【佐世保~九十九島展海峰~神崎鼻~平戸】ロードバイクで長崎のリアス式海岸を訪れてきた

今回はロードバイクで長崎県の佐世保~平戸を走ってきました。

2023年末のライドは鹿児島県の日本本土最南端・佐多岬を訪問したので、じゃあ2024年一発目のライドは日本本土最西端である神崎鼻を目指そうか、という安易な思考で行き先を決めました。
同時にそういえば佐世保バーガーも食べてみたいし、さらに平戸から的山大島に渡ればもっと楽しめそうだと思いついたので実行することに決定。特に的山大島についてはアクセスの難易度が高く、訪れるなら他のところも一緒に回らざるをえなくて訪問タイミングを見計らっていたというのもあります。

初日は博多から佐世保~平戸を走って平戸に一泊し、翌日は的山大島を巡ってから帰路につく1泊2日のオーソドックスな行程です。それでは出発。

もくじ

坂と軍港のまち 佐世保を走る

輪行で佐世保に到着した時間はすでに正午前で、今日はこれから各所を回りつつ平戸の民宿まで向かわなくてはなりません。自分にしてはかなり遅いスタートになったものの、今回ばかりはスケジュール的にどうしようもなかったので仕方ない。

佐世保駅前

佐世保駅前にはなんかアンパンマンに出てきそうなキャラクターが描かれていて、ハンバーガーキッドのご親戚の方ですか?と思ったら案の定やなせたかしさんが描かれたキャラでした。

このイラストの時点でもう分かる通り、この日の昼食に選んだのは佐世保を代表するソウルフード・佐世保バーガーです。

佐世保は戦前に旧日本海軍の拠点として栄えた歴史があって、戦後になるとアメリカ海軍基地が置かれたことによってアメリカの文化が佐世保に浸透していきました。佐世保バーガーはそんな文化の一つであり、今日では佐世保はハンバーガー伝来の地と言われています。
市内外を問わず多くの店がある中で、今回は最初の目的地である展海峰に向かう道中にある立地のよさから「ハンバーガーショップ ヒカリ本店」を訪れました。

ちなみに佐世保市街は道路が入り組んでいる上に交通量がかなり多く、ここを車で移動するのは個人的にはかなり嫌です。ロードバイクなら比較的小回りが効くので散策に便利だし、今回持ってきておいてよかった。

ヒカリ本店

ヒカリ本店に到着。

テイクアウトするお客さんがほとんどっぽいのに対して、店内のカウンター(5席)でイートインも可能です。訪問時は自分以外に人がいなかったので問題なく着席することができました。

受付で注文をする際に「初めてなんですがおすすめはありますか?」と聞いてみたところ、全部入りのスペシャルバーガーがありますよとのことだったのでそれを選択。あとポテトLとコーラも加えてセットにしました。

店内の様子
メニュー
スペシャルバーガー

そしてやってきたスペシャルバーガーはこちら。

具材はハンバーグにエッグ、チーズ、ベーコン、オニオン、トマト、レタスが入っているという豪華極まりない内容で、注文を受けてから作り始める=出来立てなので温かみをしっかりと感じる。これを頬張りつつポテトを口に入れ、油で口の中の潤滑がよくなったところにコーラを流し込むともう堪えられない。味付け自体は意外にも濃くはなく、あっさり風なのでおかわりも余裕そうです。

出発してまだ全然走ってないのに、もうゴールで良くないか?と思えるほど濃密な時間が過ごせました。

展海峰から九十九島を眺める

お腹が満たされたところで元気も湧いてきて、ここからが佐世保ライドの始まり。長崎県ならではの坂道の多さ+平坦の少なさを実感しつつ、景勝地・九十九島を一望できる西海国立公園の展海峰まで走っていきます。

海沿いから陸地へかけての地形の盛り上がりが激しいためどこを走っても坂道に遭遇し、上っていると思ったらいきなり下ったり、その逆もある。走行中は他の地域よりも路線バスの存在が気になったのですが、確かに自家用車を持つには土地が少なすぎるし、どこかに移動するにはバスがちょうどいいのかもしれません。

