ここしばらく海沿いを走る機会が多く、そろそろ山の方を走るかと漠然と考えていたところ、ゆるキャン△の最新刊である10巻で静岡県の大井川が登場しました。
それもかなり上流の奥地の方でキャンプをするという内容で、ちらっとマップを眺めてみるともう山の中100%というくらい濃い自然ばかり。全体を通して良さげな雰囲気がしまくっていたため、舞台訪問ライドをしにちょっと静岡まで行ってきました。
「思い立ったが吉日」という言葉の通り、こういうのは気になったらとりあえず行ってみるのが吉なので現地までの距離は気にしません。好きな作品で登場した舞台、しかもそれが自転車で走ってみて面白そうとなればもう行くしかないという感じ。
千頭駅からスタート
スタートは、作中でもリンと綾乃が待ち合わせをした千頭駅です。
千頭駅そのものには駐車場がないので、隣にある道の駅の駐車場を利用させてもらいました。
まだ日も当たらぬ6時、人気がまったくない千頭駅を後にしてライド開始です。
ルートとしては、とりあえず大井川に沿って上流側に向かい、吊り橋があったら立ち寄ってみるというざっくりとしたスタイルで行きます。
なお舞台訪問記事については別途まとめています▶「ゆるキャン△」舞台訪問 10巻 - TAMAISM
作中でも触れられていたように、大井川流域は「吊り橋の名所」と言われている通り、ちょっと走れば視界に吊り橋が入ってくるくらい吊り橋が多いです。大きさも様々で、めちゃくちゃ細い橋から車が通れるくらい頑丈な橋まで色々あります。
川沿いに生活する以上、橋はなくてはならない存在ということ。
ここは千頭駅から一番近い「両国吊橋」で、人一人分がようやく通れるくらい細い吊り橋です。今回自転車で来て良かったことの一つは、このような細い吊り橋でも愛車を持っていけること。
例えばバイクだとそもそも吊り橋に至る階段を登れないし、重量や幅を考えるとなおさら厳しいところがある一方で、このように自転車であれば担いて登ることも容易、さらに重量的にも人間より遥かに軽いので問題になりません。
もちろん場合によるけど、愛車と一緒に写真を撮れるのは個人的には嬉しい。
経年劣化で錆びついた金属類、すき。
人工物が年月を経て徐々に姿を変えていく情景が好きな中で、このように人々の生活の一部になっているものこそ錆びたりしていると歴史を感じてなんか良い。
そもそもこの地を走る大井川鐵道は1925年3月、大井川上流部の電源開発と森林資源の輸送を目的として創立されたそうで、いずれにせよとてつもない長い間愛されていたことは間違いないわけで。
見知らぬ土地でその歴史の一端に触れることができる点も、旅行のいいところの一つだと感じます。
大井川の幅はとても広く、水の色が深みを感じさせる碧さをしているのが特徴です。
後で調べてみたところ、大井川は赤石山脈にある間ノ岳(3189.5m)を源を発する川なのだそうで、すでに登ったことがある山だったので意外なところで登山との関係を感じました。登山趣味がこんなところで繋がってくるとか、うまく言えないけどグッとくる。
井川ダム方面へ
先程左手に見えた2つ目の吊り橋「小山の吊り橋」を後にしてしばらく進むと、寸又峡と井川方面への分岐があります。
先に奥地の方を散策したいのでまず右へ。
少し進んで長島ダム下流のキャンプ場「アプトいちしろキャンプ場」に到着。
この辺りの地形は基本的に坂道+トンネルがメインで、道を開通したときの苦労が忍ばれるようなつくりになっています。周りは山ばかりなのでトンネルを多用するのは、もうこれは当然という感じ。
ゆるキャン△の舞台という面に加えて、大井川鐵道の歴史や廃線跡や廃道跡があるという面から見ると、ただ走るだけで面白さが何倍にもなります。
ゆるキャン△11巻の内容として、大井川鐵道の駅には電車に乗る以外にどうやって駅に行くのかわからないという場所が時々出てきます。
その一つが、このアプトいちしろキャンプ場の最寄駅である「アプトいちしろ駅」。大井川の上流へ向かうルートからはやや外れるけどちょっと寄り道してみることに。
Googleマップで見ると、キャンプ場から駅には川沿いに道が走っているように見えるものの、実はマップには存在しないルートもあります。それがキャンプ場から続くこのトンネルで、これを通るだけで駅に一直線で向かうことができます。
トンネルを抜けた先には中部電力奥泉発電所がありますが、そこへ至る橋は通れません。
