【平戸~的山大島 神浦の町並み~大賀断崖】ロードバイクで歴史ある江戸時代の漁村集落を訪ねてきた

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平戸港の朝

佐世保~平戸ライドから一夜明け、今日訪れるのは長崎県平戸市に属する島・的山大島(あづちおおしま)です。海沿いの風景という点では昨日と同じなものの、「島」という点が明確に異なっている。気分転換の意味でも2日目は島旅をすることを選んでみました。

まずはフェリーに乗るために平戸桟橋(平戸港)へ向かうことに。

昨日泊まった民宿とびうおから平戸港までの道中、猶興館高等学校の前にある小さな港を経由して海沿いへ。

まだ朝日が上ったばかりの時間帯ということで行動するには若干眠いものの、港には漁の片付けをされている人がいたりする。内陸部を走っているだけではこういう風景を見ることはできないし、少し遠回りするルートを選んで良かった。

乗るフェリーが接岸中

平戸文化センターの前で遠目にチラッと船が見えたので駆け寄ってみたところ、乗る予定のフェリーが対岸にある平戸港にちょうど接岸している最中でした。

的山大島と平戸を結ぶフェリーの始発便は的山→田平→平戸の順に港を回るため、ちょうど田平から平戸に移動してくるフェリーに遭遇できたようです。自分が乗る第2便が的山大島へ向かう最初の便となり、これに間に合うように行程を決めていました。ちなみに今回乗るフェリーはランプウェイが後方にしかなく、接岸するときは車でいうバック駐車みたいな格好になっています。

平戸港

平戸港に到着し、早速切符を購入。平戸~的山の運賃は自転車込みで片道920円です。

平戸港には平戸観光協会が併設された「平戸市観光交通ターミナル」があって、いわばここは平戸島の玄関口。近くにはたくさんの飲食店があるし温泉もあるしで、平戸港を拠点にして平戸市の各地へ足を伸ばす感じの行程にしておくのがいいと思います。

で、切符購入後に港付近を散策していたところ、たくさんの自転車を船で運ぼうとしている風景に出会うことができました。見た感じは小学校・中学校の通学用のものっぽかったけど、自分が乗った的山大島のフェリーでは見かけなかった。もしかしたら度島行きのフェリーで運搬したのかな。

平戸港は市バスの重要な中継地点にもなっていて、フェリーの出港時間に合うようにバスがやってきています。

それぞれの島からやってきた人、これから島へ向かう人。移動に伴う乗船客が一箇所に集まる形になり、日曜日の朝の平戸港は次第に賑やかになってきました。こういう風景は「日常の交通手段」としてフェリーが組み込まれている地ならではのものだと思っていて、内陸部だと当然ながら見られません。

海から陸、逆に陸から海へと移動手段が切り替わる場所として港は非常に重要な役割を持っている。空気が澄んだ冬の朝に降り注ぐ陽光に、目の前の平戸港。今日一日の出発地がとても清々しく感じました。
船旅そのものももちろんいいけど、船の乗る前段階の港の様子とか、同じ港から船に乗る他の乗客の様子とか。そういうのも含めて船旅って良いものだなと思います。

的山大島行きのフェリー
出港

その後は予定通りの時間に出港し、フェリーは平戸港を離れて的山大島へ。

一緒に乗っていた乗客は数人程度のみで、この時期の的山大島へ向かう人はそんなに多くないようです。

予想外に波が強い

自分がフェリーに乗る際は室内ではなくデッキで過ごすことが多くて、外の空気や風を感じながらのひとときはなにものにも代えがたいもの。船の上から眺める景色と船ならではのゆっくりとした速度の相性がとても良く、うまく説明できないもののなんか心地よい。

ただ今回は寒さ以前に風が予想以上に強く、ずっとデッキに座っていると揺れがひどかったので室内に籠もってました。フェリーが比較的小型なのと、例えば瀬戸内海などと違って波そのものが強いのが原因っぽいです。

度島へのフェリー

そうこうしているうちに陸地はいつの間にか遠くなり、周囲に見えるのは海ばかり。

航海の途中には左手に小型のフェリーが並走しているのが視認できて、あれがどうやら度島(たくしま)へ向かうフェリーのようです。位置関係としては的山大島よりも度島の方が平戸に近く、そのぶん早く到着できるというわけです。

的山大島 神浦の町並み

平戸港を出てから40分後、フェリーは予定通りに的山大島へ到着。結局揺れが激しかったのは少しの区間だけで、特に問題ありませんでした。

帰りのフェリーが出るのは今から約2時間後で、飛行機のことを考えると今回はこれがリミット。回るところはざっくりとしか決めていないけど、例によって自分が気になった方へ進んでいく方針でいきます。

