夏の暑さもこのところ和らいできており、特に朝晩は半袖ではちょっと冷えるようになりました。
気温が低くなってくれば自転車にも多少は乗りやすくなり、今までは敬遠していた日中のライドも徐々にモチベーションが上がってきました。なので、これから冬にかけては登山ではなく自転車の割合が多少増えると思います。たぶん。
快晴のはずが
今回の舞台は長野県北部。
長野市の西方にある山間部を目的に車を走らせ、もはや当然になっている車中泊をしてからスタートです。
当初の予定では、かの有名な毛無峠(グンマー)や渋峠、志賀高原を経由してダウンヒルをするつもりだったのですが、これが結構な誤算でした。晴れ時々曇りの予報を信じて現地に行ってみたところ、予報とは大きく外れる悪天候になってしまいました。
そもそも毛無峠までの道すがらでは、雲がもくもくと発生しているのが目に見えて分かるくらいに不安定な天候でした。
走り始めてから2時間くらいは晴れ間が見えていたものに、県道112号(毛無峠)と県道466号(万座温泉)の分岐に差し掛かったあたりで小雨になる始末。
30分ほど一応持ってきておいたレインウェアを着て待ってみても状況は変わらないため、そのまま来た道をダウンヒルして小布施に戻りました。毛無峠~渋峠~志賀高原については今後リベンジをする予定なので、詳細はそちらで触れたいと思います。
以上、簡単な説明おわり。
せっかく撮った写真を上げないのもアレだったので、供養も兼ねてアップしておきました。
渋温泉にて
この後どうするか?って話だけど、このまま帰路につくのはあまりにも酷な話。
せっかく何百キロも運転して来たのに、たかだか60km程度のヒルクライムで終わらせるのはもったいない。
というわけで、サブプランとして用意していた予定に切り替えます。
はい。渋温泉にやってきました。
渋温泉は小布施から15km程度離れたところにある温泉街で、すぐ近くにある湯田中温泉と合わせて湯田中渋温泉郷と呼ばれています。
信州のこのあたりは温泉が非常に多くて、例えば本来今日走るはずだった渋峠(上信越高原国立公園)の向こう側にある草津温泉が有名だし、毛無峠に至る道のりの途中にある山田温泉や蕨温泉などがあります。本当にちょっと移動するだけで温泉があるくらい、長野県北部は温泉の宝庫になっています。
ちょうど季節も夏を過ぎて秋に差し掛かっており、そんな時期に入る温泉もまた良いもの。サブプランに切り替えた時点で宿も無事に確保したため、今日はもう温泉をじっくり満喫することに決めました。
まずは宿に荷物を預けて浴衣に着替え、有名な外湯巡りを楽しんでいく。
渋温泉には共同浴場が全部で9箇所あり、それぞれ泉質・効能が異なっています。
本来は地元住民専用の浴場なのですが、宿泊者は宿で共通の鍵を無料で借りることができるので、これら全ての浴場に入ることが可能です。なお、日帰りの場合は「九番湯・大湯」に加えて「信玄窯風呂」と「石の湯」のみ入れるため、せっかくなら宿泊して外湯巡りするのがおすすめ。
さらに各共同浴場には御朱印が設置してあって、外湯巡りと同時に巡浴祈願手拭いという手ぬぐいに御朱印を押していき、最終的に9箇所すべて回ると満願成就するといわれているらしいです。私も、初めて渋温泉を訪問したときに9箇所回りました。
それぞれの共同浴場の名前は次のとおりです。
- 一番湯・初湯
- 二番湯・笹の湯
- 三番湯・綿の湯
- 四番湯・竹の湯
- 五番湯・松の湯
- 六番湯・目洗い湯
- 七番湯・七操の湯
- 八番湯・神明滝の湯
- 九番湯・大湯
温泉街と名がついている通り、渋温泉には温泉と温泉宿が密集していて、ただ単に温泉で温まる以外にもこの場所特有の旅情ある風景を味わうのも一つの楽しみ方といえます。
まずは先ほど述べた9箇所の共同浴場から。