このあたりの雰囲気はなにか特殊で、観光と工業が混ぜ合わせになったような独特の空気がありました。例えるなら黒部峡谷鉄道かな?あれも元々は発電施設のための鉄道で、それを観光用に兼用したものだし。
そういうのが好きな方であれば、このあたりはいつまでも眺めていられるくらい楽しい場所だと思う。
今回は鐵道に乗るわけではないのでもと来た道を引き返すことになって、実はこのトンネルは灯りが一切ありません。
ライトがないとめちゃくちゃ怖い思いをすることになるので、鐵道でここに来た場合は駅でライトを借りてから通ることをおすすめします。でないとなでしこみたいに半泣きになります…。
トンネル内にはサプライズもあるので、例えば夜中に一人で来ると来たことを後悔するくらい怖い。前情報なしでアレに遭遇すると心臓止まりそうになる。
ロードバイクの場合はライトは装備しているので、灯りについては問題ありません。
キャンプ場まで戻ってきました。
アプトいちしろキャンプ場は今年はこの3連休から営業開始しているようで、自分も訪問前にちらっとHPを確認してみたところ、すでに予約で埋まってました。次訪れるときはぜひともここでキャンプしてみたいところです。
吊り橋と同じく、大井川と切っても切り離せない関係にあるのがダム。
大井川では1902年以降盛んに電源開発が行われ、大井川本川だけでも田代ダム・大井川ダム・奥泉ダム・井川ダム・畑薙第二ダム・畑薙第一ダムなど、数多くのダムが建設されています。
ここ長島ダムはその中でも一際「広さ」を感じるダムとして有名で、特に大井川鐵道に乗りながらダムの全景を見ることができることが特徴です。
長島ダムによってできた湖は接岨湖と呼ばれており、周囲の自然と相まって神秘的な雰囲気を醸し出しています。
ダムみたいな巨大な人工物は日常でそうそう見れるものではなく、これが大自然の中にいきなり現れる衝撃もあるけど、これを実際に作ってしまう技術力も相当なものだと思う。
特に自転車でダムの周囲を走っているとその大きさに終始圧倒されてて、ダムへ至る道+ダムそのものを目の当たりにしたことで、大井川の奥深さをより感じることができました。
井川ダムへ
接岨湖から先は、接阻峡温泉を経て井川方面、さらに奥地へ進むと畑薙ダム方面へ向かうことができます。実際、ゆるキャン△10巻の中では、リンと綾乃の目的地はこの畑薙ダム(畑薙湖)でした。
ここで畑薙ダムまで行ってしまうと次回訪問時の感動が薄れるので次回に回すとして、今回はその手前にある井川ダムまで走って折り返すことにします。
また自転車に乗って上流側に進む途中には、あの有名な風景が待っていた。
それがこちら。
大井川と聞いてこの風景を思い浮かべる人は多いであろう、奥大井湖上駅です。
「どうやってあそこまで行くの?」「なんのためにある駅なの?」とか頭の中に浮かんでくる疑問よりも、まずこの眺めの非日常感がヤバい。
道を普通に走っていると右手側に突然現れるので本当に驚くし、通常の車道が湖からかなり標高があることと合わさって、ほんとに絶妙な角度で駅方面を眺めることができる。
ここまで来て良かった。
あの橋、実は歩いて渡ることができます。
今回は時間の関係でパスしたけど、今度来たときにはあそこで下車して周囲を色々散策してみたい。
その後は気になった遊歩道を自転車担いで歩いたりしながら徐々に標高を上げていき、大井川鐵道の終点である井川駅に到着しました。
現在井川駅の手前の閑蔵駅周辺で工事をしているらしく、千頭駅から鐵道に乗ったとしても直接井川駅に来ることはできないようです。
井川ダムに到着。
なんか水位が下がっているせいで水面までの距離がとんでもなく高く、高所恐怖症な自分にとっては結構怖い思いをしました。自然的な高さは大丈夫でも、人工的な高さは怖いという方は結構いそう。
時間も昼頃になってきて気温も高くなっており、そろそろポタるにはちょうどいい季節になってきたという気がします。
ここでちょっと道について軽く述べたいと思います。
千頭駅~閑蔵駅周辺くらいまでは車道の幅も比較的広く走りやすい一方で、それより上流側になると途端に狭くなり、車一台がようやく通れるといった箇所が多いです。
あと基本的に平坦な道はなく、もう坂道オンリーなので交通量の多くなるこれからの観光シーズンだと車の往来に特に注意する必要があります。
井川ダム周辺に限って言うと、道には結構でかい石とか枝とかアスファルトの亀裂とか盛りだくさんなのでハンドリングには要注意。話によると畑薙ダム方面はもっと荒れている険道になるそうので、次回走るのがもっと楽しみになってきた。
