東北ライド3日目。最終日である本日はロードバイクで宮城県の蔵王連峰を目指してきました。
蔵王連峰は東北地方を南北に走る奥羽山脈の中にあり、宮城県と山形県の県境に位置する連峰のこと。両県を行き来する場合は山越えをすることがほぼ必須となり、走っていくのはその蔵王連峰の中でも最も標高が高いエリアとなります。今回の東北ライドでは「標高が高い」とか「県境」とかのワードが頻出している気がするけど、そういう場所にこそ自分が求めている景色がある。
蔵王と聞いてまず思い浮かぶのは冬の樹氷、温泉、スキーなどが挙げられます。蔵王は標高が高い地域なのでウィンタースポーツが盛んであって、冬になれば蔵王温泉を拠点にしてスキーを楽しむ人が多いみたい。今回はロードバイクで走れる季節に訪問するということで蔵王の御釜を目的地としました。
蔵王エコーラインのヒルクライム
蔵王は県境に位置しているため、その頂上付近までは山形県側と宮城県側の両方からアクセスすることができます。
今回は移動経路を考慮して山形県上山市からスタートし、県道12号(蔵王エコーライン)をひたすら上って御釜に到着。帰りは上ってきた道を下って蔵王温泉を散策後、出発地点に戻って来る形にしました。行程後半は宮城県側にダウンヒルする選択肢もあったものの、帰りの経路が長くなってしまうので今回はパス。終わってみれば道中で迷うポイントが一切ないシンプルな行程になりました。
県道12号の上り区間は前半と後半に分けることができ、県道53号(蔵王温泉方面)への分岐までが前半と言えます。前半ではヘアピンカーブがほとんどない直線の上りが多く、箇所によっては斜度が急なところがあって疲れました。
なおこの分岐から先が蔵王エコーラインに該当するようで、訪問時はまだ冬季閉鎖が解除されたばかりのため17:00~8:00が夜間閉鎖となっています。なので後の散策時間を確保するためにおおよそ8:00くらいに分岐に到着するように時間調節をしてから出発するようにしました。蔵王温泉の散策は後にとっておいて、まずは御釜を見るのが第一目標です。
ヒルクライムの後半ではヘアピンカーブが連続し、斜度も緩やかになるので問題なく走れると思います。道中には山頂までの距離を示した石碑のようなものが設置されているため残りの距離を把握しやすいですが、逆にまだこんだけしか進んでないのかよと心を折られる事態にもなりかねない。ヒルクライム中の1kmはとんでもなく長く感じられるので…。
景色としては最初は森の中を抜けていき、途中から残雪が目立つようになりました。道路は豪雪地帯なのにかなりきれいに整備されていて憂いはありません。
視界が広くなってからがヒルクライムの本番。
ロードバイクで走る上で快晴が嬉しいのは一年中同じですが、青空が他の季節よりも澄み切っているのは寒い時期~春の特徴だと思います。例えば夏の時期だと雲が割と多くて空の青色も比較的濃いのに対し、今の時期は雲がほとんどなくて空の青色は少し薄く感じられる。呼吸をするたびに冷たい空気が肺の中に入ってきて気分がリフレッシュでき、ヒルクライムで熱を持った程度の身体の暖かさが実に心地良い感じ。やはりヒルクライムをするのなら寒い時期が個人的に好きだ。
ちなみに県道12号の後半部分では道中に山荘やロッジなどの宿泊施設があるほか、トイレや飲食店も数店あるので休憩する場所には困りません。
蔵王の御釜へ
そうやって上っていって山形県と宮城県の県境に到着したところで、これから先の道筋を確認してみる。
御釜へ一番近い駐車場は蔵王エコーラインから直通している蔵王ハイラインの駐車場が該当しますが、こちらは有料道路である上に自転車は通行することができません。なのでロードバイクで訪問した場合は山形県側にある蔵王刈田リフト(標高1,598m)へ向かい、ここからリフトに乗って御釜まで向かうことになります。なお蔵王刈田リフトの駐車場は蔵王ハイラインのそれよりも広いため、混む時期はこっちの方が車を停めやすいと思います。
リフト乗り場にはサイクルラックが置かれていてロードを置くのに便利。ロードバイクで来る人間をちゃんと想定しているのが嬉しいですね。
後はリフトに乗っているだけで自動的に上まで連れて行ってくれる。なんて楽なんだ…。
今日の行程の半分を占めるヒルクライムがすでにもう終わって(いると思っている)気持ち的に楽になったのもあり、後は純粋に蔵王の風景を楽しむことができる。ライドと観光の割合はどちらかが多すぎてもダメで、いい感じのバランスを今後も保っていきたい。
