今回は、高知県室戸岬にある岬観光ホテルに泊まってきました。
「ホテル」と名がつく通り基本的な骨子には洋風さが押し出されていて、自分がいつも泊まっているような旅館とはまた異なった雰囲気があるものでした。ただ完全に洋風というわけでもなく、和風と洋風が見事に混ざりあった和洋折衷さが岬観光ホテルの特徴だと思います。
岬観光ホテルは昭和9年(1933年)に資産家の別荘として建てられ、後にホテルとなり増改築を繰り返して今に至ります。戦後の昭和39年(1964年)には海側に新たに新館が建てられ、その貴重さから2018年には本館・新館ともに国の登録有形文化財に指定されました。つまり、今回泊まったのは登録有形文化財の建物ということになります。これはテンション上がってくる。
建てられた時期的には室戸岬の観光開発の黎明期に該当するので、時代の流れの一部でこのような建築様式が流行っていたのかもしれません。
鄙びた宿の中ではその立地が特に際立っており、すでに述べたように、岬観光ホテルが立っているのは高知県の東南端である室戸岬です。ホテルから岬の先端の海岸まではアコウ林を通ってほんの数分で行くことができ、まさに名前に「岬」を冠するにふさわしい宿と言えるでしょう。
今回の宿泊時はちょうど全国旅行支援が開催中で、普段よりも安い金額で泊まることができました。
外観
まずは外観から。
高知市方面へ眺めが良い岬の西側を通り抜け、岬の東側へ移って数百m進んだところに岬観光ホテルはあります。
まず驚くのは、道を走っていたらいきなり古風な外観のホテルが登場してくること。
過度な凹凸が見られない四角形感がある建物の正面には張り出した玄関ポーチがあり、切妻造の屋根に設けられたお洒落な窓。周囲には南国を思わせる植物がたくさん生えていて、建物の2階部分にはここがどこなのかひと目で理解できる「岬観光ホテル」の大きな看板が見えます。
屋根部分や側面の壁には凝った意匠はなく、シンプルな見た目をしているというのが率直な感想でした。目の前の建物(本館)の前には駐車場があり、車で来ている場合はここに止めることになります。
本館の左手には建物に沿った小道があり、ここを海側に進んでいくと太平洋が一望できる海岸へと向かうことができます。道の途中は新館の前に通じていて、ここからは新館の様子がよく見えました。逆に言うと海側を散策している人からすれば新館は丸見えですが、まあ気になりません。
本館と新館は本当に瓜二つで、特に側面部分は完全に面一になっていることもあって差異が見られませんでした。単純に宿泊者数を増やすために新館を増築したとすれば違いを出す必要はないし、ある意味で当然の結果なのかも。
館内散策
玄関周辺
それでは館内へと入ってチェックインとなります。
今回は徳島県の阿南市から走ってきたこともあって割と限界で、玄関前で放心状態になっていたら玄関から係の方が出てこられて投宿となりました。
まず最初にホテル全体の館内図を示しておくと、上記の通りです。
玄関ホールから廊下正面にある広間、そしてその横にあるトイレ及び浴室までが本館で、そこから短い廊下を挟んで海側にあるのが新館です。共用設備は基本的にすべて本館に集中しており、新館はほぼ客室のみが占めているのが分かります。客室数は本館が5部屋、新館が1階と2階にそれぞれ3部屋ずつの計11部屋となっています。
フロントの奥には居間や配膳室、厨房、物干スペースが別個に存在していて、いずれにしてもホテル運営側の部分、共用部分、そして客室部分が固まっていて理解しやすい構造です。廊下の動線もあっちこっちに分かれているわけではないので、迷うこともありませんでした。
玄関を一歩入った様子がこちらで、見ての通り完全に洋風です。
玄関土間や靴箱こそ旅館と大差ないものの、その先の様子が明らかに異なっている。真っ白な壁に真っ赤な絨毯、そして天井には4つに分かれた明かり。ここだけ切り取ったとしても自分からすればかなり新鮮で、古き良き昭和の空気が漂っているような気がしました。
向かって正面の廊下を進んでいくと食事会場である広間やお風呂、新館へ行くことができ、すぐ右側がフロント(帳場、ではない)で、左側の階段は本館2階へと続いています。玄関正面に階段があるというのも自分が想像している洋風建築の通りで、あとは何といっても色彩が素晴らしい。モダンだけど落ち着いた雰囲気がある。
