【糸魚川~雨飾高原~乙見山峠~妙高高原】グラベルロードで林道 姫川妙高線と妙高小谷線を走破してきた

今年の4月にグラベルロードのアスペロが納車されて以降、納車時に付けていた32cタイヤで各地を走ってました。アスペロのジオメトリが完全にロードバイクということもあり楽しく乗れていたのですが、そろそろ気温も下がってきたしグラベルを走ろうという気分になったので長野県に出かけてきた。背景としてはそういう話になります。

ただ意図的にグラベルを走ろうと思ったことが今までになく、どういう準備をすればいいのかもよく分かっていない状態。とりあえずバイクシステムは万が一の際に復旧できる形にし、いわゆる初心者レベルでも走れる程度の荒れ具合と聞いている林道 姫川妙高線妙高小谷線を走るルートを選びました。最初から電波も届かないようなところに行って右往左往するのは勿体ないし、初心者には初心者なりのグラベルの楽しみ方がある。

というわけで早速出発。

もくじ

ルートと今回の装備

今回は出発点を日本海側の糸魚川にとり、林道×2を走って妙高高原に下った後に輪行で糸魚川に戻ってくるルートにしました。当初は宿泊も絡めるつもりだったけど日にちに余裕がなかったため、色々考えた結果日帰りで余裕を持って走るのならこれがベスト。

装備としては下記の通りです。

グラベルを走る上で一番重要なタイヤについてはGRAVELKING X1の40cを選択。アスペロに入るタイヤの最大幅が700×42cなのでほぼMax.のタイヤを履かせています。チラッと聞いた話では前後45cが入るとかなんとか…要確認。

空気圧はTPUチューブで約2.5bar。グラベルバイクのタイヤシステムといえばシーラントを入れるチューブレスレディが一般的になっていますが、シーラントありだと現状でホイールセットを1つしか所持していないために32cタイヤとの交換が面倒になるのでやめました。TPUチューブならパンク時の修理も非常に楽です。まあ今回はグラベルに関して「お試し」的なところがあるので、本格的にやるのであればグラベル用のホイール増やします。
後は補給が一切ないルートなのでダブルボトルにしたり補給を多めにしたりと、普段のライドでもやっているような装備類。あとついでなのでアスペロ専用のトップチューブバッグを付けました。

未舗装路の割合については後半に走ることになる妙高小谷線が多めとのことで、グラベルロードとしての性能試験はそっちでやります。

糸魚川から雨飾高原を目指す

糸魚川を朝4:30に出発して国道148号を南下し、ロックシェッドの多さに辟易しながら林道 姫川妙高線の起点となる平岩駅近くに到着。この日は基本的に山道を上ってばかりなので、後の時間管理を楽にするために早めにスタートしました。

姫川温泉から少し上ると規模が大きな集落(大網)があり、集落の入口には古来から糸魚川と松本市を結んでいた交易の道・千国街道、いわゆる塩の道の案内看板がありました。奥へ向かうと昔の小学校だったと思われる建物もあったりして、昔は栄えていたことが伺えます。

人間の気配が感じられる風景はここまでで、大網から先は林道 姫川妙高線の最高地点・湯峠周辺まで心細くなりながら暗い山道をひたすら上っていくことになります。普段のライドでも集落と集落の間の何もない区間を走ることはあるものの、林道レベルになると人の気配が全くないので精神的にもしんどいかもしれません。

たまに林道脇を獣が通る音を聞きながら標高を上げていく。

道についてはたまに水が流れたり木の枝や葉が積もっているところはありますが、舗装されているので走りやすいです。風景については基本的には展望が聞かない林の中がずっと続き、気がついたら上の写真のように開けた場所に出るという感じです。自分の視点と周囲の山々の高さが同じくらいになってくると「あ、結構上ったな」って気分になれるから好き。

個人的には林道は景色が変わり映えしないのでどちらかというと避ける方向にあったものの、"静寂"という要素に注目してみると意外に楽しめるようになりました。自分が自転車を走らせる音と自然の音だけが響いている状況って日常生活からするととても貴重で、自分のメンタルを調整する良い機会になっている。

雨飾山

そんな風にして黙々と上っていると進行方向の山の向こう側から朝日が昇り、林道が途端に明るくなりました。新鮮…。そんな言葉がふと浮かんでくるような純度100%の山の空気を味わっている。やはり秋や冬の肌寒い時期の山で迎える朝は格別なものだ。

この林道の核心部を挙げるとするなら、進行方向やや左に雨飾山(標高1,963m)が見えるポイント。周囲の山とか明らかに雰囲気が違うので遠目からでも分かりやすいです。雨飾山は登山でも有名な山なのでいつか登ってみたいと思ってます。

湯峠までの最後の数百mは舗装路から待ちに待った未舗装路へ切り替わります。ここについては土の路面がメインで砂利はそんなになかったので走るのに苦労はしませんでした。

未舗装路の上を走ると路面の凹凸が増えるので振動が増加するものの、タイヤ幅がいつもと比べて広いのと空気圧が低めなので許容できる程度の感触になって身体に伝わってくる。あまり体験したことのない要素だったので早速嬉しくなってきた。

