【木曽路 奈良井~妻籠~中津川】ロードバイクで旧中山道の宿場町を巡ってきた Part 2/2

時間はすでに夕暮れに近づいてきており、妻籠宿へ到着したはいいものの散策メインでいくというよりは「宿に到着した」という安心の方が強い。自分が江戸時代の旅人と同じような感覚になっていることを自覚できているし、宿場町を宿泊地にするという意味をよく実感できていると思えます。こんなに目的地が恋しかったことは今までにない。

いつもやっているような旅でももちろん宿泊はあって、一日の行程を終えて宿に到着したときはもちろん安心感がある。でも、古くから旅人の休息地として愛されてきた中山道の宿に泊まるというのはそれ以上の何かがあって、「旅」感も自然と強い。

もくじ

夕方の妻籠宿

妻籠宿の入り口

妻籠宿は中山道42番目の宿場で、おそらくは木曽路でもっとも知名度がある宿場町だと思う。

有名過ぎるところなのであまり説明はしませんが、特筆すべきは古い町並みがそっくりそのまま今日まで保たれているところ。なんでも宿場町の保存活動を全国で初めて行った場所だそうで、通りには電柱がない、10時から16時までは車両の通行禁止、看板の数やのぼり・のれんのデザインにも制限があるなど、一般的な観光地とは少し違った雰囲気があるのが分かると思います。

特に電柱がないというのが個人的には重要だと思っていて、電柱があるとどんなに古い町並みでも途端に近代的に見えてしまいますからね。宿場町を現代まで保存しつつも、不要なところは一切排除している。これにはかなりの苦労があったと思います。

ちなみに妻籠宿にはこのような背景もあってか古い旅館が残っていて、自分が今後泊まってみたいと思っているところもちらほらありました。

観光客については、正直かなり多かったです。

妻籠宿に到着してから歩いていく中で日が傾いてきたため、観光客が多い時間帯はすでに過ぎている様子。でも通りを歩いている人だかりはかなりのもので、この時間になって到着したウォーキングの一団も見かけたくらいです。新たな株が見つかったとはいえコロナ禍も徐々に収まっている(と信じたい)し、この人の多さはむしろ安心する。去年の冬に訪れた馬籠宿の閑散っぷりから復活してくれたので嬉しい限り。

そうこうしているうちに太陽は山の向こうに隠れてしまい、あっという間に冷え込んできたのでジレを着直す。で、ここからの時間の過ごし方が今回の行程の中でかなり好きになりました。

人が多く集まる観光地って、日暮れ時を過ぎるとみんな帰っちゃいます。でもその土地に宿泊する人は話は別で、昼間とは全然違う雰囲気の町並みを味わうことができる。しかも人出は昼間と比べると限りなく少なくて、思うように散策できなかったという場合でも夕方以降は完全に自由。さらにいうとこれからの時期は寒くて出歩いている人なんて皆無なので、なおさら夜の散策が捗るというわけです。

当たり前だけど、観光って日帰りで行う人が大多数じゃないですか。宿泊地の数は限られている上に、宿泊すると行程が2日必要になるので時間的な制約もある。そんな中で木曽路とかの長野県内は自宅から近いのでアクセスがよく、今回のような突発的な宿泊旅も組みやすいのが嬉しい。

この理屈を妻籠宿に当てはめるとこうなりました。

食事処や商店も店じまいをしはじめ、観光客も去った日没後。宿場町を照らすのが日光から街灯へと変わる時間帯。町並み全体がぼんやりと浮き上がっているようで、その中を自分一人だけで歩いていると、なんか別世界へと迷い込んだような気がしてくるから不思議だ。

宿場町の中にある旅館の中からは宿泊客の話し声が聞こえてきたり、かと思えば店じまいをした商店の中からはほのかな灯りが漏れていたりする。日中の喧騒がまるで無縁のように静かな空気が漂っていて、こういうのが旅先で宿泊する良さの一つなんじゃないかなと思います。

明るい時間を過ごすだけでは出会えない風景が確かにある。江戸時代の妻籠宿も、今と同じように幻想的な夜の風景が広がっていたのかもしれない。

大妻籠の夜

ひとしきり夜の妻籠宿の雰囲気を楽しんだ後、宿へと帰還。

今日の宿は妻籠宿の隣、2kmほど南下したところにある大妻籠にあります。2kmというと距離がずいぶん近いなと思ったのですが、大妻籠は妻籠宿の一部でありつつも集落として別個になっている立ち位置のようでした。こちらには今でも3~4軒ほどの旅館があって、案外盲点ですが妻籠宿でなくこちらに泊まることもできます。

で、今回は夕方に妻籠宿を散策した後に大妻籠に移動して宿にチェックインし、荷物を下ろしてから改めて夜の妻籠宿を散策するという形をとっています。なんでかというと妻籠宿の宿がすでに満員だったからで、その隣のこちらに宿泊地を決めたというわけ。

ここだけ切り取ると、どこか江戸時代の旅人と同じようなルートをとっていると言えなくもない。2kmはロードバイクだと割と一瞬なので移動には困りませんでした。車輪による移動ってほんと楽だわ。

民宿かめやま 外観

今回泊まったのは、中山道の街道沿いから坂を登ったところにある民宿かめやまさん。

街道に沿ったところに位置する昔ながらの旅籠とは趣を異にしている感じで、おそらくは民家の家屋をそのまま民宿として転用したものだと思われます。

なので「宿場町に泊まる」という趣旨からは若干外れるのかもしれませんが、泊まってみるとそんなことは全く気にならないくらいに素敵な宿でした。

泊まった部屋

それもそのはず、内装は宿というよりも完全にそのもの。

玄関を入ってすぐに囲炉裏付きの広間があり、その奥には炬燵完備の落ち着いた客室。飾らない雰囲気が心地よくて、まるで実家のような安心感がある。隣の客室との境界は障子戸のみで、宿というよりは古い家に泊まっているというのが正しい。

