【南房総~野島崎~館山~富津】ロードバイクで房総半島の素掘りトンネルを巡ってきた Part 2/2

もくじ

南房総から千葉県最南端・野島崎へ

むくり。

房総半島で迎える朝。この日は昨日の内陸部からは打って変わり、半島西側の沿岸部を走っていく。

南房総市からのスタートとなりますが、今日は南西からの風がかなり強いということで、それに適した行程としました。あくまで趣味で走っているのだから、わざわざ向かい風の中を走って虚無になる必要はない。

雲が早いスピードで流れていく中、県道187号から交通量が多い国道410号…ではなく、より太平洋に近い海沿いに道を選択して房総半島の先端方面へ。

走り始めていきなり海が目の前に広がり、しかも自分の周りを風が吹き抜けていく。海沿いは地形的に開けているので風の通りがとてもよく、なんというか開放感があります。
昨日に引き続き今日も快晴で、天気がいいと気分もよくなってくる。実に単純な性格だ。

走っていく中では漁港に出会う頻度が多くて、そういえばこのあたりではどういう魚が有名なのか知らなかった。

道の駅 ちくら・潮風王国
南房千倉大橋公園
南房千倉大橋

あえて国道ではない海岸線の道を選んだものの、この道がかなり良かったです。

すぐ左側に常に海が見えているので「半島を訪れている」感がより強く感じられる上に、やっぱり昨日との環境の違いが実感しやすい。交通量はそこそこ多いものの、高低差の全くない道が続くのでとっても快適。

途中にある「南房千倉大橋」はそんな行程の中におけるちょっとした高台ポイントで、太平洋側・内陸側の両方を見渡すことができました。

この日はまず、房総半島の一番南にある岬・野島崎を目指すのが目的となります。ただその前にちょっと寄り道するところがあって、海岸線から山側へと進路をとりました。

方向としては、白浜町を通る房総フラワーラインから九重方面へと抜ける道(房総グリーンライン)のすぐ近く。

ただしその脇道には看板も何もなく、おまけに短距離で一気に標高を上げる完全な山道。安房白浜トンネルのさらに上を通っているのでそこそこの高さにあるほか、落石が多めでした。

ただ、上っていく途中にはカーブミラーやガードレールがちゃんと存在している。この先にある素掘りトンネルを含めたかつての主要道路には、今でも道としての痕跡が残っているようでした。

ちなみに道の周りもまた凄くて、頭上から樹木が倒れかかってくるかのように斜めに密生しています。これはどういう理由によるものなのだろうか?

両側に高くそびえる切通しを抜けた先、ひっそりと佇んでいる林道畑2号線 素掘りトンネルに到着。

さっき話した安房グリーンラインの建設によって、元々の主要道路であったこの林道畑2号線は3号線と分断されました。グリーンラインの南側にはこの2号線の素掘りトンネルが残されているものの、今では訪れる人は少ないようです。

これは国道のような最近の道路と旧道との関係と同じで、人が通らなくなった道は急速に廃道化してしまう。現にちょっと前までは台風による倒木で通行不可になっていたみたいだし、今回問題なく訪問できたのは運がいい。

林道畑2号線 素掘りトンネルの外観は、白浜町側はかなり綺麗に掘られているのが分かりました。両側の壁も平坦だし、上の曲線部分も美しい。

トンネル内部では地層がよく見える

ここでは素掘りトンネルという以外にも房総半島らしさを発見できるところがあって、トンネル内部では地層がよく見えました。

確かに山を削ってトンネルを造っているのだから山の内部、つまり地層が見えるのは自然であるものの、これによって海から誕生した房総のおおよそがなんとなく実感できる。

素掘りトンネルもそうだけど、その土地にしかないようなスポットを訪問するのが好きな自分にとっては、これ以上の感動はない。

反対側
層になっている様子がわかる

トンネルの反対側はこんな感じで、内部と同じく地層が明確に現れています。

トンネルを開通したときからこうなっていたというよりは、掘った後で天井から上の部分が手前側に押し出されてきたように見える。ここまではっきりとしていると地層というよりはなんかのスイーツのように見え、パッと見だと美味しそう…かもしれない。

