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旅の記録とか、舞台訪問とか。

【渡合温泉】ロードバイクで秘湯「ランプの宿」を訪ねてきた Part 1/2 (@岐阜県中津川市)

電気が通っていない。電波が届いていない。そんな宿に泊まってきました。前編である今回は出発から宿到着~夕食前までをまとめています。

【訪問日:2019年12月7日~8日】

いざ秘湯へ

近頃めっきり寒くなってしまって、自転車に乗るどころか外出するのすら億劫になってきました。先週の高山ライドではマイナス4℃の中を走ることになり、しかも日中の気温も4℃程度と寒かったので最初から最後まで凍える始末。

こんな季節にはやはり温泉に入るしかない。ということで温泉が主目的のライドを計画しました。

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今回の温泉ライドの同行者であるBOOBYさんと美濃太田駅で集合し、ここから北へ向かっていきます。

今日は一日中曇りの予報だったのに加え、南から北へ向かうので今後さらに気温は徐々に下がっていくことが予想されました。今の時点ですでに寒いんじゃが…。

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美濃太田から北へ向かう際に通ることになるのは、高山本線沿い、もとい飛騨川沿いに走っているR41。ここは交通量が多いのですが、今回のルートだと途中まではここを通ることになります。

上流側に向かっているとはいえ、アップダウンはないので非常に走りやすいですね。

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あともう少し行けば下呂というところまでやってきました。

下呂といえば下呂温泉。今回の温泉ライドは下呂が目的地か?と思わせておいて、実はそうではありません。白川町での交差点を右に曲がり、R62を通っていくことになります。

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本格的にR62を北へ走っていく前に、朝からここまで何も食べていないことに気づき、途中の道の駅で朝食をとりました。

コーヒーや紅茶にサンドイッチや卵、さらにはかぼちゃ(!?)がセットになっているモーニングセットを注文。これで¥380なのだから最高すぎる。

朝食を食べたことだしそろそろ出発しようかと思っていたところ、「石窯ピザ」という文字を見つけてしまったのでこれも食べることにしました。おばちゃんから今から作るけどどう?というお言葉を聞いてしまったからね。(11時販売開始で、今9時)

外の気温は2℃くらいでかなり寒かったものの、ピザの美味しさと優しさに感謝しつついただきました。

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そこからはひたすらR62を北上し、白川町~東白川町を通り過ぎて舞台は中津川市へ。

ここでは付知峡という飛騨・美濃紅葉33選にも選ばれる紅葉の絶景スポットがありまして、また「青川」と呼ばれる澄みきった川があることでも有名です。

近くにはキャンプ場もあり、この時期でも結構車が止まってました。というか付知峡周辺だけでキャンプ場が5つもあって、特に夏場なんかはかなり賑やかになるんじゃないかなと思います。

まあ夏場でも冬場でも、一般観光客が訪れるのはここまで。ここから先は自然公園と名前がついているくらいで、他には何もありません。

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—— ただ一つの温泉宿を除いては。

見ての通り、ここから行く宿はこの付知峡(付知川)をさらに上流へ上っていったところにあります。この時点で「普通の宿ではない」と思った方は、かなり鋭い。

山奥の宿というだけで何かわくわくしてきませんか?

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この時期に渡合温泉を訪れるのは、実は一般的ではありません。

その一つがこれです。

先程の看板からちょっと走ったところに林道のゲートがあり、このゲートが開いている期間が4月1日~11月30日なのです。つまり今の時期は、車で現地まで向かうことができません。なおこのゲート、崖側もきっちり塞いでいるのでバイクや原付も通行不可です。

ただし、自転車と徒歩は通行可能です。右の方に人ひとりが通れるだけの通行口があり、そこから自転車を通しました。もちろん予約時に「自転車は通行できますよ」と確認をとってありますので問題なし。

ゲートの上から通す手もあるけど、かなり大変そうです。

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というわけで、ここから先は我々以外には通る人が皆無な道を突き進んでいきます。

一般車通行不可な道というと乗鞍を思い出すけど、あっちは観光バスやタクシーは普通に通りますし、そういう意味では真の意味で自転車専用道路みたいなものですね。

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ゲートから宿までは約10kmあって、そのうち4kmくらいはダートです。

ダートの程度が少々心配でしたが、石の大きさ的に25cでも走れんことはないレベルでした。グラベルロードなどだったらもっと快適に走れると思います。また、道としては斜度6%程度でひたすら上りが続きます。

ダートを走るのも意外に好きだったりするので、コンチネンタルを信じつつ林道と格闘してました。踏んだらパンクしそうな石をかわしつつ走る体験は、こういう未舗装路でしか味わえません。

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それにしても本当に静か。

冬場ということを抜きに考えても、聞こえてくる音といえば下を流れている付知川の音だけ。あとは何も聞こえてこない。

すでに電波も入らないくらい奥地に入り込んでいる事実に驚きつつ、「廃道とかってこんな雰囲気なのかな」と奥へ進むごとに楽しくなってきます。

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最後は自転車を担いで石段を上り、ついに到着しました…!

