【白山長滝~石徹白~越前大野~勝山】「美濃禅定道&越前禅定道」ロードバイクで白山信仰ゆかりの神社を巡ってきた

今回は、ロードバイクで白山の周辺にある神社仏閣を回ってきました。

白山は石川県・福井県・岐阜県の三県にまたがり、特に北陸地方においては重要なシンボルとなっている標高2,702mの活火山です。その標高の高さからもちろん登山目的で訪れる人も多く、比較的手軽に登れるために人気が高いことで知られています(特に紅葉の時期)。登山口によっては日帰りも十分可能で、自分もかつては登ったことがあったり。

今でこそ登山の側面が強い白山ですが、一方では日本三霊山のうちの一箇所の「霊峰」として捉えられていて、白山そのものを御神体とした白山信仰が古くから根付いていました。その歴史は紀元前まで遡り、弥生時代中期には白山を仰ぐ遥拝所が創建されていたそうです。

平安時代になると山麓にあたる加賀・越前・美濃の3箇所にそれぞれ禅定道という修行のための道が整備され、禅定道の起点には馬場と呼ばれる拠点が設けられました。今回はそんな馬場を巡って雰囲気を味わうことで、登山以外の側面で白山を認識したり、夏場の田園風景を眺めたりすることが目的です。

そんな背景のもと、今回訪れた場所は以下の通り。

  • 長滝白山神社(美濃馬場)
  • 石徹白(美濃禅定道)
  • 越前大野
  • 平泉寺白山神社(越前馬場)

白山信仰を目的とする「白山神社」は全国各地に存在する中で、その中でも総本山となっている神社など、特に白山と関係が深い場所を巡っています。結果的には美濃禅定道の起点である長滝白山神社から、本格的に白山登山が始まる石徹白の山奥までを通しで訪問することができました。

その後は岐阜県から福井県に入って越前禅定道へと移り、福井県勝山でフィニッシュという流れ。行程としては日帰りだけど、振り返ってみれば久しぶりにとても濃いライドができたと思います。

というわけで出発。

もくじ

美濃馬場から石徹白へ

今回の旅の出発点となるのは、長良川鉄道のほぼ終点に位置する白山長滝駅です。駅の横には長滝白山神社(美濃馬場)があって、駅名もここから取られているようです。

古来から今に至るまで、東海地方から美濃禅定道を行く人々の入り口となる美濃馬場。

自分も歴史にならってここを出発地点にしようと思っていたものの、白山長滝まで自走で行くにはそこそこ距離があることがネックになっていました。しかもこの日は最高気温が33℃という完全な夏日で、梅雨の最中にいきなりこんな環境で運動をすると体調が終わってしまう。

スタート地点まで行くのにすでに疲れていては元も子もないため、今回は長良川鉄道のサイクルトレインを活用することに。

長良川鉄道の関駅

岐阜県にはJR以外にも長良川鉄道や明知鉄道、樽見鉄道といった第三セクターの路線が多いのが特徴の一つだったりします。

今回利用した長良川鉄道については、自転車を輪行袋なしでそのまま持ち込めるサイクルトレインを運行しています。平日・土日祝ともに運行しているのは一日一便で、利用するには2日前までに予約が必要(定員5名、追加料金なし)。

サイクリング列車&輪行袋貸出

詳細は上のリンクで確認してもらうとして、重要なのは土日祝の場合は始発便がそのサイクルトレインだということ。

ちょっと早起きするだけで終点の北濃駅に8:40くらいには自動的に到着できるというわけで、まさに今回の行程にはうってつけでした。本当は輪行するつもりだったけど、輪行作業ってなんだかんだで面倒なのでサイクルトレインがあるのは嬉しいです。

長良川鉄道の沿線は今までにたくさん訪れていたものの、実際に乗るのは今回が2回目。ローカル線って実際に乗っている人は少ないので、せっかくの機会なので乗っておこうという精神は大事ですね。

電車が入線。しかし早朝なのにすでに明るいな

自走で関駅まで向かい、そのまま電車に乗り込んで白山長滝駅へ。

自分が知らなかっただけで長良川鉄道のサイクルトレイン自体は有名なのか、定員5名のところが自分を含めて満員だったという事実。電話予約するのがちょっとでも遅れていたら埋まっていたかもしれない。

列車としては1両編成なので、5名がロード同伴で乗ると半分近くの座席が埋まることになります。

長良川鉄道のサイクルトレインってどうなの?という件についてはご覧の通り。

特別な固定が要求されるとかは一切なく、ただ単純に荷物としてロードバイクが増えただけ。自分はポールに立てかけてましたが、他の方は電車後方の空いているスペースに置いていたりしました。つまり…めちゃくちゃ楽です!

