- Part 1:佐渡島の鄙びた風景
- Part 2:宿で過ごした時間、そして帰路へ
前回の終わりで清水寺の散策が終了し、今度はレンタカーを駆って南へ移動します。
レンタカーによる移動が快適すぎて、曇天の中でも比較的テンションが高い。今回は予め天気予報であまり優れない天気であることは確認してたけど、自転車でなく「旅」を目的にしているので気になりません。
この考え方は個人的に結構アリだと思う。
あくまで風景メインで考えてると晴れしか目に入りませんが、旅すること自体を目的にしてしまえば、現地で出会う風景すべてが新鮮に感じられるような気がします。そうなると天気のことはそこまで重要視しなくてもよくて、曇りだったとしても曇りの風景を楽しむといった風に前向きに捉えられそう。
とにかく自分は晴れの日にしか行動したくない派なので、この生き方をしてれば天気の悪い週末でも出かけるきっかけになるかもしれません。
宿根木の集落を歩く
やってきたのは、入り江に面した宿根木の集落。
佐渡が過去に金の産出で栄えたのはすでに述べたとおりで、ここ宿根木は北前船の寄港地として発展した集落です。宿根木が発展したのはそれよりもっと前の中世の頃らしく、近くにある小木港の拡大に伴って廻船業を営む船主と船乗り、さらには船大工などが定住するようになったのが今の集落の成り立ちだそうです。
「集落」の名の通り、宿根木の魅力といえば密集した家屋群がずらっと並んでいる様だと思います。
村を流れる一本の川、それに沿うように走る数本の小路以外はほぼすべての敷地を家屋が占めており、非常にコンパクトにまとまった生活形態と言えます。
建物の外壁に船板や船釘を使ったものもあり、かつての千石船の面影を忍ばせている様子もGood。
ただ古い町並みが立ち並んでいるだけではなくて、周囲の地形や道、それに建物の隅々にも文化の重みが感じられますね。こういうところは小路をのんびり歩いているだけでも面白く、ときには建物に寄りかかって昔の風景に思いを馳せながら時間を過ごしたりもしました。
集落の一角にある三角家(舟形の家)は、そんな集落の趣を感じられるスポットの一つです。
集落が入り江周辺の狭い谷あいに集中しているということは、家屋一件あたりのスペースも相当限られるということ。
船主や船乗りたちはそういった狭い空間で生活する必要があったため、最初は平屋だった家を2階建てにし、さらには間取りについても相当工夫をこらして体裁を整えていったとのこと。上の写真のように、まるでパズルのように入り組んだ構造がその結果の一つです。
この家にはつい最近までおばあちゃんが一人で住まわれていて、今は街の方に移られたこともあって、ほぼ当時のままの姿で保存されています。
こういう風に保存されたところって得てして生活感があまり感じられなかったりするんですけど、ここは一味違いました。
おばあちゃんが仕事をされていた部屋や寝室、台所や物置などなど、ありとあらゆる場所が冗談抜きでそのままの形で残っていて、今も普通に家として使われていると言われても信じてしまいそうになるくらい。
構造的にも目をみはるものがあり、三角形の敷地になんとか収めようと思案した背景が見て取れます。狭さをあまり感じさせない居間や、階段のすぐ脇にある仏壇、それに囲炉裏や吹き抜けの跡も見られ、狭いなりに快適にすごせそうな感じ。
こういうのがほんと好き。個人的にはめちゃくちゃ居心地の良さを感じました。
やはりその土地の風土を満喫するという意味では、今回の行程は実に理にかなっているものだと思わざるを得ません。ここまで佐渡島のあちこちを走り回ってきたわけですが、ゆっくりとした時間が流れていて落ち着ける場所が多いです。
宿の夕食が
宿根木の町並みを放心状態でぶらぶらしていたら、いつの間にか宿のチェックイン時間が迫ってきていました。この時間から他の場所を散策する時間は十分に確保できそうにないし、宿に直行することにします。
宿に向かう途中で見つけた風景がなんというか"異質"だったので車を停めました。
なにこれ…?
