TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【岐阜県を走る5】酷道417号・冠山峠を目指して (@岐阜県揖斐川町)

岐阜県内を走った記録5です。

【訪問日:2020年4月29日】

冠山峠

今回はヒルクライム回でございます。

今までの【岐阜県を走る】シリーズでは、「岐阜県は山が多い」ということしかあえて書いてきませんでした。確かに少し北の方に走れば山がたくさんあるものの、実際にそこを走るヒルクライムルートについては、まだ走ったことがありません。

岐阜県でヒルクライムというと、自転車乗りではなくても分かりやすいのが乗鞍ですよね。スカイライン・エコーライン両方とも獲得標高が1,000mくらいあって、しかも一般車両は通れないから至って快適に走ることができます。

で、そんな感じのルートが岐阜県の南部にもないのかな?と思って調べてみたところ、よさげな場所を二箇所ほど見つけました。それが福井県との県境に位置する以下の峠です。

  • 温見峠:国道157号
  • 冠山峠:国道417号

それぞれの峠が走っている国道157号と国道417号は両方ともいわゆる「酷道」として日本中に知れ渡っているほど有名な道で、ヒルクライムだけではなくて道そのものも楽しめそうとなれば、これはもう行ってみるしかない。

ただし、温見峠の方は2年ほど前の災害で国道157号が今も通行止めという情報を仕入れたため、もう一つの冠山峠に行ってきました(後述しますが冠山峠も福井側は通行止めでした)。酷道や険道は1年を通して通行止めになっている期間の方が長く、さらに道自体が脆弱なのでよく工事ばっかりしてるので、行けるときに行くのが正解だと思います。

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今回も田園風景を眺めながらスタート。

走行ルートとしては揖斐川町を走る国道303号を北上し、横山ダムで接続されている国道417号を通って峠まで向かいます。というか実質このルートしか道がないので、多分先人たちと全く同じ行程になりそう。

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コロナの影響でどこにも立ち寄らない(ことにしている)方針に加え、ヒルクライムで水分を大量に消費しそうな予感がしたのでボトルは2本体制にしてます。

まずは徳山ダムまでゆるゆると上っていきたいところなんだけど、この国道303号は交通量がそこそこ多いので県道254号線の方を走りました。まあせっかく人がいない場所を選んで走ってるわけだし、わざわざ喧騒にまみれる必要はないよね…。

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とか思ってたらこれですよ。

いきなりの通行止め。

幸いにして揖斐川の反対側の岸を走ることで事なきを得たものの、岐阜県はこのような通行止めになってる道が非常に多いので下調べは重要です。もちろん現地でのwkwk感を楽しみたいので下調べはあまりしない方なんですけど、そもそも通れない道があるとなれば話は別。

冬季閉鎖が終わってよっしゃ通れるぞ!と思ったら道が崩落して工事中、とかよくあるので。

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揖斐川は木曽川水系の一級河川なため規模が大きく、ダムも随所に建設されています。

必然的に県道254号線や国道303号を走っていても橋が多く、しかも川面との高低差がとても大きいので迫力は抜群。気を抜くとそのまま落ちてしまいそうになるくらい引き込まれる感じがします。

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この横山ダムも、そんなダム群の一つ。

横山ダムの建設によって生じたこの奥いび湖で、道としては滋賀県木之本町に抜ける国道303号と、冒頭で触れた国道417号に分岐します。今回は湖の東側を直進して国道417号を上っていくことになりますね。

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国道417号に入りましたが道の様子がいきなり変わるということはなく、今までと同じように揖斐川に沿って北上していきます。斜度は3~5%あたりをうろうろしてて至って平凡なダム周辺の道、という印象。もちろん交通量は皆無ですが。

徳山ダムと徳山村

横山ダムから先は民家が一切なく、もちろん補給ポイントもありません。コロナの影響を抜きにしても、このルートを走る上では補給を大量に持っていくことをおすすめします。

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ついに徳山ダムに到着。

徳山ダムは日本最大級のダムで、その総貯水容量6億6,000万m3は日本一を誇ってるみたいです。東海3県の水がめとして自分もそのお世話になっているわけで、よく考えてみると大変ありがたい存在ですね。マップ上で見てもその面積の広さに驚き、現地でも遥か遠くまで広がる徳山湖に二重で驚いてました。普通に道沿いに走るだけでは全貌を把握できないくらい本当に広いです。

