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旅の記録、宿泊先や行程とか

【奈良井~妻籠~中津川】宿場町を巡る旧中山道 木曽路ライド Part 1/2

中山道を走る

今回は、ロードバイクで旧中山道の木曽路を走ってきました。

中山道と言えば江戸・日本橋から京都の三条大橋をつなぐ街道であり、太平洋沿いをゆく東海道とは対象的に内陸部を通る山岳ルートで有名です。その往来が多かったのは整備が行われた江戸時代なのですが、交通機関が発達した現代でも徒歩のみで歩き通す人が大勢いるルートでもあります。

近年だと中山道上の宿場町が外国人観光客を中心に人気を集めており、例えば外国人向けの日本のガイドブックには、木曽路の妻籠宿や馬籠宿などの有名どころは必ず記載されているほどの知名度があります。確か数年前に自分が訪れたときも、外国人でごった返していた記憶がある。

で、前回のライドではその中山道の岐阜県内を宿泊込みで走ったのですが、今回はもう少し江戸側に着目し、長野県内の中山道をロードバイクで走るという行程にしています。距離的には十分日帰りできるレベルだったものの、雰囲気をより味わうという意味で一泊する方針にしました。

早朝の奈良井宿

今回の行程をもう少し詳しく述べると、まず1日目は輪行で奈良井宿まで一気にワープし、中山道を南下しながら宿場町を巡って最終的に大妻宿に宿泊。2日目は馬籠峠を経て中津川宿へ下ってゴールという流れです。

徒歩ならどっち向きでも大差はないと思いますが、少なくとも長野県内の中山道をロードバイクで走ろうとする際には北→南の方角がいいと思います。なぜかというと中山道は南北で標高差がかなりあって、例でいうと奈良井宿の標高が約1000mなのに対し、中津川宿の標高は約320m。所々でアップダウンはあるものの、逆方向の南→北だと上りばっかりになって辛いです。

そういう理由で、木曽川の流れに沿って下っていく方向を基準に行程を決めました。

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JR中央西線からの車窓

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各駅停車のJR中央西線の車窓からは、これから走ることになる中山道沿いの風景が流れては消えていく。

予習…というわけでもないんですが、早朝の木曽路の風景を温かい環境で楽しめるのは電車移動の良さでもあります。走ってる最中はこんなにずっと風景を眺め続けていられないし、少なくとも景色を眺めたままほどよい速度で移動できる、という面では電車が一番。

ちなみに、この週末は木曽路周辺の紅葉が終わり頃を迎えつつある中での快晴日ということで、電車内はかなり人が多かったです。それも(普段だったら全く見ない)自分以外の輪行者も複数人見かけたので、お出かけをする人は移動手段を問わずに繰り出してきている様子。

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奈良井駅で輪行解除

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奈良井駅で下車し、まずは最初の宿場町である奈良井宿を散策していく。

奈良井宿は中山道34番目の宿場町で、これは江戸側の板橋宿から数えても京側の守山宿から数えても34番目に位置するという意味。まさに中山道の丁度真ん中というわけです。

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朝の奈良井宿

はるか遠くまで続く一直線の通り沿いに、これまたずらっと連なっている建物。

やっぱり、"宿場町"といえばこの眺めだと思う。宿場町は単なる休憩ポイントではなく「町」なので、そこには人の往来と人々の生活が混在している。そういう種々の役割の建物が集まって一つの町を形成していて、この眺めはそれを端的に表わしている。

今回は朝早く(といっても9時だけど)の訪問で、店はまだ開店してないし観光客もまばら。でも、この人の少なさと町の大きさとのギャップがどこか心地よくて、ふと走るのをやめて歩いて散策する方にシフトしていた。

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宿場町のいいところの一つは、全く外観が異なる建物が密集していること。

南北約1kmに広がる日本最長の宿場町である奈良井宿。「奈良井千軒」と呼ばれた奈良井宿の中には旅館や雑貨店、喫茶店などが集まっており、店が一様ではないのだから当然外観はそれぞれ異なっている。その異なっているものが集まっている影響で、なんというか全体で見たときにはある種の統一感を感じられる。それが現代人を惹きつけてやまない魅力の一つだと思う。

かつて旅人の喉を潤してきた水場や、幕府や藩からのお達しが貼り出された高札場など、江戸時代そのままの宿場町の面影がそのまま残されているのもポイント。古い建物が好きな自分としてはたまりません。

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時間としてはかなり短かったけど、この通りを歩いているだけで江戸時代に自分がいるかのような気分になれるから不思議だ。

