今回は、ロードバイクで秋田県と岩手県にまたがる高地・八幡平を中心に走ってきました。
八幡平は標高1,614 mの山及びその周囲の高原台地のことをいい、日本百名山にも挙げられている有名な山岳です。
なぜこの時期にここを目指したのかというと、一番の目的は雪解けが進む頂上付近にあるドラゴンアイを見ること。ドラゴンアイは八幡平の鏡沼という沼において雪解けが進んでいくにつれ、溶けた水と雪の位置関係によってまるで龍の瞳のように見えることから名がついています。
八幡平ドラゴンアイを見てみよう | 八幡平スプリングフェスティバル
八幡平を目指す
ただ、ドラゴンアイは毎年5月中旬~6月中旬の限られた時期にしか見られない上に、積雪量や気候などが複雑に影響してくるため必ず見れるというわけではありません。現に去年の2021年は結局半分程度しか"開眼"しないまま、春のシーズンが終わってしまったそうです。
そうはいっても、神秘的な景色が見られるかもしれないとなれば行ってみるしかない。今回は少し早めの5月末の天気のいいタイミングで、1泊2日の弾丸的な行程で行ってきました。
出発は盛岡駅にとり、まずは国道282号から県道23号へ抜けて八幡平方面へ。
全体の行程としては八幡平を散策した後に藤七温泉に一泊し、翌日は秋田県の田沢湖側に抜けて帰路につきます。八幡平へ上るのが行程の中では一番きついため、初日のここを乗り越えてしまえば後は楽という流れ。
盛岡周辺はかなり都会だったのが、北上していくにつれて交通量が徐々に減ってくる。と同時に川や山といった自然が多く目につくようになり、この時期ならではの朗らかな雰囲気が素敵だ。
今回秋田県側から八幡平を目指さなかった理由があって、それは盛岡方面から八幡平へ向かう途中に岩手県最高峰の山・岩手山(標高2,038m)を見ることができるから。
ここから東側には山が連なるばかりの完全な山岳地帯に突入していくため、その前段階という意味で岩手山を横目に見ながら気分を盛り上げていきたかった。周囲には田園風景が広がっていて、その向こうに岩手山がそびえ立っている。その雄大さは言葉では言い表せない。
上流にある松川温泉周辺からずっと流れている松川に沿って地味な斜度の坂道を上っていき、八幡平へ続く八幡平アスピーテラインの入口に到着。この近くの店で簡単な昼食を済ませました。
岩手県側から八幡平へ至る道は2通りあり、一つはこの八幡平アスピーテライン、もう一つが南にある八幡平樹海ライン。後者については松川温泉を経由する形になります。
今回は展望が良さそうという意味でアスピーテラインを選択しましたが、松尾八幡平ビジターセンターを過ぎたあたりの電光掲示板には「アスピーテラインはめっちゃ混んでいるから樹海ラインへ迂回してね」との文字が。今日は天気もいいし、どうやらドラゴンアイを目当てに訪れている車が多いみたいです。
まあこっちはロードバイクだし、とりあえず上ってみるかという方針でヒルクライムがスタート。
八幡平ヒルクライム
八幡平アスピーテライン(県道23号)は始点の松尾八幡平ビジターセンターから山頂の八幡平山頂レストハウスまで約20kmあり、獲得標高は1200m弱です。
こう書くと乗鞍よりは楽そうに思えますが、個人的にはこっちのほうが2倍くらい疲れました。
まず斜度が常時10%くらいあるし、何よりも交通量が多いのが厄介。乗鞍はマイカー規制があるので走ることに集中できるのに対して、アスピーテラインはマイカーやバスがバンバン通るので怖いです。路肩もほとんどないので迂闊に休めません。
たまにスノーシェルターという名の暗いトンネルが出現してきて、一つのシェルターが結構長いです。シェルター内も斜度10%とかあるのでこっちも結構必死になっている中、すぐ脇を車が通過していくのが恐ろしい。
秋田県側から八幡平に行く場合は九十九折が多いため斜度が比較的ゆるく、上りがきついという場合には選んでみるのも良いかも。
巨大なアパート群の廃墟で有名な松尾鉱山跡や地熱発電所を通り過ぎ、気がつけば目の前の山には残雪が見える。