と、ダムの雄大さについて語ってみましたが、今回はダムの持つ「もう一つの側面」を見るためにちょっと寄り道しました。

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綺麗な滝を過ぎた先にあったのは、

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徳山湖を一望できる高台、そして遠方まで続く山体でした。

この景色、取ってつけたよう言い方になるけど本当に美しい。

ここは、徳山ダムにかかる徳之山八徳橋の南側から西方面に4kmほど走った突き当たりにある「六社神社跡宮」。

そう、この徳山湖が広がる場所にはかつて徳山村という村がありました。ダム建設に当たり、徳山村の全域が水没するということで論争が巻き起こったが、無事終息しダムが完成した、というのが結論です。

shiranui23.com

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この六社神社跡宮はその徳山村の面影を感じることができるスポットで、今となっては村の面影をわずかにうかがい知ることができます。

ダム建設と切っても切り離せないのが、「もともとそこに住んでいる人々はどうなるのか」という問題です。生まれ育った場所がダムに沈んでしまうわけなので当然ながら反対運動は起きるし、徳山ダムのように結果的に無事に建設に至ったとしても、残された住民の方々の感情は非常に複雑なものになります…。

この場所は徳山ダムの周囲の中では最も標高が高いところに位置しており、その雄大さを直に感じることができる傍らで、そこに消えた村のことに思いを馳せながら感傷に浸るのもいいかもしれません。

酷道のさらにその先へ

徳山村を後にして、ついに酷道417号を走るときがやってきました。

その「酷」成分が露骨に現れてくるのは徳山湖の北西、湖と揖斐川の境目からなのですが、ここに至るまでも結構怖い思いをしたのは内緒。

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というのも、徳山ダム周辺はトンネルが非常に多く、さらにその長さが最低1kmくらいあるんですよね。上の写真のところが一番長くて、中を走ってるだけで心細くなる。

さらに、トンネル内のセンターラインには全線に渡ってチャッターバー(道路鋲)があって、ドライバーはこれを乗り越えるのを嫌って走行中の自転車の横ギリギリを通過しているのでいつ接触するか冷や冷やしてました。

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そんな恐怖のトンネル地帯を抜けると広場があり、一応トイレもあります(ただし水は飲用不可)。

ここから先では「冠山峠道路」なる道を建設中のようで、これが完成すれば今から向かう冠山峠を通らなくても福井と岐阜の行き来が容易にできるようになるというわけです。予定では2024年度に開通するっぽいですね。

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では早速、酷道を走っていきますか。

その前に、改めて冠山峠周辺の道について追加で情報を調べましたのでご覧ください(下記)。

現在、国道417号の当該区間は7.6kmが自動車通行不能区間とされ、直線距離で7.1km(福井側3.2km、岐阜側3.9km)にわたって未整備であり、両県の端点を、冠山峠を経由する延長19.4kmの林道塚線及び林道冠山線を代替路として接続している。しかし両林道とも幅員が狭小で急カーブ・急勾配が連続する線形不良箇所が多く、大型車の通行は困難であり、冬期及び土砂災害時は通行止めとなるので、年間通行止め日数は170日を超える。

つまり、現状は「林道冠山線」の両端を国道417号で挟んだような道になっており、今は林道冠山線が国道417号の一部のような扱いになってはいるが、冠山峠道路が開通すれば国道417号オンリーで走れるようになる、という状況です。

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林道が始まって約1kmくらいは道も至って平和で、斜度は8~10%程度あるものの、まだ道そのものに危険を感じることはありません。

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林道開始から1km地点で高倉峠(←)と冠山峠(→)への分岐がありますが、そのまま→へ進みます。

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ん?なにこれ?

