる。
まずは搾りたての梅ジュースをいただく。
あぁ美味い。疲労がまるで霧散していくかのような味の濃さ。適度な日差しによる暖かさと梅ジュースの冷たさの組み合わせが心地いい。
今回は女将さんおすすめの「いっ福定食」を注文してみました。
地元で採れた野菜や山菜がメインの定食で、素朴な味付けがじんわりと染みてて美味しいです。メニューについて書くとどれも美味しくて、その中で左端中央の「かわらごんぼうのきんぴら風」は女将さんオリジナルらしく、後から調べても詳細がよく分かりませんでした。よく分からないけど旨い。
また、山菜の天ぷらは抹茶塩でいただき、これもサクサクしてて無限に食べられるほどあっさりとしていて箸が止まりません。
結論を言うと、どれも美味しさで溢れています。
女将さんと今日走ったルートのこととか話したり、道の駅の温泉は今日無料で入れるから行っといたら?という話を伺ったり。一対一なだけに、とても楽しい時間を過ごせました。
このお店は不定休とのことで、女将さんの気分次第で営業されるらしいので今回訪問できて運が良かったと言うほかありません。女将さん曰く「明日は雨なんで店は閉めるかね」という感じです。
そんないっ福さんで味わう定食は周囲の雰囲気の良さもプラスになって、なんというか心から温まる味がしました。おすすめです。
下栗の里を走る
お腹もいっぱいになったところで、早速下栗の里を下っていきます。
ビューポイントから眺めたときも感じたこととして、下栗の里の道の特徴を簡潔に言うと「狭くて急」です。
とにかくカーブが多くて道幅が狭いので、こういうときのロードバイクの小回りの効きの良さは非常に助かります。バイクですら停車するのを躊躇われるような狭さですが、ロードバイクだと特に問題ありません。
もっとも、この日は自分以外に交通量が皆無だったのも良かったです。好きなスペースに停車して風景を眺めたりもある程度自由にできました。
カーブを曲がるたびに全く異なる風景に出会える幸せ。
傾斜地に家々がへばり付くように建っており、道はその間を縫うように通っています。
遠景からではそこまで感じなかったものの、実際に走ってみると斜度がとんでもないです。民家の目の前の道なのに斜度15%あったりだとか、カーブだと20%は平気で越えてきます(サイコンみたらMax. 45%くらいありました)。
でもここには道があり、家があり、畑があり、そして人の営みがある。
ダウンヒルしていく中で農作業をしている方や、家の補修で屋上に上がってる方もいたりしました。確かに観光地といえばそうなのですが、ここはそれ以前に静かな山村だ。この空気感がなんとも堪えられない。
下っていく中でふと坂の上の方を見返したりすると、その高低差に驚く。
集落側を見てもそう思うし、目の前の山(池口岳や光岳、聖岳方面)をちょっと眺めてみるだけでもあんぐりと口を開けてました。こんな高原地帯に人が住んでいるという事実に只々感動するばかりです。
確かに「赤石山脈周辺の山村だよ」と言われれば高低差がありそうなことは大体想像がつくものの、実際に訪れてみると本当に迫力がすごい。
最後まで心地よいダウンヒルを楽しみ、国道152号まで戻ってきました。途中で雰囲気良さげな民宿も見つけたので、今度訪問する際はここで一泊するのも面白そうです。
この後は国道152号沿いにある旧木沢小学校や小嵐稲荷神社をのんびり散策したりして、静かな時間を過ごせました。こちらの記事も合わせてご覧ください。
最後は道の駅に併設されている「かぐらの湯」で汗を流してさっぱりし、鹿肉を食べたりした後に帰路につきました。
おわりに
山深い長野県の奥地に位置する遠山郷。今回はそんな山間部を走るヒルクライムポタをしてみたところ、これほどまでに魅力に富んだ場所がすぐ近場にあったことに驚きました。
ともすればふと通り過ぎてしまいそうになる場所にあるものの、自転車で時間を忘れて散策するにはもってこいのルート。同じ遠山郷の旧木沢小学校や小嵐稲荷神社と一緒にのんびりと散策してみてはいかがでしょうか。
おしまい。
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