予約さえしてしまえば気楽な気持ちで遠方に行くことができるので、これはぜひとも活用していきたい。例えば岐阜から白川郷や富山に行く時も、サイクルトレインを使えば早い時間に移動できそう。

しばらくは乗車人数が少ない路線に限られるだろうけど、世の中にもっとサイクルトレインが増えればいいのになって思ってる。

何よりも素晴らしいのがこの車窓からの眺めです。

岐阜県自体がどこに行っても景色が素晴らしいと自分は思っていて、特に郡上~白鳥あたりのどかな田園風景は見ているだけで精神が浄化されていくレベル。季節的にも水田と森林の色合いが美しく、こんな天気の良い日には出かけないともったいない。一足早い夏休みを満喫しているような感覚だ。

岐阜県には全体的に自然が多く残っていることに加えて、自然と集落との割合がちょうどいいバランスだと思う。例えば都会に住んでいたらこういう景色を見るために結構な距離を移動しなければならないし、これについては岐阜県在住で良かった。

予定通りに白山長滝駅で降車。電車を降りるときも別に特別な作業は必要なく、普通に降りるだけでした。

長良川鉄道は郡上八幡を過ぎれば一気に乗客が減るものの、他の人達はサイクルトレインに乗るくらいだから終点まで行くんだろうなと思っていたらまさにその通りでした。逆に白山長滝駅で降りるのは自分くらいしかいないのかもしれない。

長良川鉄道の駅はほとんどが無人駅なので、なんというか降り立った瞬間に「旅が始まった感」がある。


駅のすぐ横が長滝白山神社で、その駐車場には「霊峰白山への道 1300年の歴史が語る美濃馬場」の大きな碑がありました。

ここから先は要するに「神域」に入ることになり、いつものライドとは精神的な気分が異なってくる。さっきは駅に降り立ったときが旅の始まりだと思っていたのが、こういう風に馬場の存在がはっきりと示されていると気が引き締まる思いだ。

ちなみに白山信仰における馬場(行場)は、入山する前にお経を唱えたり身を清めたりして精神を整える場所だそうです。そうして諸々の準備をした後に禅定道を歩いて白山を目指していくという流れ。

なので、長滝白山神社は何かを祈るための場所ではないというのがちょっと意外でした。自分は神社=祈りを捧げる場所という風に考えていたのが、白山信仰においてはそうでないという。

長滝白山神社

長滝白山神社の様子はこんな感じで、境内はとても広くてほぼ山に接しているようなロケーションでした。

神社という存在は自分の中で「旅先で訪れる率」がかなり高いところけど、まだ朝早い時間帯の神社の雰囲気って本当に好きです。人の気配がとにかく少なくて、代わりに人ではない何かがいるような感じがしてならない。

ひとしきり中を歩いた後、今回の装備をチェックしてOKなことを確認する。あと深呼吸。

流石に馬場から見れば白山はまだまだ遠いけど、これから走っていくにあたって昔の人と同じように気持ち的な準備ができたと思います。

北濃駅

長滝白山神社を後にして、いよいよ美濃禅定道へと入っていく。

道としては北濃駅の前を通っている国道156号から道を一本入り、県境方面へと向かう県道314号を上っていきました。白鳥~北濃付近で岐阜県から福井県へ抜ける道はこの県道と少し南にある国道158号しかなく、昔から今に至るまで山越えルートであることに違いはありません。

ライドに関して言うと、この日はなぜか朝から気温が29℃くらいにまで上がったので北濃から石徹白までの上りで早速疲れました。斜度は終始8~12%くらいで、短距離の割には獲得標高がそこそこあります。

