【積丹半島 岩内~神威岬~積丹岬~余市~小樽】「夏の積丹ブルー」ロードバイクで北海道のダイナミックな海岸線を走ってきた

むくり。

昨日とそう変わらない時間に目が覚め、眠たい目をこすりながら出発準備を済ませる。今日はここ岩内から日本海沿いにひたすら走って小樽を目指します。帰りのことを考慮するとちょっと時間が気になるので、出発は早朝としました。

メインで走ることになるのは、ずっとロードバイクで走ってみかかった積丹半島です。ただ単純に走るだけだとつまらないので、その道中で散策を含めていくつかの岬を訪れるという方針にしました。今自分がいるのは積丹半島のちょうど根元部で、内陸部を挟んで反対側に小樽が位置しているため、積丹半島を西の端から東の端まで途切れることなく走るルートになります。

もくじ

神の岬を目指すライド

朝日が覗いたばかりの岩内町を抜け、国道229号を北上して泊村方面へ。

日中とはまた異なる太陽の明るさに早速眠気がとれつつある中を、風を切って進んでいくのは何よりも気持ちがいい。早朝なので車の通りも非常に少なく、こういうシチュエーションでスタートするのが好きです。実際にはそんなことはないんだけど、まるで今の時間帯に旅をしているのが自分しかいないような錯覚になる。

完全に日が上がってから始める旅もまた良いもの。ただ、朝早くに出発するという状況が自分の中で旅感を増幅させている。普段やっているような鄙びた宿での宿泊ライドとは一味違う良さがある。

今日の行程では、基本的にずっとこの国道229号を走っていくことになります。

ただし同じなのは「国道229号」という区別だけの話で、小樽までの道中では実に色々な風景が次から次へと目に飛び込んでくる。今回このルートを走ろうと決めたのはバイク乗りの方の体験談によるものですが、実際に自分も同じように体験してみてそう思いました。なぜなのかはこれから分かります。


北海道で唯一原発がある泊村自体は静まり返っており、時間帯としてもこちらの西側は影になっているので比較的薄暗い。しかし走っている道の遠くにはこれから走ることになる道がずっと続いているのが見えるのに加え、岬部分は海に突き出ているので日光がすでに当たっています。

こういう風に次のチェックポイントが目視できるの、本当にテンションが上がる。

積丹半島は火山群の一部とみなされているため地形としては平野部が少なく、海沿いは切り立っている箇所が非常に多いです。国道はわずかな平地を有効活用して通されているほか、それが無理な場合はトンネルが登場してきます。

このトンネルがロードバイクで走る場合だと結構厄介でした。本数が多く、しかも1本が長い+灯りが少ないので怖いです。スピードを出して走る車が多いので、なおさら接触しそうで生きた心地がしなかった。

こんな感じで平地→トンネル→トンネルが開けて左手に海が見える→平地→ト(ryという流れが積丹半島の道の構成。景色については言う事なしで、海と言っても岩場が多く、視界の前方を注視すると海の向こうに次の道が見えてくる。海に沿った国道ということでカーブが多いので、ダイナミックなワインディング感も得られます。なにこれすごい。

トンネルを潜るたびに見えてくる、圧倒的な奥行き感を誇る積丹半島の風景。ずっとこの調子で道が連続するので飽きが全くこず、気がついたら5km、10km進んでいたことに後になってから気がつくということもしばしば。

これはもう仕方なくて、カーブのたび、トンネルのたびに新たな景色に出会えるんだから飽きるはずがない。次第に太陽も上ってきた周囲が明るくなってきて、風景がより鮮やかな色彩に染まっている。

個人的なおすすめスポットは、茂岩温泉の先の1km強あるトンネルを抜けた先から神恵内までの区間です。この区間は海抜0m付近に道を通すのは無理だったらしく、上記の写真の通り道が宙に浮いています。よくこんなところに道を通したな…。