リフトに揺られて上に到着。
蔵王連峰中央部のマップは上の通りで、今自分がいるところから正面に進めば蔵王のシンボルである御釜、左へ進めば熊野岳、右へ進めば刈田岳や蔵王ハイライン駐車場及びレストハウスがあるようです。まずは中央へ進んで御釜を眺めてから他の場所に行ってみることに。
標高1,700mオーバーの世界は下界とはまるで雰囲気が異なり、冬が終わったばかりで雪が残る大地が目に入ってくる。平地ではない"山岳"の領域に足を踏み入れていることが実感できます。
なお蔵王の散策だけならばハイキング程度の装備で十分で、少なくとも本格的な登山装備は不要だと感じました。中には北アルプスに上るようなガチめの装備をしている人がいたものの、おそらく熊野岳を超えてさらに北へ向かうのかな。
しばらく歩くといきなり崖になっているところがあり、その向こう側にあるのが蔵王の御釜です。いきなり目の前に現れてきてびっくりしてしまった。
蔵王の御釜の正式名称は五色沼といい、火山活動によって生まれた火口湖の一種。火口湖とその中央火口丘である五色岳の様相が釜に似ていることからこの名前がつけられました。ここからだとその大きさが少し分かりづらいけど湖の直径は約325m、水深は27.6mもあって巨大そのものです。この標高ではなかなか見ることができない神秘的な瑠璃色の湖面といいスケール感のデカさといい、心からここまで上ってきて良かったと思えるほど雄大だ。
個人的に好きになったのが御釜を縁取るようにある五色岳の存在で、ただ何も無い平地に湖があるよりも風景に奥行きを感じさせている。横や奥に見える周囲の地形がなだらかなのもあって、五色岳の「凸」感が際立っています。
リフト乗り場から最短距離で御釜を見れる場所からは湖の手前側が隠れてしまっていたため、熊野岳方面へ数百mほど歩いて北から眺めてみました。ここからなら御釜の全域を刈田岳とセットで見渡すことができます。ただ単純に観光で来た人がここまで歩いてくることは稀だと思うし、時間に余裕があるのなら散策がてら歩いてみるのがおすすめ。
それにしても標高が高い場所の割には山々の傾斜が緩やかというか、際立って高い山がないので遠くまで見えやすい。宮城県の市街地方面から徐々に標高が高くなって蔵王に至っているという地形の移り変わりがはっきりと認識できました。
蔵王の散策
外輪山に沿って歩きながら五色沼を眺めたので、次は反対側の刈田岳方面に向かってみます。
刈田岳へは登山道でよく見かけるような階段ではなく斜面を通ることになり、比較的歩きやすいのがグッド。
刈田岳の頂上には刈田嶺神社という神社があったので参拝しておきました。
刈田岳からふと東を眺めてみたところ、眼下を通る蔵王エコーライン(宮城県側)の交通量がとんでもないことになっていることに気がつく。
眺める限りでは渋滞渋滞アンド渋滞でまともに進んでいないように見えます。逆に山形県側は往路・復路の両方とも交通量は大したことはなかったので、宮城県側がこんなに混んでいるとは意外でした。太平洋側で人口が多い仙台とかから訪れるんなら宮城県側を通るだろうし、渋滞の原因はそれだろうな。もし宮城県側から蔵王を訪問する場合は早い時間に通るようにしたほうがいいです。
刈田岳方面から眺めた御釜のアングルはこんな感じ。こっちからだと熊野岳周辺の残雪との組み合わせが青空に映える。見る角度によって感じ方も異なるというわけで、一般的な観光客の2倍以上の距離を歩いた甲斐はあったかな。
で、この時点で時間はちょうどお昼どき。ダウンヒルをして蔵王温泉へ向かう前にお腹を満たしておきたいと思ったので昼食を食べに行きます。なお御釜周辺で飲食が可能な店は蔵王ハイライン駐車場に隣接されている蔵王山頂レストランしかなく、リフト乗り場近くにはありません。
レストランで注文したのは御釜の名前にちなんだ釜カツ丼。レストランの入口でめちゃくちゃ推されていたので気になって頼んでみました。
釜カツ丼は釜飯とカツ丼が一緒になった料理で、今までカツ丼を釜で食べる経験がなかったため新鮮に感じました。もちろん味も濃厚で、蔵王ブランド豚を使用したとんかつは肉厚でジューシー。肉を持ち上げたときの湯気の立ち方やホクホク感に釜で調理することの利点が現れている。これは上手いこと考えたなと感心してしまったわ。
昼食後は徒歩で歩いていける蔵王ハイラインの駐車場に行ってみたところ、案の定駐車待ちの車で渋滞が起きてました。確かに蔵王へマイカーで直接行けるのは便利ですが、これでは駐車できるのは一体いつになるのか…。ロードバイクだと渋滞という概念があんまりないので、観光シーズンでも割と楽に移動できたりします。
