今回は長崎県本土の西側・西彼杵半島を訪問するライド。
ライドの目的は期間限定の池島炭鉱ツアーに参加することです。この機会を逃すともう行けない気がして、そのためだけに長崎県へ行くことを決めました。幸いにもツアーの予約が取れた上に当日は天気にも恵まれ、深く心に残る素晴らしい旅になりました。
行程としては初日に長崎市街から大島大橋付近まで走って一泊し、翌日に大島~崎戸島を巡った後にツアーに参加。最終日は佐世保まで移動して終了という流れです。
外海地区とキリシタン教会
今回ロードバイクを持ち出した理由は、池島への船が出港する西海市までの移動手段を確保するため。
西海市周辺は長崎市外海(そとめ)地区と呼ばれており、南の長崎市や北の佐世保市、いずれから行くにもそこそこ距離があります。さらに周辺には電車の路線が通っておらず、公共交通機関で行くには大変そうだったのでロードバイクにしました。よく調べると長崎駅前から西海市まで路線バスが出ていましたが、長崎県に行くのは久しぶりなのでライドも追加した。経緯としてはそんな感じ。
長崎駅を出発し、五島灘に面した国道202号をメインで走ります。




長崎県の地形の特徴として平野部がとても少なく、海に面した道であってもアップダウンがとても多いことが挙げられます。そのためせっかく上ったとしてもすぐ下ったり、かと思ったらまた上ったりと心を折られる展開が延々と続くので注意が必要。具体的に言うと海岸線沿いの集落付近は海抜ゼロで、それ以外の何もない区間は標高が高いです。従って集落と集落との距離が近いと必然的に坂道の斜度がきつくなります。
あと今年の夏ライドはこれが初めてとなり、今日の最高気温は36℃。気温の高さに身体がまだ慣れていないためしんどい思いをしました。普段の出力の半分もでません。疲れる。
長崎駅を出て大浜町を通過し、長崎市三重地区(畝刈町~三重町)までの区間で早速熱中症になりかかる始末。暑熱順化のためと割り切ってコンビニを見かけたら休憩するくらいの頻度でいかざるを得ない。




道中にあるカトリック黒崎教会に到着。
長崎県は全国の中でも特に教会が多く存在し、行程中に参拝する対象として神社・寺のほかに教会がプラスされる点が新鮮です。黒崎教会は見て分かるようにレンガ造りの教会で、21年もの歳月をかけて1920年に完成しました。自分が訪れたタイミングではちょうど信徒の方が清掃をされており、あいさつをしながらの参拝となりました。
教会って信仰心というよりもその静けさ、荘厳さに惹かれて参拝することが多く、見知らぬ土地で教会に入ると落ち着いた気持ちになれます。




道の駅 夕陽が丘そとめで休憩タイム。日陰にいないと一瞬で干からびるので、夏ライドは場所と行程を特によく吟味する必要があります(今更)。風が北向きだったのが唯一の救いかな。これで向かい風オンリーだったら宿への到着が遅くなっていたかもしれない。
その次に訪れたのが外海の出津集落と出津教会堂。
世界文化遺産である「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つであり、潜伏キリシタンの歴史を垣間見れる場所となっています。出津教会堂はキリスト教が1873年に解禁された後、外海に赴任したマルク・マリー・ド・ロ神父が設計し1882年(明治15年)に完成。集落を望む高台に建てられていて、外海を代表する施設になっています。







出津教会堂は清廉さを思わせる白亜の外観が特徴的で、外壁はレンガ造り、玄関は石造り、内部は木造かつ天井が漆喰塗という複雑な構造をしています。この暑さのなかにあってどこか涼しげな見た目をしているせいか、到着時に今までの緊張がやや緩んだ気がしました。
今までに五島列島を含めて長崎県内の様々な教会を訪れてきたけど、教会はその構造、外観、広さが場所によって本当に千差万別。一つとして同じようなものはなく新鮮な気分で散策できる。これは自分が好きな神社や寺でも同じことが言えて、要はその土地や環境に適したものが建てられているということ。
教会そのものが身近にない存在だから…という理由だけではなく、建設された背景も含めて自分は教会の存在感が好きだ。