ロードバイクで訪問する人は案外少なくないらしく、慣れた様子で玄関土間に置くよう促されました。ありがたい限りです。
岬観光ホテルにおいては玄関とその向こう側が明確に区切られており、玄関の天井部分に囲いのような、あるいは門のような線形が通っています。
これのお陰でここから先は屋内ということがはっきりしており、床には絨毯も敷かれていてまるで別の世界に入ったような感覚になる。今日一日の行程を考えると、「やっとくつろげる宿に到着した」という思いがより強くなります。
フロントで一通りの説明を受けた後に、今日泊まることになる部屋へと案内していただきました。自分が泊まるのはここ本館ではなく新館で、この日は新館は半分ほど、本館はほとんどの部屋が埋まっていたようです。
玄関ホールは階段が面していることを踏まえても天井がかなり高く、屋内の閉塞感を感じさせない快適さがあります。壁や天井の色は白色で統一されており、天井付近に意匠が少ないことからも簡素な印象を受けますが、その分のびのびとした気持ちになれました。
さっき色彩のことを書いたけど、目線より上にある白色と、目線より下にある赤色の対比がまた美しいです。自分がこれから歩くことになる動線がしっかりと示されているので、うまく言葉にはしづらいんですがメリハリがあるような気がします。
本館2階への階段横にある小部屋や、玄関正面にある廊下左側にある小部屋はかつて女中が寝泊まりしていたところです。広さはそれぞれ6畳あります。
本館建築時点ですでに女中用の部屋として使われていたようですが、本館しかなかった頃はそれほど部屋数は多くないのでこれは不思議に思いました。もしかしたら当時の宿は宿泊者数に関わらず、女中部屋があるのが一般的だったのかもしれない。
これらの小部屋のドア周辺の造りは当時のままで、ドアノブの光沢や鍵穴のデカさもずっと現代まで保たれてきたものです。自分は今まで入場料を払って見学するタイプの歴史的建造物でしかこういうのは見たことがなく、それと同じくらいに貴重な宿にいま自分も宿泊している、という事実が嬉しく感じました。
本館1階
正面の廊下を進んでいくと、本館1階の奥へと続いています。
廊下の突き当りに位置するのが大きな広間で、夕食・朝食ともにここでいただく形になります。
この記事の冒頭で書いた「和洋折衷」はまさにこの一角にあって、さっきまでは完全に洋風だったのが、広間に一歩足を踏み入れたら途端に和風に切り替わっています。正確に言うと広間に通じるドアまでは洋風建築で、その内側の広間は畳を敷き詰めた和風建築。ちゃんと床の間まで設けられているけど、初めて訪れたときには二度見してしまった。
このギャップが結構珍しくて、ある種のちぐはぐ感のある構造なのが個人的に好きです。時代が時代なだけに洋風感を出した建築にしたいんだけど、日本人ならではの和風建築も捨てがたい…という思考で一緒に詰め込んだ感じ。だがそれがいい。
廊下の突き当りを右へ進むとトイレや風呂場が集まっている分岐があり、ここの廊下の幅はまちまちでした。
また、この分岐からはフロントの裏側や、別の階段を上がって本館2階へと行くことができます。
分岐を新館方向へ進んでいくと広間への別の入り口があって、新館に泊まっている場合はこちらから出入りすることになります。広間に出入り口が2箇所あるのは大変便利でした。
この入口の前には広間の壁と面一の部分に段差があるため、どうやらここが本館と新館との境界になっているようです。
本館2階~3階
玄関周辺を見て回ったところで、次は階段を上がって2階へ進んでみます。
階段部分は天井が高く、踊り場の窓も手入れがしづらそうな高いところにあります。
驚いたのは階段の手摺の形状で、踏み板と平行に斜めに取り付けられている一般的な形状ではなく、一定の高さで段組みになっているという点。係の方に伺ったところこの辺りの昔の建物ではよく見られる形式だそうですが、洋風の建物ではこれが普通なんでしょうか。
階段を上っている人間からすれば手摺が常に地面と平行になっているわけで、実際に手摺を持ってみるとその安定感の高さにびっくりしました。斜めだと荷重の方向が斜面に沿うことになるためうまく力をかけることができないので、この形はよく考えられていると思います。