鎌池の紅葉、そして乙見山峠へ

湯峠を無事に通過したところで林道 姫川妙高線のキツい箇所は終了。後は順当に下っていって雨飾高原に到達し、そこから折り返して妙高小谷線に入ります。

そのまま直行しても良かったのですが、下り区間の途中に鎌池という観光スポットがあるみたいなので立ち寄ることにしました。こうやって寄り道しようという選択肢が出てくるのも時間に余裕があるからだし、改めて朝早く行動することの大切さを実感しています。

鎌池に到着。午前中の時間帯なのにも関わらず駐車場はほぼ満車になっており、今までは全く人間に出会わなかったのにいきなり大勢に遭遇して面食らってしまう。

鎌池は周囲をブナの森に囲まれた神秘的なスポットとして有名のようで、ちょうどこの秋の時期になると写真撮影目的の客で賑わうようです。周りには以前泊まった小谷温泉や各山々への登山口もあり、今日はそれらをセットにした行程を満喫するグループが多いみたいでした。

鎌池の様子

鎌池の周囲の遊歩道をのんびり歩きながら、目の前に広がる大自然を胸いっぱいに味わっていく。さっきは人が多いと書いたけど散策している限りではそれほど気にならず、静寂が支配するなかで紅葉の色彩を眺めてニンマリしてました。風も弱かったので湖面が鏡みたいになっていてなおのこと美しい。

紅葉については事前情報も何も調べずに行ったところ、こんなに見頃のタイミングだったと現地で知りました。

実に運が良いと感じるのと同時に、今まで走ってきた道との景観の違いに驚いたのが正直なところです。自転車で走ってきて標高を少しずつ上げていく=周りの紅葉の具合も徐々に変わっていくと思っていたのが、実際には紅葉が進んでいたのは湯峠より先から。山の向こう側は別世界…じゃないけど、自然環境の違いが木々の色彩という形でここまで明確になっている。

落ち葉の上のバイク

鎌池を出発した後はそのまま東に向けて下り、雨飾高原の雨飾荘前に到着。ここから人里方面へ離脱する場合は県道114号を下ればOKです。位置的には林道と林道の間の小休止ポイントであるものの、特に補給できるところはありません。もっとも人の気配を感じられただけでも精神力を回復できたし良しとしたい。

ちなみに雨飾荘の近くで観光客の方に「電動の自転車ですか?」と声をかけられましたが、残念ながら人力100%です…。この時点で獲得標高1400mオーバー。

というわけで、ここから後半戦の妙高小谷線がスタート。

道としては相変わらず「林道」なので交通量は少ないと思いきや、その筋の人々には有名なのかそこそこ交通量がありました。ただしジムニーとかバイク乗りならまだしも、明らかに林道に似つかわしくないファミリーカーも通行していたのがなんか意外。間違ってカーナビに案内されたのか。

紅葉が美しい

峠まで上りという意味ではさっきの林道と同じことをやっている一方で、景観は明らかにこちらの方が明るいです。位置的に東側を通っているために陽の光が当たりやすく、紅葉もかなり進んでました。視界も開けているので向こう側まで見通しが良いです。

途中まで進むと谷を流れる川を迂回するようにして山肌に道が通っていて、同じ山を別の角度から眺めながらのライドも楽しめる。低速なヒルクライム中だと周りの景色に目を向ける余裕も出てくるというわけで、紅葉ライドをやるならある程度の上りがあった方が楽しめるのかもしれない。

あと紅葉に目を向けるのなら途中で一旦停止する必要がありますが、自転車だと気になったところで気軽に停車できるのが本当に便利です。例えば車でここを訪れていたらこんなに気軽に止まれないし、そもそも道幅が車1台分しかないので運転そのものも結構怖いです。

と思っていたら未舗装路に突入

峠までもう少しというところで舗装路から未舗装路に切り替わりました。道の様相としては土が一面に詰まっており、ところどころに小石が多少転がっているような感じ。

後から振り返ってみると、今回の走行ルート上で一番走りやすかったのがこの乙見山峠の西側区間です。40cのタイヤで走っても路面の凹凸にタイヤを持っていかれることがなく、石が少ないのでハンドリングで避ける必要もない。実にちょうどいい感じ(語彙力)の路面だったので純粋にトルクをかけながら上っていくことだけに集中できました。世の中の全ての林道がこんな様相をしているなら今後もグラベルライドを楽しめそうだが、はたしてどうなるか。

乙見山峠の乙見隧道

この未舗装路が長く続くのかと思いきや、意外と早く最高地点の乙見山峠に到着!