白浜町の海側とこちらの山側とで、雰囲気が全く違うというのも面白いです。ただ出口付近はぬかるみが凄くて、タイヤや足をとられそうになるくらいでした。ここは悪天候のときは訪問困難になりそうだ。

再び海岸線に戻り、南国っぽい風景が登場してきてからさらに進んでいく。

この辺りは季節にかかわらず温暖な気候なのか、道路脇にはヤシの木が並んでいたりもしました。

野島崎
向こうに野島埼灯台が見える

房総半島の最南端に位置する野島崎に到着。

野島崎は南房総市の南部に突き出した岬であって、半島が次第に先細っていったその先の先端というわけではありません。地図を見ると、太平洋に面した陸地からここだけ突出しているのがよく分かると思います。

一帯は白浜野島崎公園として整備されているほか、南房総国定公園にも含まれている景勝地です。飲食店も多く集まっていて、ツーリングで訪れたバイクがとても多かったという印象。

こういった岬の先端に必ず存在しているのが灯台で、ここ野島崎にも野島埼灯台("崎"ではなく"埼"なことに注意)があります。せっかくなので、平坦な海沿いとは異なる高所からの眺めを見にいきました。

野島埼灯台内部(300円)

野島埼灯台は日本の灯台50選にも選ばれているくらいに景観がよく、しかも国の登録有形文化財にも登録されています。

その歴史は日本最古の洋式灯台である三浦半島の観音埼灯台に続き、国内で2番目に初点灯(1870年)したという古いもの。

太平洋側の眺め
内陸側の眺め

灯台の上からの展望はとてもよく、灯台というその付近で最も高い建物から眺める野島崎の景色は唯一無二の良さがありました。岬そのものが比較的小さいので、灯台の上からだとその全容を把握することもできます。

平坦な海沿いは確かに走りやすい一方で、同じレベルから見る景色はどこかで飽きが来てしまう。でも灯台のように標高が明らかに異なる場所からの景色を挟むことで、行程の中にメリハリが生まれると思います。

短距離で上ったり下ったりするゾーンと、基本的に平坦なんだけど要所要所で高いところからの景観が得られるゾーン。両者にはそれぞれの良いところがあるので、そのときの気分によって常に精神的な新鮮さを取り入れていきたい。

房総半島西部の沿岸風景

房総半島の先端を目指す行程はこれで終わりで、後は風の流れにしたがって南房総市から館山市を経由してさらに北へと帰還していくという流れ。今回の旅ももう終盤戦に入っている。

メインで走っていくのは、半島西部の海岸線を走る国道410号。ただ南房総市から館山市街地に入っていく国道のすぐ近くに魅力的な場所があるということで、(割と時間が押しているけど)寄り道をしました。

私の旅では寄り道がメインなところがあるので、どちらかというと寄り道をしないと始まらない。

真倉の切割

国道410号を内陸部へしばらく進み、館山運動公園の近くで民家にしか繋がっていないような脇道に入ります。その先、完全に森に飲み込まれている道のような何かを100mほど歩いた先にあるのが、真倉の切割(旧道側)と呼ばれる場所でした。

切割(切通し)はこれまでの行程の中でも登場しているように、山や丘を切り開いて設けられた道のことです。

ここ真倉地区では他の場所で素掘りトンネルが発達した背景と同様に、流通の迅速化や簡便化を目的として切割が造られました。現在残っている切割は明治35年(1902年)に掘られたもので、隣に国道ができた昭和16年(1941年)に廃道化しています。


