TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

旅館 玉田屋 塩の道・足助の旅籠に泊まってきた

塩の道の中継地点

「塩の道」という言葉がある。

これは塩や海産物を内陸に運ぶのに使われた道のことで、逆に内陸方面からは山の幸が運ばれた道でもあります。塩が海辺からでしか入手できなかった時代には、これらの街道は内陸で生きる人たちにとって非常に重要な存在になっていました。今でも塩というのものは欠かすことができない存在だし、昔ならなおさらですね。

で、そういう街道は日本全国にあって、今回訪れたのはそのうちの一箇所でもある伊那街道の中継地点・足助町。

太平洋から塩尻までを結ぶ「塩の道」のうち、足助町周辺の街道は伊那街道(三州街道、中馬街道ともいう)という名で呼ばれていて、今でも古い町並みが多く残っている地域でもあります。当時の物資は中馬(馬の背で荷物を運ぶ人々の組合)によって馬で運搬されており、街道を運ばれてきた塩は中継地点であるこの足助の塩問屋で荷直しされ、さらに信州方面へ中馬によって運ばれていました。

そんな物流を中心とした時代の流れの中で発展し、賑わってきた足助の町に、今でも残る当時の宿。それが今回泊まった玉田屋です。

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通りに面した玉田屋の外観

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古風な趣きが見るものを立ち止ませる

玉田屋は江戸末期から営業を続けている旅館で、当時の足助を往来する中馬の人々が中心に泊まったのではないかと思われます。

人の行き交いが生まれるところにこそ宿が求められるものだし、そうしていつしか旅館が誕生する。そう考えると、昔の街道沿いに自分好みな宿が集中しているのも納得といったところです。旅館こそが人の営みを直に感じられる場所だと自分は思っていて、それに歴史的な要素が絡んでくれればもう最高。この宿に泊まることを決めたときもそんなことを考えてました。

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玄関入ってすぐの景色

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古めかしい時計

建物の右端に玄関が位置しているということもあって、戸を開けた先の導線としては左方向に向かいます。

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土間の床は斜めの市松模様になっていて、それぞれが異なる石を使っているのが素敵です。

白色の石の方が劣化が早いらしく、欠けている箇所が比較的多めでした。

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玄関正面は女将さんの生活スペースになっている様子

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そして、玄関の上がり框?部分。

横方向に長いため、奥行きの広さも相まって空間的な閉塞感がありません。昔の建物なだけあって天井は低いものの、それを感じさせない構造になっています。

客室はすべて2階にあって、正面に見えている階段を上がることになります。そのまま土間を奥方向に進むと厨房があり、ここで調理をされていることでした。なお、今日は宿泊者が自分一人しかいないので素泊まりです。

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ちなみに、階段下のスペースを有効活用するために傾斜に合わせた形の箪笥が置かれていました。

こういうのは古い宿でよく見かけますが、本当によく考えられていますよね。確かにこの部分は空間的に無駄になってしまうし、それを収納に利用している知恵がすごい。

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通りに面した一面は千本格子になっており、数多くの展示が並べられている

1階部分はこんな感じで、土間の面積が非常に広いです。

これは個人的に雨の日などで非常に役立つと思っていて、この部分で雨を払ったりすることができるわけですね。先程の歴史を考えると大人数で泊まるケースが多かっただろうし、玄関部分は狭いよりは広い方がいい。旅支度をするのもここでできると考えれば、実に実用的な構造をしていると感嘆してしまう。

昼寝からの風呂

さて、1階部分で記帳を済ませ、今日泊まることになる部屋に案内していただきました。

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階段は下手をすると頭を打ちそうになります

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今回泊まった部屋

今回泊まった部屋は通りに面した3部屋のうち一番奥側で、旅館の正面から見ると右端に位置しています。

広さは6畳あって、連続した3部屋はどれも同じ構造かつ同じ広さでした。なお、部屋同士は襖で区切られているので当然のように隣の音が丸聞こえです。すぐ近くにある香嵐渓は紅葉が有名なので、そういう時期に満室だと合わない人もいるかと。

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窓際から入り口方向を見る

よく一人暮らしの場合は6畳がいいと言いますが、旅館で一夜を過ごす場合はなおのことちょうどいい広さじゃないかと思います。

すでにお布団が敷かれていることもあって、机の前から特に動く必要がなく全てが完結してしまうのがいい。女将さんが持ってきてくれたポットのお湯を注いでお茶を一杯やっていると、もうここから一切動きたくなってくる始末。

で、この後は何をしたのかというと、昼寝してました。

せっかく鄙びた宿に泊まったのにも関わらずやることが昼寝か?って話なんですが、まるでそれが当然であるかのようにお布団に移動し、気がついたら1時間くらい寝てました。自分でも何故こうなったのか未だに分かりません。階下にいるはずの女将さんの物音も全く聞こえないし、この静寂した空間にいたら自然に眠くなっていたというか。

眠くなるというのは安心しているということでもあるので、この宿の雰囲気を身体が気に入ったのかも。

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その他の部屋の一例

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この部屋は窓が非常に小さいです

ひとしきり寝た後、散策も兼ねてお風呂に行くことにしました。

客室自体は通りに面した3部屋以外にもあって、反対側の奥まったところに更に3部屋ほどあります。そのうちの一部屋は廊下からは直接行くことができなくて、部屋に向かうまでに別の部屋を経由する必要があったりするなど、なかなか特殊な造りをしていました(上の写真の奥側の部屋)。

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1階へ下り、厨房横の廊下を通って奥に向かうとトイレや洗面所、そしてお風呂があります。

なんというか、この狭さがいいと思いませんか。

極めて細い廊下がずっと続いていて、ふと横を見てみると流し台があったりする。適度に暗いおかげで外部との明暗差もあるし、普通に歩いているだけなのに楽しい。自分はこういう風に自然光だけの状態で撮影するのが結構好きなので、この空間の素敵さが個人的には際立ってました。

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お風呂はこんな感じで、いつでも入れます。

お風呂に限らず、設備については適度に近代化されていて(特にトイレ)、不自由を感じることはありませんでした。

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部屋に戻って読書タイム

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窓の外には欄干が

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そこからは部屋に戻って、お腹が空くまで適当に持ってきた本とか読んだりしてました。

今夜から天気は次第に曇りになってくるようで、翌朝は完全に雨模様の様子。明日はもう帰るだけになる一方で、今日のうちにやっておく必要がある事項が特にあるわけでもない。こういう時は読書をするに限るな…。

まあ、宿に到着してから何をするかには完全に個人差があります。自分は完全にやることがなくなったら部屋のテレビでその土地の番組を思考停止状態でぼんやり眺めてるか、持ってきた本を読んでるか、眠くなったら昼寝してるかのどれか。

というか「宿に到着する=一日の行程が終わったと身体が認識する」状態になるので、半自動的に眠くなってしまいます。こんなときにはあえて積極的に動かず、特に何をするわけでもなく静かに過ごすのが自分には合っている。

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二度寝が捗る

翌朝は雨の中目を覚まし、ああ今日は雨だな、と改めて実感した後に再度布団に潜り込みました。

結局三度寝くらい睡眠をし、素泊まりなので朝食をとる必要もなくダラダラと朝の時間を味わう。たまにはこういう休日があってもいいなと思えるくらいには、旅先でのんびりしてました。

話がだいぶ逸れた気がするものの、旅館 玉田屋はこんな宿です。古い宿で一泊してみたい、あと香嵐渓も行きたいというときに選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。