もちろんこれが最後というわけではなくて、奈良井宿にはいつか泊まってみたい旅館もあるからまた別の季節に再訪することはすでに確定している。例えば新緑の季節に、ここをゴール地点としてライドを計画するのも楽しいだろうな。

木曽路を走る

半ば駆け足気味に奈良井宿を散策し終わったところで、ここからが今回の本番。

メインで走ることになるのは木曽川沿いに通っている国道19号で、各所にある宿場町は国道から逸れた旧道に位置しています。なので大部分は交通量がめちゃ多い国道を走り、脇道が走れるならそっちを優先的に走るという形。

少なくとも国道19号を通っている車は平均時速が70kmくらいあって高速と勘違いするほどなのに加え、トラックもバンバン通るのであまり走りたくない道でした。

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鳥居峠の下を通るトンネル。奈良井宿からはまずこのトンネルを通って南に向かうことになる

たまに国道を走るのに飽きたときは、まずJR中央西線の線路を探してそれに沿うように通っている旧道を走ってました。

線路の位置は昔から変わっていないため、その近くを通るということは必然的に旧道を走ることになるからですね。旧道は国道とは異なり交通量が少ないので、ロードバイクで走るのならこっちの方が好き。

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福島宿の入り口の門

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福島宿の高札場跡

次に訪れたのは、奈良井宿から20kmほど南へ進んだところにある福島宿

福島宿は中山道37番目の宿場で、古くから木曽路の中心として栄えたところです。箱根、碓氷、新居と共に四大関所の一つに数えられる福島関所跡が宿場の北端にあったことも関係し、多くの旅人で賑わっていたことが想像されます。
また、木曽川に沿って形成されている木曽路の中でもとりわけ木曽川に近く、大火を逃れた上の段地区をメインとして町並みが続いていました。

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上の段地区

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水の流れが感じられる。夏とか気持ちよさそう。

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宿場町というとメインストリートだけが着目されがちですが、大通りから一本入った路地裏の散策もまた面白い。

ちょっとロードバイクを止めて周囲を歩き回るのがちょうどいい感じで、そうこうしているうちにかなり離れたところまで歩いてきていることに気づいたりします。福島宿には狭い道が多いために、自然に先の様子が気になってしまう。

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木曽川 崖屋造り

そんな旧中山道に並ぶ家屋はどこか特徴的で、表から見れば2階建てな家々も後ろから見ればこの通り。木曽川に面した家屋は「崖屋造り」と呼ばれる造りになっていて、川の横にせり出すように3階、4階建てが連なっていました。

木曽川にせり出しているのは近代化に伴う車道の拡張によるもので、狭いスペースをなんとか活用しようとした知恵が見て取れます。

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木曽福島駅前の建物の背後。切り立った崖になっている。

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木曽路の周辺は、とにかく平地が少ない。

そもそも木曽川の両側がすぐ山になっている上に、川沿いの平野部が皆無という厳しい地形ばかり。そんな中に町が形成されているので町の中における高低差が大きく、ちょっと進むだけで坂道があって難儀をしました。ここに宿場町をつくるのは重労働だったろうな、と江戸時代の苦労を思わずにはいられない。

極めつけは町の出入り口になっている木曽福島駅周辺の地形で、駅前にある店の背後は完全なになってました。そこにはほぼ階段で構成された家屋があって、ここを毎日上り下りするのはかなり大変そう。

こういうのも普通に観光してるだけでは気が付きにくいもので、あちこち散策する上でこういった面白い風景を発見すると得した気分になれます。

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高台に上って眺めた風景はこんな感じで、大きな視点で言えば木曽路ってだいたいこういう眺めです。

北へ向かうにも南へ向かうにも木曽川の近くを長い距離歩かないといけないし、左右どっちを見ても目に入るのは山ばかり。特に江戸時代は徒歩で移動しなければならなかった=同じような景色を延々眺めることになると考えると、道中にぽつぽつとある宿場町は気分転換的な意味でも、休息地としても心強かったと思います。

今でさえ国道19号を車で走ってても正直飽きるし、やっぱりロードバイクで宿場町を巡りながら走るくらいがちょうどいい。

寝覚めの床

さて、今日の宿を目指して南下を再開していく。

宿場町ばかりを連続して訪れるのからは少し離れてみて、お次は木曽路の景勝地・寝覚の床を訪問してみました。寝覚の床は木曽八景の一つとして有名な場所であり、木曽川沿いの花崗岩地帯を川の流れが削って今のような不思議な造形をもたらしたとのこと。