塩タブレットをかなり多めに持ってきていたので良かった。。これからの季節は塩タブレットが無いと途中でくたばってしまう。


今でこそ県道だったり国道だったりが整備されているものの、当時はもちろん道路はないので白山へ向かうのは相当に大変だったと思います。

禅定道は熊野古道のような参拝のための道ではなく、例えるなら大峯奥駈道のような修験のための道ですが、白山に向かう修験者は当時どれくらいいたんだろうか。どういう思いから白山を目指したのか。

気になることは思いのほかたくさんあり、ロードバイクに乗っていると自然と「道」そのものに興味が湧いてくる。そんなことを考えながら上っていたので体感時間的にはあっという間でした。

上り坂は白鳥高原の桧峠に入ったところで終了し、ここから石徹白までは下りなので楽になります。

白山信仰ゆかりの里 石徹白

石徹白大杉

しばらく下ると、白山信仰を語る上で外すことができない石徹白(いとしろ)という地区に到着。

石徹白は標高約700mの高地にある岐阜県郡上市白鳥町の集落であり、美濃禅定道の一部に含まれています。郡上市による石徹白の紹介サイトによれば縄文時代にはすでに石徹白に人が生活していたそうで、白山信仰が広まってからは多くの修験者の出入りによって栄えました。

地図を見るとよく分かるけど、石徹白は長滝白山神社と白山頂上とのだいたい中間地点に位置しています。昔は物資の輸送が今よりも大変だったし、徒歩で長い距離を移動する上で石徹白はとても重要なポイントだったことは想像に難くない。


地区内には後述する白山中居神社や石徹白大杉などの白山信仰に関係するスポットがあることに加えて、清らかな水や長閑な風景などが魅力の一つ。特に石徹白大杉の近くは白山登山口の一つになっているため、訪れる登山客も多いです。

まずは石徹白の最深部に位置する石徹白大杉を目指し、そこから現在地に戻ってくる道中に色々な散策をしていきました。

石徹白の風景
石徹白名物の水力発電

石徹白の地区内はほとんどが田畑で占められており、主だった家屋は南側に集まっているようでした。少し北に向かうだけで適度な高低差があって、石徹白の中でも場所によって標高が大きく変わるようです。

山の中から比較的平地に移ったということで、途端に存在感をアピールしてきたのが快晴の青空。夏の時期に雲ひとつない空は珍しくて、こんな日の散策が楽しくないわけがない。

そんな風にして棚田を通り過ぎ、坂道を下って白山中居神社方面へと向かおうとしていた途中に気になるものを発見しました。

道の上の注連縄

それがこちらで、道の上を横断するようにして注連縄が張られている。

横の柱を見ると「注連張」と書かれてあって、使われているのが縄ではないので注連張という名称になっているのかな。注連縄は神社ではよく見かけますが、このように道に設けられているのは初めて見ました。

注連縄があるということは、ここから先が神域だと明確に示されているということ。

ちょうど注連縄の向こう側には白山周辺の山々が小さく視認でき、山岳を神々が宿るものとして認識しているのがよく分かりました。

石徹白大杉までの道。流れているのは九頭竜川の源流である石徹白川。
白山登山口
白山登山道入口。美濃禅定道のチェックポイントの一つ

白山中居神社からの道中はカットして、一気に石徹白大杉の近くの登山口に到着。

まず結論から言うと、白山中居神社から先の道(林道?)は酷道に近い様相になってます。体感的には国道425号に近い感じで、洗い越しや落石があったりするのでロードバイクだとおすすめしません(今更)。まあここまでロードバイクで行く変態は自分くらいしかいないと思うが…。

道の終点にはトイレや小屋があって、駐車場や道端には登山客の車がたくさん止まってました。今日はこれ以上ないくらいに良い天気だし、ここから白山を目指す人が多いのは納得。

