- Part 1:笠岡港~真鍋島散策
- Part 2:真鍋中学校~北木島散策
今回の舞台は岡山県。
前回の倉敷~下津井の散策を終え、そのままロードバイクで笠岡港までやってきました。というわけで、時系列的にはその続きとなります。
今回の旅の主な目的はすでに述べたとおり、瀬戸内海の島々の風景を楽しむこと。この条件だけを加味するなら、目的地はしまなみ海道を始めとした島々を有する広島県が候補に上がるところですが、実を言うと岡山県にもあるんです。そういう多島美を味わえるところが。
それが笠岡諸島。
笠岡市の沖合に位置する笠岡諸島は大小31の島々から形成されている諸島で、その内の高島、白石島、北木島、真鍋島、大飛島、小飛島、六島の7島が有人島となっています。
これらの島々は歴史的に非常に重要な役割を担っていて、笠岡諸島の花崗岩と石切りの技術は古くから日本の建築文化を支えてきました。西洋建築や城郭に至るまで、日本を代表するような建築物にここから切り出された石が使われています。2019年には「悠久の時が流れる石の島」として、日本遺産にも認定されました。
そんな文化を学びたいという目的もあり、今回は予め目をつけておいた真鍋島と北木島を巡ってきました。
笠岡の離島を巡る
瀬戸内の多くの島々は橋で結ばれていて簡単に行き来ができるのに対し、笠岡諸島はそういうものは一切ない完全な「離島」です。純粋に島としての風土を色濃く残す笠岡諸島。もう出発前から胸が高鳴って仕方ない。
というわけで早速出発。
笠岡諸島への玄関口は、笠岡駅にほど近い笠岡港です。
笠岡駅からも普通に歩いていけるほど近く、駐車場もそこそこ広いのでアクセスは比較的良好でした。というか、笠岡駅前って昔からあまり変わってないっていう。
当然ながらここで切符、というか乗車券を買うわけですが、ロードバイクや自転車を持参する場合に忘れてはならないことが一つ。
それは、フェリーにおいて自転車の輸送費が割引されるせとうちサイクルーズPASSを受付で発行してもらうことです。
発行といっても難しいことは必要なく、名前と住所とかを記入するだけでPASS自体に料金はかかりません。それでいて、発行から3日間は割引を受けられるという神みたいなPASSです。
地域観光推進(せとうちサイクルーズPASSの取り組みをご紹介します。) - 中国運輸局
このPASSが適当される航路はリンク先のとおりですが、瀬戸内における一般的な航路はほぼ網羅されているので安心。
お隣の広島県なども含めると適用範囲がかなり広くて、行程中にフェリーを使う予定があるという場合も、そうでない場合もとりあえず作っておくのが良さげです。途中でフェリーに乗って移動したくなるというケースもあるかもしれないし。
笠岡諸島をむすぶ船は、ご覧の通りのこじんまりとした旅客船です。
他にも高速船というのがあるらしいのですが、この翌日に北木島から乗ったのがそうなのかどうか、正直分かりませんでした。見た目的には旅客船も高速船もそんなに違いがないと思います。
しまなみ海道とかをよく走っている人がいつも目にしているような「カーフェリー(車も載せられるやつ)」ではないので、人間以外が載せられるようなスペースは非常に限られています。
ロードバイクのみでも一度に3台程度が限界で、これに加えて釣り客がでかいキャリアを引いてくるので、そういうのも含めるとロードバイクを載せられるかどうかは運次第かなと思います。笠岡諸島はどこもそんなに広くないので、どちらかというとミニベロのような小径車の方がお手軽かもしれません。
今回乗った便では普通にスペースがあったので、問題なく載せられました。
そんなわけで無事に旅客船に乗車し、目指すはこの航路の終点である真鍋島です。
この日の宿は北木島にとっているので、まずは笠岡から見て奥側に位置する真鍋島を散策し、それから北木島へ移動して一泊するという流れにしました。便数はそれほど多くないので、時間を有効活用していく形。
真鍋島は航路の終点でもあるので、このまま船に乗っていれば寝ていても到着してくれる。「島旅」としては時間の概念を極力取っ払っていきたいところだし、今更だけどこの行程にしてよかった。