どうみてもタライそのもの。
一般のご家庭にあるタライに船外機つけましたという感じで、違和感が半端ではない。ボートの部分が無いからタライで代用したということなのか、それともこの辺りではこれが普通なのか。
辺りには似たようなのが3隻くらい置いてあったので、もしかすると佐渡島では一般的なものなのかもしれません。船体が円形なのでこの構造で直進するのは相当大変な気もする。なんか見てはいけないものを見てしまった気分。
今回の宿は、海に面した立地が特徴的な長浜荘さん。料金は1泊2食付きで¥7,800です。
宿だけでなく飲食店としても営業されているらしく、昼間にこの前の道を通ったときにはめちゃくちゃ車が停まっているのが見えました。
宿に着いたときはちょうど夕焼けの時間で、日中の全く太陽が見えなかった鬱憤を晴らすかのような眩しさ。最後の最後で陽の光を浴びることができて嬉しい。
で、ここの夕食のボリュームが本当に意味不明だった。
!?
席を見た瞬間に頭が混乱した。明らかに二人分ではない海鮮の量。
困惑しながら尋ねてみると1泊2食プランだとこの量がデフォルトらしく、ますます訳が解らなくなる。これで儲けが出てるのか心配になるレベル。
ざっと料理を見渡してみると、端から端まで全部海の幸。これで幸せにならないわけがない。周りを海に囲まれた佐渡島の海鮮が美味しくないはずもなく、日本酒を片手に二人してお腹いっぱいになりました。
やっぱり旅には美味しい料理がセットになってるのが一番いいな。極力お金を掛けずに公共交通機関オンリーで細々と旅するのは学生の頃に散々やったし、社会人になってお金に余裕が出てきた今となっては「体験」に投資していきたい。
翌朝
むくり。
窓から差し込む朝日に目を覚まし、ふと見渡してみればこの快晴。
今日もいい一日になりそうだ。
昨晩の豪華を体現したかのような食事とは打って変わり、朝食は至って静かで落ち着いたものでした。
味噌汁をすすりながら朝の寒さを感じ、今日の予定を考える。このしんみりとした朝の時間も宿泊時ならではのもの。必然的に精神的にも安らかになれるこのひとときはやはり幸せだ。
宿を後にし、再度レンタカーに飛び乗って両津港を目指します。
この日はせっかくのいいお天気なのですが、帰りのことを考慮すると早めのフェリーに乗って本州へ帰っておく必要があります。昨日の行程が充実しすぎていたせいで滞在時間の短さはそれほど感じなかったものの、次に来るときは2泊3日くらいにして時間に余裕をもたせておきたい。
両津港へ向かう道すがらでは、延々と広がる田んぼやその向こうに連なる山々、そして山の麓に見える家々などを堪能しながら車を走らせてました。
この風景だけ切り取ると、とてもここが島だとは思えんな。
やはり佐渡島は予想以上に広く、まだまだ自分が見たことがない風景が待っていそうです。これは再訪が楽しみだ。
帰りのカーフェリーでは、行きのときと同様に1等船室を選択。
1等船室の何がいいって完全予約席なのでフェリー待ちの行列に並ぶ必要がなく、それに1等船室を選ぶ人自体がそもそも少ないので快適に過ごせること。
佐渡島での夢のような滞在を楽しんだにも関わらず、帰りのフェリーの中で疲れてしまっては元も子もありません。快適さを得るためにも金をかけられるところはかけたほうがいいよねっていう話。
あと、フェリー移動の良さを個人的に挙げるとするならば甲板に出てのんびりできるってところ。
佐渡島カーフェリーは片道2.5時間もかかるので乗客は寝ている人が多く、こんな風にデッキに出て海を眺める人は多くありません。そんな中、自分一人だけがコーヒー片手に椅子に座って何をするわけでもなくぼんやりとしている。
別に感傷に浸っているわけではなく、旅の中でこういう時間の過ごし方が個人的に好き。車や飛行機での移動では味わえないなんとも寂しい感じ。
船に乗っているからこそ感じられる遠距離感がコーヒーの味をより濃くしてくれる、そんな気がする。
佐渡島での滞在時間だけでなく、フェリーに乗っている移動時間でさえも面白く感じてくる。今回の佐渡島旅行は、こんな様子で静かに終了しました。
おわり。
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