で、目的地の石徹白大杉はここから石段を400段くらい上った先にあります。本格的な登山道ではないので、ビンディングシューズでも問題なく歩けました。

石徹白大杉

坂道の先にあったのは、まさに巨木と呼ぶにふさわしいほどの大杉の姿。

石徹白大杉は推定樹齢1800年・周囲約13.4mを誇る杉の木で、国の特別天然記念物にも指定されているほどの希少さがあります。

場所的にはこれから本格的に白山へ向けて山道を歩いていくという入り口に立っており、その立派な外観はある種の道標のようでした。伝承によれば、かつて白山を開山した泰澄上人が使っていた杖がこの大杉になったそうです。

ここまでの大木が岐阜県にあるということを自分は全く知らなくて、ここに到着したときにはしばらく呆然としてしまった。例えば以前訪れた屋久島では屋久杉と呼ばれる巨大な杉の木が有名だったけど、下から眺めた限りでは石徹白大杉の大きさは屋久杉にも匹敵するほどでした。

大杉の周りには一面に緑があふれているほか、もちろん大杉そのものにも成長を続けている枝や葉が見えている。

登山客が登山口付近にいるような時間帯ではないので人工的な音はなにもなく、聞こえてくるのは鳥のさえずりだけ。大杉を眺めていると、まるで自然と一体になったような感覚になりました。

写真だと大きさがいまいち伝わりづらいかもしれませんが、石徹白を訪れたのならぜひとも大杉まで足を伸ばしてみてほしいです。絶対に後悔はしないので。

白山中居神社

帰り道
白山中居神社

帰り道も平和に走って、行きで通り過ぎた白山中居神社に到着。

白山中居神社もまた白山神社の一つであって、今まで通ってきた道のりが示しているように美濃禅定道の一部に含まれています。

しかし白山中居神社が位置する場所はもともと美濃ではなく越前国で、藩政期には郡上藩領、そして昭和の大合併を経て岐阜県に編集されたという歴史があります。社そのものは白山が開山されるより前から存在しており、白山信仰が広まってからは境内が拡張されたようです。

白山中居神社の鳥居は緑がかっている。
参道

うまく言葉にはできないものの、白山中居神社は個人的に予想外の神社でした。

こんな山奥に規模が大きい神社があるというのがまず驚きだし、鳥居を抜けた先には杉の大木が並ぶ参道、橋を渡った川の向こう岸に本殿があるという配置、そして神社全体を包み込む大自然の清らかさ。視界に入ってくるすべての景色に神々しさを感じる。

自分としては神社=心休まるスポットという位置づけで、何か用があるというわけではなくても神社には自然と長居していたくなる。白山中居神社はそれがより一層増幅されるような感じがし、いつまでものんびりしていたくなるような静けさのみがありました。

白山中居神社 拝殿
石段の上に本殿がある
社殿の彫刻が見事

その後は石段を上がって本殿に参拝。

本殿周辺を歩いてみて気づいたことは、建築物を構成するもののほとんどが木材や石だという点です。一般的な家屋等であれば強度を増すために金属部を多く採用するのが一般的であるところ、白山中居神社は昔ながらの木造建築。しかも単なる木造建築ではなく、上の写真に示している通りに隅から隅まで木材のみで構成されていました。

本殿へ上がるための石段も同じように石オンリーだったりと、石と木しかなかった昔から現在に至るまで姿を大きく変えずにいる。ここまで自分好みな神社はたぶん初めてかもしれない…。

神社への参拝を終えて石徹白を去る前に、改めて集落内を散策してみる。

石徹白はどこを訪れても自然がすぐそこにあり、家屋に比べて田畑や山が占める面積がとても広い。かつて白山信仰で栄えたという歴史と、今現在の静かな石徹白。今回は美濃禅定道を走るという目的で訪問しているものの、ここはぜひともまた訪問したい土地の一つになりました。

越前大野の水田地帯を走る

美濃禅定道の起点を出発地点としてその中間地点にある石徹白、そして白山への入口に佇む大杉を巡って白山の存在を身近に感じたところで、続いては舞台を福井県に移すことに。

道としては県道127号を南下して国道158号に合流し、九頭竜川に沿って大野市街方面へ。この次に目指す平泉寺白山神社は大野市街のさらに先にあるものの、まずはこの時期の大野市の雰囲気を掴みにいきます。

