この週末は全国的に天気が微妙だったのですが、なんか石川県はその中でも晴天が拝めそうだったのでロードバイクで走ってみることにしました。
この「天気が良さそうだから行ってみる」というのは、自分の中で旅先を決める重要なファクターになっています。特に行きたいところが明確にあるわけではないけど、そんなことよりは単純に快晴の中で散策をしたいというのが行動の根底にある。
行かない理由を探すよりも、まずは天気を確認するくらいの気軽さで行くか行かないかを決める程度がちょうどいいんじゃないかですかね。行動する理由にハードルを高くしすぎていると、結局何もしないで終わってしまうので。
で、石川県の能登半島はすでに行ったことがあるので、その南の方の七尾市周辺をあてもなく走ってみたというのが今回の行程です。正確に言うと行きたい場所は一箇所だけあって、そこを回る以外は完全に自由。早速走っていこう。
能登島を走る
まずは七尾市街を西へ進み、湾になっている海岸線沿いを走って「ツインブリッジのと」から能登島へ向かうという形を取りました。
例によって今回も比較的早朝に出発したということで、朝もやの中をロードバイクで走っていくというのがかなり気持ちがいいです。次第に気温が上がっていくにつれてもやが取れ、その奥から青空が登場してくるという変化が直に感じられる。
日中の中だけを走るのも爽快だと思うけど、せっかくなら一日の時間帯における空や気温、風などの移り変わりを味わいたい。
ツインブリッジのとまでの道のりは敢えて国道を逸れて走ってみたところ、これが非常によかった。
ロードバイク乗りどころか車通りすらほとんどないような道なんですが、ところどころに集落があってそのほとりを走る形になっている。右手には常に七尾湾が見えるという絶好のロケーションで、湾の流れも穏やかでこっちまで精神が和らいでくる。朝方のライドは、こういう風に自分だけの時間を作りやすいのがいいですね。
海岸線から若干の上りがあった後、ツインブリッジのとが架かっているのでそこを通って能登島へ渡りました。
で、ここからは能登島を軽く走っていくことになります。
しかし、能登島は「島」と名が付いているものの島っぽい景色はそこまで多くなくて、主な道は海沿いではなく若干内陸部を走っています。なので、海を常に眺めながらの気持ちいいライドを期待していると少々面食らうかもしれません(特に島の北側、県道257号)。しかもアップダウンがそこそこありました。
個人的には、のとじま水族館を過ぎてからの島の東側の外周の景色が良かったです。
観光客は主にのとじま水族館を訪問する人が多く、島の真中付近を走る県道47号から東側はあまり交通量が多くありません。その上で海沿いを通る道が多くて、比較的平坦なので走りやすいです。
能登島の東端にある勝尾埼周辺には家屋が多く、宿泊施設が集まっているのが印象的でした。
石川県自体がとにかく海鮮が美味しいところだし、こういう風に島の宿だと出てくる料理もなんか予想を上回ってくるような気がする。冬になったら能登島の民宿に泊まってみるのもいいかもしれません。
そんな感じでひたすら右回りで能登島を散策していると、いつの間にか七尾市街への交通ルートである能登島大橋の近くまで来てました。若干お腹が空いているとはいえ、時間的にはまだ昼前。しかし、ここから市街地へ渡ってから飲食店を探すのは少々めんどくさいものがあります。
私の旅において割と軽視しているのが昼食で、下手するとコーラ一本とかで済ますこともザラにあったりします。(今回は日帰りですが)どうせ夜になれば宿泊先の旅館でがっつり夕食をいただくことになるし、腹持ちがいい体質なこともあって空腹になるのは稀。
なので昼食をとるかどうかは気分で決めているのですが、今回は食べたくなったので良さげな店に入ってみることにしました。
訪れたのは、もうあと100mも走れば能登島大橋という好立地にあるお食事処みずというお店。
場所が場所なので、これから能登島を散策していくという場合だけでなく、もう散策を終えて去るという場合にも訪れやすいと言えます。
このお店のメニューは色々あって、海鮮が食べたかったので自分が注文したのは刺し身定食。
で、少なくとも○○定食についてはセルフサービスを重視していて、ご飯をよそうのも、お味噌汁をつぐのも自分でやります。
定食はメインの他に小皿のおかずを3種類まで自分で選ぶことができて、その種類がかなり多かったのが驚き。15種類くらいはあったんじゃないかな?