ともあれ、蔵王でやりたかったことはこれですべて終了。リフトで駐車場へ降りて次の場所に向かうことに。
蔵王刈田リフト駐車場に降りたのは昼過ぎ。この時間になるとリフトの駐車場もほぼ満車状態になっており、道路を挟んで反対側にある駐車場を使わざるを得なくなってました。リフトに乗って上へと向かう人の列も自分が到着したときとは比べ物にならないくらいに増えていたので、早めに行動しておいて正解だった感。
なんか最初から最後まで適度な人数の状況下で蔵王を見て回れたので、これは個人的に運がいいのではと感じました。なお他のロードバイク乗りについては自分以外に一人を見かけたくらいで、まだこの時期に走る人は多くないっぽいです。
次に蔵王を訪問するとしたら登山目的だろうか?登山以外でも例えば春先ではなく秋口ならまた違う雰囲気の座王を満喫できそう。
蔵王温泉街の散策
蔵王周辺の散策はこれで終わり。ただ往路でヒルクライムをしながら考えた結果、ここから単純に来た道を戻っただけではもったいないという結論になったので寄り道として蔵王温泉へ行ってみることに決めました。例の分岐から県道53号を北へ向かえば蔵王温泉へ行けます。
ここでちょっと予想外なところがあって、県道53号を走っていく中ではヒルクライムが半分ほどありました。なぜか順当に下れば蔵王温泉まで行けると頭の中で勘違いしていたが…。ヒルクライムは往路でもう終わっていると思っていた身としては余計に疲れてしまった。地図上では標高差が見えないのでこういう認識違いを起こすこともある。
その日の走行ルートを決める上で走行距離に加えて獲得標高まで調べるという方もいるのに対して、自分はめんどくさいので走行距離しか調べないようにしてます。仮に予想よりも多少上ることがあったとしてもロスにはなりにくいし、そもそも自分の行程は時間を第一に考えていない。どこを走るのかをざっくりと決めておくくらいで十分。
というわけで蔵王温泉に到着。
蔵王温泉には日帰り温泉はもちろんのこと、宿泊施設やコンビニ、飲食店、土産物屋、ロープウェーなどが揃っています。おそらく蔵王温泉が本格稼働するのは冬季だと思いますが、今の時期でも十分賑わっていると思います。今回はすでに昼食を済ませていることもあり、路地裏散策を中心に温泉街を巡ってみました。今後は宿泊用途で蔵王温泉を訪問することがあるかもしれないな。
温泉街のあちこちで工事をしていたのであっちこっちに迂回しながらの散策。路地裏に入ると道がかなり狭いため車を運転するのが大変そうでした。
その後は県道53号を下って出発地点に無事に戻り、今回のライドは終わりを迎えました。
思い返してみれば山形県側の市街地から標高を上げていくにつれて周りの景色が明確に切り替わり、そして標高を下げていくにつれてそれが元に戻っていく。一つの行程の中で自分がいる環境が如実に変化していく体験は平地だとちょっと難しいし、「景色」に絞って言うとヒルクライムはお得そのものだと思う。
3日間の東北ライドで一緒に走ったアスペロの全体像はこちら。42cまで履けるクリアランスを持ちながら、細いタイヤを履かせればロードバイク並みの機敏さでしっかり走ってくれます。
結果論になるけど、リムブレーキのバイクしか所持していなかった自分が新しく買うバイクとしてアスペロはちょうどよかったと思う。アスペロを本来の用途であるグラベルバイクとしてのみ運用するのあれば、岩や陥没が非常に多い日本のグラベルにおいては少々厳しい面がある(サスペンションがあったほうがいいと思う)。そこで普段は軽快なディスクブレーキバイクとして運用し、たまに軽度なグラベルを走るという使い分けをすることにした。この方針が自分には合っていて、あくまでロード80%・グラベル20%くらいの割合。100%グラベルメインで走るつもりは今後もないと思います。
もちろん軽快なディスクブレーキバイクと本格的なグラベルバイクの2台を用意すれば、好きなタイミングで乗り比べができる。でもお金の問題とか置くスペースの問題とか色々あるし、色んなライドに低予算で対応できるという意味で現時点ではKUALISとアスペロの2台体制がベストかな。
というわけで、長期休暇を活用した東北ライドは無事に事故なく終えることができました。今後も機会を見て東北を走りに行きたいと思います。
おしまい。
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