渡合温泉・ランプの宿です。

渡合温泉旅館 通常営業時期:4月1日~11月30日、それ以外の時期(冬季)は宿泊客の人数次第で営業(要確認)、また冬季はゲートが封鎖されるが送迎あり
HP:渡合温泉旅館

中に入る前に、この宿について軽く説明してみます。

渡合温泉は明治初期に源泉が発見され、山仕事の人や湯治客に親しまれてきた宿です。この宿の特徴をざっと挙げてみると、

  • 電気が通っていないため自家発電を利用しており、夜10時以降はランプのみ(ここ重要)
  • 携帯電話が圏外
  • 旅館にある電話は衛星携帯(有料)。

となります。

部屋にはコンセントがないのでテレビも電話も役に立ちません。電子機器を持ち込む場合はモバイルバッテリー必須です。

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「自転車でよう来たね!」とご主人たちに歓迎してもらい、お部屋に案内してもらいました。部屋には裸電球が一つと、真ん中にこたつがでんと設置されています。もうこれだけで満足できるレベルの雰囲気の良さ。

まずは一休みしつつ、旅館内を探索していきましょう。

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宿に到着したのは14時すぎ。この時間帯はまだ自家発電が動いているので、館内には電球が点いているのがわかります。建物自体はなんと大正時代からそのまま変わっていないらしく、その時代時代の中で今まで人々に愛され続けていたことがよく伝わってきました。

今日は我々の他に宿泊客はもう一組のみで、現在迎えに行っている最中とのこと。

実は今日宿泊できたのも、このもう一組の方々がいらっしゃったおかげなのです。前にも話したとおり今は本来オフシーズンで、通常ならば宿泊は不可能でした。ダメ元で電話してみたところ、12月7日なら宿泊できるよとのことで。本当に運がいい。

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構造的に部屋と屋外との仕切りがふすま一枚なため、両者の気温差はゼロに近いです。部屋の中でも吐く息が白くなる程度には気温が低く、つまるところめっちゃ寒いということ。

暖を取る方法としては灯油ストーブ豆炭こたつ(懐かしすぎ)があり、これの居心地があまりにも良すぎるので冗談抜きでこたつから出られない事態になり焦る我々。なおこたつの中に潜ろうとしたものの「一酸化炭素中毒になるのでやめてください」との注意書きを見て我に返りました。

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部屋に置いてある案内を眺めつつ、部屋を見渡しながらふと考えてみました。

普段は何気なく利用している電気がただ使えないというだけで、暖を取ること一つとっても苦労がぜんぜん違うんだなと。まだ宿に来たばっかりなのに、寒さに震えながら自身の電気への依存っぷりに悲しい気持ちになったりならなかったり。

さて。

気を取り直して、先程「薪ストーブがある」と書いた玄関に行ってみることにしました。

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みてこれ…!!

所狭しと並べられた年代物のラヂオやカメラ、そしてなんといっても、壁や天井一面にかけられているランプの多さですよ。渡合温泉がランプの宿と呼ばれる所以が、何も教えられなくても自然にわかるよね。

「ランプの宿」を売り物にしている宿は全国にいくつかありますが、電気が通じていて電球をランプ風にしているものだったり、本来の電灯に加えてランプを使っていたりするところが多いようです。ここ渡合温泉のように、夜は完全にランプの明かりのみ、という宿は日本で数えるくらいしかありません。

ランプたちは、今はどうやら夜に備えて出番を待っているようです。楽しみだね。

温泉へ

温泉宿へ来たことだし、兎にも角にも温泉に入らねばならない。というわけで早速温泉へ向かいましょう。

お風呂は貸し切り形式となっており、使用する際は札を「入浴中」に切り替えるというわけ。

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源泉はアルカリ炭酸泉10.5℃(鉱泉)で、高野槙(コウヤマキ)造りの湯船を五右衛門風呂式で加温しています。

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そこそこに身体を洗って湯船に浸かったけど、湯音の「ちょうどよさ」感が有頂天。凍えてた身体が一気にふやける感じが素晴らしい。これ以上ないくらい今の体温にマッチしている。そして一度身体が温まると今度は適温過ぎてなかなか出られない…という嬉しい悲鳴。

この環境で温泉に入れるなんて、やはり今日来てよかった。

寒い日にわざわざ出かけて凍えといて、温泉で温まる…。これもマッチポンプの一種だな。

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温泉から上がったあとは、一番暖かい玄関で薪ストーブにあたりつつ半分寝てました。

徐々に日が傾いて周辺が暗くなる時間帯に入り、点灯するランプも一つ、また一つ…と増えていきます。

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灯油ランプの明るさは、今では主流となっているLED証明と比べるとたしかにか細い。

でもこの暖かさや雰囲気は、ランプでしか味わえない。

なんせこっちは本物の炎であり、手や顔を近づけてみると実際に温かいわけです。今ではそこかしこが明かりで照らされていて感じづらいですが、明かりがない場所へ行けば炎にぬくもりを感じて安心できるあたり、やっぱり自分は人間なんだなと感じました。

原始の人間に立ち返り、ゆらゆらと揺れる炎をぼんやり眺めることができる宿、それが渡合温泉なのです。

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そんなこんなで時間はゆっくりと過ぎていき、気がつけば夕食の時間になりました。

後編はお待ちかねの夕食から始まるよ。