【恵那~明智~設楽~塩津温泉】ロードバイクで春の奥三河を訪ねてきた

寒い春が終わって春になったので、ふと思い立って愛知県奥三河(設楽町)の旅館に泊まることに決定。あまり情報がない宿こそ実際に泊まってみたくなるというもので、今回の宿もGoogleマップで場所だけ確認して予約を取りました。こういう柔軟な姿勢が旅先での素敵なひとときに繋がっている感がある。

手軽さを重視して車で向かっても良かったものの、今までが寒すぎてロードバイクに乗れなかったため鬱憤を晴らす目的でロードバイクで向かいました。個人的に旅館に宿泊するときの交通手段は自転車が一番好きで、道中の散策のしやすさや旅館に到着したときの「無事に着いた感」を感じたいといったことがその理由。なんというか、宿に着くまでの時間になんらかの助走区間があってほしい。

住んでいる土地を離れて馴染みのない地へ降り立ち、そこから知らない風景や地形、町並みが視界に入ってくる体験を経てから宿に着くことによって一日を通じて満足の行く時間になる。車だと移動速度が早すぎるし、「道中」の濃度が結構薄くなってしまう。自転車の速度域が自分にマッチしているのは間違いないだろう。

もくじ

恵那~明智~設楽町

今回は出発地点を岐阜県恵那市にとり、そこから南下して設楽町を目指します。恵那~岩村~明智町あたりの県道はロードバイクで巡るのに本当にちょうどよく、適度なアップダウン、のどかな田園風景、そして交通量の少なさと三拍子揃っている。

明智町は観光名所の一つにもなっていて、明知鉄道に乗って終点の明智で下車するプランも大いにアリです。

明智町

以前宿泊したさつき旅館の前で記念撮影。さつき旅館は現在も営業を続けられているようで安心しました。古い旅館って何かの拍子に廃業になるケースがものすごく多いので、別の用事で近くを通るようなことがあれば様子を確認するようにしています。

ここ明智町から設楽町までのルートをざっと検討したところ、行きは国道363号~県道11号を通って矢作ダムに到達し、そこから国道257号を通る道筋としました。帰りは明智町に寄らずに国道257号~国道418号を北進して岩村まで戻ってくるコースで、行きと帰りで別の道を走るようにしています。設楽町まで行ったのならそのまま飯田線に乗って帰ってくる案もあったけど、今回は恵那ピストンの気分だったので採用しませんでした。

矢作川

明智町から下り基調の県道11号を走って矢作川に到着したところ。ここを境にして岐阜県から愛知県に切り替わります。ここから川の上流方向に向かって走ると矢作ダムがありますが、どうやら愛知県に住むロードバイク乗りにとっては有名なコースらしくて走っている人を数人見かけました。

上流へ
矢作ダムの風景

矢作ダム周辺の交通量については、主要道である国道153号以外は少なくて非常に走りやすいです。山間部なので平坦な道ばかりではなく、通る道を選べば軽いヒルクライムをすることも可能。

愛知県の都市部から東、岐阜県恵那市から南へ向かうにつれて次第に山が多くなっていき、町や村といった小さな自治体を経て飯田線沿線へたどり着く。飯田線の大嵐や佐久間周辺の秘境ぶりを思い出すと自分が今走っているところは都会と秘境の中間地点。一つの県の中でこれほど雰囲気に差があり、それを割と短距離の間で味わうことができるのは貴重だ。

建設中の新設楽大橋の柱。オレンジと青色の境目がダムの常時満水位(標高437m)を示している。
県道33号

ここから国道257号を南下していく道中では、2034年に竣工予定の設楽ダムの建設風景を眺めることができました。

設楽町中心部に近い区間の国道257号、そしてその西を通る県道33号周辺はダム完成後に水没することになり、ダム建設に加えて関連する区域の樹木の伐採や付替道路の建設も合わせて進められているようです。従ってこれらの区間は将来的に走れなくなることになり、意図せずして今のうちに走れたのでよかった。過去の災害によって実質的に通行止めになった道も数多く存在する一方で、ダムに水没してしまう道もあるのか…と改めて実感できました。

設楽町中心部に到着した時点でちょうどお昼時だったため、町の食堂っぽい雰囲気の「多津美屋本店」でランチをとることに。

注文したのは設楽町の名産・奥三河鶏を使用した田口塩鶏定食。奥三河全体で親しまれている味付け肉とのことで、それを野菜と一緒に豪快に鉄板で炒めています。肉そのものが大きく食べごたえがあって味付けもご飯に合い、しかも焼きたてなので熱々な状態で食べることができて幸せそのもの。定食全体のボリュームが多くて食べ終わったときの満足感は相当なものでした。これはおすすめ。