階段を上がった先は三叉路になっていて、右へ進めばホテル正面側の客室へ、左へ進めば新館側の客室へと行くことができます。
階段の正面には別の細い階段があって、ここを下ればフロントの裏側へ続く廊下へ行くことができます。特に意識していなかったけど、宿泊客用というよりは旅館側のための階段のようです。
本館の客室の一例はこんな感じです。翌日のチェックアウト後に無理を言って、中を拝見させていただきました。
あくまで一例ですが、書院に床の間、広縁などがあって完全に和室の構造をしているのが分かります。こちらの客室の広さは10畳ありました。
広縁の窓のすぐ向こう側は海岸沿いの絶景…ではなく新館の建物が目の前にあり、これは新館の建築と同時に展望が失われたことを意味しています。ただし夏の時期は日の出の位置が少し左側(北方向)にずれるので、この部屋はその時期限定で、最も日の出が見やすい部屋に変わるとのことでした。
てっきり海岸に面している新館が展望では常に優れていると思っていましたが、一年中という話ではないようです。
こちらの客室は広縁ではない方の窓が南側に面しており、すぐそこに広い屋根があるので布団を干すのに適しているそうです。昨日もここで干していたとのこと。
ここまで館内を散策してきたところで改めて理解できたこととして、岬観光ホテルは客室以外は洋風な面が強く、客室へ入ると和風な面が強い造りになっています。宿での滞在中は客室にいることが多いことを踏まえると、寝泊まりするところは和風がいいけど、それ以外の部分ではちょっと異なった雰囲気を感じたい…という場合にぴったりな感じ。
特に玄関周辺は「ホテル」という言葉がふさわしい構造なので、そのギャップを楽しむのが面白いと思います。
2階廊下を南へ向かうと洗面所やトイレがあり、本館に宿泊している場合はここを使うことになります。
普通に宿泊する場合に使用することになる設備は以上で終了なのですが、気になるのは廊下の途中にあった小さな階段。客室は2階までしか存在しないはずなので、この上はもしや屋根裏部屋なのだろうか。
そんな風に疑問に思ったまま翌日になり、係の方にお話を伺ったところ、なんと案内していただけることになりました。本当にありがとうございます。
案内していただいた先にあったのは、本館3階に位置している屋根裏部屋でした。この部屋も玄関横の小部屋と同じく女中部屋として活用されていたとのことで、往時はここで寝泊まりをしてホテルの仕事をこなしていたようです。
他の旅館でも女中部屋そのものは存在していたものの、そのほとんどは厨房などにアクセスしやすい1階にあります。この岬観光ホテルでもすでに玄関横などにあったし、これ以上はもう無いと思ってました。まさか3階にも同じ用途の部屋があったなんて誰が予想できただろうか。
屋根裏部屋は天井がかなり低く、天井部分の角がまるで面取りしているように斜めになっているのが分かります。さらに畳や襖戸もここにしかないような特注サイズで、一般的なサイズよりもかなり小さめでした。この大きさの畳や襖を作っているところはたぶんもう無さそう。
もう一つの屋根裏部屋からは、なんと屋根裏そのものに入れるようになっています。本館屋根の木材の骨組みが丸見えになっていて、屋根部分の荷重を受け持っている部分が非常に分かりやすい。
なんでこんな扉を作ったのかというと、おそらく台風の影響が多大な室戸岬に立っている建物なので、もしもの時に早期に復旧できるようにこのような補修用の通路を設けているんだろうと思います。
しかし、別にめちゃくちゃ狭いとこを通っていくような特殊なアクセスを必要とするわけではなく、あくまで部屋の戸を開けたらすぐにこれだから凄いですね。今現在も屋根裏部屋に入れるというだけでも建物としての保ちの良さが窺えるのに加え、ちゃんと布団置き場や倉庫として活用されているのにも驚きました。
古い建物って結構「開かずの間」化している部屋が多くて、もちろん手入れなんてされていないのが一般的。それはとてももったいないと思ってしまうけど、ここではそうではない。歴史ある建造物を維持していくのに注力されているのが理解できました。
新館
本館の次は、今回泊まることになる新館へ。