民宿かめやまは女将さんが一人で営業されている宿で、一度に泊まれる人数もそこまで多くはないです。でもその分ファンの方も多くて、年に一回は必ずここに泊まっているという方も複数人いらっしゃる感じでした。

部屋の様子などを見ても宿泊者用にあれこれ改装してますという風ではなく、なんというか、この地方の民家の様相が純度100%のまま保存されている。それが個人的にかなり"良い"と感じてしまって、後から振り返ってみるとこんなに居心地がいい宿に泊まったのは久しぶりかもしれない。

この日は自分以外の宿泊者が一人だけで、客で満員になっている他の旅館と比べると相当静かだったであろうことは想像に難くない。自分はうるさいよりも静かな方が好きなので、こっちに決めて正解でした。

夕食は囲炉裏の間でいただいた

囲炉裏の音を聞きながらの食事、最高すぎる

食事についても宿泊料金(これで8000円です)からは考えられないほど豪華で、地のものを活かした料理が中心。食事中は女将さんによるお話も加わり、まさに五感で食事の時間を楽しむことができた。

いやはや、適当に選んだ宿がこんなにいいところだなんて予想だにしていなかった。事前情報なしの雰囲気で宿を決めるのも悪くない。今まで結構な数の旅館に泊まってきましたが、なんだかんだで自分が好きなのはこういう宿だったりします。

炬燵に直結した布団

極めつけは就寝時の布団で、寒いだろうからと炬燵に布団を直付けしてくれる女将さんの優しさ。嬉しすぎて涙が出てきた。

寒い時期の旅は気温の低さに悩まされるけど、炬燵や布団の温かさとは別に人の温かさに触れられるのがいい。宿泊込みの行程だと人との関わり合いも増えるし、今回のように食事時に同じ宿泊者の方との会話もある。

旅をするのに季節は関係ないんだなって改めて実感できました。

中津川宿へ

翌朝の朝食
玄関の前で記念撮影。この後一緒に写真を撮りました。

その夜は炬燵のおかげもあって爆睡し、翌朝に起きたときは朝の寒さに驚くほどでした。

中津川地方…というよりは岐阜県全体が寒暖の差が激しくて、日中の気温だけ見て服装を考えていると朝晩の冷え込みで地獄を見ることになったりします。でも、今回の行程ではこの寒さもどこか楽しく感じました。その地方ならではの気候、それを直接味わうことができたのだから。

そういう意味では、朝方の気温一桁台の中で出発の準備をするのも結構楽しかったりします。のそのそと布団から這い出して浴衣からサイクルジャージに着替え、これまた寒い廊下を通って洗面所に向かう。顔を洗ったら客室へ戻って炬燵に入りながらサドルバッグに荷物をつめて朝食の時間を待つ。この待っている間の微妙の時間帯も好き。

そして朝食を頂いたのち、女将さんに見送られて今日の行程がスタート。今日は昨日と比べると行程も短いですが、晴れているうちにささっとゴール地点まで走ることにします。

馬籠峠

当初は普通に県道7号を通って馬籠宿へ行こうとしたのですが、やっぱり中山道を通りたくなったので徒歩で馬籠峠を目指しました。

馬籠峠への道は当然段差もかなりあってロードバイクでは厳しく、押し歩きすることになったけど全く問題なし。舗装路をヒルクライムすることだけが旅じゃないので、たまにはロードバイクを降りて歩いてみるのもいい。中山道を通るといえば徒歩になるのは避けられないわけで、徒歩なら徒歩の移動を最大限楽しんでいきたい。

というか、ロードバイクの移動って"押し歩きもできる"というのがかなり大きいんじゃないかなと思ってます。

結局のところ人力のみで車輪を回しているだけなので、それができないところならば押して歩けばいいだけ。乗れないような悪路も徒歩に切り替えることができる。この特徴がとにかく街道ライドと相性がよく、石畳や階段があるところも無理なく通れるから素敵だ。

馬籠宿の散策は短時間で済ませました

馬籠峠に到着した後はロードバイクに乗ってダウンヒルをし、馬籠宿をささっと散策。

馬籠宿については今年のはじめに隅々まで散策したので、今回はスルーしました。

馬籠宿を過ぎれば、あとはゴール地点の中津川宿まで順当に下っていくだけ。

中津川の地形は本当に坂ばかりで平地が少なく、逆に言えばちょっと進むだけで眺めがいいとも言えます。現に馬籠宿から下ってくれば中津川の町並みが一望できて、これも江戸時代と変わらないのかなと思ったり。

例えば江戸から京都へ向かう際には、難所である馬籠峠を越えた先の風景がこれなんですよね。ここから先は木曽路から東海道へと移って地形の起伏も少なくなることを考えると、旅人の目にもこの高低差が名残惜しく感じられたのかも。

中津川宿に到着

中津川駅から帰路へ

そこからは順当に下っていき、中津川宿に到着して今回の旅は終了。中山道を辿る行程は一泊二日にしては非常に濃く、宿泊先での体験もあって思い出深いものになりました。

今でこそ中山道は車、もっというとロードバイクで楽しく走ることができるけど、街道が整備された江戸時代の通行手段は徒歩のみしかない。その移動にはとてつもない苦労が伴っただろうし、一日ずっと歩き通して宿場に到着したときの安堵感は今の比ではなかったと思います。現代において楽しいところだけ享受できる喜びに感謝しつつ、行程全体を通して"街道"を満喫できたことが素直に嬉しい。

次は時期を改めて走ってみたいと思います。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

過去に泊まった旅館の記事はこちらからどうぞ。

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