斜面の多さ
造船工場

佐世保湾と五島灘を隔てている俵ヶ浦半島方面に向かう傍ら、港を左手に見ながら徐々に標高を上げていく。

ロードバイクで走るには坂の多さは結構辛いものの、短距離で標高が上がるので景色の良さは抜群です。建物と建物間から海を視界に入れるたびに海面からの高低差が高くなっていることに気がつき、常に景色が一様ではないのがとても新鮮。

佐世保にはこの多彩な高低差を利用した展望台がたくさんあって、今回訪れたのはその展望台の中でも人気が高い展海峰(てんかいほう)です。標高は165mで、佐世保市街から向かう場合だと大きな上りが2箇所。どこを通るにしても道が狭いので注意が必要でした。

展海峰の駐車場

県道から道を一本入った先に広々とした駐車場があり、マイカー訪問時のキャパシティは大きめ。もちろんトイレも完備されているほか、飲食店もあります。

公園内には大きな花壇が整備されていて、季節ごとの彩りを楽しめるようです。

そのまま奥に進んでいったところにある展望台からは風光明媚な九十九島の島々を見渡すことができます。

ここで九十九島について説明すると、九十九島はそのほとんどが無人島や小さな岩礁で形成され、人が居住している有人島はわずか4つ。つまりほとんどが手つかずの自然のままで保全されており、その島密度は日本一とのことです。
複雑に入り組んだリアス式海岸と数えきれないほどの島々から構成される「多島美」の風景、これを見に来たいがために自分の脚でここまでやってきました。

右奥が佐世保市街

そしてこちらが展海峰から眺める九十九島の展望。これは…あまりにも美しすぎる。

展望台の前面には視界を遮るものなく九十九島が180°のパノラマで広がり、眼下には青い海とたくさんの島々が見えます。驚くべきはそのダイナミックなビューの距離感で、ちょっと手を伸ばせば海に手が届きそうに思えるほどでした。

一般的な「海沿いの風景」というと広大な大海原のみが見えるのが普通で、そこに何かの島がプラスされるとしてもおそらく1つか2つ程度。対して九十九島では見えている海の部分の半分くらいは陸地が占めており、海の青色と陸の緑色のバランスが見事でした。見るスポットを変えれば海に浮かぶ島々の重なり具合が微妙に変わる上、日中ではなく夕陽のタイミングにはまた異なった印象を抱きそうです。

ヒルクライムで熱を持った身体を北からの風が冷ましていき、気分が落ち着いてきたところで九十九島を再度見渡してみる。

思えば道中の坂の多さはこの景色に至るための布石だったわけで、佐世保、そして長崎県ならではの独特の地形がこれほどまでに神秘的な情景を生み出している。地形と景色はある意味でセットになる存在だし、ロードバイクで走るということは地形の移り変わりをダイレクトに実感できるということ。

風景を楽しむ点において、あえて人力で訪問することは感動を何倍にも増幅させてくれる。今回ここを訪れることができて本当に良かったです。


展海峰を後にして、次に向かったのは同じく九十九島の展望台である石岳展望台園地というスポット。こちらは住宅地を抜けていった先、九十九島動植物園森きららのすぐ近くにあるのでアクセス性は比較的良さげです。

展海峰からの下り坂で、眺めがよい一角があったので停車して写真を撮りました。

ワインディング・ロードの先に海が見えるのはとても良い(語彙力)。その向こう側に広がる「町」の様子も含めて、まるで何かの作品のワンシーンのようだ。

山の上にいたと思ったら海抜0mに下ったりと変化が激しい
石岳展望台園地
石岳展望台。こちらは日野町方面をよりアップで眺められる。
眼下に九十九島遊覧船のりばが見える