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寝覚の床はJRの車窓からも一応見れるのですが、じっくりと見たい場合にはやはり徒歩で降りてみるのが一番。近くの神社の境内を通って近くまで行けるようになっており、水面が低いのでそれだけ巨石が迫力あります。

昼食はこの近くにある「ねざめ亭」でとったのですが、上の写真はそこから撮影したもの。テラス席からは寝覚の床周辺を一望しながらの食事が楽しめ、しかもたまに通るJRの車両も見える。土曜日の昼下がりの過ごし方としては実にゆっくりとしていて、特に時間に追われるわけでもない行程が気持ちよく感じました。

渓谷を経て妻籠宿へ

食事を終えたところで、そろそろ1日目の主目的地である妻籠宿を目指します。

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途中ではまたも寄り道し、人気のない柿其渓谷で滝を見てました

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観光地でもなんでもない、田舎な道を走ってる時が一番楽しいです

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柿其水路橋

そんな道中では「木曽川沿いばっかりじゃなくて山の方行ってみるか!」ということで柿其渓谷に寄り道し、川沿いの細い道を渡って牛ヶ滝を見に行ったりしてました。

夏だったら避暑で訪れる人がかなり多そうだけど、冬の渓谷はとにかく人がいない。でも寒いだけかというとそうではなくて、昼を過ぎて気温も11月にしてはかなり温かい方です。人がいない分静けさがより増幅されていて、目を閉じてみて音だけを楽しむのもまた情緒がある。日本には四季があるから…という言葉じゃないですけど、同じ場所でも季節によって正反対の顔を見せてくれるのが日本のいいところだと感じます。

あと、今まで国道という交通量が多いところばっかり通ってきていたので、渓谷周辺の集落がそれはもう落ち着けました。山の方はまだ紅葉が残っていて視覚的にも楽しいし、車に怯えながら走る必要もないので精神的にも楽になれる。

走行距離を稼ぐのであれば道が整備されていて走りやすい国道を走るという選択肢になりますが、散策という面であればこういうなんでもない道のほうが自分は好き。ましてや今回はそんなに距離を走るような行程ではないので、もうこんな道の延長線上に宿場町があったらいいのにと思ってました。

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南木曽に到着

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桃介橋

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南木曽駅

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渓谷からほど近い南木曽に到着すれば、妻籠宿はもうすぐそこ。

のんびりしまくってたら日没の時間が結構近くなってたので、南木曽周辺の散策は適度に切り上げました。冬はそもそも日没が早い上に、木曽路は山間部にあるので暗くなるのがなおさら早いです。

しかし、ここにきてやっと昔訪問したときの記憶が蘇ってきた。湯治は馬籠宿から峠を超えて妻籠宿を目指し、最終的に南木曽駅から長野方面へ抜けた覚えがあります。今回はその逆ということになりますが、何年経とうが結構覚えてるもんですね。何もない状態で思い出せと言われても難しいけど、「現地に行く」ってのは効果があるらしい。

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国道経由でも妻籠宿へは行けるが、やはりここは旧道を通って向かうことにした

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南木曽から妻籠宿へは、当然のように旧中山道を通ることにします。

そこそこな山道ですが、ここら一体は有数のハイキングコースになっているので歩く人は多いです。中山道をまるごと歩く人は少数派なのに対し、馬籠宿~南木曽はアクセスもいいので観光客で歩く人は多い印象。中には完全に登山用のザックを担いでいる人もいて、彼らはまるごと歩く行程なのかもしれません。

紅葉を見ながら散策している人を横目に見つつ、妻籠宿へ向かいました。

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ここにきて改めて思うのは、山間部は太陽光による明暗の差が激しいということ。そこかしこに山があるので、朝明るくなるのは遅いし夜に暗くなるのは早い。

こういう感じで、誰に言われるともなくごく自然にその土地の特徴を自覚できるのって楽しいと思う。標高が高いところだったら露骨に気温が低かったりとか、田んぼが多かったら暖かい時期だとカエルの鳴き声が激しい、とか。今回の場合は山間部であるということが強く感じられて、明暗の差として日陰と日向の切り替わりが多く、日陰に入ったら一気に寒くなるといった経験がそれ。

だから何だって話ですが、身近でない土地で一日を過ごしていく中では結構色んなことが気になるものなんです。そういう些細なことを旅の合間合間に感じつつ、過ごしていくのが心地よく思える。というのを言いたかった。

というわけで、Part 2は妻籠宿に到着したところから続きます。