的山大島 的山港

いま自分がいる的山港は島の南部に位置しているため、ひとまず東に向かって神浦の町並みを訪問することにしました。その後は北側に向かって断崖絶壁を拝み、最後はゆるゆると西に向かいながら港に戻ってくるという流れ。

ちなみに的山大島自体はそんなに広くありませんが、自転車で回るのであればどこへ行こうが坂道が登場してくるので注意が必要です。基本的に平地は町並みが形成されている3箇所(的山港、大島村神浦地区、大島村大根坂地区)しかなく、残りは全部斜面です。

棚田が多い
景色が良すぎる件について

いきなりの坂道に戸惑いながら標高を上げていく。

昨日行ったリアス式海岸ライドで感じたのと同様に、集落と集落と間には田んぼや畑が形成されていました。家屋の傍らに農業の存在がある…という形ではなく、生活の場と農業の場がはっきりと区別されています。また的山大島の各地には様々な規模の棚田が存在しているようで、これは田植えの時期になるとまた違った印象を抱きそうでした。

棚田ゾーンに差し掛かると棚田と山、そして海しか視界の中には入ってこない。そのぶん的山大島の自然の大きさが強調されているように感じられ、特に坂道の頂上からは九州本土方面の眺めが抜群によかったです。標高が高いところからの景色はどこも素晴らしいものがあるけど、アクセス方法が限られた島という状況、そして周りには自分以外に誰もいない…。そういうシチュエーションが景色に華を添えている。

しばらくは無人地帯を上ったり下ったりした後、神浦地区という一角に到着。この神浦の町並みこそが、ずっと前から自分が訪れてみたいと思っていた場所でもあります。

神浦地区の神浦湾
釣りをしている人が多い
石垣が見事な天降神社
神浦の町並み

神浦地区(国選定重要伝統的建造物群保存地区)は鯨の漁で発展した漁村集落であって、漁が隆盛を迎えた江戸時代から明治時代にかけて今の集落の基礎が形成されました。その木造建築は今なお軒を重ね、当時の面影が残っている極めて珍しい集落です。

神浦の存在を何から知ったのかもう覚えてないけど、自分が気になったのなら実際に行ってみるのが手っ取り早い。ネットで大抵の情報は手に入る時代の中で、この方針は今後も変えることはないだろう。


立地としてはまず神浦湾の近くに郵便局やAコープなどが並び、そこから内陸部に道を一本入ったところに所狭しと家屋が密集しています。表通りの幅は軽トラでもおそらく通れなさそうなほど細く、そこを歩いていくと両側の家屋の存在感が強く感じられました。

単純に家屋同士の距離が他の地域と比べて圧倒的に近く、集落としての密度の高さが本当に凄い。限られた平地を限界まで有効活用するとここまでになるのかという感じ。あと集落の中には余計な看板なども一切なくて、ノスタルジーさに拍車をかけています。

集落の東にある西福寺からの眺め
奥に見える山の向こう側からやってきた形になる
軒先にある「腕木」は家屋によって異なる意匠をもつ

いやー…実に良い。どこを見ても古い建物が続いていて、かつては日本中どこの村もこういう雰囲気が広がっていたんだろうか。そんなことを考えながら時間を忘れて散策してました。

島の中でも更に限られた土地、山と海に挟まれたところにこんな素敵な町並みがある。通りを歩く人は自分以外になく、つまり日曜日の快晴の下でこの景色を独り占めできているということ。島の歴史を思いながら、神浦地区を後にしました。

的山大島の自然を巡る

町並みの散策で予想以上に時間を使ってしまったけど、予定していたもう一箇所のスポットの方は普通に巡れそうだったのでライドを続行することに。次に向かったのは島の北東部にある断崖絶壁・大賀断崖です。

先ほど「的山大島には平地がほとんどない」と書いた通り、的山大島の地形や海岸線はかなり特異なものでした。これはつまり言い方を変えると移動距離が短い割には地形の変化が大きく、狭い範囲に魅力がギュッと詰まっているということ。

こういうのって写真だけではなかなか把握できないし、自分は現地でしかできない体験をしにここに来ている。目論見通りの時間が過ごせることがシンプルに嬉しく、坂道の多さは気にならないものとなりました。

石垣の中に組み込まれた地蔵
大島村大根坂地区を遠方に見る
風力発電の施設が多い

大賀断崖までの道中は再度棚田ゾーンに入り、家屋は全く登場しなくなります。ただ島の東部の山間部からは大根坂地区が見えたりもして、人の存在を全く認識しないわけではない。密度の差が激しいというか、メリハリのある風景が目に入ってくるので飽きることがありません。