その場所にトンネルを造るか、切割を造るかはシチュエーションによると思うけど、真倉の切割はとんでもなく深い

山に対して垂直方向に包丁を入れたかのように両サイドはスパッと切れ落ちており、高さもさることながら幅もかなりあります。昔の車だったら離合すらできそうなほどで、これは造られた当時は重宝したはず。

層状になった壁には草木が生い茂り、ところどころからは水が染み出している様子が見える。

切割の真ん中や頭上には倒木が目立ち、この場所一帯が忘れ去られているみたいな空気感。民家の前からはしばらく藪が続いて、切割に到着した途端に視界が開けるという立地。

当初は自分が古代遺跡にでも迷い込んだように錯覚になってしまって、驚いたのは言うまでもない。周囲の樹林帯の景観を含めて、ここは個人的に必見に値すると思います。

いつかの未来で人類が全員いなくなったとしても、ここだけはずっとずっと残っていきそうなほどに静まり返っている。不思議な感覚に襲われながら真倉の切割を後にしました。

ちなみに後から造られたという国道側の切割はこんな感じで、その巨大さはさっき見た明治時代のものを凌いでいます。

幅は明治時代のものの2倍くらいはあり、高さに至っては一番上を視認するのが困難になるレベル。これヤバくないか??明らかに切割の範疇を超えているんだが。

お腹いっぱいに切割を堪能したところで、房総半島における山と丘の複雑さを改めて理解できたような気がします。よほど面倒な地形じゃないとここまでのものにはならないし、房総半島の道は奥が深すぎる。

原岡桟橋(岡本桟橋)

その後は館山市街を通り過ぎ、内房線の路線とほぼ並行しながら南房総市、鋸南町を経由して富津市へイン。

ここまで走ってきて感じたこととしては、千葉県はかなり交通量が多いということ。

おそらく川崎とか横浜から東京湾アクアライン経由で館山市を訪問する人が多くて、ここはその通り道になっているので混んでいるんだろうと思います。交通量の多さの割には道が細い感じ。路肩がほとんどないので、ロードバイクで走るのは個人的に怖かった。

ただ追い風の恩恵もあって移動そのものは早く行うことができ、これについては嬉しかったです。というよりも風向きを見て今日の移動ルートを決めたので、それがうまくハマってくれた感じ。

そんな中で、次に訪れた場所はここです。

!?!?!?!?

これは…一体どう表現すればいいのだろうか。予め下調べしておいてから訪問したのにも関わらず、あまりのインパクトに言葉を失ってしまった。

トンネルなのは間違いなく、しかも素掘りトンネルではない近代的なトンネル。手前側の道もアスファルト舗装されていて、そこに特異な点は見当たらない。
ただしトンネルの入口の半分以上がコンクリートで蓋されており、一見すると放棄された旧道のように見える。ただし周辺には通行止めの看板などはなく、実際に普通に通ることができます。

道路に示されているラインは白色とイエローの2色あるし、後からなんらかの理由で塞がれたのは間違いない。もうわけわからん。。

トンネル内部。北側(正面奥)に比べると南側は拡張されているのが分かる。

この島戸倉トンネルの旧道部分、その内部は倉庫みたいになっていました。

ちなみにこのトンネル内部、イエローラインから右側は「私有地」と道路上に書かれていたので、念のため立ち入っていません。おそらくトンネル内部を拡張(北側を見ると拡張されている)した際に土地所有者の協力を得られなかったため、半分は公道、半分は私道という形で落ち着いたのかも。

閉塞という形で旧道のトンネルが塞がれている様子は過去に見たことがありますが、塞がれているのは半分のみ、しかも通行できるというのは個人的に初めてのこと。素掘りだけではなく割と新しめのトンネルですらも、房総半島では一味違う趣になっている。

