今回は、因島にある穂満旅館に泊まってきました。
ここはロードバイクで夏の瀬戸内しまなみ海道を走る途中に宿泊した宿です。ブルーラインを完全に無視した「景色のいいところをのんびり走る」ポタをすると決めていたこともあって、せっかくなので途中の島で1泊してみるかと思って宿を探したのがきっかけです。
瀬戸内の島に泊まる
因島はしまなみ海道だけでなくゆめしま海道の起点の島としても重要であり、宿のすぐ近くにある港からフェリーで生名島や岩城島に向かうことができます。
他の瀬戸内海の島がそうであるように造船所も非常に多く、港町ならではの独特の雰囲気が漂っていました。
日常の生活と船が一体となった風景。ただ単に素通りしてしまうのは非常にもったいなくて、時間をとって島の外周とか町並みをのんびり散策してみるのも面白いです。
穂満旅館さんはネットにもほとんど情報が載っていない宿で、予約をするのも電話でしか受け付けていません。その点については自分の旅スタイルにとっては割と日常的だったりしますけど、今回も当日に電話して部屋に空きがあることを確認しました。
まずは外観から。
通りに面している壁一面が蔦で覆われており、「穂満」の文字もかろうじて確認できる程度。事前情報がなかったら、たぶんここが宿であることに気づかないと思います。
入り口は手動の観音開き方式。
取手の部分だけアルミ製なのが良いね。
戸を開けて屋内へ入ったところの様子はこんな感じ。
外観からは想像もできないくらいに玄関部分が広いという以前に、まず右手に池があることに驚かざるをえない。池には普通に鯉が泳いでるし、その横にはちょっとした畳敷きの東屋がある。
以前はここで演奏でもされてたのか、はたまた宿泊客が休むスペースなのか。
受付には黒電話や昭和感いっぱいの扇風機など、物が雑多に置かれている印象を受けつつも整頓されている様子が見えました。
この後は順次屋内を見て回ったところ、どこを切り取ってみても汚れている場所がひとつもありませんでした。確かに物は多いんだけど、常に人の手が入っているのは間違いないです。
外観だけ見て確かに宿自体の古さは感じたものの、丁寧に維持されているのがぱっと見ただけでも伝わってきました。
ここでご主人が登場し、早速受付をすることに。
お話によるとこの宿は昭和元年(1926年)創業とのことで、つまり現時点で100年近い歴史があります。そう考えるとあの蔦に覆われた外観も、この昭和の空気で一杯の玄関部分も納得がいくというもの。
しまなみ海道ツーリングの途中であることや、明日はゆめしま海道を走ろうと思っていることなどをご主人と話したりしながら記帳を済ませました。
なお、宿泊料金は下記の通り。
- 素泊まり¥4,500(税別)
- 2食付き¥6,500(税別)
正直にいうと、この宿の雰囲気や食事のことを考えるとお得以外の何物でもないので、しまなみ海道周辺を自転車で走ろうと思っている人には自信を持っておすすめしたい。
館内散策
客室~廊下
まずは、お部屋に案内してもらうことにしました。
今回お世話になった部屋は2階の突き当りにある部屋で、一人にはもったいないくらいの広さ。
さらにテレビや冷蔵庫、エアコン、ケトルが置かれており、写真には写ってませんがトイレや洗面台もあります。もう至れり尽くせり状態で、この宿に着いた時点で熱中症になりかかっていた身としては「とりあえず寝れれば十分」くらいに考えていたのを、いい意味で裏切られました。
それに加えて、この日の宿泊者は自分ひとりだけだったので思う存分まったりできました。やっぱりその土地の空気を味わいながら泊まりたいのなら、人があまりいない宿の方が自分の性に合っている。
荷物を置いてついでに横になってちょっと休むかと思っていたところ、30分ほど気を失っていたので相当疲れてたっぽい。
というわけで、ゆるゆると館内を散策してみます。
とりあえず玄関まで戻ってきました。
玄関の受付を奥に進むといきなり階段があって、そこを上っていった2階部分が客室になります。つまり1階部分は玄関と受付のみがあるのみとなります。
この宿で最も度肝を抜かれたのがこの2階部分で、ご覧の通りコの字型の通路の真ん中に中庭があります。
しかも普通の中庭ではなく1階部分に池があって、そのほとりに生えている竹が2階部分まで到達している形。最高か?
階段を上がってすぐのスペースには休憩所があり、テレビや電子レンジ、それに何故か初代プレイステーションが置いてあったりします。
複数人で泊まる場合は、夜に涼みながらここで1杯やるのも楽しそう。
その休憩スペースも実は一箇所ではなく、通路を少し進んだ場所にも2人用のがあります。
こういうこじんまりとした空間がほんとに好きなんですけど、誰か理解してくれないかなと思ったり。通路に脇にあるこのスペースがこれ以上ないくらいにフィットしてくれて、しばらくここでうたた寝をしてるくらいでした。
散策を続けていく。
最初の休憩所の脇の扉を開けると大人数用の部屋があり、ご主人のお話によれば10人程度の団体の場合はこちらの部屋になるとのことです。
大人数用の部屋というか、これはもう完全に宴会用の大広間では?
