「海を見に行きたい」
ここ最近はずっと岐阜県内の山間部を走っていた影響で、ヒルクライムのような坂道や道の左右が木々で覆われてるようなところばかりポタってきました。もちろん岐阜県内は全域がそういうところなので、自然を感じるという意味では最適な環境だと思います。
しかし、ただでさえ海なし県に住んでいる上に自粛で県外に出れないとなれば、海沿いポタがしたいという思いが俄然強くなるのは当然のこと。なのでちょっと海を眺めに行くことにしました。
京都の海沿いを走る
今回の舞台は"海の京都"こと舞鶴市です。
京都府といえば言うまでもなく京都駅周辺の神社仏閣などが有名で、少し前までは外国人観光客がめちゃくちゃ多かったりで、確かに雰囲気はすごく好きなんですけど自分はなかなか行きづらい感じでした。まあ人混みの多いところが苦手なので仕方ない。
ですが、京都の魅力はもちろんそこだけに留まるものではない。
京都府の日本海側に目を向けてみれば舞鶴市や宮津市、それに京丹後市など、海沿いを走ったら楽しそうな道が地図上で見ただけでも確認できます。そこで視点を変えて、京都の日本海側の舞鶴市に注目したのが今回のポタのきっかけです。
長距離運転からの車中泊、その後のライドなので結構疲労が溜まっている。
でも、こんな快晴な中を走れたのだから多少の無理をしてでも移動してよかったなと思います。景色が良ければすべて帳消しにできるのが旅行のいいところ。
まず訪れたのは、舞鶴西港にほど近い吉原入江という場所。
舞鶴西港に流れ込む伊佐津川河口付近では、このように川と漁船の長閑な景色が楽しめます。
すぐそこは海なのにも関わらず一切の波はなく、まるで鏡のような水面が美しい静かな場所。
水辺に建ち並ぶ家々と漁船の組み合わせがさらに静けさを醸し出しています。誇張でなく波音も含めて一切の物音がしないのがとにかく不思議でした。
この辺りは家々が密集しており、そんな中に突如として入江が出現する光景は驚きの一言です。漁船と一体となった生活が根付いている様が伺えます。
そんな吉原入江から海沿いに走る県道565号の眺めもまた風情のあるもの。
単に東方面へ向かう場合は国道27号を通ればいいものの、ちょっと一本海沿いに道を入るだけで静かな道を走ることができます。単に海沿いを走りたいという理由でこの道を見つけたわけだけど、ここまで道そのものが自分の意図に沿ってくれると笑顔になってしまう。
しばらく進むと海上自衛隊の舞鶴航空基地や造船所を経て舞鶴の中心部へと繋がります。ここらへんは後でゆっくりと散策するとして、まずは折り返し地点まで進むことにしました。
海上自衛隊舞鶴教育隊の施設を過ぎて、県道21号(舞鶴野原港高浜線)を北上していきます。写真に写っているのは舞鶴クレインブリッジという橋で、橋の上からは朝もやに包まれる舞鶴東港がよく見渡せました。
この静寂感ほんと好き。
ここまで静かな風景が楽しめるとは思ってなかっただけに、ペダルを踏む力も自然と緩まります。思うにネットなどで明確に「観光名所」と位置づけられた場所も確かに見どころではあるんですが、こういう名もなき道を走るのも乙なもの。何より人が少ないので自分の世界に浸ることがしやすいし、色んな考え事をするには最適。
別に旅先でそんなことする必要ないでしょ、という意見も確かにある。考え事だったら家ですればいいじゃんって感じもあるけど、静かな風景を眺めながらの方が心が落ち着いて物事に集中しやすかったりする。
道端に自転車を停めて写真を撮ったりとか今後の行程のこととか、そういえば今晩の夕食はどこでとろうかとか。そんなゆっくりとした時間の流れを味わうのにはぴったりの道でした。
海面と道との高低差もほとんどなく、海のすぐそばを風に吹かれながら流していく。
波の音や釣り人、たまに海鳥の鳴き声を五感で感じながら走っていくのが何より楽しいです。こういうのはネットで現地の写真を見るだけでは決して味わえないような体験だし、現地の音とか気温とかも含めて体験できるのが旅のいいところ。
ここからは海沿いを離れて東へ向かいます。
山間部とまではいかない平野部を走って舞鶴高専の前を通り過ぎ、たどり着いたのはここ。
木造駅舎が特徴の松尾寺駅です。
交通量がめっちゃ多い国道27号から北へ一本入ったところにあるこの駅、田園風景の中にあって昔の「田舎の駅」の雰囲気を漂わせている場所です。
無人駅だということもあるけど、駅舎の様子などをみても昔から大切に使われていることが見て取れます。
例えば8月とかにこの駅で輪行解除して舞鶴方面に走り始める、という形だとこれ以上ないくらい"夏"を感じられること間違いなし。それくらいいつまでも佇んでいたくなるくらい、いい空気感がある駅でした。
なんて言ったって、列車を降りて階段を下った先で目に入ってくる景色がこれ。