そんなこんなで日没の時間も近づき、最後は今回の旅で一番訪れたかった場所に行き着きました。

燈籠坂大師の切通しトンネル
燈籠坂大師の切通しトンネル

訪れたのは、富津市にある燈籠坂大師の切通しトンネルというトンネルです。

あくまで結果論になってしまうものの、最後に訪問したのがここというのはある種の巡り合せなのかもしれない。昨日今日と回ってきた房総半島の切通しとトンネル、その2つを合体させたような独特の存在感が際立っていて、素掘りトンネル巡りの旅の終着点としてふさわしい。

房総半島における素掘りトンネルの多くは養老渓谷などの内陸部にあるのに対して、燈籠坂大師の切通しトンネルは半島の西側、東京湾に近い側にあります。これは結構珍しくて、都心方面から館山市へ向かう道中にあるためアクセスも楽。実際に、自分が到着したときはバイク乗りの方々がここで写真を撮られていました。

その名の通り、燈籠坂大師堂へと続く参道上に設けられているこのトンネル。元々は尾根ルートを通る参拝道を改善するために明治時代に掘られたとのことで、その後昭和の初期に切下げが行われて今の姿になりました。

構造としては、トンネルの両側を切通しでサンドイッチしたみたいな位置関係になっています。長さは全体で100mほどで、高さは10mくらい。

反対側

燈籠坂大師の切通しトンネルは自分が一目惚れしたトンネルでもあって、その理由をちょっと考えてみた。

まず、トンネル内部の長さに比べて入口・出口部分の高さがとても高く、中から外を見た時の光の割合が比較的多いこと。これによって両側にそびえ立つ壁面に圧倒こそされるものの、トンネル特有の「狭さ」を感じにくくなっています。

頭上方向にとてつもないほど余裕があるので、トンネルのスケールの大きさを感じられる。文字通り見上げるようなこの迫力を、肌で実感することができて嬉しかったです。

後は、トンネルのすぐ近くに神社という人工物があること。

他の素掘りトンネルは自然と一体化したようなところに存在しているので、トンネルの近くには何もない。でもここでは神社へと続く階段もあるし、ちょっと引けば鳥居もセットになる。巨大な自然の造形と、その脇にあるちょこんとした人工物との対比がまた美しい。

せっかくなので、燈籠坂大師堂まで上ってみました。

上から振り返って地形を確認したときがちょうど日の入り前の時間で、太陽が雲の向こうに隠れるというタイミング。少しでも遅れれば夕日に染まる切通しを見ることができなかったわけで、なんか千葉県を訪問してから運がいいことばかりだ。

この明暗の差、これがもう堪らない。

出口が切通しになっているので、「トンネルの先の景色が開けている」というシチュエーションが本当に最高すぎる。一般的なトンネルだったら出口が小さいので向こう側に見える景色も視界が狭くなってしまうものの、ここではその景色の割合がとても広い。なんなら空まで見えるし。

切通しの高さ、歴史を感じる側壁の古さ、そして視界の上に広がるトンネル外の風景。これらの要素が組み合わさることによって、興奮すると同時になんだか神聖な気持ちになってくる。

こんな感じで、今回の千葉県の旅は無事に終了。

時間の方は若干押してしまっていたけど、日の入りと同時に行程を終えることができたのでヨシ。

おわりに

千葉県房総半島の素掘りトンネルにはずっと前から興味があって、実際に訪問してみたいと思っていました。

それをいざ実行してみると、ネット上の情報からは得られないトンネル周辺の環境や静けさ、そして感触などを味わうことができました。やはり気になったところがあるのなら自分の身で訪問してみるべきだし、そうすることでしか得られないものがある。

房総半島には内陸部や海岸線など様々な地形が比較的狭い範囲に集まっていて、単純にロードバイクで走るだけでも色んな出会いがありました。高い山がないので走りやすく、四季を通じて訪れやすいところだと思います。

あと、素掘りトンネルはあくまで手作業で掘られたものであって、中には一度崩落すると復旧が困難なところもあります。訪れるなら早いほうがいい…かも。

おしまい。


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