青い橋を通過。
この青い橋から順番に、白色、そして赤色の3つの橋(青:四谷河内橋、白:荒川橋、赤:新神浦橋)が連続しますが、これはフランス国旗のトリコロールカラー。ド・ロ神父にゆかりのあるフランス・ヴォスロール村との姉妹都市交流にちなんだものです。
その青い橋の沖合に見えるのが明日のツアーで行くことになる池島です。つまり次の目的地がこの時点で遠方に視認できていて、フェリーで向かうのが俄然楽しみになりました。同じ池島に行くにしても例えば佐世保方面から西海市に向かう(池島が見えない)のと、こうして国道202号を走りながら遠景を眺めた後とでは印象が異なるはずだ。
このまま国道を走っていこうかと思っていたところ、近くの大野集落に大野教会という教会があるみたいなので寄り道することに決定。こちらは1893年(明治26年)にド・ロ神父と信徒によって完成したものです。





道路から坂道を上っていくと、石垣の上に大野教会が見えてきました。
構造は近くの山でとれた平たい玄武岩を積み上げたド・ロ壁と呼ばれる壁面が特徴で、茶色一色、白一色のような均一感がないため周囲の自然の溶け込んでいるような感じ。また一般的な教会とは異なり木造+瓦屋根の軒があったりと、独特の美しさがありました。暴風に備えて建物全体が低く、壁も石造りで分厚くなっています。
建設当時は手前側の聖堂部分のみでしたが、後の1926年(大正15年)に奥側に司祭が寝泊まりするための部屋を増築して現在の姿になりました。司祭部屋は木造の雨戸も設けられているいわゆる日本家屋で、それらの棟が連結されています。





大野教会は老朽化のため中には入れず、外周沿いを見学するのみとなります。一方で窓や玄関扉から屋内の様子は問題なく確認でき、一番奥の祭壇も見えました。
率直な感想としては、集落の雰囲気に合致した素朴で小さな教会というイメージ。しかも完全な洋風ではなく、和風の要素を取り入れていて日本人に馴染みやすい印象です。
高台とか海の近くではなく完全な山の中に位置しており、昔は国道なんて便利なものはなかったことを踏まえると本当にひっそりとした教会だ。この静けさは昔から変わっていないのだろう。

暑すぎて麦茶があっという間になくなる。
出発前に現地で買った塩タブレットも結局半分以上消費したし、暑さに弱い自分としては休憩を多めにとらないと命が危ない。


池島への玄関口の一つである神浦港の手前には赤い橋が架かっていて、この橋をもってフランス国旗の橋ゾーンは終了となります。
神浦港付近からは平地が比較的多くなり、オーバーヒート気味になっていた自分としては助かりました。

しばらく走って明日、池島へ向かうために利用する瀬戸港に到着。今日は特に用事がないのでスルーします。




西海市街からトンネルを超えて多以良~七釜に入ると道路脇に田園風景が見えてきたり、湾の内側に集落が広がっていたりと今までとはライド環境が異なっていることに気がつく。色んな意味で穏やかなひとときを過ごせました。
「夏」を感じさせる田舎の要素を全身で味わいながらも、ライド強度はそんなにきつくない。長崎県においては珍しい区間だと思います。
川島屋旅館での一夜
今日の宿は西海町太田和郷にある川島屋旅館というところです。
翌日に大島方面を散策するため、大島大橋に比較的近い場所を宿泊地に選びました。いわゆる市街地ではないので宿の数自体が少なく、電話予約しか受け付けていないような宿が多いです。








一日の行程が大変だっただけに、宿に到着できたときの安心感が半端ではない。走行距離はそんなにないものの獲得標高が1100m程度あり、夏ライド一発目として不適当でした。ただこの日の直射日光によって身体が夏の気温にある程度順応できたらしく、翌日と3日目のライドは特に問題ありませんでした。
投宿してからは早速お風呂に入って汗を流し、エアコンの効いた部屋でひたすら涼む。こちらは室内に洗面所があるほか、最も最奥に位置しているため静かで過ごしやすかったです。