新館へ入ってすぐ左側に2階への階段があり、階段前の廊下に客室への入り口が並んでいます。この廊下の奥には洗面所が備えられていますが、後述するように新館の客室にはそれぞれ洗面所があるため、ここをわざわざ使う機会は少ないかもしれません。
2階についても1階と構造はほとんど同じで、廊下と客室との位置関係は変わりません。新館そのものが客室しかない建物なこともあり、構造は限りなく簡素化されています。
と思っていたら新館入って右側に男湯があって、今回はここを利用しました。本館のフロントへ続く廊下の前には女湯があったため、宿泊人数によらずお風呂は別々になっているようです。
浴室の様子は見ての通り全体的にタイル貼りになっており、湯船についても同様でした。古びたタイルの感触が身体にフィットして気持ちが良く、なんか昔の建物=タイル張りの風呂、というイメージのままのお風呂で安心。温度も熱めで疲労回復には最適です。
旅館によってはお風呂は男性/女性の別もなく貸切形式、湯船も小さいというところもある中で、比較的大きい湯船でゆっくりとくつろげたのは個人的に嬉しい。お風呂って意外にも宿泊先の快適さに直結する部分なので、広さを十分にとってあるのはよく考えられているなと。
泊まった部屋
今回泊まったのは、そんな新館の1階中央に位置する「葵」の部屋です。
この日は運良く両隣の部屋に宿泊客がいなかったので比較的静かに過ごせましたが、なにぶん古い建物なので壁や天井はかなり薄めです(チェックイン時に念を押された)。真上の部屋に泊まっている人の足音が結構響いてきたので、そういうのが気になる場合は本館に泊まるか、電話で新館2階に泊まれないか交渉してみるのがいいかも。
廊下の戸を開けるとまず最初に2畳の踏込があり、ここには布団用の押入れとトイレがあります。
トイレ内部も別に古いというわけではなく新しめで、この年代の旅館…じゃなかったホテルにしてはとても珍しい造り。宿泊前は洗面所やトイレは完全に共同だと思っていたのですが、その両方とも各客室に存在しているということでかなりびっくりしました。
後述する洗面所については後付け感があるのに対して、扉周辺の古さなどからトイレが建築当時からここにあったのは間違いないようです。そういえば岬観光ホテルの本館は当初別荘として建てられたのに対して、新館は別荘からホテルに切り替わった後に建てられたもの。宿泊客向けの部屋という設計ならこのような近代的な配置になっているのは納得ができます。先見の明がありますね。
こちらが客室の様子で、広さは6畳で広縁付き。
設備としてはテレビ、エアコン、ポットがあり、アメニティには浴衣と歯ブラシがあるので、特に何も準備しなくても快適に過ごすことができると思います。
壁や天井は建築当時から大きくは変わっておらず、特に服を入れておくスペース周辺の経年劣化感が好きになりました。あと6畳という広さ以上に奥行きを感じるのは広縁の存在が大きくて、広縁自体の幅がそこそこあるため部屋を広々と使用することができます。
客室と広縁は障子戸で仕切られていて、広縁の外側はガラス戸で見通しが良いです。広縁そのものも比較的広く、左端には洗面所が、右端には冷蔵庫がそれぞれありました。冷蔵庫の中には瓶ビールや日本酒がよく冷えており、飲んだらチェックアウト時に精算される形です。
旅館の中で好きな場所は数多く存在する中で、やはり広縁を好きな人は多いと思う。何よりも多くの時間を過ごすことになる客室の中にあるので気兼ねなく利用できるほか、風呂上がりにくつろぐもよし、朝起きて日の出を見るときに座るもよしの万能感がその理由の一つ。
特に目的がなくても自然とここに座りたくなってくるから不思議だ。
岬観光ホテルの売りの一つに「太平洋に上る朝日が見える」という点があって、客室からは普通に海が見えます。2階からだともっとよく見えそうですが、1階からだとこんな感じで少し見える程度でした。
ただ、ホテルの外側には人が歩けるように遊歩道が整備されているので海へのアクセスは容易です。客室から寝起きざまに日の出を眺めるのではなく、せっかくだから外へ歩きに出かけてそこで陽光を浴びたいという場合には、泊まるのが1階でも2階でも大差はないです。
夕食~翌朝
お風呂に入って身体がぐったりしてしまい、部屋で横になって寝ていたら夕食の時間になったので広間へ向かいました。