滝のような水の流れ
道に沿って家が続く

積丹半島を走っていると道の脇に家屋が建ち並んでいる光景によく出くわすことがあって、最果て感がある場所なだけに個人的には驚きました。

今までの旅の中でもこういう体験は多いけど、結局のところ、どこであろうが人の営みは確かに存在している。まず道路がこうして続いている時点で、それは確かなこと。

ロードバイクである以上、道がないところは走れない。旅先で日本の端っこの方を訪問する先々で人の存在を再認識できるのは、この趣味ならではだと思います。

旧道が見えるところも多いです
意味もなく立ち止まってみたくなる風景

ところで、この国道229号を走っていく道中では旧道が見えることが多々ありました。今の道路よりさらに海沿いに残っている場合もあれば、トンネルの上に昔の小さなトンネルが残っている場合もあったり。この独特の地形と格闘した歴史は古いようです。

さっきの道の話に戻ると、こうやって自分がロードバイクで走れるのも道が存在しているからこそ。

道が整備されていなかったら日本海の美しい青色も拝めないし、交通量の多い少ないに関わらず、今も昔も道を造ってくれる方々、整備してくれる方々に感謝したい。これだけ雄大な風景をずっと目にしていると、自然とそういう気持ちになる。

ふと立ち止まって周囲を見渡してみると、後方には走ってきた道が、前方にはこれから走っていく道が見える。積丹半島の道を構成する要素は地形、海、道路、トンネル。これくらいしかない。普段走っているような道だったら看板や標識も多いし、電柱も多いし、今自分がどこにいるのか?が気になってしまうもの。

でも、積丹半島ではそういうのが気にならない。言葉にはしづらいけど、自分が認識できる周囲の環境が極限にまでシンプルになっている影響で、思考する内容も少なくて済む。積丹半島のシンプルさが自分は好きだ。

しばらく走って沼前パーキングエリアに到着。

ここは比較的広い駐車場で24時間利用できるトイレがあるほか、海に突き出た神威岬が拝めるので立ち寄ることをおすすめします。特に神威岬を根本から先端まで一望できるのは珍しく、岩内から神威岬方面へ向かって走らないとこの景色は見えません(小樽方面からだと海岸線と岬がほぼ平行なのでこうは見えない)。

岩内を出発した当初は神威岬のかの字すら認識できなかったところが、次第にその目的地が徐々に視界に入り、そして気がつけば目の前に控えている。ある場所を目指すという旅のスタイルにおいて、これほど興奮する瞬間もないだろう。

愛車のKUALISと神威岬

この一角からの景色がえらい気に入ってしまったので、角度や拡大率を変えながら何枚か写真を撮りました。

北海道、というか雪国のガードレールはワイヤー構造でスカスカしているので、向こう側の景色が見えて個人的に好き。ROUTE229の文字もセットになっているため、ここがどこなのか一発で分かるのもまた良し。


改めて愛車のKUALISを眺めてみると、金属フレーム感100%の外観が景色に合わせやすいと感じます。

ノーペイントな鈍いチタンの色彩には良い意味で突き出ているところがなく、背景がどんな色であっても一定の存在感を演出している。自分は風景の中のロードバイクは変に目立ちたくないという方針なので、これにして正解でした。

神威岬の手前には小さな漁村が
左折すると神威岬へ行けます
駐車場の様子

そして、神威岬トンネルというド直球のネーミングなトンネルを通過して神威岬の駐車場に到着!

駐車場はかなり広く、トイレや自動販売機もあって便利です。到着時は一番近い駐車場がほぼ埋まる程度の混雑度だったのものの、駐車場そのものが広いのであまり混雑感がない。ハイシーズンになればこれが全部埋まったりするのかな。

神威岬を歩く

駐車場から神威岬までは約800mあり、徒歩での移動であることや道中の散策を踏まえると最低でも往復1時間程度は見ておく必要があります。

また、途中には施設がなにもないので水分などは駐車場で確保しておくのが吉です。トイレもこの先ありません。

おお…これだ。これを見たかった。

この深みを感じさせる独特の海の色。「積丹ブルー」と呼ばれる積丹半島だけの良さみポイントです。

もちろん他の場所からでも積丹ブルーは満喫できるものの、神威岬のように上から見下ろせる場所は限られているので、なかなかこうは見ることができません。

遊歩道を歩いていくとまず最初に女人禁制の門があって、昔は神威岬一帯が女性立入禁止だったようです。これは源義経伝説に関係しており、その昔、奥州から逃げてきた義経に恋をしたチャレンカというこの地の首長の娘がいました。

