- Part 1:松山~下灘~内子
- Part 2:内子散策~小薮温泉
- Part 3:小薮温泉~四万十川流域~美馬旅館
- Part 4:美馬旅館~土佐久礼散策
今回の舞台は四国。
出張ということで天気については完全に運次第だったものの、これ以上ないくらいに晴れてくれたので何より。せっかくなので3連休にし、泊まる宿だけ決めておいてルートは当日決める方針でいきました。
四国を走る
自分の旅はいつもこうなので、どこを通って何時くらいにはここに到着しておこうとかのプランが全くありません。
ただ景色の良さそうな方角を目指して走る。そうじゃなかったら旅じゃなくてただの観光になってしまうし、そもそも移動手段がロードバイクである必要がまるでなくなってしまう。現在の状況を加味して最大限に自由に動くのが自分には合っている。
当初は今治で下車し、松山を経由して小薮温泉まで行く予定だった。
しかし当日に出発するタイミングで天気予報を確認してみたところ、この日は南西の風6m/sという予報。ルート的に考えればダイレクトに向かい風の中を走ることになってしまって虚無しかない。
それは嫌だったので、逆方向の伊予大洲駅から松山まで海沿いに走ってから輪行で内子まで向かうことにした。
こういう風に直前で予定を変えてみるのもなかなか面白い。
まずは、瀬戸内海に注ぐ肱川に沿って北へ走る。
この時点で風の強さが凄まじく(肱川あらしというらしいです)、下流に向かって走る分には問題ないんですが、ちょっと良さげな風景があると思って戻ったりするのがとてつもなく大変だった。
上空を流れる雲はあっという間に流れていくし、川面付近の流れも非常に早い。最近はパッとしない天気が続いていたんで、今日の快晴に勢いづいて天が風を強く吹かせてしまったのかもしれない。
そのまま瀬戸内海に特に何事もなく到着したわけですが、ここで「え?これってここにあったの?」と思ったものがこれ。
「発音できない看板」として有名だったスーパー・ショッパーズ長浜店の看板「ンョ゛ハー゛」。
ネットの海を彷徨っていた当時にこの看板の存在を知り、どこにあるのか知らんが変な看板もあるものだな、と横目でチラ見していたのが記憶に新しい。
2019年に老朽化のため撤去された後も、このように展示されているようです。
左隣のにこやかな顔と「ンョ゛ハー゛」という意味不明な文字列との組み合わせがなんか笑えてくる。
この後松山まで走っていく中で時折思い出し笑いをしてしまい、そのまま強風に煽られてコントロールしずらくなったりもしたので、とにかく不意打ち過ぎた。
海沿い×青空という奇跡
一度見たらしばらくは頭の中に残りそうな看板を後にし、適当に松山までは海沿いを走っていくことにした。
松山に到着した後は輪行で内子まで向かうし、内子から今日の宿である小薮温泉まではほんの20kmほど。つまり時間にはかなり余裕があるわけで、特に急ぐ必要も全くない。加えて追い風というアドバンテージも得たことだし、
もう後はひたすら瀬戸内海を眺めながら流していくことが可能というわけ。
伊予長浜から松山までの海沿いの国道378号は「夕やけこやけライン」と名付けられていて、その名の通り海の向こう側に沈んでいく美しい夕日を眺めることができる。
もっとも、この国道沿いにあるのがあの有名な下灘駅となれば、あああそこね、となんとなくでもその素敵さが想像できると思います。下灘駅は愛媛の観光地として有名すぎるし、あらゆる観光雑誌などでも紹介されているのでイメージしやすいはず。
今日は完全に日没のタイミングではなく日中に訪れるというわけで、駅舎の向こう側には夕焼けでなく真っ青な空が望める。そんな予想、もしくは確信を想像すれば、早く到着したいという思いから下灘駅に向けてペダルに込める力も自然に増すというもの。
愛媛県を訪問するのも結構久しぶりだし、下灘駅に限っては今回が初訪問となる。
あれほど絶賛されている下灘駅からの風景とは、一体どういうものなのだろうか。期待が最高潮に高まってきたそのとき、目の前に"その"下灘駅が現れた。
これだ。
まさに自分が見たかった風景が目の前にある。