今日の目的地であるドラゴンアイが雪解けに起因するものと考えると、こうやって徐々に近づいている感が実感できて嬉しいです。自分は低地から高地へ向けて走っているわけで、それが数字でなく景色で視覚的に味わえるのは大きい。
スタート時は道の両側があんなに背の高い木で覆われていたのが嘘のように、今では背の低い植物しか生えていない。
視界の中には自然と青空が増え、気温の方も涼しくなってきた。ヒルクライムはどうしても身体が熱くなるのがマイナスポイントだけど、次第に冷えてくるので今日みたいな気温の日には助かります。
長かった道のりも頂上付近に近づくに従って緩やかになってきており、眼下に熊沼を望めばあともう少し。道の脇に残る残雪(雪渓)も大きくなってきているのが分かります。
スタート時の暑さはもうどこへやらという感じで、立ち止まっていると汗が冷えてしまって寒いレベル。この日は風が尋常でないくらいに強く、その風が雪渓の上を流れてくるので5月末とは思えないくらいの体感温度になってました。東北の高地ともなればまだ暑さとは無縁っぽい。
あとここまで上ってきて気づいたことがあって、それはロードバイク乗りがとても少ないということ。
マイカーやツーリング中のバイクはたくさん遭遇したのに、ロードバイク乗りは1台のみ。トレーニングには結構いい場所なんじゃないかと思うんですが、案外そうでないのかもしれない。
頂上まであと少しというところで突然の渋滞。
八幡平の県境付近には先ほど述べたレストハウスがあって、その隣に大きめの駐車場が整備されています(有料)。観光客はこぞってここに車を止めてからドラゴンアイに向かうため、駐車場待ちの車が列をなしてました。
仕方ないのでここから歩きで上まで向かいます。といっても本当にあと少しなので歩くのも問題なし。
そんなわけで、無事に八幡平に到着!
レストハウスから先は徒歩でしか通れなくなっているため、ロードバイクで到達できるのはここまでとなります。
レストハウスにはトイレや軽食コーナー、物産売店の他に山岳情報があったりと、観光だけでなく登山をする際にも立ち寄るのがベストな施設。特に暴風が吹き荒れる一帯ではある種の避難施設みたいになっていて、中に入りに行っている人は多かったです。
ドラゴンアイ~八幡平散策プチ登山
レストハウスに到着したところで、ここから先はそれほど遠くない場所にドラゴンアイがある様子。さらに今日の宿である藤七温泉は約2kmのダウンヒルをした先にあり、要は大きく移動する行程はこれで終了しました。
宿のチェックイン時間付近までは八幡平周辺をまったり散策するのが吉という結論になったので、まずは主目的であるドラゴンアイを拝みに行くことに。
登山口の前に八幡平頂上付近の案内図があり、ここを確認するといくつかの沼をの周りに登山道が走っているようです。ただ自分が今履いているのは全く登山に向いていないビンディングシューズ。果たして問題なく歩くことができるのか。
目的地のドラゴンアイがあるのは左に位置している鏡沼なので、最初にここに行ってみて残りを歩くかどうか判断することにしました。
「鏡沼までは約10分です^^」と書かれた案内図を見て安心したのもつかの間、いきなりの雪道にたじろいでしまう。
よく考えればドラゴンアイって雪解けが進んでいるのは沼周辺のみで、そこへ至る道のりはまだまだ雪がたくさん残っている状態なんです。踏み固められて多少は歩きやすくなっているとはいえ、突起物が多いビンディングシューズだとめちゃくちゃ歩きにくい。サンダルのほうがマシなレベル…。
歩けなくはないのでそのまま歩きました。
そしてこれが八幡平ドラゴンアイの絶景!
白い雪原の中にぽっかりと広がった空間、そこに満たされているエメラルドグリーンの雪解け水…。太陽光に照らされて鮮やかな輝きになっていて、見る場所によって煌めき方が違います。写真ではうまく表現できていないけど、実物は本当に見惚れるくらいに綺麗でした。ここまで自力で上ってきた分、感動も増幅されてます。ここまで来てよかった!