ご覧の通りめちゃくちゃ広いので、例えば日中はグループライドをしてここに1泊し、夜は酒盛りをするなんてこともできちゃうんですよ。実際に、ここに泊まった方は例外なく宴会をするそうで、それはもう楽しいこと間違いなし。
ここまで散策してきて思ったこととして、ここは昔は料亭か何かだったのではないだろうか。
ご主人に確認するのを忘れましたけど、風靡な中庭や宴会スペースのことを考えると最初から旅館として造られたわけではなさそうな気がする。などとあれこれ思案するのもまた面白い。
それにしても、ここまで散策していて心躍る宿はなかなか出会えるものではない。
日中のライドで眠気マックスなのに部屋で昼寝しているのは寂しい感じがして、部屋に戻って横になる→中庭部分に行って椅子に座って瞑想する、というのを何回か繰り返しました。こういう時間の過ごし方も好き。
岩風呂
気がついたら夕食の1時間前くらいの時刻になっていたので、その前にお風呂に入りに行きます。
お風呂は中庭ゾーンを抜け、階段を降りた先の1階部分にありました。
構造的に2階にお風呂はないだろうと思っていた通りですが、なかなか入り組んだ構造をしているのが分かります。
その階段もぱっと見る限り普通かと思いきや、なんと螺旋階段になっていました。
建物が完全に純和風というわけではなく、和洋折衷とも言える構造が随所に次々と出てきて面白い。こういうのも昭和の建物の特徴なのでしょうか。
お風呂はなんと岩風呂で、お湯の温度はかなり熱めという自分好みの状態。
夏場はどうしてもすぐに身体が温まってしまうのでぬるめがいいそうですが、個人的には熱めの方が好きです。熱めの方が疲労がスッと抜けていく感じがするし、湯上がりで火照ってる様子も良い。そのまま部屋に戻って冷えた麦茶をゴクゴク飲むのが最高に堪りません。
夏場のお風呂も案外いいものだ。
夕食
お風呂から上がってもう放心状態だったのが、いつの間にか夕食の時間になってました。
夕食と朝食はこのようなお弁当形式で、ご主人がお部屋まで持ってきてくれます。
この時点では食事については重視していなかったこともあり、夕食の内容に期待はそんなにしていませんでした。何より当日の昼前に電話して予約した宿だし、最初の方にも書いたけど寝れればいいやくらいに考えてたし。
そんなわけで、ササッといただいて寝ますか…パカッ(蓋を開ける音)
!?
ちょっと!めっちゃ豪華じゃないですか!
もう完全に予想外。2食付き¥6,500でこんな夕食いただいちゃっていいんですか?
因島ならではの海の幸を、それはもうふんだんに使用した豪勢すぎる食事。もう食べる前から美味しいことが確定している。
お肉もこれ以上ないくらいにたっぷりと積み重なっていて、自分で火をつける方式だったこともあって肉が焼けている最中の匂いが食欲をかきたてる。
こんな素敵な夕食は、ぜひとも日本酒と一緒に味わうのが吉。
というわけで買ってきました。
実は因島の散策で、宿の前の商店街に酒屋があることはすでに把握済み。
実際には宿の近くにはコンビニがあるので、酒類はそこで調達すれば事足りるんだけどそれだと何か違う。どこにでもあるような店を利用するのももちろんアリ。でもたまたま見つけた酒屋さんで日本酒を買って、それを夕食に飲むという方がよっぽど楽しい。
美味しい因島の料理に舌鼓を打ちつつ、これまた因島のお酒を飲むのがもう最高すぎる。
翌朝
この日は尾道まで走ってゴールなので時間を気にする必要はまったくなく、至って普通の時間に目が覚めました。
旅先でストレスなく起きれるって本当に素敵なことだと思うし、それは宿の居心地が良いからに他なりません。
そう思うと、旅先の宿の選び方って意外に重要だと思う。翌日の行程に影響が出るような時間を宿で過ごすのは避けたいし、まあ運もあるけど。
朝食は、これぞ旅館の朝食という内容でさっぱりしてて実に美味しい。
ご飯や味噌汁だけでなく料理もできたて熱々で、抑えるところはきっちり抑えられてて満足度が高いです。
おわりに
そんなわけで、穂満旅館さんでのひとときはあっという間に過ぎ去りました。
ご主人の「今度は複数人でおいでよ!」という言葉通りにグループライドで再訪したいと心から思える宿だったし、そうでなくても何度も足を運びたいくらい好きになったところでした。こんなに惹かれる宿を見つけることができただけで今回のポタは大満足です。
単にしまなみ海道を走るだけなら素通りしてしまう個々の島々ですが、ちょっと趣向を変えてみるのも楽しいです。特に走るルートを決めずに島の日常風景を楽しむ目的で走るもよし。自分みたいに宿泊やグルメに振ってみるのもよし。
単に走るだけではなくて、楽しみ方が無限にあるのがしまなみ海道、そして瀬戸内の島々の魅力の一つだと思います。基本的に温暖な気候で季節を選ばずに訪問しやすいのも利点だし、一度走って終わりではあまりにもったいなさすぎる。
おしまい。
コメント