【睦沢~長南~市原~養老渓谷~大多喜】ロードバイクで房総半島の素掘りトンネルを巡ってきた Part 1/2

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今回は、ロードバイクで千葉県の房総半島を走ってきました。

半島という地形は走っていく上で通ることになる陸地と海沿いの割合がちょうどよく、かなりお手軽に両方を満喫できるのが特徴の一つです。

そんなに距離を走らなくても海に出会うことができるし、逆にちょっと内陸部へ行けば今度は丘陵部メインの地形が現れてくる。半島といえば海に突き出ている部分なわけで、単に海に面しているのとはまた異なった景色を見ることができるはず。


また、房総半島には機械を使用せずに人力で掘られたトンネル、いわゆる素掘りトンネル(あるいは手掘りトンネル)が非常に多いことが有名です。

その数は名称不明のものも含めると数百にも及び、多くは明治時代や昭和初期に掘られたもの。つまり現代からすると相当な年月が経過しており、今でも通ることができるというのは当時の技術力の高さによるものでしょう。素掘りトンネルが多数存在する理由としては、

  • 房総半島には「房総丘陵」という低くて入り組んだ特有の地形が多く、しかも川が蛇行しまくっているので別の村に行くのがとても大変。
  • 房総丘陵の地質は柔らかい砂岩質のため、人力でも掘りやすい。

などが挙げられます。

今回はそんな素掘りトンネルをメインに訪問していき、同時に房総半島の自然の奥深さに触れるのが目的。房総半島はその広大な面積の割には標高が高い山が少なく、結果的にロードバイクで快適に走ることができました。

というわけで、早速出発。

もくじ

房総半島の丘陵

今回の行程は、大きく2つの行程に分けました。

  • 1日目:睦沢~長南~高滝湖~小湊鐵道沿線~大多喜
  • 2日目:南房総~館山~鋸南~富津

1日目は内陸部100%の丘陵部ルートで、主に小湊鐵道の沿線を走りながらの素掘りトンネル巡り。2日目は打って変わって海沿いのルートを選択し、千葉県の最南端・野島崎を経由して北へと走ってゴールとなります。

1日目と2日目で同じような地形を走るのは性格的に飽きるし、自分としても新鮮な気持ちで一日一日を味わいたい。

なお、2日間の行程で巡ったトンネルは以下のとおりです。

  1. 第二永井隧道(千葉県長南町)
  2. 柿木台第一トンネル(千葉県市原市)
  3. 柿木台第二トンネル(千葉県市原市)
  4. 永昌寺トンネル(千葉県市原市)
  5. 月崎トンネル(千葉県市原市)
  6. 向山・共栄トンネル(千葉県大多喜町)
  7. 林道畑2号線素掘りトンネル(千葉県南房総市)
  8. 真倉の切割 旧道(千葉県館山市)
  9. 島戸倉トンネル(千葉県富津市)
  10. 燈籠坂大師の切通しトンネル(千葉県富津市)

一部には素掘りではないトンネルであったり、そもそもトンネルじゃない切割もあったりするものの、行きたいところは全部巡ることができました。

水田が美しい

1日目である今日は、睦沢町から出発。

ここから高滝湖まで西向きに進路を取り、小湊鐵道の線路にぶち当たったら南下して養老渓谷方面へと向かいます。

走り始めていきなり驚いたのが房総半島の丘陵部の多さで、日本の内陸部あるあるの「山」がここにはありません。もちろん木々が集まっている森はそこかしこにあるんですが、標高差を伴う山はパッと見る限りだと分かりませんでした。山があったとしても低山がほとんどで、広々とした田園風景がここには広がっています。

坂道があったとしても短距離で終わり、ロードバイクで走るのが実にやりやすい。この独特な地形は日本の中では結構珍しくて、獲得標高の割には内陸部をかなり広範囲に、しかも楽に移動できるという印象です。
この地形のおかげで他地域に比べるとやっぱり走りやすいのか、この日はかなりの数のロードバイク乗りに出会いました。

第二永井隧道

走り始めて早々に、最初の素掘りトンネルである第二永井隧道(豊原切通し)に到着。

いきなりだけど、一般的に今まで通ってきたような「トンネル」とは明らかに様相が異なっているのが房総半島の素掘りトンネルです。ここから数々の素掘りトンネルを巡っていく中で、自分の中のトンネル像が一変することは間違いない。実際、自分がそうでした。

第二永井隧道は幅が車一台分しかないほど細いのに対して、その高さは幅の2倍以上はあろうかというレベル。

この高さは房総半島の素掘りトンネルの中では珍しく、中に入ってみると閉塞感は特に感じません。トンネルというよりは切通しのような構造になっています。ぽっかりと空いた巨大な穴を遠目から眺めてみると、なんか向こう側から何かがヌーッと這い出てきそう。

なお、このトンネルは付近の方の生活道路になっているので交通量は多めでした。

高滝湖

その後は県道148号を順当に走っていき、水の張った田んぼをいくつか眺めながら高滝湖方面へ。

前回やったライドではまだ田んぼには水がなかったけど、季節はもう春。田植えのシーズンに向けて準備が着々と進められているようです。こういう形で季節の移り変わりを感じられるのが好き。