夕食の内容はこんな感じできんぴらごぼうやフライ、タイの刺身ととろろ、ブリカマ(絶品)が出ました。朝から夏バテ気味で昼食は取っていなかったのですが、美味しそうな夕食を目の前にして食欲が復活して完食。
やはり宿での時間や食事の内容は元気を与えてくれる。ロードバイク旅において宿選びは案外重要だと再認識できました。一般的な旅とは異なり体力を消耗するぶん、肉体的・精神的に休息できないと意味ないしね。



夕食を食べてすぐ就寝となり、翌朝は7時に朝食をいただいて出発。川島屋旅館には大変お世話になりました。
女将さんの話によればつい先日も自分と同じロードバイク乗りがここに泊まったようで、その人は最終的に北海道まで行くとか。それは壮大な旅になるだろう。
大島崎戸の風景
長崎ライド二日目。
今日は午後から池島炭鉱坑内体験ツアーがあるため、12時過ぎくらいには西海市中心部に到着しておく必要があります。つまり午前中は空いていますが、何もしないまま過ごすのはもったいないため大島崎戸方面を散策することにしていました。
昨日の疲労具合によっては国道202号を即逆戻りして瀬戸港に行こうかと思ったけど、朝起きたら意外に余力があって一安心。予定通り崎戸町本郷まで行ってからピストンします。





長崎県には離島が多いため、自然と橋も多くなる。
昔は船でしか行き来ができなかったところが、時代が経過するにつれて利便性のため道路を繋げるようになっていきました(他の例でいうと瀬戸内海の島々など)。島の名称は長崎本土から順番に寺島、大島、蠣浦島、そして崎戸島。今ではすべての島に橋が架かっており、橋の形状や規模がそれぞれ異なる点が魅力的だ。
島々の中でもっとも栄えているのは大島造船所の大きな工場がある大島で、コンビニやスーパーも揃っています。そこから中学校や高校を横目に見ながら西へ走っていくと最西端にある崎戸島に到着。せっかくなので山の上にある長崎県西海市北緯33度線展望台を目指していくことに。





頂上の廃ホテルの裏側にまわり、奥の遊歩道を進むと展望台があります。
ここを訪れた大きな理由は特になく、私は半島とか島を走ると端部まで到達したくなる性質がある。今回もその理屈で島の突き当たりを目指してみた。これより奥はないという地理的な特徴と同時に、およそ誰もが訪れるわけではないひっそりとしたスポットに到達できたという達成感も感じられた。
展望台の周囲は遮るものがなにもなく、大海原の向こうには五島列島も見えているっぽい。かつてロードバイクで走った島がこうやって遠くに見えるのは感慨深いものがある。


ここ崎戸島は北緯33度線の上に位置し、他の地名ではバグダッドやアメリカのダラスなどが同線上にあるようです。
確か前に行ったことのある鹿児島県の佐多岬が北緯31度だったかな。普段の旅で緯度経度を意識したことは特にないものの、水平線を見渡せる景色はシンプルにテンションが上がる。自然の雄大さや人間の小ささをダイレクトに感じられました。


崎戸島には西海市崎戸本郷公民館では、住民の方が清掃作業をされていました。また崎戸島には民宿が3軒あるようで、最果ての地に泊まってのんびりするのもいいかもしれない。
ただ住民の方はこの地でどうやって生活をされているかが気になります。一応スーパーは大島にあるものの、それ以外だと長崎本土の西海市街地(大瀬戸町瀬戸樫浦郷)か、東側の西彼町小迎郷までいかないと買い物ができません。

端の近くには、お魚バス停(今泊マダイのバス停)がありました。遠くからでも目を引く見た目をしています。



崎戸橋を渡って長崎本土へ向かう道中、西海市崎戸総合支所方面へ寄り道。ここにもお魚バス停(蛎の浦あらかぶバス停)がありました。ちなみにあらかぶとは長崎県の言葉でカサゴのこと。
西海市崎戸フェリーターミナルがある周辺は大きな集落になっています。各島の中でもっとも大きな集落が崎戸ではここの様子。