しかし義経は追手から逃げるために北へと向かうことになり、チャレンカも後を追って神威岬までたどり着いたものの、義経はすでに出発した後。悲しみに暮れたチャレンカは岬から身投げをしてしまい、以降は女性を乗せた船が神威岬を通ると、祟りのせいなのか必ず船は転覆したと言います。

この遊歩道はそういう伝説からか「チャレンカの小道」と呼ばれており、強風の日には封鎖されるので注意。

門をくぐったら、あとはひたすら岬の先端を目指していきます。

遊歩道は岬の尾根部分を通っており、階段が非常に多いので結構疲れます。でも岬のスケール感がちょうどいいので、右を見ても左を見ても積丹ブルーという最高の景色が見える。絶景過ぎて疲れている場合じゃない。

後ろを振り返ってみれば右手の奥には今日走ってきた行程がそっくりそのまま一望できるし、天気はいいしでもう素敵すぎる。今日本当に走ってきて良かった…!

神威岬灯台

そのまま進んでいくと神威岬灯台という無人の灯台があり、ここがゴールとなります。灯台は明治21年(1888年)に建てられたもので、同時期に県庁によって建てられた北海道の灯台のうちの一つ。今も昔もこの地で変わらず船の目印になってくれています。

灯台はその用途から土地の端っこの方に建てられているため、「灯台のあるところまでやってきた」ということが、まさに自分のやりたいことができている気がして嬉しい。

岬の先に立つ「神威岩」は身投げしたチャレンカがこの岩になったとされている

灯台の先が正真正銘の神威岬の先端部分で、ちょっとした広場になっているので写真撮影は容易です。

その先に見えるのは広大な日本海。積丹ブルーもここにきて極まっているようで、雲ひとつない青空とのマッチ感がこれ以上ないレベル。しばらく時間を忘れて、ここに佇んでいました。

帰り道もほとんど立ち止まって景色を眺めつつ歩き、展望台経由で駐車場に帰還。同じ場所でも見る方向が異なって一度で二度美味しい。

それほど混雑らしい混雑もなく、とても充実した時間となりました。札幌などの都市部からするとアクセスが難しいので比較的人が少なかったのかもしれません。

出発前に一休み…ということで、駐車場のそばで販売されていた積丹ブルーソフトクリームを注文してみました。

昨日に引き続いて今日も冷たいものを食べているけど、運動の合間に食べるアイス系の美味しさは限界突破していると思います。しかもさっきまでのこのアイスの色そのままの海を見てきたばかりだし、ご当地系アイスは気分を盛り上げる意味でも重要。

急いで食べすぎて頭痛くなった…。

積丹岬から小樽へ

さて、行程としては神威岬で半分くらいが終了し、残り半分はこのまま国道を小樽まで走っていきます。

帰りの飛行機の時間を考慮してもいい感じで距離を縮められており、少なくとも間に合わないという心配はない。時間の許す限り散策多めでライド再開していきます。

唐突にキツネと遭遇

ダウンヒルの先に曲がり角と海。個人的に好きな地形が早々に登場してきて嬉しい。神威岬から隣の積丹岬までの区間では相変わらず海面と道路の高低差がほとんどない道が続き、自然と笑顔になってしまう。

時間の方はすでに朝が過ぎて昼になってきているので、交通量もかなり多めになってきているようです。中でもやはり多いのが大型バイクで、まあこんなに良いツーリング日和なら納得。ナンバーは札幌がほとんどでした。

北海道を走ってるバイクって99%くらいがデカいよね。バイクには詳しくないけど、航続距離的な意味から大型が便利なんだろうか。

積丹岬

野塚という地で国道は山の方に右折していましたが、今回はそのまま県道913号を海沿いに迂回して積丹岬をかすめるように走っていきました。

これが選択としては当たりで、最終的に国道へ合流するまでの間の交通量が本当に少なくて走りやすい。なんだかんだ言っても車通りは少ないに越したことはなく、森…というか林の中の澄んだ空気を味わいながら快適に走れました。

このあたりで軽い昼食として、予め買っておいたセイコーマートの焼き鳥をもぐもぐ。

今日の行程の前半では補給地点が全くなかったので、フレームバッグの中に入れて輸送する形を取りました。

神威岬から先は町が頻繁に登場してくるのでこういう準備をする必要は特にないけど、北海道は時として何もない区間が数十km続くことが当たり前のようにあります。なので、ある程度の下調べはしておくほうがいいと思います。