店内はどこか懐かしい古めいた造りをしており、飲食店というよりは"食堂"という言葉が似合っている。地元特化形というか、かなり昔からこの地で営業を続けているお店という印象を受けました。
そして、満腹感のままにロードバイクに跨ってちょっと進んだ先にあるのがこの能登島大橋です。
全長は1,050mあって、なんでも石川県で一番長い橋なのだそう。真ん中部分が高くなっている影響で遠景から見ると湾曲しているのがよく分かります。
こういう道路をロードバイクで走ることのメリットの一つが、割とどこでも好きなところで止まることができること。
能登島大橋には歩道が設けられていて、ちょっと気になる風景があったら車道から歩道に上がってしまえばもう安全。歩道は完全に独立しているので、車やバイクの往来を気にする必要がありません。他の移動手段だったら橋の途中で止まるなんでできないわけで、自転車のお手軽さがこういう場面ではとても役に立ってくれる。
徒歩並の万能感はないものの、徒歩と比べると遥かに早いスピードで遠くまで移動することができる。まさに散策にはうってつけの移動手段じゃないでしょうか。
海の上に架かっている橋、それに約1kmもある長い橋ということで、能登島大橋の上から眺める景色はとにかく広大。向こう側に見える半島部分までの距離がそこそこあり、全体に占める海と空の割合が多いのもそれに拍車をかけているように思えます。
気温の方もここにきてかなり高くなってきており、海の直上で身体に当たってくる海風の強さが心地良い。晴れている日には、やっぱり外へ出るのが一番気持ちいい。
観音島の風景
朝方からの能登島散策が終わり、続いて向かったのは七尾市の東側。地図上だと半島の形になっていて、これの端っこの部分を目指していきます。
まずは国道160号を走って富山湾方面に抜け出し、そこから県道246号を北へ。
国道160号は氷見や富山へ抜ける道ということで交通量が多かった一方で、県道246号は全くと行っていいほど交通量がありません。
半島部分の北端までの道中には静かな漁村がポツポツとあるくらいで、観光的な要素は皆無。
でも、こういう道を走ることこそが好きな自分にとっては天国みたいな感じでした。
道は海沿いだけでなく、時には山に入ったり田園地帯を抜けながら通っていく。
こういう飾らない風景が一番いいですね。
のどかな風景を横目にロードバイクを走らせ、いつの間にか崎山半島の先端にある観音島に到着していました。
今回の旅で唯一目的地を決めていた場所がここなんですが、見ての通り特に変哲もない島です。
島といっても半島から陸続きになっていて、島にあるのはこじんまりとした観音堂くらい。島の手前には小さな集落があって、そこの岸壁部分から乗り出すようにして島全体を眺めることができます。
正直、自分でもなんでここを訪れようと思ったのか記憶にないです。確か何かの写真でここを見かけた覚えがあって、なんとなく気になっていたから訪問しただけ。
でも、こういった地形の端っこの方って魅力的な場所が多いような気がします。今夏に訪れた外泊集落もそうだし、ただ単に海に面しているというだけではなくて、なんというか"最果て"感がプラスされている。現に観光客はここにはいないし、この景色を目当てに来ている人も自分くらい。
強いて言えば、釣り人がちょっといるくらいだったかな。あとはもう本当に静かです。
この観音島は今回の出発地点から結構近いところにあったので、ライドを始めてからまず最初にここを訪れるという選択肢もありました。
ただ、結果的には能登島を回った後での訪問となっています。これには一応理由があって、観音島から見える海の向こうの景色が能登島なんですよね。ついさっきまで走っていた光景が遠くに見えている、という感覚が良さそうな予感がしたのでこういうルートにしてみましたが、まさに当たりでした。
能登島は島全体が大きいのでこんな風にどこからでも見えるけど、仮にこれが逆だったとすると観音島はちょっと見つけにくいのではないかと思います。
同じ島でも、見る場所や立ち位置によってスケール感が全く異なる。
ロードバイクで実際に訪問してみた身として、この差異を実感したときのなんとも言えない気持ちよさが印象に残っています。
観音島の近くには能登観音崎灯台という小さな灯台があって、ここには近くまで歩いて向かうことが可能です。
半島というくらいだから昔から船の往来は多かっただろうし、灯台が建設されるのも納得。
ひとしきりこの雰囲気を味わった後、近くの神社や集落の町並みを散策してから帰路へ着きました。
屋根付きの隧道へ
このまま海岸沿いに七尾市街まで走れば今回の日帰り旅は終了なんですが、せっかくなので「そういえば近くにあそこがあるじゃん!」と思い出したスポットに行ってみることに。
自分のGoogleMapには行きたいところや行ってよかったところを記録しているものの、旅の道中ではスマホをそれほど見ないので、その存在をすっかり忘れていました。
で、それがこちらです。
言葉で言い表すとすれば、"内部に屋根付きの建造物が入っている隧道"。あまりにも有名すぎるので名前などは書きませんが、ここに訪れた時の驚愕っぷりはなかなかのものじゃないでしょうか。
人の手で岩を掘り進めて作られた、素掘りの隧道。
それ自体は決して珍しいものではないものの、そのすぐ内部に木製の屋根が支え付きで設けられている。一般的に想像するような隧道の姿とはかけ離れている光景に、初見時は脳がバグってしまった。
しかも、周囲の山深さや建造物などの古さとは真逆に、隧道の入り口には「高さ制限2.7m」という現代風な道路標識が取り付けられています。あくまで道ではなく"道路"として認定されているというのも興味深い。
しかもこの木造の建造物、隧道の天井とか壁を補強しているのかと思いきやそうではありません。支柱や屋根部分が隧道の側壁に固定されていないので、マジで隧道の中に建っているだけです。
用途としては天井からの落石を防いだりしてくれそうですが、本当にそんな理由でこれを建てたんだろうか?謎は深まるばかりだ。
ただ、地元の方がこまめに手入れをされているらしく、強度的な不安はありません。木組みだけでなく木自体もしっかりしていることが中に入って理解できました。
その後は更に山の奥に分け入ろうしてやっぱり止め、そのまま来た道を戻って出発地点へと帰還。
海に始まったライドは最終的に山の中まで及び、終わってみれば約100kmと標準的な行程で気分も晴れやかなまま。能登周辺は「岐阜県の海ver.」みたいな感じで交通量が少ないので、ロードバイクで散策するには最高な場所だと感じました。
今回の行程は一日だけでしたが、一日あればこれだけ濃い時間を過ごすことができる。
特に目的がなくても、気分次第でどこかに出かけてみるという日があってもいい。この日は、そんな自分の性格がいい方向に働いてくれたと言えます。訪れる場所全てが魅力的で、それでいて面白かった。
おしまい。
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