その後は長崎本土に戻り、昨日通った国道202号を今度は南へ走って瀬戸港に無事到着。後はフェリーの時間まで待てばいいだけなので精神的に楽になれました。



で、問題となったのはランチをどうするかということ。池島に渡る前に昼食を済ませておきたいところが、今日は日曜日なので周辺の飲食店が営業していません。コンビニやスーパーの惣菜で済ますのもアレだし…と思って調べた結果、スーパーの中に併設されている「むすびカフェ」というお店を利用しました。
ここはその名の通りおむすびを主体で提供されているところで、今回はおかず付きの定食を注文。まさかこういう形でランチを食べられるとは思っていなかっただけにありたがい。
ランチ後は予定通りフェリーで池島に向かい、池島炭鉱のツアーを満喫しました。詳細は別記事にまとめています。



ツアーが終わって瀬戸港に帰ってくると、気がつけばもう夕方の時間。予約しておいた港近くの宿にチェックインし、日没間際の海沿いを散策したりしました。見知らぬ土地の日曜日夕方の、どこか寂しげな空気感。なにかこう郷愁にくるものがある。
夕食については当初スーパーで惣菜などを買って宿で食べる予定が、どうやら閉店時間が日曜日だけ早いらしくて行ってみたらもう閉まっており絶望。仕方がないので宿の方に聞いて、定食も揃っている近くの居酒屋で食事にありつけました。田舎のお店事情は事前に把握しておく必要があります。
あと今年の夏ライドをやる前は一日の走行距離をもう少し伸ばせるのではと思っていたけど、とにかく暑さのせいで体力を普段の何倍も消費するために無理できない。実際に昨日は疲労度が割とギリギリだったし。ツアーの後でさらに走るのは無理そうだったため、港近くの宿を選んで正解だった。
翌日は佐世保へ
翌朝。
今日はもう家に買えるだけとなりますが、突如として無性に佐世保バーガーを食べたくなったので佐世保に立ち寄ることに決めました。県道12号を通って山越えをした後、早岐を経由して佐世保へ向かいます。

西彼杵半島から佐世保市針尾を抜けて早岐へ。
このあたりは特に複雑に入り組んだ地形をしており、最短距離を結ぶために西彼杵道路というバイパスが整備されています(小迎バイパス~西海パールライン有料道路~指方バイパス)。しかし自転車は通れないため大人しく下道で向かいました。


佐世保に到着。平日ということもあって観光客は皆無。
この佐世保港からは五島列島を初めとして多くの島に行くことができるので、今後も何度か利用する機会があると思います。





最後は佐世保バーガーの名店として知られている、元祖ベーコンエッグバーガーの店ことBigMan上京町総本店でスペシャルバーガー(たまご、チーズ、ベーコン、ハンバーグ)をいただきました。人気店だから平日でも混んでいるのは…と思っていたところ、開店時間すぐだったこともあってお客は自分一人。店内のイートインスペースで優雅な時間を過ごせるのは嬉しい。
ふかふかのパンに新鮮なレタスとトマト、そして焼きたてのベーコンとハンバーグ、チーズが見事にマッチしており、まさに絶品です。ハンバーガー自体に厚みがあって食べるのにやや苦労する点もグッド。セットになっているカリカリのポテトと冷たいコーラとハンバーガーの相乗効果で、3日間の長崎ライドを総括する素敵なモーニングになりました。
こんな感じで今回のライドは終了。
終わってみれば長崎市から佐世保市までを移動していった中で、キリシタン教会や炭鉱といった長崎県の歴史に重点を置いた旅になりました。大自然に圧倒される景色を目的に出かけるのもいいけど、教養を深めるための行程も意外と楽しいもの。これからも興味のある歴史関連イベントには、たとえ遠くても参加していきたい。
おしまい。


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