いずれの共同浴場も非常にシンプルなつくりになっていて、中は簡単な脱衣所と浴槽があるだけです。シャワーもなければ洗い場もなく、ただ温泉に浸かることに特化した空間といえば伝わりやすいかも。
その温泉も常時源泉かけ流し状態で、熱いと感じた場合は蛇口から水を入れる形式となっています。つまり長い時間誰も入ってないところだと非常に熱いし、逆に人の出入りが多いところは適温になってたりします。
この方式が良い。
常に温度が一定!というのではなく、試しに手を湯に漬けてみてから湯温を判断するのが案外面白い。めちゃくちゃ熱いと「あ、今日はここ空いているんだな」と分かるし、ぬるめだったりすると自分より前に入った人のことだったり、現在進行系で一緒に入っている人のことを色々と想像してしまう。
共同浴場なだけあって自分以外の湯治客も当然多数入りにきているわけで、その微妙な距離感を味わいながら温泉に浸かってぼーっとする時間が好き。時間を忘れて湯に浸っているのが堪らない。
温泉街散策
単純に外湯すべてを巡るだけというのも、ある意味目的がちゃんとあるので楽しいもの。
ただ、この温泉街という特殊な空間をただぶらぶらと歩く面白さもあります。
適度に涼しいので、夕方~夜くらいに外湯巡りをする合間に散策するのが本当にやりやすい。
歩いていくにつれて徐々に身体が冷えてくるので、散策を切り上げて温泉入りに行くかという気分になるし、その逆もあります。温泉のクールダウンに散策をし、冷えたらまた温泉に浸かる。実に明確な行動原理だ。
思うに温泉街の空気感は、温泉街にしかない独特のものな気がします。左右に古い旅館がずらっと立ち並んでいて、辺りを歩いている人はみんな浴衣姿。薄暗くなってくるとそこに街頭の灯りがプラスされ、さながらこの世の場所ではないような、自分だけ異世界に来たような、そんな感じ。
カランコロンと下駄の音を鳴らしながらこの町並みを歩いているだけでもう満足できる。これは宿泊者しか堪能できない愉しみだったりします。
各旅館の玄関もそれぞれ雰囲気が全く異なっていて、造りの違いや置物の様子などを適宜見比べるのもグッときてしまう。
ネット予約とかがまだない時代では、その旅館の良し悪しを判断するのは玄関先の見栄えしかないと思います。
なので昔の人は自分みたいに立ち止まって、中を覗き込んだりしながら今日はここに泊まろうかと思案してたのかもしれません。そう思うと色々と感慨深いものがある。
今の時代となっては、調べればその場所の情報なんて一発で分かる。
でもこういう風に自分の足で歩いて情報を得ていくのも案外面白くて、旅先の夜は大抵深夜徘徊してます。実際に見てみて初めて分かる事実もあるし、これは今度も続けていきたい。
路地裏散策
ここまで触れてきたのは外湯だったり、旅館の玄関があったりするいわば表通りの世界。湯治客の人通りが多いだけあって、華やかな部分ばかりが目に入ってくる印象があった。
しかし自分としてはそのような表の部分だけでなく、観光チックでない裏の顔も見てみたいというのが実のところの心情だったりします。
というわけで、表通りを入って路地裏を散策していくことにしました。
路地裏には、現地の人々のありのままの生活が映し出されています。
移動のための原付きが置かれていたあり、夕食の食器の音だったり、はたまた旅館の従業員の方が裏口に荷物を運んでくる姿が見えたり。
こんな路地裏を歩いている物好きな観光客は当然ながら自分一人だけなので、表通りの喧騒もここまでは響いてきません。そんな静かな空間で一人黄昏れている事実だけで酒が飲めるし、ふと立ち止まって辺りを見回したりして、悦に浸るのがとにかく楽しい。
夜の暗闇の中に、街頭が照らし出す明暗の程度が非常に心地よい。
本当に通りを1本入っただけでこの世界になるので、「千と千尋」の世界観じゃないですけど冗談抜きに異界に取り込まれたような錯覚に陥ってしまう。
路地裏の風景は予想がつかなくて、地下へ続く謎の階段が現れたかと思えば、突然2階へつながる扉が出現したりしてwkwkが止まらない。