水の帯は訪問時点で円周の半分ほどで、水深もまだそんなに深くはないみたいです。向かって左側の雪の段差が思いの外大きく、これが崩れてくれば水の部分が広がってより瞳っぽく見える感じ。
結果的には少しタイミングが早かったということになるものの、個人的には現状で十分すぎる。
なんせ今日はぶっちぎりで天気がいい(重要)だし、例えば完全な開眼状態だったとしても、訪問時の天気が曇りとか雨だったりしたら残念な気持ちになると思う。それよりは晴れを引き当てたという事実のほうがよっぽど重要で、目の前の景観を堪能しながら納得してました。
駐車場がめっちゃ混んでた割にはドラゴンアイ周辺の人は少なく、撮影や散策も普通にできました。
ざっと見渡してみると年齢層が幅広い老若男女が多く、服装についても登山という堅苦しい感じはここにはありません。日本百名山の中では、至って気楽な気分で訪れることができるところだと思います。
鏡沼から少し上がったところにはめがね沼と呼ばれる別の沼もあって、こちらはすでに一部が山際に接していました。
ドラゴンアイに比べると広さが少ない代わりに深さがあるようで、その水深はパッと見ただけでは分からないくらい。でも、その水の綺麗さは遠目からでも判断できました。
このあたりの地形は滑りやすく、このようにロープで区切られていなかったら結構危ないかもしれません。もし転んだらそのままの勢いで沼まで一直線なので。
ドラゴンアイ周辺の散策が終わったので、来た道を引き返して山頂方面へ向かうことにしました。
まだまだ時間には余裕があるし、せっかく天気が良いのだからあちこち歩いてみるのがベスト。
少し上ったところにある見返峠からは先ほどヒルクライムしてきた道に加え、その向こう側にある岩手山もばっちり見えます。
朝の時点ではすぐそこにあって麓を走っていた岩手山が、こうしてみるとやけに遠く感じる。ここまでの行程が行程とはいえ、思えば遠くまで来たものだ。
見返峠から先は、八幡沼という大きな沼を囲むように木道(登山道でよく見るやつ)が通っていて、ここをぐるっと回っていけば八幡平の頂上まで行くことができます。峠からショートカットするルートもあるので、時間がない場合はここを通るとよさげ。沼を回るルートだと峠から約30分、ショートカットの場合は峠から10分で山頂まで行けます。
どう見てもビンディングシューズで歩くような道じゃないのは置いておいて、八幡平自体は山頂付近が比較的平坦なのでアップダウンが少ないです。なので気合を入れて歩くようなものではなく、どちらかというとハイキングのような感じ。
沼のほかにも水が染み出してきているところがちらほらあり、高原地帯を歩いているということを実感できる。
ここまで歩いてくる人はかなり少ないようで、さっきまでの観光地っぽさがここでは薄れていました。
八幡沼は想像よりもかなり大きく、その色の濃さはドラゴンアイとは全く異なっている。
雪解け水が含まれているのは同じなんだろうけど、おそらく水深の違いが色の濃淡に影響しているんだろうと思います。あっちは澄んだような印象を受けるのに対し、こちらはどこまでも落ちていきそうなほど深い感じ。
両方の違いを味わう意味でも、ちょっと足を伸ばして歩いてきたのは良かった。
そのまま進むと林の中へ道が入っていき、少し歩いた先に山頂があります。
山頂というよりは高台のような地形なので展望はありませんが、展望台に書いてある内容の通りに原生林があったり沼があったりと、歩いて行く中で風景に変化がある素敵な場所だと感じました。
こんな雪深いコンディションで山に上ったことがなかったので新鮮だったことに加え、このときの気温が目の前の風景と似合ってないというのがまた面白かったです。写真だけ見ると寒そうだけど、実際は春らしい陽気で適温でした。
藤七温泉へ泊まる
八幡平を隅々まで歩き、レストハウスまで戻ってきました。ドラゴンアイを含めて山頂付近には2時間以上滞在したことになります。
散策時間を多めに確保するために早朝出発にして正解だった。
日曜日の昼過ぎということもあって、この時間から八幡平にやってくる人は少ないようです。駐車場にも空きが見られるようになり、行列も解消されてました。
レストハウスの東側の斜面にはかなりの量の雪が積もっており、ここで簡単なスキーをする人も数人見かけるほど。喧騒は去っていって、静かな時間が過ぎていく。
今日の行程がもう終わろうとしている中でちょっと考えてみた結果として、やっぱりヒルクライムって素敵だなという話。
標高が変われば周囲の景色は一変して、麓にいるときでは予想もしなかったような体験をすることができる。今回がまさにそんな感じの行程になっていて、約1200m上った先はほぼ別世界だった。この時期に雪の冷たさを肌で感じられるのは嬉しい。