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思いっきりだよねこれ。水も結構流れてるし。

いくら林道とはいっても、突然川が出てくるのは今まで経験がない。浅いところをゆっくり走ったけどこれは驚いた。

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川を過ぎてからはもう上り一辺倒で、ヒルクライムそのものに集中して走ることができます。

道の状態もそこまで悪くなく、ちょっとした落石とか枝とかが落ちているくらいで、スピードが出ていない上りだとそこまで心配することもないと思います。

思いますが…しかし…。

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道の右側が常に切れ落ちているのは怖すぎる。

道幅も車一台がギリギリ通れるくらいしかないので、わずかにでもハンドル操作をミスろうものなら崖下に真っ逆さまですね。車でここ走れって言われたら全力で拒否するレベル。多分100mとか200mくらいは余裕で転がり落ちると思うんで、「落ちたら死ぬ!」どころか誰にも発見されないまま終わりそう。

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ここにきて一段と斜度がきつくなってきた感はあるものの、これだけ上ってくれば必然的に眺めもよくなるというもの。

さっきまで外周を走ってた徳山湖も遠方に見えます。

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あと、「あそこに見えている道の向こうが峠!」と思わせてくる"偽ピーク風"の展望が2回くらい続くので、淡い期待を抱いていると心を折られます(つらい)。

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そんなこんなで、無事に冠山峠(標高1,050m)に到着!

峠には「冠山峠」と刻まれた記念碑と、県境を挟んで両県の地方自治体名を標した石碑がそれぞれ設置されています。福井県側には「越前国池田町」の石碑が1つ設置されているのに対して、岐阜県側には「美濃国徳山村」、「美濃国藤橋村」、「美濃国揖斐川町」を標した3つの石碑がありますね。自治体の変遷がひと目で分かることに加え、古いものもそのまま置いてくれているのが好感が持てます。

あと、忘れてはならないのが「揖斐川源流」の文字。今日ひたすらに上流へと上ってきた揖斐川、その源がここにあるんです。これが下流であれだけの水量を誇るまでに発達していくのだから、自然の力を感じずにはいられません。

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峠のゲートを超えた先はもう福井県。何がヤバいって福井側の道は雪が残っているところ。どれだけ奥深い山奥にあるのかがひと目で分かる。

福井側については道が完全に崩落しているみたいで、今のところ岐阜側~冠山峠までは通行可能ですが、岐阜側より道が険しい(これ以上ってどんだけだよ)福井側はゲートで完全に封鎖されており通行できません。

「県を跨ぐ」と一言で書くとあっけない響きになる気がするけど、あれだけのヒルクライムをしてきて、しかも自転車で来れたということもあってもう達成感がすごい。こういう形で越県する経験ができたのは本当に嬉しい。

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向こうに見えるのは白山?

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ちなみに岐阜側の東方向には、冠山峠の名前の由来になった冠山(1,256m)があります。さながらマッターホルンのような山容で、ここ冠山峠から1時間程度で山頂まで行けるっぽい(行こうか迷った)。

しばし風景に見とれてから下ることにしました、これがめっちゃ怖い。

斜度12%+急カーブ連続+崖を落ちたら消息不明のコンボ、斜度がまだマシだったならゆっくり行けば済む話なのですが、嫌でもスピードが出るので生きた心地がしませんでした。キャリパーブレーキ+カーボンホイールなのでそこそこブレーキングも気を使う必要があるし、熱を持ちすぎたと思ったら停止して放熱して…の繰り返しでなんとか下山。

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徳山ダム周辺まで戻ってきたときは、それはもう安堵しました…。

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ここまでくればもう安全。

あとは行きと同じように田園風景を横目に見ながら流して帰路につきました。

おわりに

まさか岐阜県の南部でこんな"濃い"ヒルクライムができるとは思ってなかっただけに、今回のライドは非常に楽しかったというのが感想です。単に長閑な開けた場所を走るだけでも落ち着くので好きだけど、そこに酷道要素が加わるだけでこんなに刺激のあるライドが楽しめるとは、やはり岐阜県ってすごい。

酷道の雰囲気そのものもすごく気に入ったので今後も見つけ次第走っていきたいと思います。