まだ6月なのにも関わらず快晴の天気と若干の湿気が相まって、さながらもう夏が到来したかのよう。
舞鶴中心部へ
そんな駅舎をあとにして、行きのときに後回しにした舞鶴中心部へと向かいます。
舞鶴といえば、言わずとしれた軍港です。
旧日本海軍の舞鶴鎮守府や舞鶴海軍工廠が置かれていたことでも有名で、今でもその名残で海上自衛隊舞鶴地方隊(北吸係留所)やジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所(艦船修理事業してるとこ)があります。
現に、ちょっと見渡しただけでも補給艦や掃海艇が見えました。
そんな海軍時代の遺構を遺しているのがこの舞鶴赤れんがパーク。
ここ北吸地区周辺には、旧海軍舞鶴鎮守府時代(明治期から大正期)にかけて建設された赤れんが建造物が数多く残っています。この赤れんが倉庫群は全12棟のうち8棟が国の重要文化財に指定されています。
もともとは兵器廠倉庫や魚形水雷庫として使われていたこの赤レンガ倉庫、今では博物館や記念館、イベントホールなどとして有効活用されています。※自転車については乗ったままの入場はできませんが、押して歩くのは問題ないようでした。
外観に関してはほとんど手付かずのようで、これほどのものは全国的に見て大変貴重とのこと。
赤レンガの何が素敵かって、この無骨さ。
「海軍」の名を象徴するような堅苦しさを感じさせつつ、どことなくノスタルジー感もある。歴史が刻まれたスポットであることが既に前情報として頭に入っていることもあるけど、海沿いの青と緑の風景の中にこの赤茶色の建物がじんわりと馴染んでいる様子がとてつもなく美しいと感じます。
こんな風景が目の前にあると、やはり歴史を感じずにはいられません。
この日も昨日に引き続いてそこそこ暑かったのでここで休憩しました。
赤レンガ倉庫内の売店で購入したサイダーが本当に美味い。ゆずが入っていて暑さが和らぎます。
売店には海軍カレーをはじめとしたおみやげもたくさん販売されていて、何も知らずにここに来たとしても海軍に関連したところということが一発でわかる。売られているカレーの種類が本当に多いです。
ビーフカレーなのに豚が書いてあったりするパッケージもあって謎が深まる。
最後は、赤レンガパークから南へ少し向かったところにある北吸トンネルにやってきました。
この北吸トンネルを含めた一帯は、戦時中までは武器等を運ぶトロッコ列車(国鉄中舞鶴線)の線路として使われていたようです。今では遊歩道として整備されており、地域住民の憩いの道になっている様子。
特にこの北吸トンネルは1904年に建てられたもので、その古めかしさから当時の雰囲気が伝わってくるようです。廃線跡がこんな風に活用されているのは驚きました。
この明暗の差がもう最高すぎる。
トンネル内はレトロな照明が灯されており、トンネル外との光量の違いがなんともいえずたまらない。こういう風に当時の面影が街の一角に遺されてるってなんか良いと思う。今の舞鶴と当時の舞鶴、その2つが溶け合うように融合してる感じがして。
ロードバイク用のライトを点けていても暗いと感じるくらいには雰囲気あります。中はひんやりとしていて涼しく、トンネルを駆け抜けていく風もどこか心地いい。
舞鶴っていいところだな…。
舞鶴の夜
この日はせっかくので一泊し、夜は現地の海産物を肴にして一杯やりました。
などなど。
海に近いこともあって海の幸がとにかく美味しく、特に鯖へしこ(塩を振って塩漬けにし、さらに糠漬けにしてある)の味が濃くて日本酒が進んでしまって仕方なかった。
現地の日本酒も最高に美味しかったので帰りに四合瓶で買ってしまったし、お店の方との会話も弾んだりしてこれ以上無いくらい楽しい飲酒ができました。
最近はコロナの影響で対面で誰かと話しながら飲むこともできなかったし、もうほんと楽しかった。
おわりに
京都の海沿いは初めて訪れて、早速その魅力に気づいてしまった場所の一つ。
アップダウンも皆無なので景色そのものに集中できるし、何よりその景色が静けさを感じさせる場所ばかりでした。食べものも美味しいしでほんとに自分好みの町というイメージで、家からも行きやすいので今後も海を見たくなったら訪れると思います。
おしまい。
コメント
コメント一覧 (2件)
綺麗な写真がいっぱいでした!とても見ていて楽しかったです。
風景もいいのですが、あのトンネルの中のレトロな照明…
いい雰囲気ですね!ぜひ生で見てみたいですね
こんにちは
とてもきれいな写真ですね。父親の実家が西舞鶴なので少し懐かしい気持ちになってしまいました... 舞鶴といえばやはり東の方が注目されがちですが、西のマナイ商店街周辺も歩いていて楽しく、引けを取らないくらいの魅力があるので、ぜひ今度訪れてみてください。