水平方向に長い距離を走ってももちろん違う景色は味わえるだろうけど、こういう風に高さ方向に移動してみるのも良い。空気の美味しさ、気温の低さはまさにこれからの季節にもってこいのもので、疲れるのは疲れるけど得るものもある。なので、季節によっては今後も山岳部のルートは積極的に選んでいきたい。
駐車場から出たすぐのところには岩手県と秋田県の県境があります。
意味もなくここで県境をまたいで行ったり来たりしていたので、傍から見れば完全に変な人だったかもしれない。
山頂から西へ進めば秋田県方面へ抜けることができて、これは明日走るルート。
今日のところは南に下って藤七温泉に泊まります。
八幡平まで上ってきて何が良いって、どこを見ても迫力に溢れているということ。
徒歩で到達した見返峠からの景色と同じく、南方面に見渡せる山々の巨大さが心地よい。そんな風景を横目に見ながら坂道を下っていく爽快感…これはロードバイクで上ってきた人にしか味わえないものだと思う。
そんなこんなで藤七温泉に到着し、温泉でまったりとした一夜を過ごしました。宿泊記録は別記事でまとめています。
朝の八幡平
八幡平ライド2日目。
朝風呂もしっかり入って硫黄の温泉を最後まで味わい、ロードバイクにまたがって出発。まずはレストハウスまで上り、それから昨日チラ見した通り秋田県側に下っていきます。
やはり藤七温泉の上にあるカーブからの景色が抜群に良い。
温泉の建物、露天風呂、雪渓、そして朝もやに包まれる岩手山の山容…。あまりにもパーフェクトすぎる。いつまでも見ていたくなるくらいに好きになった。
昨日下ってきた際は快適だった道が今日は辛くて、レストハウスまでの2kmで200mオーバーの上りが襲いかかってきて初っ端から疲れる。
レストハウスについて一息ついていたところ、月曜日にも関わらずそこそこ人がいました。明日からは雨になるという予報なので、平日でも今のうちに…という方が多いようです。
そして今日の天気…なんですが…ド快晴すぎて笑えてきた。
山の上にいるだけでも空が広く感じられるのに、ここまで空が青いとなおさら気分が晴れやかになってくる。標高が高いところでここまでいい天気なのは運が良すぎるとしか言えない。
レストハウスから秋田県側へ向かうとしばらくはなだらかな道が続き、カーブになったところに大深沢展望台という展望台があります。
ここからの眺めが絶景過ぎて、比較的朝早い時間帯なのに一気に眠気がぶっ飛んだ。はるか遠くまで山が続いており、様々な濃さの緑色が深く重なり合う中にわずかに残雪が残っている。
斜面が急でなくなだらかな山が中心になって山岳を形成している中で、その影響なのか高低差よりも平面方向への広がりが強く感じられる風景だと思います。はるか遠く…というか、少なくともここからでは山の終わりが視認できないほど奥行き感がある。
まだ周囲には車の気配すらなく、レストハウスからは微妙に離れているので散策で訪れる人もいないというある意味で穴場な展望台。
これだけ広いと紅葉の時期などはめちゃくちゃ混みそうですが、この時期に訪れるのも味があっていいと思う。混んでいるハイシーズンよりも空いているオフシーズンの考え方で、繰り返しになるけど今回走ることに決めて良かった。
展望台から後生掛温泉を経由して、国道341号に合流するまではずっと下り。
ただ斜度が急な危ない坂道というわけではなくて、九十九折を繰り返して高度を稼ぐタイプの道なので斜度はそこまでという感じです。なので、純粋なヒルクライムなら岩手県側よりも秋田県側の方が全然楽だと思います。
田沢湖までの道のり
下りに下って国道341号に合流。
交差点から田沢湖方面へ向かう場合、玉川温泉手前までは緩やかな上りが続き、玉川温泉から先は下りとなります。
玉川温泉手前までの区間は至って静かな山間部という雰囲気で、交通量もそこまで多くなくてとても走りやすい。
上り基調なので周囲の景色に目が向きがちとなっている中、道路脇には雪解け水と思われる小川ができていたりと長閑な空気が漂っています。特に八幡平大場谷地という高原の周辺は静かでしたが、帰ってから調べてみるとどうやらここには熊がよく出没する様子。長居しなくてよかったかもしれない。
道の左右に新緑の壁ができているのに対し、地面にはまだ雪が残っていてその対比が美しい。
これほど新緑感あふれる風景もなかなかなくて、適度な気温の環境化で走り抜けていくと最高に気持ちが良いです。写真だけ切り取れば完全に夏の一場面なんだけど、実はわずかに汗が出る程度の爽やかな森の中。至って快適そのものだ。
交差点からの上りはここで一段落し、徐々に標高を下げていく形になります。