旅客船のスピード感ですが、これが相当に気持ちがいい。カーフェリーのずっしりとした船体が海をかき分けて進んでいく感じとはまた異なっていて、海面を滑るように進んでいく。適度なエンジン音と、視界のすぐ下を飛沫を上げて後方に流れていく海水。船によって生じた波が次第に消えていく様子も趣がある。
デッキの側面部分に立つと飛沫が身体にかかってくるものの、それも結構楽しかったです。船内にこもって窓越しに風景を眺めるのもいいけど、やはり波風を全身で味わいながら目的地に向かう、というのは船の移動ならでは。
結局、真鍋島までの道のりではずっとデッキに出て海を眺めてました。
笠岡から真鍋島までの道中では、笠岡港→高島→白石島→北木島→真鍋島の順で各地の港に停泊していきます。
港に立ち寄る際には、船が岸に接岸するまでに係船索を繰り出したりといった「操船」が行われますが、もう何千何万回と繰り返されたであろう動作なだけに非常にスムーズでした。
特に乗客が数人しかいない場合の船の挙動がなめらか過ぎて、接岸したと思ったらもう離岸していたり。船体が小さいので小回りは効くんだろうけど、この辺りの動作は慣れなんでしょうかね。
それでいて乗っている側からしても振動はそんなに感じさせないし、瀬戸内の海の穏やかさと操船技術がマッチしている感が強く感じられた。
猫の島、真鍋島を歩く
そんな風に次第に近づいては離れていく島を何度か目にした後、終点である真鍋島に到着。
北木島への便の時間を考慮すると、真鍋島での散策時間はたっぷり3時間!島での散策時間はぜひとも多めに取りたいと考えていたので、倉敷~下津井間の散策を駆け足で行った甲斐があるというものだ。
(マップは笠岡市観光協会HPから引用)
自分が今いるのは、真鍋島の北東部の岩坪港です。
北木島へ向かう旅客船はここから西にある本浦港なので、まずはこちら側を散策し、それから西へ移動していくというルートにしました。まあ、時間は有り余っていのに加えて特に予定はなし。幸いにして急ぐ要素はなにもないので、自分が好きな散策を好きなだけ行うことができる。
真鍋島では個人の釣り人が複数人降りていって、しかも皆同じスポットに向かって歩いていってました。
笠岡諸島を通して釣り人を多く見かけたので、釣りを趣味にしている人にとっても有名な島のようです。ただ、自分が真鍋島を訪れようと思った最大の理由はもちろん釣りではなく、別にありました。
そう、猫です。
真鍋島はいわゆる「猫島」としても全国に名が知られていて、猫目的で訪れる人が多いのもまた事実。自分が香川に住んでいたときによく訪れていた男木島も猫島の一つで、あの頃みたいな体験がまたやれるんじゃないかと期待して真鍋島を「いつか行きたいスポット」に入れていました。
ただ、結論からいうと、真鍋島の猫ちゃん達はなかなかお触りさせてくれませんでした(泣)
結構近くまで寄ってきてはくれるんですけど、そこからナデナデさせてくれるかというとちょっと厳しい。短時間ならOKだったものの、猫らしく適度な距離感を保って観察するのがよさそうです。
猫ばかりというのもあれなので、猫には会えたらいいな程度の気持ちで散策をはじめました。猫にはこちらから寄っていくことはせず、あくまで遠巻きに座って向こうから近寄ってくれるのを待つ。これが猫撮影の鉄則だ。
ともあれ、真鍋島での行動が始まった。
港を離れてまず目に飛び込んできたのが、海と集落の近さ。海からわずかばかりの防波堤と道を挟んだ先にはもう集落があり、まさに目と鼻の先に海が広がっている。これこそが瀬戸内の魅力だと思う。
海そのものが穏やかで荒れることがあんまりないために、厳つい設備を設ける必要がない。地形的にもほとんど高低差がなくて、海沿いを移動するのも非常に楽。
自分が「静かな海」という言葉を聞いて真っ先に連想するのが瀬戸内海の海だし、これが地元というのが個人的にはかなり嬉しいです。
海沿いの地形は確かに平坦なんだけど、それが集落の中に入ると一変して坂ばかりになる。
島という場所の関係上、必然的に山と海との距離も近くなる。そんなわずかな場所に人が住もうとすると斜面に集落を形成する必要があるわけで、このように地形に富んだ町並みが作り上げられてきた。