というか、福井県を前回訪れたのが相当な昔。結構忘れている部分もあるので、一度訪れたことがある場所だったとしても再訪する意味は十分にある。

自分としてはある程度のスパンを設けたり、前回とは別の季節に訪れたりすることで常に新鮮さを味わうようにしています。

道中で出会った特徴的すぎる家

県道127号の様子はこんな感じで、岐阜⇔福井を通る交通量の大半を国道に取られているので平和に走れました。

すぐ横を流れる川の様相も場所とともに変化が激しく、最初は比較的小さな川だったのが下流に行けば大きなダムへと流れている。毎回思うけど、旅の中で水の流れって結構気になります。

道の駅九頭竜
九頭竜湖駅

国道158号に入った後は道の駅で休憩し、道に沿って大野方面へ。道の駅の横にある九頭竜湖駅(越美北線)も含めて訪れている人が多く、どうやら九頭竜湖への行き帰りで立ち寄ってるみたいです。

越美北線は本来だったら今の長良川鉄道(旧越美南線)と接続するはずだったらしいけど、結局その計画は中止になっています。繋がってれば岐阜から福井県へのアクセスが結構楽になってたのに。

国道に関しては交通量が一気に増えたほか、スノーシェッドやトンネルが多いので精神的に疲れました。特にトンネルに関してはロードバイクで走るのに全く適してなくて、トンネルが嫌いというサイクリストは多いと思う。

基本的に九頭竜川に沿って道が通っているので道が分かりやすく、迷う心配がないという点はよかったです。

見渡すばかりの水田が美しい

そんな感じで山岳地帯を抜け、大野盆地の端っこに位置する道の駅 越前おおの 荒島の郷あたりに到着したところで景色が一変。

視界の中を占めるのはほとんどが水田で、さっきまでずっと見てきた険しい山々ははるか遠くにしかない。大野市の中心部である大野盆地は四方を山地に囲まれた場所ですが、こんなに広大な平野部に田んぼが広がっている風景は岐阜県にはないのでとても新鮮に感じました。


自分は岐阜県に住んでいるので県内を走るのはもちろん手軽で楽。でも面積の大部分が山間部である岐阜県の景色は広い意味で同一な面があり、ここにきて明確に異なる地形に遭遇できたのは素直に嬉しい。

私が全国各地を旅している理由の一つが「近場では味わえない景色を見に行く」だし、今日の行程の起点は山、石徹白も山の中…ときて今は平野部というのは単純にメリハリがあります。いつもこんな感じの行程にしたいね。

そんな水田地帯でちょっと立ち寄ってみたかったところがあって、水田の真ん中にぽつんと存在する山伏岩がそれです。

山伏岩
猫のような形が特徴

山伏岩って何かというと、要は木々が集まった小さな森のようなもの。

大野盆地にはその広い平野部を活用するために田んぼがたくさんあるのは当然だけど、田んぼの風景に混じって別の存在が佇んでいることがあります。

それは大抵田んぼの所有者の家屋だったり神社だったりするなか、こんな風に離れ小島みたいに小さな森がある場合もある。山伏岩はそんな感じの場所で、この時期は全体が木々の緑色に包まれているので遠くからでもすぐに分かりました。

見る角度によってはネコやトトロの様にも見え、なんか眺めているだけで自然と笑顔になってくる。


神が住んでいそうなこじんまりとした森を後にして、続いては大野市街へ。

越前大野は昔から名水が湧く町として有名だということを聞いていたため、今回は「本願清水イトヨの里」と「御清水」の2箇所を回りました。

本願清水
御清水
透明度が凄い
音もなく湧き出る水が美味しいです

大野では湧き水のことを清水(しょうず)と呼び、生活のために活用されています。

今回訪問した2箇所は町の中に溶け込んでいるような雰囲気を出しつつも、水の範囲の広さからまるで庭園のような不思議な感じ。名水=水が湧き出る=川や山に近い場所ではなく、町の中という点にも惹かれました。