玉川温泉に差し掛かると八幡平への上り区間でも遭遇したスノーシェルターが多く出現するようになってきて、シェルター内にカーブが多いので走るのが怖い。昨日は上りで怖い思いをしましたが、下りでも十分怖いです。
下ってきた先にはあの有名な玉川温泉があって、なんといってもここはpH1.2と極めて酸性が強い温泉なのが特徴。今度このあたりを訪問するとしたら、ぜひ宿泊で訪れたいところです。
ここで写真を撮っていると年配のロードバイク乗りの方に話しかけられ、話によれば昨日までは玉川温泉でまったりして、今日はこれから八幡平に向かうとのこと。ちょうど自分と真逆の行程を進むことになりますね。
ただ予報によれば明日から天気が崩れるらしいので、天気のいいうちに下っておいたほうが良さげ。明らかにベテランの人っぽいのでその辺りは心配ないと思いました。
他にも色々な話をしてからお互いに反対方向への出発となって、旅先での出会いはこういうのもあるから面白い。
アップダウンが激しい箇所は通り過ぎ、あとはほぼ平坦な山道を南下していくだけ。
道中では道の脇に玉川という川が出現し、下っていくにつれて徐々に川幅が大きくなってきます。このあたりの雰囲気は青森県の十和田湖周辺に似ていて親近感を感じたりもしました。
最終的にこの玉川は宝仙湖というダム湖にあり、その下流にあるのが玉川ダム。
よく考えれば山の方から下流に向かって走れば水の流れがこういう風に変化していくのは至極納得できるものだし、それをロードバイクというちょうどいいスピードで実感できるのが楽しい。まあこんな部分に着目してるのは自分くらいしかいないと思うけど。
さらに南下して、自分はいま新玉川大橋という橋の上にいます。
当初は田沢湖まで寄り道せずに行くつもりだったのが、この橋の周辺にやけに人が集まっている。特に施設があるわけでもないし一帯なんだろうと思ってたら、ここは水没林が有名とのこと。
水没林とは大量の雪解け水がダム湖に流れ込んだ結果、まるで湖の中から木が生えているかのように見える場所のことだそうです。
それがこちら。
ちょっとこれ美しすぎない??
エメラルドグリーンの水の中から木々が現れている幻想的な風景が広がっていて、これはちょっと誰しもが二度見してしまうレベル。しかも橋の上からだと木々が密集している部分がすぐそこにあるので、上の写真のように水中の木の様子もしっかり見ることができます。
長くて一ヶ月程度しか見ることができない、自然が生んだ春ならではの絶景。四季のうち「春」の到来を感じられる要素は色んなものがある中で、こんな水没林を前情報一切なしの状態で見ることができて、正直感動しっぱなしでした。
その後は気ままにライドを続け、Googleマップに従って走ってたらいきなり未舗装路のグラベルに突入したりしながら田沢湖に到着。
田沢湖は秋田県を代表する景勝地で、その深さは日本一だそうです(最大深度はなんと423.4m!)。パッと見だと湖に注ぐ大きな川はないようなので、湖を構成する水は湖底からの湧き水が主体になっている様子。周囲には砂浜が多く、場所によっては海みたいに見えました。
田沢湖を過ぎ、いつか登山で上ってみたい秋田駒ヶ岳を遠くに見ながら走っていく。
途中では以前に乳頭温泉郷へ泊まる際に通った道もあり、あの頃は一帯が雪で埋もれていたなとか思い出しながら冬と夏の差を感じたりもしました。積雪による雰囲気の変化ってやっぱり大きくて、特に東北はそれを目当てに旅するのも面白いかもしれない。夏は登山やロードバイク、冬は温泉という風に。
ラストは田沢湖駅前の食堂で昼食を取り、ここから新幹線で帰路につきました。
秋田新幹線は全席指定席ですが、盛岡~秋田間は空いている席に座ることができます。
こんな感じで旅は無事終了。
おわりに
一泊二日の行程で駆け足気味だった部分はあるものの、それをはるかに上回る充実感を得られた今回の岩手~秋田旅。逆に言えば2日あれば自分が満足する東北旅ができるというわけで、ある意味確信があったとも言えます。
山の麓と頂上とで、明確に気候や環境が異なるのが高い山の特徴。その移り変わりを徐々に楽しめるのが八幡平の素敵なところであり、この喜びがあるからヒルクライムの疲れも気にならない。今回意を決して走ってみて良かった。
体感時間は一瞬で過ぎ去ってしまい、東北の春を思う存分楽しめたので満足感しかない。日中だけでなくもちろん藤七温泉での宿泊も良かったし、走っていく中ではこの辺りにある数々の魅力的な温泉の下見も一応できました。今度は秋から冬にかけて、岩手県や秋田県の温泉をメインに宿泊してみたいと思っています。
おしまい。
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