道の左右には石垣が積み上げられ、スペースを有効活用するために家屋に庭はない。道というよりは路地のような狭さで見通しは悪いけど、その分散策するにはこれ以上の環境はない。この曲がり角を曲がったら、どこに通じているんだろう?…あれこれ考えながら歩き回っていると、自然と自分の中で地図が形成されていた。
当然ながら観光マップにある程度の地図は乗っているし、自分の足で歩かなくても分かることは分かる。でも、やっぱり実際にその道を訪れてみると面白い発見があったりする。予想もしていなかったところに階段があったりだとか、ふと振り返ってみると家々の向こうに海が見えたりだとか。
ロードバイクで行う広範囲の散策も確かに良い。ただ、こういう場所だからこその徒歩の散策が自分は何よりも好きだ。
ところで、この家々の中には人がいらっしゃるのかは定かではなかったです。
仕事で外へ出かけているのかもしれないし、中でひっそりとされているのかもしれない。外側からだと明らかに人が住んでそうな家でも、物音一つしないので留守なのかも。まあ、用がなければ出歩く必要もないか。
こういう狭いところでの移動は原付きがメインなのはどこも変わらないようで、どの家にも原付きが止まってました。逆に、車についてはほとんど見なかったです。こういう集落での車って物資運搬が100%だと思いますが、それぞれの港から家までの行き来で十分なんだろうな。
その後は山の上にある神社へお参りに行ったり、石段を下りながら海を眺めたりしながら徐々に島の西側へと移動。
港から港へ走っていく中では、海と山以外の人工物が皆無でした。人が集まる場所=港を中心にして集落があり、それ以外には人は住んでいない形になっています。
離島では集落での生活が中心というか集団で生活していかないとやっていけないので、家がぽつんと一件だけ建っているというケースはほぼありません。よく考えなくてもそれはそうなんだけど、やっぱり確信を持って散策してみると納得がいきます。
その土地独特の、町並みや風景。散策する前と散策した後で、予想と現実を比較してみる。ただ単に歩き回るとはまた違って、この町並みは然るべくしてこのように形成されたのか、と自分で納得している時間が好きだったりする。
ロードバイクの力も借りつつ本浦地区にやってきました。
真鍋島で最も規模があるのがこの本浦地区で、先程はほぼ見なかったネコチャンもここにはそこそこいるはず。
…と思ったら、早速出会えました!
少なくとも人には慣れており、観光客の熱い目線をよそに自由気ままに闊歩する猫たち。やはり、島には猫が似合う…というのはなんとなく思っていたことなんですけど、これは「島のゆっくりとした時間の流れが、猫のイメージによく合う」からなんじゃないかと思います。
猫は急いでなにかをするということもなければ、時間通りにきっちり行動する動物というわけでもない。眠たければ居心地のいい場所で寝たり、くつろいだりするし、気が向いたら人間にすり寄ってきたりもする。
そういうのんびりとした猫らしさが、この島の静かな雰囲気に絶妙に合っている。そんな気がする。
愛車とネコチャン3連発。
愛車の前でカメラを構えていたら、まるで自然に目の前に移動していってくれました(歓喜)。
実は、今回の訪問では日中の暑さが気になっていました。
日向の気温が高いとなればネコチャンは外に出てきてくれないし(男木島で経験済み)、屋内でスヤスヤ寝ているので目にすることができません。
かといって冬場だと逆に寒すぎて同じことになってしまって、結局猫と触れ合える季節は春とか秋がベストです。この日もなかなかに暑かったので「実は全く出会えないのでは?」と危惧していたものの、結局杞憂に終わって何より。
猫が何かをしている様子を見るだけで、精神が休まっていく…。辛いときには猫と触れ合うのが一番いい。これだけははっきりしている。
ここからはこの本浦地区を散策していきます。Part 2に続く。
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