石岳展望台園地に到着。

こちらは県道を逸れてから駐車場に至るまでが比較的長く、道幅が細めです。駐車場から展望台までは森の中を抜ける形で、道中に自然が多いという意味でとても癒やされました。展望台には椅子や机があって、例えば仕事終わりにここにきてまったりする人とかいそう。

さっき展海峰から見た島々を別のアングルから眺めることによって、自分の中で九十九島の奥行き感を認識することができたと思います。ある一箇所から見ただけだと距離感って案外掴みにくいし、見えなかったところが見えることによって同じ場所でもまた異なる発見がある。

神崎鼻の風景

九十九島の多島美を堪能したところで、次に向かうのはここから北西の方角に位置する神崎鼻公園(こうざきばな-)です。

ルートとしては海沿いを通る以外に選択肢がないけど、この日の天気が北からの強風6m/sとかだったので正直キツかった。身体に容赦なく風が叩きつけてくるのでスピードを出す走り方はやめ、低速かつ低トルクで負担を減らして走りました。県道11号から県道139号、そして県道18号へと移るにつれて交通量は徐々に減っていき、割りと走りやすくなります。

県道からの分岐の看板

神崎鼻公園に到着。

神崎鼻は北緯33度・北緯129度に位置し、日本本土において最西端の地となっています。ちなみに2023年末に訪れた日本本土最南端の佐多岬は半島の突端にあり、そこへ続く道路は佐多岬に向かう専用のものでした。これに対して神崎鼻については県道18号を逸れてから約2km走るだけで到達するため、「最果て感」は比較的薄め。

しかし真正面に平戸島がそびえるインパクトは大きく、個人的に佐世保~平戸間を走るならここに行ってみたいと思っていた場所でもあります。周辺には公園が整備されていて、トイレ休憩も可能です。

公園内の様子はこんな感じで芝生がメイン。奥の高台には他の3箇所の「最◯端」を含めた日本地図があるので、自分がいまどこにいるのかがとても分かりやすい。

「日本本土最西端の地」のモニュメント

今日はひらすら海の近くを走り回っているけど、神崎鼻は最初に訪れた九十九島周辺とはまるで雰囲気が異なっているように思えます。

向こうは海からの高低差が大きかったのに対し、こちらはむしろ海面がすぐそこ。高低差がないに等しいので、違いが如実に実感できます。視界に入ってくる情報についても大部分を無人島が占める九十九島 vs 有人島の平戸島という形だし、何もかもが対比になっている。これが全く別の県だったらそれも納得がいくところ、同じ長崎県内、それも同じリアス式海岸の近くでこれほど海の様相に差があるのは面白い。

神崎鼻は訪れる人も比較的少なく、落ち着いた時間を過ごすことができました。

教会で祈って平戸へ

神崎鼻を巡った時点で、予め決めておいたスポット巡りはこれで終了。あとはゆるゆると北上を続けて九州本土から平戸島に到達し、今日の宿を目指すことにしました。

なお宿を平戸にとったのは単純に、明日の目的地である的山大島へのフェリーが平戸から出ているからです。

さっきまで下に見える道を走っていた
斜面を利用した棚田

県道18号をそのまま走って国道204号に移り、松浦鉄道の線路に合流してからは少し山を上って道の駅方面へ。

県道18号は佐世保周辺とまではいかずとも小刻みなアップダウンが多く、坂を下るたびに別の集落が登場してくるのが楽しかった。漁業を生業にしているのなら当然ながら海に近いところに集落が形成されるわけで、少しでも内陸部に入ると途端に家屋の数が減ります。

で、「道の駅 昆虫の里・たびら」から先はこのまま国道を直進するか、それとも道を西側に逸れて県道221号を走るかの二択。国道を走ってもあんまり面白くないということで後者を選んだ結果、思いがけない出会いがありました。

田平天主堂

丘陵地帯を走っていると左側に何か大きな建物が見えたので近づいてみると、そこにあったのはなんとカトリック教会である田平天主堂

一般的に日本では神社や寺が多く存在する一方で、五島列島ライドで学んだ通りに歴史的な背景から長崎県には今なお古い教会が各所に残されています。今日の行程ではどちらかというと地形ばかりに注目がいっており、そういえば教会が多いんだった、とここにきて思い出しました。