黄金岬周辺

その後は長い下り坂の先にある美国という町に到着し、黄金岬や美国港周辺を散策。

ここではニューしゃこたん号という水中展望船が発着しており、船上からだけでなく船底のガラス越しに積丹の海の様子を観察できるというわけです。積丹半島といえばウニが有名で、ウニがたくさん生息している様子も見えるみたい。

余市と小樽を歩く

その後も順調にライドを続け、いつの間にか最終目的地の隣にある町 余市に到着。

余市ではワインやウイスキーなどの製造が盛んで、他にもりんごやぶどう、梨、桃などの生産では北海道一を誇っています。北海道では比較的温暖な気候がその理由のようです。ワインに関しては日本有数の産地になっていることもあり、よく知らない自分でも余市=ワインがすぐに連想できました。

あとはやっぱり、NHKの連続テレビ小説「マッサン」でも登場したニッカウヰスキー余市蒸溜所が有名ですね。あれを見て余市に行きたくなったという人も多いはず。

ニッカウヰスキー余市蒸溜所
余市駅

はい、というわけでやってきました。ニッカウヰスキー余市蒸溜所です。

普段であれば予約不要で内部の見学ができるのですが、今は予約必須となっています。なので当日訪れた場合は外観とショップでワインを買うことのみ可能です。ただその歴史的に重要な建物は外観だけでも迫力があり、余市を訪れたらここは訪問してみたかったので満足でした。

余市周辺は車通りが一段と多く、なぜなのかと思ってしばらく眺めていたらほとんどの車がこのニッカウヰスキー余市蒸溜所を目指していました。知名度が抜群すぎる。

そんなわけで、ワインをいくつか購入して自宅へ発送した後にライド再開。目指す小樽はもうすぐそこだ。

余市から約20km走って無事に小樽に到着!

小樽の町でいちばん有名な観光スポット 小樽運河の前で記念撮影。もう感無量です。

小樽運河は運河のそばにノスタルジックな倉庫が立ち並ぶ風景が有名で、草が生えた壁やレンガ造りの建物、石畳の小道、ガス燈と一つ一つの要素すべてが好き。小樽運河は特に夜景が美しいものの、こうやって昼間だけの散策でも満足の行くものでした。

何よりも、今日の最終目的地に到着できたというのがこの感動に拍車をかけている。何事にも始まりと終わりがあるわけで、ちゃんと対処していたとはいえ、事故も怪我もなく旅を終えられたのは嬉しいです。

完全な観光地なだけあって人の出は多いです。

じっとしていると人混みに混ざってしまいそうだったので、適度に海側へ走りに行ったりしながら散策してました。

サーモン、うに、ホタテの三色丼
小樽駅前
小樽駅

最後は、小樽駅前にある三角市場で積丹半島ならではのサーモン、うに、ホタテの海鮮丼を食べて満腹になって終了。

三角市場は毛ガニなどの海産物の販売のほか、海鮮丼や焼き魚、刺し身などの超新鮮な食事を楽しめます。その賑わいぶりはとんでもないレベルで、完全に昼食の時間帯ではないのにどの店もほぼ満員でした。小樽を訪れたらとりあえず三角市場で海鮮丼を食べろ!と言われていたのが納得。

海鮮丼の味については疑う余地がなく、一口食べただけで今日の行程が思い出されるようでした。あの吸い込まれていきそうな日本海の色。そこで育った海産物が美味しくないわけがない。もちろん秒で完食しました。

そんなこんなで、これにて今回の北海道旅の全行程が終了。最初から最後まで濃い2泊3日だった。

おわりに

北海道の積丹半島は個人的にずっとロードバイクで走ってみたいと思っていた土地で、そこでの体験は予想以上でした。ずっとずっと先まで続く海岸線を道をかっ飛ばしていく爽快感。ダイナミックな風景が現れては消えていって、アップダウンは少なく距離的にも適度と、風景以外の面でもロードバイク向けで非の打ち所がない行程だったといえます。

昨日のアップダウン祭りだった内陸部のライドと打って変わったような海沿いの道で、天気に恵まれたのも運が良かった。今後はまた季節を変えて北海道を訪れてみたいと思っています。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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