山間部に差し掛かると風力発電用の風車が間近に見えるようになって、そういえば平戸島や生月島でも風車は見かけたことがある。日本の中でもここ一帯は風が強い地域なんだろうか。

大賀キャンプ場

そのまま進むと大賀キャンプ場の入り口があり、直進すると大賀断崖に着きます。

こちらのキャンプ場はなんと無料で使用できるみたいですが、正真正銘の最果てみたいなところに位置しているのでソロキャンには向いているのかもしれない。

展望台へ
地面に落ちていた謎の実
展望台

キャンプ場の高さからでも十分に高低差が感じられる一方で、奥にある展望台へ上るとさらにダイナミックな風景を見ることができました。島の南側を通ってきた身としてはこれほどの絶壁に出会えるなんてつゆ知らず、冗談抜きに予想外の一言。

もっと沖合にある壱岐島を走ったときにも感じたこととして、人が住んでいる場所とそうでない場所で地形が全く異なっていることが実感できます。確かによく考えてみれば強い波風が年中吹き付ける大地なわけで、長い年月の中で海沿いが崖になるのも納得。

右奥に見えるのは馬渡島?
遠方に霞んで見えるのが壱岐島

沖合へと目を移してみると、青い空と青い海がどこまでも続いている。せっかく的山大島を訪れるなら天気の良い日がいいなと思っていたけど、ここまでいい天気になってくれて何よりだ。

帰路

ここまで島の中を巡ってきたところでフェリーの時間が徐々に近づいてきました。これ以上どこかを巡っているとちょっと間に合いそうにないため、港方面へ向かいつつ軽く寄り道をしていくことに決定。

一度の訪問ですべてを回るのではなく、あえて不十分感を残しておくことで次回の訪問へスムーズに繋げる。世間的には「せっかく旅行するなら行きたいところを全部回る」という風潮があるものの、旅においては心残りがあるくらいがちょうどいいのかもしれません。

行きとは異なる道を通って島の中央へ向かい、港の北側から南下していきます。

的山港を上から
ねこ屋敷

なんでもない道を通り、なんでもない風景を見ながら雰囲気に浸る。

的山大島にはいわゆる観光スポット的な場所は少ない一方で、日常に溶け込んだ島の風景がそこかしこに存在しています。海沿いへ下るカーブした道だったり、棚田の向こう側に別の島が見えたり、港の一角を猫が平和に歩いていたり。そのどれもが的山大島にとっては茶飯事で、自分にとってはそうではない。

帰ってから写真を見直しているとむしろそういったアングルの方が印象に残ったりするので、これからもこういう場所を自分は訪れていくんだろうなと思います。

白壁に飾り皿が貼り付けてある一角
陳列された酒瓶
料亭だが、元遊郭の建物とのこと

的山港の近くを散策していたところ、思いがけない光景に出会うことができました。

路地と民家を隔てている白壁には飾り皿が貼り付けてあって、見るからに特別な建物という感じが漂っています。しかもその壁の近くにはこれまた古びた料亭の建物が見え、どうやらこの付近は港周辺では一段と歴史がある様子…。

たまたま近くを通りがかった方に伺ってみたところ、白壁については住民の方の「趣味」のようでした。料亭の方については今は無人となっているが昔は島で一番大きな遊郭で、漁が最盛期だった頃の賑わいは相当なものだったらしいです。営業していたらぜひとも立ち寄ってみたかったけど残念だ。

そんなこんなで、今回の的山大島訪問はこれにて終了。

帰りは予定通りの便に乗って平戸港に帰還しました。なんか行きのときより乗船している車も乗客も多くて驚いたものの、おそらく週末だけ島に帰ってきている人たちのようです。

田平で食べたボリュームたっぷりの天丼

平戸に帰ってきた時間はちょうど正午で、昼食は田平港近くのお店で天丼を選びました。最初は海の近くだから海鮮という思考になり、あ、そういえば海鮮は昨夜お腹いっぱい食べたんだったわと思って天丼に変更。お椀からはみ出さんばかりの天ぷらが入っていて自然と笑顔になってくる。

最後は松浦鉄道のたびら平戸口駅から電車に乗って福岡へ向かい、旅は無事に終わりを迎えました。

長崎県はアップダウンが多くて魅力ある道を楽しむことができ、そこでは「海沿い」という言葉でひとまとめにできないくらいの多彩な風景に出会えます。食事についても今回は佐世保バーガーに加えて海鮮と、その土地を代表する品を食べることができたので大満足。また美味しいものを食べるためだけに再訪してもいいと思えるほどでした。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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