TAMAISM

旅の記録、宿泊先や行程とか

湯の沢湯本 杣温泉旅館 森吉山麓の素朴な秘湯に泊まってきた

ご主人はマタギ

今回は、秋田県北秋田市の奥深い山の中、森吉山の北麓に位置する杣温泉旅館に泊まってきました。

杣(そま)温泉旅館の正式名称は湯の沢温泉といい、また経営者の苗字をとって杣温泉とも呼ばれていて、今日ではこちらのほうが有名な名前になっています。温泉は源泉かけ流しで、建物は自分が好きな木造旅館。江戸時代の温泉発見以降から温泉開発が始まり、大正3年には杣氏の個人所有となって今日に至ります。

森吉山自体がマタギで有名な場所で、杣温泉旅館のご主人も実はマタギ。食事の際には大自然の中ならではの新鮮な山の幸や川魚に加えて、なんと熊肉が食べられる…という情報をもとに、今回泊まってきました。

人里離れた雪深い山奥の宿に泊まり、静かな温泉に入って美味しい食事をいただく。今回の東北旅のコンセプトはこれだ。

湯の沢湯本杣温泉旅館の公式ホームページ/秋田県北秋田市

旅館までの道はずっとこんな感じです

杣温泉旅館はまさしく秘湯の中の秘湯に属する立地で、思いっきり冬場の訪問ということも相まって旅館に行くまでがかなりハードでした。

国道105号線の周辺もすでに雪で埋もれていて走りづらかったのに、その先の県道309号に至ってはもう本当にこの道で合っているんですかと疑いたくなるレベル。旅館周辺まで看板はなく、かなり心細い思いをしました。

杣温泉旅館の入り口

最終的には県道から逸れ、小さな橋を渡ってさらに奥に進んだところに旅館があります。

旅館の前には駐車場があって、除雪されているところに車を止めました。

杣温泉旅館 外観

旅館の前には小さな川が流れていますが、それと比較すると積雪量がとんでもないことが分かる

向かって右側の建物は、旅館を経営されているご夫婦が滞在されている棟

旅館の入り口はその左側にある

温泉の案内

旅館の入り口

目の前に見えているのが杣温泉旅館の主な建物で、右側の建物が旅館の方のための棟、左側の建物が旅館の建物となっています。

館内はかなり広いものの、経営されているのは老夫婦の二人だけ。なおここに住まわれているというわけではなく、下流にある家からここまで通っているとのことです。

以下、女将さんに伺ったお話。

  • ここで営業しているのは70年ほど前から。
  • 昔はここに住んでいたが、下流に森吉山ダムというダムができてからは近隣住民も含めてそっちの方に移住した。

また、昭和の時代にはこの地に2つの炭鉱があったとのことで、その頃は小さな町が形成されていてかなり賑やかだったそうです。

館内散策

それではご挨拶の後、館内へ。

玄関。正面が2階への階段で、左側が食事用の広間。

右側には厨房のほか、ご主人や女将さんがおられる居間がある

談話スペースと、奥側に見えるのが居間

玄関内側

玄関入ってすぐのところに大きめの土間があり、自動販売機や酒類の冷蔵庫、それにアイスの冷凍庫があります。

右側には厨房、談話スペースや居間があり、女将さんやご主人が出入りする別の玄関もそっちにあります。また、雪国らしく玄関周辺には雪かき用の道具がたくさん置いてありました。

正面には2階への階段、左側には食事用の広間があり、広間の向こう側にも2階への別の階段があります。

広間の前の様子

ご主人がマタギということで、各所には剥製が飾られていました。また、熊の油・牙・爪や栃のハチミツなどなかなかお目にかかれない品も販売されています。熊の油ってなんや?と思っていたら肌に塗るクリームのことでした。

あ、携帯電話については完全に圏外となりますが、館内には意外にもWi-Fiが飛んでいるので通信については支障ありません。

階段を上がって2階へ

2階の廊下。突き当りにトイレがある。

建物右側における階段。下ると居間の前に出る

2階の廊下はこんな感じで、旅館右側の棟も含めて全体が客室になっています。客室名は「いちい」や「はいまつ」など、木々の名前になっているのが特徴。また、建物が横に長い構造になっているので階段は合計3箇所にありました。