塩津温泉への道のり

お腹いっぱいになったので後は宿に向かうだけ。

ここから今日の宿がある塩津温泉へ向かうルートは東西に各1つずつあり、行きは国道257号を少し下って県道433号を上り返すルートを選びました。坂道を下るぶん獲得標高が多くなるのは明日の帰りを楽にするためなので仕方ない。逆に明日は少し上るだけで町の中心部に戻ってこれます。

普段のライドで走る道は適当にざっくり決めているけど、秀山荘の女将さんに電話予約した際に「道中が通行止めになっているので公式サイト見といてね」と言われたのでしっかり調べておきました。

今の時期に塩津温泉に向かうのは多少困難な部分があって、その理由がこちら。県道433号の西の端・清崎と塩津温泉との間、それから塩津温泉と県道433号の東の端・和市との間がそれぞれ工事のため通行止めになっています。従ってどちらを通るにしても迂回が必要になり、曲がりくねった町道を通ることになります。

上の写真の看板は清崎から塩津温泉までの道のりを示しており、迂回路として町道54号 塩津小代清崎線という道路を通るようです。しかし工事期間を見るともう過ぎているんだが…改めて調べてみると工事期間は2025年3月31日までとのことでした。

迂回して町道へ
塩津温泉までは看板があるので分かりやすい

さっきの工事案内の看板には町道54号って書いてあったのに道路脇の青看板は町道80号って書いてある。一体どれが本当なんだ。

町道については斜度が一気に増えるので体力的にキツいですが、交通量は一切ないのでその点は安心できます。しかも殺風景な道だと思い込んでいたのが実際には民家や畑が想像以上に見られ、どんな山奥にも人の生活が広がっていることが分かる。全国各地を訪問していくと予想していない風景に出会うことが多くて面白いです。観光名所ならまだしも、こんな風に観光客が全く訪れないような奥地になるとインターネット上に情報が全くない。

自分は下調べを極力しないことで旅先での感動を増幅させたいという思いがあるけど、最近は自転車どころか車でも通らないような酷道・険道を走って「人」の存在に感動するという体験が少なくなっていた。半ば忘れかけていた感情を岐阜県からこんなに近い場所で思い出せて嬉しい。

県道433号に復帰

自転車で走っているからなんとかなっているだけで逆に車だったら絶対に通りたくなくなるような狭くて細い町道を乗り越え、ついに塩津温泉に到着。峠を越えた先の斜度がなかなかのもので下るのに苦労しました。

犬と戯れている
諏訪神社

塩津温泉周辺は民家が数件のみ存在しており、県道と町道の分岐には諏訪神社が建っています。

さっきまでは山肌にへばりつくようにして集落が形成されていたのと比べると状況が一転し、こちらでは比較的開けた土地に田畑が広がっていました。

明日の帰りで通ることになる迂回路

分岐にある建物の壁には、かつて塩津温泉が全盛期だった頃の案内が記されています。「塩津温泉郷」に名を連ねている旅館名を挙げてみると、左から

  • 名倉屋別館 ☎2-0577
  • 芳泉荘 ☎2-0317
  • てんじん荘 ☎2-0431
  • 秀山荘 ☎2-0140

の4件があることが分かります。しかしこの中で今も営業を続けているのは芳泉荘と秀山荘のみで、他の2件はすでにありません。このように今はもう建物すら現存していないけど、昔の看板やパンフレット上に旅館の名前が残っているというケースが個人的に好き。まだ人々の記憶からは消えていないということが実感できる気がして。

営業していれば泊まりたかったという思いは当然ある。このブログの中でも何度も言っているけど、泊まりたい旅館があるのなら早めに泊まりに行くべきだろう。客商売だと特に営業をとりやめざるをえなくなる理由が多い。

秀山荘の隣にある芳泉荘

その後は営業を続けるもう一軒の旅館・芳泉荘の様子をチラ見しておきました。こちらも秀山荘と同様に民家のような佇まいをしており、雰囲気がよさげなことが2階客室の障子戸からなんとなく分かります。料理も美味しそうな予感がするので芳泉荘も気になっています。

日向ぼっこをしつつ周辺を散策し、チェックイン可能時間になったので今日の宿である秀山荘へ向かいました。宿泊記録は別記事でまとめています。

翌日はまだ朝日が出てきたばかりの塩津温泉を出発し、帰路で薄暗い森の中を進んでいると10頭くらいの鹿に遭遇して驚きながら国道へ。その後は何事もなく恵那に到着して今回の温泉宿泊ライドは無事に終了。遠くへ行かなくても近場で山あり谷ありの変化に富んだライドができるし、自分が好きなタイプの魅力的な温泉もある。今まで知らなかった岐阜県や愛知県の良いところを今後も見つけていきたいです。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

過去に泊まった旅館の記事はこちらからどうぞ。

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