到着した時間は幸いにもまだ礼拝可能時間内(~17:00)だったため、受付でお話をしてから礼拝することに。

田平天主堂は築100年を超えるレンガ造の教会。かっちりとレンガが組み合わさっている様子が良い。

土曜日の夕方だからなのか堂内には自分以外に誰もおらず、広々とした空間内でしばし祈りの時間を過ごす。

上の方に配置されているステンドガラスからは柔らかな夕陽が差し込んでおり、静寂のなかに鮮やかな彩りを添えています。神社とは別の意味でここには荘厳さが感じられ、いつまでもここに佇んでいたくなるほどでした。最後はお賽銭代わりに気持ちばかりの寄付を行いましたが、建物の老朽化が進んでいるために今後の保全が課題になっているようです。

教会正面は西向きなので、この時間帯はすごく目立つ

陽の傾きによって明暗の差が激しくなってきている田平天主堂を後にする。

自分としてはこういう風に予定にない出会いがとても好きで、時間が許す限り道草を食っていたい。何よりもスピードを出して平均速度を上げるようなライドに興味がないので重視するのは自然と「訪れる場所」になり、終わってみれば今回も良い旅ができたと自分で思えるのならそれで十分。

日暮れが差し迫っている中で宿へ直行せずに教会へ立ち寄ることも決めたのもそんな思いからであって、結果的に素敵な滞在となりました。

平戸大橋

国道204号から国道383号へと入り、九州本土と平戸島を結ぶ平戸大橋を渡って向こう側へ。橋の上でちょうど日暮れを迎えました。

平戸の民宿での一夜

この日に泊まった宿は、平戸港にほど近い「民宿とびうお」です。例によってネット上にほとんど情報がないので電話して予約しました。

当初はネットで空いている宿を予約する気でいたものの、空きがあるのは素泊まりのみか朝食付きプランの宿のみ。しかも宿泊料金が素泊まりなのに高い…。せっかく泊まるのあれば二食付きにしたかったので、たまたま目に止まったここを選びました。

民宿とびうお

旅館と民宿の違いは建物にあり、民宿の方は民家そのもの。玄関から部屋に至るまでシンプルなところがほとんどです。まあ自分が宿に求めるのは布団で静かに寝られることくらいなので、設備についてはあまり重視していません。

この日は自分以外にもう一組が泊まっていて、自分が泊まったのは2階の部屋。お風呂に入って身体を温めた後、部屋に戻って先に布団を敷いておきました。

夕食の内容
珍しいサカタザメの刺身

で、待ちに待った夕食の時間。昼食がハンバーガーだったので夕食は海鮮がいいかな?とか思っていたところ、民宿とびうおの夕食は想像の2倍くらい海鮮一色でした。

ちょっと内容を挙げてみるとサカタザメの刺身(エイの仲間で、滅多に網にかからない)、カサゴの味噌汁、イカの刺身・ワタ、ナガニシ、サザエ、アジの刺身・南蛮漬け等。もちろんどれもが平戸で水揚げされた魚貝です。何を食べても新鮮そのもので感動…!

なんだかんだで魚をおかずにして米を食べるんだろ?となるところが、むしろ魚の方が主食だったので米は一杯しか食べられなかったという結末。刺身に至っては後からさらに追加があったくらいで、魚だけでお腹いっぱいになるのはあまり経験がないです。これで二食付き8,000円なのだからお得意外の言葉がない。

早めに寝る

夕食後は早々に布団に入って眠りにつき、明日に備えました。

朝食の内容

翌朝は至って普通に目が覚め、朝食を済ませて民宿とびうおを後にする。女将さんには佐世保のことや的山大島のことも伺うことができて、食事だけではなく滞在も含めて実に満足のいく宿だった。

この後は平戸港へ移動し、フェリーに乗って的山大島へ上陸しました。後編に続きます。


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