1階及び2階の廊下の突き当りにトイレがあって、冬場なので水道は使えずバケツに入っている水で流す形になります。

洗面所

雪国の冬場では常識になっている通り、水は凍結を防ぐために流しっぱなしになっています。この水がめちゃくちゃ冷たくて、特に湯上がりの際に飲むと最高に美味しい。

この客室だけ廊下との境が障子戸だった

客室は基本的に木の開き戸になっているものの、女将さんやご主人がいらっしゃる棟の2階部分にある客室は障子戸でした。

外観からも分かる通り、当初は右側の棟だけが存在していたところ後から左側の棟を増築した形になっているようです。

今回泊まった「ひめこまつ」の部屋

今回泊まったのは、洗面所の真正面にある「ひめこまつ」の部屋。広さは6畳です。布団はすでに敷かれていました。

設備としてはテレビやポットなどがありますがエアコンはなく、暖房はヒーターのみ。翌朝の気温はマイナス7℃くらいまでは下がったものの、布団とヒーターだけで特に問題はなかったです。滞在中はほぼ温泉に入っていると思うし、朝方は起きてすぐヒーターを点ければそのうち暖かくなるし。

置いてあった杣温泉旅館のマッチ

窓を開けたら雪

部屋からの眺め

お茶セットや浴衣一式もちゃんとあるので、旅館に到着してすぐにまったりすることが可能。

設備としては特に憂いはないですが、公式ホームページにも書かれている通りバスタオルの備えはありません。こちらで準備するか、手ぬぐいで済ませるしかないです。


こうして杣温泉旅館での滞在が始まったわけだけど、周辺の物音がまったくといっていいほどしない。文字通り無音といっていいほど静寂に包まれていた。しかも窓を開けたら視界の大部分を占める色が雪の白色で、何もかもを雪が覆い隠してしまった冬の秋田県に自分がいることを実感させてくれる。

そもそもが山の奥地にある温泉なので人工的な音がほぼしない上に、冬場なので鳥や動物が動き回ることもないわけです。冬場の温泉は、その静けさがより強調されて感じるのは間違いない。ただただ温泉に入ってくつろぐにはこれ以上の環境はないのかも。

ただ、ごくたまに屋根に積もった雪の塊が落下することがあります。これの音と振動がかなりもので、音はまだしも振動まで響いてくるのだからその雪の量の多さが想像できるというもの。下を通っている最中に上から降ってきたらそれだけでも怪我しそう。

温泉

続いては温泉へ。

杣温泉旅館の温泉は内湯と露天風呂の2箇所あり、いずれも100%天然の源泉かけ流しです。

源泉は53.7℃と熱いですが、注ぐ量を減らして温度調整をしているとのこと。泉質はナトリウム-カルシウム-塩化物硫酸泉で、ほぼ無色透明でした。

まず最初に露天風呂に入りに行くことに決め、女将さんに「露天風呂は玄関を出て左側に進んでいったところにあるよ」と聞いて早速向かってみる。しかし…。

露天風呂までの道

露天風呂 脱衣所の入り口

女将さん!道が雪で埋まってて先に進めない!

露天風呂がある中庭は見ての通り積雪ですっかり覆い隠されてしまっており、脱衣所までの水を流しっぱなしにしている通路以外はなんにも見えません。というか、脱衣所周辺はその融雪の動線上からは外れているのでもうお手上げ状態でした。

スコップの力で道を切り開いていく

というわけで女将さんにスコップをお借りし、なんとか雪をどかして脱衣所までの道を確保。

完全に温泉に行く前提で浴衣に着替えていたため、この格好での雪かきは骨が折れる。まあなんとかなったので良し。

脱衣所

露天風呂は混浴です

露天風呂の方はこんな感じで、脱衣所のすぐ奥側にあります。

広さはかなり広いですが、源泉かけ流しなぶん温度の方は外気温に左右されるのでぬるめでした。冬季の間は露天風呂への道を特に雪かきすることはないっぽいので、もし冬の時期に泊まるという場合は、内風呂だけにしておいた方が寒さを感じなくていいかもしれません。