高滝湖は、これから向かうことになる養老渓谷から続いてきた養老川がいきつく先で、方向としては川の上流側に向けて走っていくことになりました。房総半島には細い川が蛇行を繰り返しながら通っており、内陸部においてこれほど水量が多い場所はそう多くないです。

全然関係ないけど、岐阜県民としては養老というとまず養老町を連想してしまう。なので養老渓谷と聞いて、最初はずっと岐阜県にあると思ってました。

春といえば、菜の花の季節です。

今回の行程ではあちこちで菜の花が咲いている様子を見ることができて、その鮮やかさに目を奪われることが少なくなかったです。綺麗な花というだけで立ち止まるには十分すぎる上に、この日は快晴の青空。

自然界から色彩が軒並み失われる冬は終わり、春になると止まった時が動き出すようにカラフルな景色が生まれていく。自分にとって嬉しいシチュエーションがダブルでやってきて、こういう何気ない風景が良い。

月崎駅周辺のトンネル群

高滝湖を過ぎると小湊鐵道の路線に遭遇して、ここからは南へ向かいます。

鉄道の沿線には素掘りトンネルが多く存在しているのですが、駅が近いとなると公共交通機関での訪問も比較的楽になる。房総半島の真ん中あたりを路線が突っ切っているので、沿線を観光しながらの電車旅というのもいいかもしれない。

小湊鐵道の線路沿いにただ流していくだけでも十分に陽気を感じられるけど、今回のメインイベントは素掘りトンネル巡り。里見駅、それから飯給駅の付近から県道ではなく人の気配がない脇道へと移り、少しジメッとした森の中へと分け入っていく。

そもそもトンネルは、山越えが必要であったり道が悪かったり、見通しが悪いところを整備することで安全に走行するためのもの。なので、見通しのよいところにはまず存在してません。
ましてや房総半島の素掘りトンネルは多くが100年以上前につくられたものであって、現代の道沿いの影に隠れるようにひっそりと佇んでいるのが特徴です。

言い換えればこれは探検のようでもあるし、走りやすい県道や国道とは真逆のロケーションを楽しむことができる。雰囲気の違いにおいてはその落差がとても大きく、新鮮味がありました。

柿木台第一トンネル
将棋の駒のような断面
柿木台第一トンネルの反対側

通る人がまずいないような森の中の道の先に、柿木台第一トンネルはありました。

柿木台第一トンネルを始めとして、素掘りトンネルは周囲の地形との一体感が如実に感じられる。
一般的なトンネルはその内部はもちろんのこと、入口付近も施工されているので人工感が強いもの。山や丘という自然の中に人工物があるのは誰の目から見ても明らかで、その存在感は建造物ならではだと思います。

翻って素掘りトンネルはというと、トンネル入口前の壁の延長線上に穴が空いている。そこに明確な境界はなく、強いて言うなら壁に生えている植物や苔が、トンネル内部にはないことくらい。

なので、全体を見渡したときに景観としての途切れがない。視界の端から端まで自然の風景が途切れることなく続いていて、それがある種の一体感を生んでいる。素掘りトンネルの魅力の一つは、たぶんここにあると思う。


柿木台第一トンネルの特徴は、将棋の駒のような角張った五角形の断面形状にあります。これは観音掘りと呼ばれる日本古来の掘り方で、このような形にすることで上部からの圧力を左右に分散させているようです。

地層的にトンネル自体は掘りやすい一方で、それはつまり崩落しやすいということ。その場所の地形に合わせたトンネル方式を考案している点が凄いと感じました。

柿木台第二トンネル

「第一」の先には「第二」があって、柿木台第二トンネルの様子はこんな感じです。

第一との違いは2点あり、1つめは断面が五角形ではなく丸形になっている点。2つめは手前側の壁から穴までが滑らかな曲線で繋がっているという点で、角張ったところがないのでより美しく感じました。

それにしても、車がなんとか通れそうなくらいの大きさになっているけど、これは昔からこの大きさだったとは考えにくいです(昔は車がないので)。後から内部を拡張したということかな。

いずれにしても、第一と第一で明確に違いがあるのは面白い。

永昌寺トンネル

そのまま道を進んでいくと浦白川のドンドン(有名な川廻し隧道)を経て、県道172号に繋がる箇所に永昌寺トンネルがあります。

永昌寺トンネルは片方がコンクリートで補強されていますが、県道側は素掘りのままです。断面は第一と同じく五角形で、つまり同じ道なのに五角形→丸形→五角形と連続していてバリエーションがある。

狭い範囲にこれだけトンネルが集まっていることも驚きである上に、一つとして同じものがないというのが素敵すぎる。自然の地形を最大限に活用して掘られているので、壁の幅とか付近の木々の生え方とかも全部異なっている。人によってお気に入りのトンネルはかなり分かれそうです。