訪問時は観光客や周辺の方が実際に水を汲んでいて、つまり清水は大野に住む人々にとってもなくてはならない存在。自分も早速飲んでみたところ、身体に染み渡っていくような冷たさと飲みやすさで体力を一気に回復できました。あまりにも美味すぎる。

これからの季節はもっと気温が高くなるし、同じ水分補給ならコンビニや自動販売機ではなく美味しい水の方がいい。身近にこういうスポットがあるのは本当に素敵だ。

越前禅定道 平泉寺白山神社

今回の旅ももう終わりに差し掛かっている。

最後に訪れたのは越前禅定道の起点になっている平泉寺白山神社(越前馬場)です。この神社は司馬遼太郎の「街道をゆく」にも登場しており、なんでも境内一面の苔が見事なんだとか。

出発から今までの道中で散策に重点を置いていた影響で、平泉寺白山神社に到着したのは15時くらい。

いつもの宿泊ライドだったらすでに宿に到着しているところが、日帰りライドの場合は比較的遅い時間まで走ることが多いです。今日の予定では夕方には福井に到着していればいいなレベルで考えていて、まあ予定通りなので問題なし。

目に見える形で異なっている部分があるとすれば、時間帯的に西からの赤みがかった陽光が神社に差し込んでいる様子くらいかな。地方の土曜日の夕方って混雑している感じではないので、思っていたよりも静かな中で参拝できました。

木漏れ日が参道を優しく照らしている
特徴的な鳥居
苔の様子

朝早くの参拝もいいけど、今回のように夕方の参拝も趣があって個人的に大好き。

入口から長く続く杉木立の参道を歩いていった先には苔がまるで絨毯のように広がり、ここで昼寝したらさぞかし気持ちよさそう。前日の天気は雨で、わずかに残った水分が苔全体を瑞々しく彩っているようでした。

今更にして思うけど、本当に今回の訪問は色々神がかっている部分が多いと思う。

特に前日が雨で今日が快晴…というシチュエーションが良くて、大気中の色々な不純物がすっかり流された後に迎える青空ほど気持ちがいいものはない。一般的には空気が澄んでいるのは夏よりも冬であるのに対して、植物が一番美しく輝くのは6~7月くらいです。

そういう諸々の条件が重なった今日この日に、静けさや空気の美味しさがよく濃く感じられる「神社」を参拝する。振り返ってみれば早朝から今この瞬間まで、自分がとても良い環境にいることに気づきました。

越前おろしそばとソースカツ丼

今まで何も食べていなかったので、帰路につく前に平泉寺白山神社近くのお店で遅めの昼食にしました。

注文したのは、福井県名物の越前おろしそばとソースカツ丼。福井県ではカツ丼といえばソースカツ丼のことをいうらしく、ご飯の上にカツが乗ったシンプルな料理ながら美味しいです。

気温が高いのでさっぱりしたものを思って越前おろしそばを注文しようとしたところ、ソースカツ丼とのセットがあったのでそっちにしました。結果的にはカツによって食欲を回復できたのでヨシ。

昼間のランチライムだったら結構忙しない昼食になっていたかもしれないけど、今はもう夕方なので自分以外に観光客は皆無。こういう行程も案外アリなのかもしれない。

平泉寺白山神社の参道入口

最後は、えちぜん鉄道の勝山駅まで走ってフィニッシュ。

福井駅方面に向かう電車に揺られつつ、今日出会った風景を思い返しながらの帰宅となりました。

おわりに

登山をメインでやっていた昔に白山に上ったことがあって、その後に山岳信仰という概念をちらっと知ったのが今回の旅の発端です。

名だたる名峰は美しさを感じると同時に一種の尊敬や崇拝の念も確かにあって、特に昔は生活をしていく中で自然環境そのものに圧倒されるばかりだったと思います。今日巡ったのはそういう信仰が神社として形になった願いの場所であり、参拝を通じて白山の存在感を強く感じました。

岐阜県はどこもかしこも山ばかりだけど、山の中には信仰とともに歩んできた集落もあれば、特別な意味合いを持つ荘厳な神社もある。自分が知らなかったことを知れただけでも大きな収穫だし、今度は別の季節に再訪してみたいと思っています。

おしまい。


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