頂上には乙見隧道と呼ばれるトンネルが設けられており、ここを県境にして長野県から新潟県へと移り変わります。大自然の中に突如としてトンネルが登場してくる様はどこか神秘的であって、中を通っている最中はこのまま異世界に行ってしまうのではないかと思えるほどでした。

こうして眺めてみると奥深い山の中に通っている細い道、そしてそこを通るトンネルと未舗装路がセットになっている光景はどこかしっくりきます。ロケーションがロケーションなだけに小綺麗な人工物があるのは(もちろん便利だけど)なんかちぐはぐな雰囲気に思えるし、秘境といえる山中だからこそ未舗装路が似合っている。

乙見隧道の東側(新潟県側)はこんな感じ。

時間帯的に正午前だったので日光がトンネル前にドンピシャで降り注いでおり、隧道周辺の紅葉が燃えるように照らされているのがもう壮観の一言。早朝から結構な距離を上ってきた末に見た風景がこれだったので、苦労が報われる嬉しさがありました。ここまで来れて本当に良かった。

紅葉、ヒルクライム、そして未舗装路。一つ一つの要素を単独で体感したことは多々あるものの、これらを一度に味わったことは数えるほどしかない。自分でもここまで充実した時間を過ごせると思っていなかっただけに感動も大きいです。

キリがいいので乙見隧道を出たあたりで昼食。

なんてことない普通のおにぎりでもシチュエーションが良ければ何倍にも美味しく感じられるもの。現時点で峠を2つパスしていることもあって秒で完食しました。燃費は割と良いほうだけど未舗装路が絡むと普段より疲れてしまう。

妙高高原への山間部を抜ける

乙見隧道を通過したことで、残っている行程は妙高高原までのダウンヒルのみ。疲れるポイントはもうないはずなので気持ち的にちょっと楽になったものの、未舗装路の下りはほぼ未経験に近いので油断は禁物です。

実はこの妙高小谷線、道の様相が西側と東側でまるっきり違うといっても過言ではありません。西側は土が主体で気持ちよく走れたのが、東側では砂利や小石が主体になるために走っていて恐怖を感じました。しかも下りで何もしなくてもスピードが出るので余計に怖い始末。

具体的に言うとこういう路面です。これはまだマシな方。

うまく言えないけど道の表層だけ細かい石が敷き詰められているような雰囲気で、土の路面とは違い"締まってない"ので非常に滑りやすい。カーブでちょっとでも車体を傾けるとザリッと横滑りしそうになるので低速で走るしかないです。

もちろん自分が未舗装路に慣れていないのもありますが、タイヤ幅より大きな石がゴロゴロしている状況でかっ飛ばすのはまだ勇気が不足している。タイヤ幅をもっと大きくすれば楽になるのか、それかいっそサスペンションを導入した方が最終的に満足できるのか。

景色は良い
笹ヶ峰方面を見る
圧巻の紅葉

それでも、林道周辺はさっき以上に美しいです。

道の左側が山・道側が谷だった西側と異なり東側は道の両脇に木々が生えているので、まるで自分が知らない場所を探検しているような感覚になってくる。"舗装されている道"という人工物もここにきて消滅し、通行する上での必要最小限の要素しか発見できません。人工物に囲まれた環境で生活している身としては、これはこれで良いものだ。

このあたりは走りやすかった

残りは完全に下り基調かと思いきや実際にはそうではなく、フラットなストレートや軽い上り、連続するカーブと飽きない道の構成が続く。瞬間瞬間の局面で出会うものが一様でないのもグラベルの要素の一つであって、それを最大限に楽しむのがコツだと感じた。

バイクをシンプルな移動手段として捉える風景目的のライドに対して、どうやらグラベルライドは道そのもの、道が持っている魅力に着目しながら走るのが好きな人に向いているっぽい。例えばコーナーに差し掛かって路面の傾斜や凹凸を見分け、バイクの傾きや速さを調節しながら曲がり抜けていく。そこへ路面からの振動が情報として加わり、持っていかれないようにコントロールしてパスする…という風に五感をフルに使って走行する。

そういうことに気づいてからは、道から得られる情報に注意しながら走ってました。


次はアスペロの走行性能について。

ダウンチューブが太いためトルクをかけた際の進みがよく、舗装路/未舗装路を問わずに上りはとても楽に進みます。フラットな箇所も割とスピードに乗ることができ、元々レース用に開発されたこともあって平坦な道を得意としている様子。ただ日本の林道にありがちな急勾配の下りや路面の悪さに対応するには相応の工夫が要りそうだったので、もう少し検討します。

机上であれこれ考えるのも確かに必要な一方で、実際に走行してみないと分からないこともある。今回のライドはアスペロの試験として申し分ないものでした。

笹ヶ峰キャンプ場近く
笹ヶ峰
笹ヶ峰 牧場
最後は妙高高原駅でフィニッシュ

林道区間が終わってからは笹ヶ峰高原、妙高杉ノ原スキー場近くの九十九折を順に通過し、最後は予定通りにしなの鉄道 妙高高原駅に到着。観光スポットである笹ヶ峰から先は露骨に交通量が増えたものの、問題なくライドを継続できました。パンク等のトラブルもなくて何よりです。

というわけで、今回のライドはこれで終了。

初の本格的なグラベルライドを終えた身としては風景こそ心から満足のいく内容だったのに対し、機材の方は少し見直す必要があるかなと思っています。今後グラベルライドをどれだけ継続していくかは未定で、シンプルに気になったところを走りに行く形としたい。

おしまい。


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