生活道路として今でも使用されており、しかも連続しているトンネルもまたいいものだけど、逆に一箇所のみポツンとあるトンネルもまた素敵なもの。

これらの3つのトンネルの近くにある月崎トンネルはまさにそんな特徴があって、林道月崎1号線の突き当りへと向かう道中にあります。林道、しかもトンネルを抜けた先は行き止まりになっているので、月崎トンネルを訪れる人以外の姿は道中にありません。

林道月崎1号線
月崎トンネル

こちらがその月崎トンネル。

入り口こそ普通の素掘りトンネルに思えるものの、少し中に入ってみると明らかに様相がおかしいことに気がつく。なんと中央付近の天井がそっくりそのままなくなっており、トンネルの中から林を見上げるような格好になっていました。

これは天井が落盤した影響でこのような形になっていて、元々は1つのトンネルだったのが2つに分かれている。落盤した部分の左右の壁は元のトンネルそのままだけど、なんか切通しのような圧迫感があります。

月崎トンネル周辺は日が当たりにくい環境なようで、水気を含んだ植物がトンネル周辺にあるのは雰囲気があっていいですね。トンネルの入り口付近の壁には苔が結構生えていて、これも自然の地形を用いた素掘りトンネルならではのものです。

この穴の部分から、林の木々を見上げた風景はこんな感じ。

自分はトンネルの中にいたはずなのに、気がついたら明るい林の中にいる。このギャップがたまらない。

反対側

トンネルって、その外の部分と中の部分とで明暗の差が大きくて、中に入ると遠くに見える出口にしか目がいかなくなることが多いと思います。

でも月崎トンネルには、入口と出口の間に吹き抜けのような巨大な穴が存在している。

これによって結果的に明暗の差がかなり和らげられており、暗さ100%ではない適度な自然光が目に入ってくる。穴から見える頭上の景色も含めて、月崎トンネルには他の素掘りトンネルにはない強烈な個性を感じました。


あとちょっと話が逸れるけど、今回の素掘りトンネル探検をこの時期に行ったのはとても良かったと思っています。

なぜかというと素掘りトンネルは森や林の中にあることが多くて、気温が高くなる時期だと虫やらなんやらでゆっくりできそうにない。今回はそういった邪魔をする存在が皆無で、物音が全くしない中で静かな雰囲気を味わうことができました。

ここから先は菜の花を見ながら県道32号を南下していき、途中で県道81号へと右折して養老渓谷方面へ。このあたりは観光施設や宿が多くて、田園地帯から観光地へと移った感がある。

観光客で賑わう観音橋を通り過ぎ、少し離れたところにこれまた個性的なトンネル、向山・共栄トンネルはあります。

向山トンネル
西側は共栄トンネルで、そのまま養老渓谷にも行ける

向山・共栄トンネルは、県道側(東側)から見ると普通の入口のように見えます。しかし中に入ると、なんか窓のような部分が向こうの出口のさらに上に存在しているのが見えました。

つまり入口と出口が対になっている一般的なものではなく、「二階建てトンネル」になっているのがここの特徴です。所見ではなんともないように見せ、中に入って初めて目を疑うような光景が待っている。このワンテンポがなんか好き。

元々は上部の窓の部分が西側の出口だったのが、後になって利便性のために掘り直しが行われ、下の位置に新しい出口が造られたことによるものです。新しい出口の方は天井や壁に補強がしてあるのに対し、古い出口の方は素掘りそのままという差異が目立っていました。

ちなみにこのトンネル、東側から入ると「向山トンネル」、西側から入ると「共栄トンネル」という名称になっているため、一つのトンネルに2つの名を持っています。

後からトンネルを増設したために出口だけでなく断面形状も二段になっているし、トンネル内の照明によって壁や天井がわずかに照らされている。とてつもなく幻想的だ。

これは写真映えするということで人気スポットになっていると聞いていたものの、自分が訪問したタイミングでは人の姿はなし。おかげでゆっくり見学できたので、これは散策するにあたって運が良かった。

小湊鐵道の沿線をゆく

初日の素掘りトンネル巡りは以上で終了し、後は沿線を走って大多喜町の中心部へ。

開けていて比較的走りやすい房総半島の地形と、逆にある種の閉塞感を感じさせる素掘りトンネルの訪問。今回の訪問においてはこの適度な落差が気分転換としてかなり効いてくれて、いつもやっているような屋外一辺倒なライドとはまた異なった感覚になれました。

以前泊まった大屋旅館

国道465号を走る中では自分の好きな長閑な風景が多く、なんか関東なのに意外感を感じる。

古くから城下町として栄えた大多喜町の中心部も軽く散策し、その中では以前宿泊した大屋旅館の前を通ったりもしました。旅館の裏手の棟では布団を干されていたりもして、前と同じく元気にやっておられる様子。

この後はライドを継続し、宿へと移動してこの日は終了。

春の訪れを感じさせる温暖な気候が嬉しく、ジャージの下にインナーを着ていたのが途中から完全に不要になるくらい。ロードバイクで走るのなら、やっぱり春の時期が一番適している。

Part 2に続きます。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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