この角を曲がったらどんな場所に出るんだろう?と、まだ見ぬ街角に心躍らせながら歩き回るのが個人的な散策の醍醐味だったりします。
温泉街の路地裏の特徴ともいえるのが、この無数に絡み合った温泉の配管。
もはやどこへ繋がっているのかも分からないし、どれほどの流量があるのかも定かではない。一つ分かるのは、この配管の一つ一つが渋温泉を支えているということくらい。
自分は単純な性格をしているので、こういう風景は問答無用で好きになります。渋温泉では町並みの至るところに温泉の蒸気が噴出していて、改めてここが温泉街であることを感じさせてくれました。
夕食
温泉→散策→温泉(ryを繰り返していくうちに、いつの間にかお腹が空いてきました。
そういえば今日の宿は当日に予約したので素泊まりだし、どこかで夕食を取る必要があります。とはいえ居酒屋で一杯という気分でもないし、どこか良さげなお店はないものか。
温泉街の外れまで歩いてきたところで、雰囲気のいいお店を発見したのでここに決定。
ここは高齢のおばあちゃんが一人でやっているお店らしく、お店というよりは親戚の家の居間のような安心感を覚える場所でした。
まずはビールを飲みながら今日歩いた風景を思い返し、そうこうしてるうちに炒飯と餃子がきたので早速いただくことにします。
改めて店内を見渡してみたのですが、こういう風に昔から営業されている店の居心地の良さってほんと素敵だと思う。観光に全振りしているわけではなく、地元の方の憩いの場として親しまれている空間というか。
渋温泉全体があまり派手さを感じない趣深い雰囲気のなかにあって、この来々軒さんもその空気の中に見事に溶け込んでいました。自分一人しかいない静かなお店で、ビールを飲みながら中華を頬張る。
もちろん、ちゃんと予約して温泉旅館の豪華な夕食を満喫するのもアリだけど、こういう夜があってもいい。そう思えるくらい良い時間を過ごせた。
その後も人通りがほぼ皆無になった渋温泉街を散策し、気がついたら眠くなったので宿に帰って爆睡してました。
今日は大した距離は走ってないけど、温泉と散策を十二分に楽しんだので心地よい眠りにつけました。
翌日
むくり。
いつもの週末のように知らない天井で目を覚まし、時計を確認すると6時になろうかというところ。
今日はもう帰るだけなんだけど、最後まで温泉を堪能したいので朝風呂に出かけます。
先に挙げた共同浴場は朝の6時から入ることができるため、起床して速攻でお風呂をキメたいという感情に駆られたとしても安心できます。
早朝だと他の人はほぼ間違いなく宿で爆睡しているので、そういう意味でも静かな中で温泉に入りたい人にはおすすめできるところ。
朝風呂は「九番湯・大湯」に決定。
自分以外に誰も入ってないので湯温が源泉温度そのままになっており、うっかり手を漬けてみて悲鳴あげそうになりました。すぐに水を入れて温度調整し、ではでは、という思いで身体を沈めます。
ああ、もう最高すぎる。
朝一でのそのそと布団を脱出してから朝風呂に入っているという事実だけで充足感がマッハになるし、もうずっとこうしていたいくらい。
それからは宿に戻って二度寝し、雨が降り出す前に帰路につきました。
おわりに
この時期は季節の境目ということで天候も安定しなくて、アウトドアを楽しむにはなかなか予定を立てづらい感は確かにあります。
そんな中で突発的に決定した今回の温泉満喫プランは、外湯巡りの気持ちよさも相まって非常に満足のいく体験になりました。渋温泉自体は過去に訪れたことはあったものの、何回でも再訪したいくらいすでに好きになっています。
次は別の旅館にも泊まってみたいとも思うし、もっと言うと雪の季節に来て凍えながら散策するのも楽しそう。
良い湯でした!
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