夕食の献立はこちらの通りで、室戸岬という海がすぐそこにある素晴らしい立地、そして前提として「高知県の宿」という観点から、夕食の内容は自然と海鮮が中心です。
ざっと挙げてみると、ビンチョウマグロとカンパチのお造り、煮物、煮魚、豚肉の蒸し焼き、りゅうきゅうの酢の物、魚のすり身の天ぷら、そしてカツオのたたきなど。どれも満足のいく美味しさで、ホテルの古い雰囲気も相まって良い時間を過ごすことができました。
食事の際に注文できるメニューも幅広く、飲み物に関しては地酒や酎ハイ、ウイスキー、ワインなど一通り揃っています。しかも珍しく一品料理も複数取り揃えていて、今回はせっかくなのでうつぼの唐揚げを追加注文してみました。
そういえば、前回の高知ライドのときにはウツボのたたきを堪能したな。高知県はカツオのたたきが有名だけど、実はうつぼも有名なんです。
やばい、どれもこれもが美味しすぎて酒の進みが早い。
夕食に海鮮が多いのはもちろん予想していたものの、お造りだけではなく煮る、揚げるなど様々な形で高知の幸を味わえるのが嬉しいですね。バリエーションに富んでいるので料理にメリハリがあるし、日本酒が有名な高知県なだけあって一品一品が抜群に酒に合う。個人的には、高知県を旅しているのならぜひ日本酒を味わってみてほしいと思います。
最後はご飯にお吸い物、そして〆のデザートをいただいて完全な満腹状態。日中の疲れがどこに行ったのやらレベルで霧散してしまった。
夕食後は部屋に戻り、広縁に座ってのんびりしながら時間が経つのを味わっていました。布団については夕食のタイミングで敷いてくれるので、食後にすぐ寝ることももちろん可能です。
うとうとしていたら完全に眠くなってしまったので、そのまま布団に潜り込んで就寝。明日の朝は日の出を見たいので、いつもよりかなり早めの時間に目覚ましタイマーをセットしておきました。
で、翌朝。
無事に時間通りに起きることができたので、そっと玄関から外へ出かけて海岸へ。昨日と同じく波の音だけが響いてくる海岸に、音もなく今日の太陽が顔を覗かせてくる。日本で一番早い日の出…というわけではないけど、室戸岬という最果ての突端で迎える朝は普段より何倍も格別なものでした。
思えば、旅の目的地が「岬」という日本の端っこの方を目指す行程にしたのがまず正解だった。
誰もが好き好んでそんなところへは訪れないし、室戸岬には近くに電車の駅なんてないからアクセスもちょっと大変。そういう意味でも日常とは異なった特別感がある場所で、このように快適に一泊できるのが嬉しいです。
全身に思う存分日の出のパワーを浴びた後は、部屋に戻って二度寝をしてました。
これほど力強い太陽の明るさを感じながら布団に潜り込んだのは、もしかしたら初めての経験かもしれない。それほどまでに室戸岬の朝日は元気が出るものでした。
その後は二度寝から目覚めて広間へ向かい、朝食をいただく。
朝食は現在進行系で焼いているカボスを中心に、夕食に引き続いて胃に優しいものばかり。焼き立てのカボスが白米に絶妙にマッチしており、素朴ながらも食が進む内容です。案の定、ご飯が一杯だけでは足りなかったのでおかわりをしました。
そんなこんなで、岬観光ホテルでの一夜は静かに終了。
この後は次の目的地へ向けてロードバイクを走らせました。
おわりに
岬観光ホテルはその歴史ある建物や美味しい食事に加え、「室戸岬がすぐそこ」という素敵すぎる立地が最大の特徴である宿です。
四国を代表する風光明媚なスポットが目の前にあるということは、もちろん周りに余計なものは一切ない。日常の喧騒もストレスの要因からもかけ離れた場所にあって、聞こえてくるのは波の音だけ。最果ての地で色んなことを忘れて過ごすにはもってこいのところだし、自分も精神をリフレッシュする目的で今回泊まりました。
同じ日に泊まられていたご夫婦はここを拠点に何泊かして周りを散策されていたようで、非日常感を味わうには良いところです。登録有形文化財の宿で海鮮をいただきつつ、ちょっと波風に当たりたくなったら付近を歩いてみる。そういった「時間を忘れられる体験」が可能なのが、この岬観光ホテルだと感じました。おすすめです。
おしまい。
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