古びたベンチと上屋。遮るものがなにもない空間。向こう側には瀬戸内海の青い海と快晴の青空。
いや、自分でもできすぎじゃないかと思うくらいのベスト・オブ・ベストなシチュエーションだ。ここまで雲ひとつない快晴だとは思ってもみなかった。
訪れたタイミングも本当にドンピシャで、これだけの絶景にも関わらず観光客は自分以外に一組だけという閑散っぷりだった。今回下灘駅を訪問することを決めた際には、かなりの知名度を誇る場所だし、人が多かったらスルーしようかなとか考えていたのが嘘みたいな感じ。
ただ、自分が駅を離れるタイミングで一気に人が多くなってきたので、比較的早い時間帯に訪れたことも功を奏したようです。
冬の空は午前中の方がはっきりとした青色になるため、それが目的ならばここに限らず朝のうちに回るのが良い。
冬というだけでも空気が澄んでいて、他の季節よりも吸い込む空気が美味しく感じるもの。
それに加えて目の前には広い瀬戸内海が視界の端から端まで見渡せて、これが幸せでなくてなんなのかってレベル。確かに冬は気温的に行動するのが躊躇われるような気もしますが、寒いからこそ映える景色もあるんです。
今回ここを訪れて本当に良かった。
上屋のベンチに座って海を眺めていると、今抱えている悩みがすべて吹っ飛んでしまうくらいの開放感を感じられた。
雄大な風景は何もかも忘れさせてくれる。だからこそ自分は色々な場所に出かけているし、それが結果的に気分転換にもなっていると思う。毎日同じ風景ばかり見ていたのでは息が詰まるし。
下灘駅には、そんな一種の安らぎが確かにあった。
下灘駅を後にし、それからは無心で国道を走って松山市街へ。
瀬戸内海に面した道全般に言えることですが、高低差がほぼ皆無なのでめちゃくちゃ快適に走ることができます。瀬戸内海の道というとしまなみ海道とかの○○海道が有名なものの、反対側の四国に関しても同様に走りやすい。海の静けさと相まって平和な道が続いています。
ところで、この夕やけこやけラインは愛媛のロードバイク乗りにとっても重要なコースっぽくて、この日に走っている人を大勢見かけました。多くは松山方面から走ってくる人が多く、向かい風で大変だろうなとか思いながらこっちは追い風という背徳感。
すまんな。こっちはほぼ何もしなくても前に進んでくれるんだ。
松山といえば…
そんな海沿いルートが終わった途端に今度は交通量が激増し、車の多さに辟易しつつも松山駅周辺に到着。
内子行きの電車の時間まではまだだいぶあるので、道後温泉周辺をぶらぶらすることにしました。
松山の名物といえば、なんといっても路面電車(伊予鉄道)じゃないでしょうか。
市内中心部にある松山城を囲むように走っており、観光客だけでなく市民の足としても愛されている路面電車。車が行き交う道路の中央部をガタゴトと走っている姿はなんとも愛らしいもの。
なんというか、路面電車って適度な速度感がいい。早すぎるわけでもないし、かといって遅すぎるわけでもない。町中を突っ切って走っているので車窓からの眺めも独特なものだし、すぐ近くを車が走っているのも面白さを感じる。
駅と駅との間隔も近く、"町と一体化している感"が強く感じられる。色も派手すぎないオレンジ色で、街の景観にマッチしているようだ。そんな路面電車は、市民にとっては生活していく上で切り離すことのできない重要な文化。これからもずっと松山の地を走っていてほしい。
肝心の道後温泉については、現在は保存修理工事を行っています。
工事を行っているとはいっても、温泉は元気に営業中みたいなので特に問題ないかと思います。
逆に言うと、こういう工事を行っている姿を見られるのもある意味で珍しい。
いつもどおりの日常だったら見られない光景なわけで、前向きに考えてお得な体験ができたと感じました。松山には個人的に泊まってみたい宿があるし、また折を見てゆっくり訪れることになると思います。
その後は道後温泉周辺でささっと昼食を済ませ、松山駅から輪行で内子へ向かいました。Part 2に続く。
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