夢の吊り橋
ここまで走ってきて今回の目的はあらかた達成した感があるけど、どうも少し物足りない。
このまま千頭駅までダウンヒルをして終わりというのは味気ないので、また寄り道をします。
さっき寸又峡と井川ダムの分岐を右に曲がってここまで来たけど、あれを左に行くと当然ながら寸又峡方面に行くことができます。距離的にもそこまで遠くないので、再度ヒルクライムをすることにしました。
この時間帯になるともうヒルクライムをしていると暑いくらいで、半袖ジャージなのに汗かいてました。
というわけで、川沿いから尾根を経て寸又峡に到着です。
休憩もそこそこに早速夢の吊り橋へ。
寸又峡中心部から夢の吊り橋へは歩いて大体40分くらいです。道中には日帰り温泉やカフェなどもあるので、こちらも一緒に楽しむのも良さそう。
作中で一瞬だけ出てきてた「わさびそば」や「足湯カフェ」も確認できました。このあたりは今日走ってきた道のりとは打って変わって観光名所チックな雰囲気で人も多く、かなり賑やかです。
まあ今日のところは夢の吊り橋だけ満喫してから帰りましょうかね。もうすぐそこみたいだし。
お、見えてきた。
じゃあ早速下っていきますk
1時間待ちはさすがに草
そういえば3連休ということを失念していた…まさかここまで人が多いとは…。
なんでこんなに行列ができているのかというと、夢の吊り橋は一度に橋の上に居れる人数が10人と決められており、さらに観光客は橋の上で写真を撮りまくるので進むのが遅いというわけです。
今回は1時間で済んだけど、紅葉の時期とかになるともっと待たなければならないんだろうな。そう考えると「混んでるシーズンより空いてるオフシーズン」の方針で、比較的空いてる今の時期に訪問するのがいいと思いました。
順番になったので渡っていく。
肝心の夢の吊り橋、めっちゃ揺れるので怖い人は一歩も進めないという事態になりそうなものの、ちゃんと手すりはあります。水面からの高さは10mくらいとそこまで高くない一方で、いかんせん橋の造りが華奢なのと、下とか横が思いっきり見えるくらいスカスカなので歩いてて非常に楽しいです。
眺めは360°素晴らしく、後ろに人が控えてなければ橋の中央でずっと佇んでいたいくらい自然と一体になっている感がすごい。
周囲の風を感じながら空中散歩できるのはここならではの魅力だと思います。
ここは人が多いシーズンは一方通行になっており、夢の吊り橋を渡った後は階段を少し上ってから別の橋で寸又峡に戻る形になります。
これを考慮すると、すんなり行けたとしても往復2時間くらいは見ておいたほうがいいかもしれません。
今回のところは他にどこにも立ち寄らず寸又峡を後にしました。一度に全部楽しんでしまうと次がつまらなくなるのと、どっちみち11巻で再訪するので温泉などは次回じっくり入りたいと思います。
ちなみに上の写真は寸又峡から千頭駅へ帰る途中の見晴らしのいいところから撮りました。
遥か下に見えているのは、今日の初めの方で恐怖のトンネルを通って到着した「アプトいちしろ駅」です。大井川周辺はちょっと進むだけでも高低差が大きいので、このようにダイナミックな風景も簡単に楽しめるというわけです。
まさに自転車で回るにはうってつけのルートかなと思います。
そんなこんなで無事に千頭駅に帰還。
最後は10巻最後でなでしこが食べようとしていたダムカレーを満喫してから帰りました。ダムカレーは数量限定みたいだったけど、結構遅い時間に訪れたにも関わらず運良く食べることができました。
ダムカレーを食べている途中、そういえば今日のライドはダムめっちゃ多かったなと思い出に浸りつつ食べると美味しさがより増したのでおすすめです。とにかく千頭駅周辺はぶらぶらしてるだけでも食べるとこ多いので、散策の最後はここでゆっくりしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
ゆるキャン△10巻の舞台訪問に加えて色々回ってみた今回のライドですが、大井川は色々な切り口で楽しめる素晴らしい場所だと思います。自然を満喫するもよし、鐵道に揺られて車窓からの風景を味わうもよし。
特にこれからの季節は散策しやすい気候になるので、なおさら面白い体験ができそうです。
おしまい。
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