露天風呂でのひとときで余計に身体が冷えたので、そのままの勢いで内風呂に入りに行きました。

内風呂は客室等がある部屋からさらに山側にある棟の中にあって、男女別になっています。男湯に関しては、脱衣所への入り口が2箇所ありました。

内風呂の様子

内風呂は思っていたよりも広く、窓が大きくとってあるのが特徴。浴槽も広いので割と大人数が一度に入っても問題ないと思います。

温度の方は個人的にはちょうどいい程度で、なんというか熱くもなくぬるくもなくて長湯が可能な温度。熱すぎるとそろそろ上がろうかという気分になるものの、ここではそういうことがなくてずっと入っていたくなるほど気持ちがいい。

また、窓から見える一面の銀世界も長湯を誘ってくる要素の一つだと思う。

先程入った露天風呂周辺だけでなく、遠くに見える山々もすべてが雪で覆われている。そんな冬の秋田の寒さとは裏腹に浴室内はかなり暖かくて、その対比が温泉をより快くさせてくれるというか、そんな感じ。ましてや自分は極寒を味わったばかりなので、身体の端部から徐々に解凍されていく実感を強く味わうことができました。

温度が温度なので長時間入ることが容易で、しかも冬なのでほっといても身体は冷えてくる。他にやることもないし、結局滞在中はほとんど温泉に入っていたと思います。

夕食~翌朝

そんな風に温泉に入りまくっているとすでに時間は夜。

夕食の時間になったので1階の広間に向かいました。

食事会場の様子

舞台にはご主人がしとめた獣の剥製が。

食事会場は広間をいくつかの小部屋に区切っている構造になっていて、それでも一つ一つの部屋はかなり広いです。ただ、ヒーターは2台体制にしてくれているので寒さの方は大丈夫でした。

夕食の献立

焼きたてのイワナと鮎の塩焼き、それに比内地鶏の焼き鳥。

夕食の献立は山の中らしく、山菜や川魚が中心です。また、これは意外でしたが秋田の内陸部では鯉をよく食べるらしく、鯉の甘露煮が出ました。

特に美味しかったのが、イワナと鮎の塩焼きがダブルで出てきたこと。どちらか一匹だけというのは旅館などでよくあるケースですが、二匹となるとお得感がすごい。

お待ちかねの熊鍋

そして、今回の杣温泉旅館宿泊で一番楽しみにしておいたのがこちらの熊鍋

鍋類は宿泊プランによって秋田県名物のきりたんぽと熊鍋を選べるようになっていて、熊鍋…熊鍋!?と二度見したので熊鍋にしました。熊肉を食べられる機会なんてめったにあるものではないし、せっかくなので食べてみるほかない。

肝心の熊肉の味は…思ってたよりもあっさりとしていてとても食べやすいです。

熊って肉の中では完全な"野生の獣"なので臭みとかありそうなものだと思っていたのに、全然そんなことはなかったのが実に不思議でした。味は牛肉の味を少し濃くしたようなイメージで、食感は柔らかく、噛むと脂が出てきてなおさら美味い。肉からにじみ出た汁が野菜類にも染み込んでいて、白米の消費が本当に早かった。

夕食の後はまた温泉に入りに行って、眠くなったら寝るという単純な方針でこの日は終了。

朝食の献立

温泉で沸かした温泉茶

翌朝の朝食はこんな感じで、朝風呂に入りに行って消耗した体力をこれで回復させていく。

旅館の朝食はどれもご飯のおかわりが止まらなくなるほど魅力に溢れていますが、温泉旅館だとそれがより顕著な気がします。温泉に入ることで疲れが取れる=お腹が減るという流れになっているので、それを食事で補うというのは理にかなっている。

食後もまた温泉タイムを満喫し、二度寝をするなどしてチェックアウトの時間まで過ごしました。

おわりに

杣温泉旅館の何がいいって、温泉に没頭できる環境が整いすぎていること。町からは遠く離れた山奥の静かな旅館、ここには温泉を邪魔する要素が一つもない。

他の季節ならまた話が違うかもしれないけど、少なくとも冬の間はそんなに宿泊者が多いとは思えないので他人に気兼ねなく過ごすことができると思います。その温泉自体も入っていてとても気持ちがいいもので、長湯が捗るのだから言うことはない。食事についても秋田県の名物を堪能できるほか、熊鍋のプランを選べば珍しい熊肉を食べることもできちゃいます。

山の宿の素朴さがあふれる杣温泉旅館の記事でした。

おしまい。

湯の沢湯本杣温泉旅館の公式ホームページ/秋田県北秋田市

この翌日に宿泊した温泉▼